大手ECモールが乱立するなか、ファンケルのECアプリで勝ち抜くオムニチャネル戦略とは?

 Post by MML編集部
ファンケルといえば、無添加化粧品や健康食品を製造・販売するメーカーである。今回は、「FANCLお買い物アプリ」の導入事例。Amazon、楽天、ヤフーなどで購入する人が多いなか、ECアプリを導入した狙いは何か。またアプリを運用していると「毎日アプリを起動してもらったほうがいいのではないか」と社内で言われることも多いが、ECアプリの本質とは何か解説された。 ファンケル 萩山 智也氏
株式会社ファンケル 通販営業本部 販売企画部 サイト管理G 萩山 智也氏
本記事は、Repro、ロケーションバリュー、FROSK、モンスター・ラボの4社共催で開催された「アプリの虎 Vol.4 ~有名企業のアプリ活用最前線~」より、ファンケルの萩山氏から「通販チャネルでのECアプリの役割と成果」というテーマで講演を行った。 ファンケルは1981年に創業。全体の売上高は1,224億円(2018年度)そのうち58%は化粧品関連事業、36%は栄養補助食品関連事業、6%がその他関連事業という構成となっている。チャネル別では通販事業が38%、直営店舗販売が36%、卸販売が18%、海外が8%と、通販や直販に力を入れている状況だ。 ファンケルでは「FANCLお買い物アプリ」と「FANCLメンバーズアプリ」の2つを運営している。FANCLお買い物アプリは2014年にリリース。ECサイトの機能をアプリに集約したもので、ユーザーが簡単に商品を見つけてすぐに購入できる構成となっている。

ECアプリの機能はシンプルに。その理由は?

FANCLお買い物アプリを導入した狙いは、機能を絞り込むことでいつもの商品が瞬時に購入できるところにある。つまり、ユーザーの購入頻度が増加し、LTVが向上するわけだ。 しかしなぜ、機能を絞り込むことが必要なのだろうか。ファンケルのECサイト会員を対象に、ECアプリに求めるものは何かアンケートを取ったところ、多かった答えは「買いやすさ」「キャンペーン情報」「商品の分かりやすさ」だったという。お客様がECアプリに求めているものは、あくまで「お買い場」であって、決して「メディア」ではない。 「アプリを運用していると、毎日アプリを起動してもらったほうがいいのではないか、と社内で言われることがあります。結局のところ、毎日起動するアプリとは、ショッピングモールアプリ、ニュースアプリ、天気アプリとありますが、このアプリはどこにも属さない。だからECアプリには、基本的な機能しか求められていない」と萩山氏は語った。

ターゲットを設定するための考え方

アプリのターゲットは、インリストで30代のヘビーユーザーに設定している。スマホから買い物する時、Amazon、楽天、ヤフーなどで購入する人は非常に多く、特定の企業のECアプリから購入することは非常に少ない。そういった仮説があったことから、絞り込んだターゲット設定を行っていると萩山氏は語った。 アプリ導入後、ユーザー調査を行ったところ、予想通りヘビーユーザーが圧倒的多数だったそうだ。さらにLTVも計画通りアップしており、アプリ利用前と比較して10%超増加したという。 「ただ想定と1つ違ったのは、購入頻度が増加してLTVが向上すると予想していましたが、購入回数は上がらず購入単価が上がりました。おそらく、ホーム画面の目立つ場所に限定商品、セール商品への誘導口を掲載したことで、通常商品に追加してセール品も購入されたのではないかと考えています。ヘビーユーザーなので限定商品やセール商品を積極的に購入された」のだと述べている。

効果を上げるプッシュ通知の活用法

先ほどの話のとおり、毎日使うことを目的としたアプリではないため、プッシュ通知を打ちすぎるとユーザーの離脱につながってしまう。さらに、アプリのユーザープロフィールが分からず、誰にどのようなタイミングでプッシュを打てば効果が上がるのか分からないという課題もあって、Reproを導入したという。 例えば、ユーザープロフィールをもとにグループを作成し、その人に合った商品訴求を行った。具体的には、年齢が高く、累計購入回数が高い人には、年齢肌にあった高品質の商品を紹介。年齢が若く、累計購入回数が低い人には、ピンポイントの悩みに合ったものや、限定品を紹介といった感じだ。 また、ユーザーがある行動を行った時、プッシュ通知が打てる設定もできる。ファンケルでは、アプリダウンロードされた翌日、「ありがとうございます」というプッシュ通知を打った。それ以降は、ユーザーが嫌がらないタイミングで機能の紹介をプッシュ通知で行ったという。 「弊社のアプリはメディアアプリでもゲームアプリでもないから、ダウンロード直後の定着率向上は狙っていない。次回以降のお買い物時に役立つ情報を提供することを心がけている」という。 さらに、対象の商品を「お気に入り登録」しているユーザーを対象に、「お気に入りしている商品、残り数日でキャンペーンが終了するよ」とプッシュ通知で個別アプローチしている。ただし、条件を絞り込みすぎると、母数が少なくなって期待する効果が表れないため、どこまで絞り込むか考慮する必要があるという。

アプリは短期的な施策に向いている

今までのまとめとして、まだアプリを導入していない企業がいたらやるべきだと語る。「それはレスポンスの高いプッシュ通知がキーとなっていて、さらにアプリは短期的な施策に向いていると思います。例えばプッシュ通知から告知することで、売上に貢献することもできる。アプリを起動したユーザーにシンプルな購入フローを使っていただくことで、結果的にLTVを向上することも可能」だと語った。