アプリの失敗は3つに集約される。2700事例から分かったアプリを活用してビジネスを成長させるポイントとは?Repro平田氏

 Post by MML編集部
本記事はReproとApp Annie共催のイベント「小売アプリ最前線 ~顧客エンゲージメントを引き出すアプリの特徴とは~」より、第2部、Reproの平田 祐介氏による「事業成長につながるアプリの作り方」と題した講演の模様を紹介する。
Repro株式会社 代表取締役 CEO 平田 祐介氏

アプリは経験と勘で改善するものではない

Reproは全世界25か国、約2,700アプリに導入されているアプリマーケティングツールを提供する企業。提供しているサービスは、アクセス分析などユーザーがアプリをどのように利用しているのか重要な画面にKPIを設定してアクセスの状況を見るほか、例えば、商品をカートに入れたのにも関わらず、カゴ落ちしたユーザーがどのような状況でそうなったのか、実際にアプリの操作を動画として録画しており、アプリ担当者はその動画を閲覧することで、思わぬ課題を見つけることができる。 そのようにKPIがクリアーできなかったユーザーを対象に、「商品を購入した人は3割引」といった、カゴ落ちを救済する特別なクーポンをプッシュ通知やアプリ内メッセージを活用して配信して、コンバージョンを改善する機能がある。 前回のセッションで、アプリはダウンロード数よりも長く使っていただけるエンゲージメントが大事という話があったが、Reproでも、初回起動からどの機能を使っているユーザーは、アプリの継続利用が高いのかを調査する「マジックナンバー分析」が行える。例えば、マジックナンバー分析からユーザーが定着しやすい機能を見つけた場合、シンプルに考えて、初回起動でユーザーが通過する画面にその機能を移動すれば、継続率が増加しエンゲージメントが向上するわけだ。 結論として「アプリは経験と勘で改善するのではなくて、データを見ながら、どういうことをやっている人がアプリの価値を理解し、継続して利用しているのか、改善の方向性を考えながらやっていただくと効果が変わってきます」と平田氏は述べた。

多くのアプリを見て感じた「ありがちな失敗」

Reproはサービス提供のほか、アプリのコンサルティングも行っており、企業からアプリに関する相談をいただくことがあるという。今回は相談内容や2,700ものアプリデータを見て感じた「ありがちな失敗」事例を紹介した。 よくある失敗例の1つとして、「今やっている既存のものと提供価値が変わらないパターン」をあげた。例えば、会員証をアプリ化して紙のコストを削減しただけのアプリは、継続しないために失敗するパターンだという。「アプリだからどういう価値を企業として提供するのか考えてほしい」と平田氏は述べた。 2つめは「オリジナルキャラクターを作って多角展開するパターン」。流行っているものをいち早く提案したい、大手の広告代理店が行ってきた施策で見かけるが、成功した例は聞かないという。 3つめは「目的やKPIが不明確なケース」。このような企業は「売上・集客」をKGIとしたうえでKPIを設定しているところが多く、その結果アプリを運営する目的が不明瞭となっている。

アプリに必要な3つのコンセプト

非IT系の企業がアプリとどう向かい、どういうアプリを作れば失敗しないのだろうか。それらは3つしかないと平田氏は語る。まず1つめは「本業のリード顧客を創出することを目的としたアプリを作ること」。2つめは「本業で小売をやっているケースはアプリ上でも売る」、最後に「CRMチャネル的に、既存顧客に対して新たなタッチポイントを設けて、本業のリアル店舗へ帰すような目的を持ったアプリを作ること」。 さらに平田氏は「アプリは単一機能をベースとして、プロダクトマーケットフィット(PMF)を図ってください。そこでユーザーの評価が上がり、自然とダウンロードされる環境を作ってから欲を出してもいいのですが、初めのうちから『リードが取れて、さらにメディアの機能を持ったECアプリ』のようなマルチ機能のアプリを作ると立ち上げも大変ですし、ユーザーが理解してくれないパターンとなるので、1つに絞ったアプリを作りましょう」と重ねて説明した。 そしてアプリを作るうえでの注意点として「プロジェクトって、部門をまたいだ瞬間に物事が進まなくなることがあるので、構想フェーズの段階から、プロジェクトチームの中には IT部門やマーケティング部門のほかに、リアル店舗の現場部門を巻き込まないといけない」と平田氏はプロジェクトを円滑に進めるポイントを述べた。

プロダクトマーケットフィットを図って効果検証する

アプリを成長させるためには、プロダクトマーケットフィットを図ることが大事だと平田氏は語る。そして自社のアプリデータ、もしくはApp Annieを活用してベンチマーク先のデータを見るほか、ユーザー調査を行いながら客観的な数字で評価することが大事であるという。それらを3か月間行って、目標とするリテンションレートを超えてきたら、広告を打ってユーザー数を拡大したほうがいいと平田氏はアドバイスした。 最後に「成長期で重要なのは、LTVや顧客獲得単価になっているかという指標でという指標で見つつ、アプリ機能やコンテンツを使ってリテンションを伸ばせるのか実施していくことが重要なので、そこを意識していただきたい」と平田氏は話し、セミナーが終了した。