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日本版Amazon GOを実現。トライアルHD 西川副会長が語る、AIを活用した未来の小売業とは?

 Post by MML編集部

「ITの力で流通を変える」をスローガンに活動しているトライアルは、2018年2月、福岡県・福岡市のアイランドシティに、スマートストアを導入した旗艦店をオープンさせた。トライアルはなぜITに力を入れているのだろうか。そして将来の流通業はどうなっていくのか熱く語った。

トライアルホールディングス 取締役副会長 グループCIO / ティー・アール・イー 代表取締役社長 西川 晋二氏

本記事は、11月28日に開催された「日経クロストレンド EXPO 2018」より、トライアルホールディングス西川氏の講演「IT・AIを融合させたスマートストアの取り組みについて」の模様をお届けする。

トライアルホールディングスは、福岡県に本社を置く、小売、ソフトウェア開発、物流、商品開発・製造を手がける企業。「スーパーセンター」と呼ばれる、衣食住に関わる商品をワンフロアに集約し、1か所のレジで会計する総合小売店舗を展開している。

「ITの力で流通を変える」をスローガンに活動しており、小売・流通業のフォーカスしたシステム開発に力を入れている。自動発注システムを自社開発し、ID-POSシステムなどの大規模データを契約されている240社のメーカーに提供し、社内でも分析や改題解決の糸口として利用されている。

ID-POSを活用したレシートクーポンの配信

トライアルホールディングスでは、お客様の購買を促進する新たな「リテールメディア」を構築している。それはレシートクーポン(トライアルではPPMと呼ばれているもの)から始まった。一般的なクーポンは、期間限定・地域限定で一斉にばらまく方式をとっているが、トライアルではデータベースを活用し、ID-POS分析から対象のお客様へ配信することで、効率の良い配信方法を実現している。

例えば以前、「替刃10倍ポイントキャンペーン」のクーポンを配信した。その対象者とは、既存ユーザーで男性化粧品の購入者。または、新規ユーザーで、男性化粧品の購入者、もしくはオーラルケアの購入者という、3つの条件に合致した人へ向けてクーポンを配信した。

約111万人の対象者のうち、店舗に来店された約62万人にクーポンを配信。そのうちクーポンが利用されたのは約8,600人だった。「クーポン利用率は少ないと思われるが、我々としては、新規購入者が約4割も獲得できたので、効果があった施策だと思っている」と語った。

PPMは具体的に、大きく3つの方法で取り組みを行っているという。1つは「カテゴリ新規」。新たにこのカテゴリで買ってくださるお客様に対して訴求する方法。2つ目は「ブランドスイッチ」。メーカーと組んで、ある一定の狙いをもってブランドスイッチを起こしていく方法。3つ目は「リピート」。再購入してもらうことを喚起する方法である。

AIを活用した新たなリテールメディア

これまでは人が判断してコンピューターに分析をさせ、ターゲットを抽出していた。これからはAIを活用して全て自動で行っていくという。調査によると、お客様が欲しい商品というのは、「来店前に決めている」わけではなく、「店舗内で決めている」というのが全体の約7~8割いることが分かった。それを実現したのが「スマートレジカート」である。

スマートレジカートは、トライアル専用のプリペイドカードをスキャンすると、カートが利用できる。購入したい商品があったらバーコードをスキャンすると、商品をカートに入れた状態になる。その時データベースでは、Amazonの協調フィルタリングのように自分にあったおすすめ商品が表示され、ポイント還元のクーポンが表示される。ボタンを押すとクーポンが利用できる仕組み。

リテールメディアで目指す姿としては、まずお客様が来店する前、アプリからクーポンを配信して来店を促す。店舗内でスマートレジカートを利用すると、クーポンが発行される。店内ではAIカメラでお客様を認識。お客様に合わせたサイネージ広告が放映される。買い物が終わって店舗に出ると、次回利用できるクーポンが発行される。

AIは第四次産業革命をもたらしてくれる

このような取り組みが始まった背景には「Amazon GO」の登場にあると西川氏は言う。そしてAIが第4次産業革命をもたらしてくれるだろうと、そのことは不可避だと睨んでいるという。そのことの現れとして、Google CEOのスンダー・ピチャイ氏は「AIは火や電気よりも重要である」と述べていた。

今後、流通業界にも大きな変革が起きるのではないかと考えている。現在「自動運転」が社会的な話題となっている。それが完了すると「自動運営」の時代に入るのではないかと西川氏は考えている。そして、大学教授や政府関係者と話をしているが、リテールAIのレベル5のような考え方を持っていなければいけないのではないかと語った。

具体的にはどういうことかと言うと、「消費者ニーズ」の部分では現在、人間の力で消費者ニーズを判断して購買につなげているが、今後はAIを導入することで、品揃え・価格・天候など複雑な要素を分析し、消費ニーズとマッチングして買い上げ点数を最大限に引き上げる取り組みを自動管理していく。

「店舗マネジメント」では、欠品や鮮度落ちについて、人の目や人の足だけでは完全に把握できなかったところを、AIを導入することで、売り場の状態を完全に把握。高い網羅性によって労働力の削減にもつなげると言う。

リテールAIのレベル5を実現すべく、福岡市のアイランドシティに旗艦店をオープンさせた。スマートレジカートにプリペイドカードをスキャンすると、AIカメラが人物を認識、商品をスキャンすると、属性とその商品を分析して、自分にあったクーポンを提示。近くのサイネージにもおすすめ情報が表示される。商品が選び終わったら専用レーンに進み、カートの画面上で決済が完了できる。

出典:流通ニュース

最後に「私どもはリテールAIで流通小売業のマーケティングの考え方を変えていきたい。そこからアジアや世界市場に向かって発信していけるようになりたい」と西川氏は語り、セミナーが終幕した。