販促や集客、ブランディング戦略を読み解く専門メディアモバイルマーケティング研究所

成功事例から学ぶリテールメディアの活用法|広告主・小売企業が得た成果とは?

 Post by MML編集部

ネット広告の効果が見えにくくなってきた今、注目を集めているのが「リテールメディア」です。買い物の直前やその場で広告を届けられるこの仕組みは、ただの認知ではなく“購買行動”に直接つながるのが特長です。広告主にとっては成果が見えやすく、小売企業にとってはアプリなどを収益化できるチャンスにもなります。

この記事では、なぜ今リテールメディアが選ばれているのか、その背景から、実際に導入した企業の事例や成果までをわかりやすく紹介します。

まずは、こうした流れが生まれた背景を見ていきましょう。

※リテールメディアの基本を知りたい方はこちらもぜひご覧ください:

リテールメディアとは?メリットや成功事例をわかりやすく解説

リテールメディアの活用が進む背景

Web広告の世界ではここ数年で大きな変化が起きています。ターゲティング精度は下がり、効果測定も以前のようにはいかなくなりました。これまで主流だった手法が通用しづらくなる中、広告主たちは「本当に届く広告」を模索しています。そこで注目されているのが、リテールメディアです。実店舗やEC、アプリなど、実際の購買行動が発生する“直前のタイミング”で広告を届けるこの手法は、これまでの広告とは異なるアプローチで成果を生んでいます。

ここでは、そんなリテールメディアが注目されるようになった背景と、どんな価値をもたらすのかを詳しく解説します。

Cookie規制やIDFA制限で広告の精度が低下

かつては、ユーザーのWeb上の行動履歴をもとに広告を最適化する「リターゲティング広告」が主流でした。しかし今では、そうした手法の効果が徐々に薄れています。その大きな要因が、Cookie利用の制限とIDFA取得の難化です。欧州を中心にプライバシー保護の動きが強まり、各ブラウザがサードパーティCookieの制限に踏み切り、AppleもiOSのアップデートでIDFA取得にユーザーの明確な許可を求めるようになりました。これによって、従来は自動的に収集できていた行動データが取得できなくなり、ユーザーの興味関心を読み取ることが難しくなっています。

特にiPhoneユーザーは、IDFA取得を拒否する傾向が強く、アプリ広告のトラッキング精度も一気に下がりました。その結果、広告を届けたい相手に最適なタイミングで配信することが難しくなり、効果測定の面でも信頼性が揺らいでいます。これにより、広告主は従来型の配信手法ではROIを出しにくくなり、新たな打ち手を探す必要性に迫られています。リテールメディアの台頭は、こうした背景に強く支えられているのです。

購買直前の接点で広告できる強み

リテールメディアの最大の利点は、実際の「購買直前」に広告を届けられる点です。たとえば、ユーザーがドラッグストアのアプリを開いてキャンペーン情報を探している瞬間、あるいはECサイトで商品をカートに入れた直後のタイミング。こうした行動は、今まさに購入を検討しているサインとも言えます。この“今買うかもしれない”瞬間に広告を表示できるのが、リテールメディアの大きな魅力です。

こうしたタイミングでの広告配信は、ユーザーにとっても自然で受け入れられやすく、無関係な場面で出てくるバナー広告よりもはるかに高い反応が期待できます。さらに、購買履歴や来店履歴、アプリ上の行動データといったファーストパーティデータと連携することで、ユーザーごとに異なる最適な広告を出すことも可能です。たとえば、過去に購入した商品に関連する別の商品をレコメンドすることで、クロスセルやアップセルのチャンスも広がります。

このように、リテールメディアは「広告を見るだけで終わらない」、つまり購買行動に直接つながる広告体験をつくれるのが強みです。CVR(コンバージョン率)が高く評価されているのも、この仕組みの合理性と実効性に裏打ちされた結果です。

小売アプリの広告枠が新たな収益源に

これまで多くの小売企業にとって、自社アプリは「情報を届けるためのツール」でした。クーポンやキャンペーン情報を配信することで、店舗への来店や売上を促進する役割を担っていたわけです。ただし、こうした活用法では、アプリ自体が直接収益を生むわけではなく、あくまで販促の一環という位置づけにとどまっていました。

ところが最近では、アプリの中に広告枠を設け、そこに他社の広告を表示することで、新たな収益源として活用する動きが広がっています。たとえば、食品メーカーや日用品メーカーが、小売企業のアプリ内にバナー広告を掲載し、そこからクリックや購買につながる仕組みを作っています。広告主は購買意欲の高いユーザーにリーチでき、小売側はその広告から広告収入を得ることができます。

この取り組みによって、小売アプリは「売上を支えるための道具」から「自らが収益を生むメディア」へと進化しつつあります。アプリ開発や運用にかかるコストも、広告収入である程度カバーできるようになり、ビジネスモデルとしての持続性も高まります。広告主と小売の双方にとってメリットのある構造が生まれ、アプリの存在価値も大きく変わってきています。

【広告主側の事例】課題と成果

広告に予算を投じても、期待するような売上につながらない。そうした悩みを抱える広告主が少なくありません。商品を知ってもらうだけでは不十分で、「いつ、どこで、誰に届けるか」がますます重要になっています。特に、購買行動に直結する広告接点を見極めることが、マーケティング戦略の成否を分ける時代です。リテールメディアは、この点で大きな可能性を秘めています。

ここでは、従来型の広告手法で見えづらかった課題と、それをリテールメディアがどう補完しているのかを整理して紹介します。

マス広告では購買に結びつかない

テレビCMや新聞広告といったマス広告は、幅広い年齢層や地域に情報を届ける手段として今も活用されています。ただし、その情報が「買う」という行動に結びついているかというと、必ずしもそうではありません。たとえば、興味を持ってくれたとしても、購入のタイミングと広告のタイミングがずれていれば、結局買わずに終わってしまうことも多いのです。さらに、購入に至ったかどうかを追いかけづらく、効果を可視化しにくいという課題もあります。

一方で、リテールメディアは購買行動の直前に広告を届けられるのが特長です。ECサイトで商品を検索している時、公式アプリを開いてクーポンを探している時、すでに購買モードに入っているユーザーに対して広告を出せるため、その場で手に取ってもらえる可能性が高まります。アプローチのタイミングが正確であるほど、広告は単なる認知獲得ではなく、購買の後押しにつながる“実用的なツール”として機能するようになります。

若年層への訴求が届かない

10代から30代の若年層は、テレビをあまり見ず、紙媒体にもほとんど接触しない傾向があります。彼らはスマートフォンを通じて情報を得て、SNSやアプリ内のコンテンツで興味のある商品を見つけています。つまり、マス広告では接点そのものが生まれにくく、いくら広告を打ってもそもそも見られていないという状況が起きています。これは、広告主にとって非常に大きな機会損失です。

リテールメディアは、若年層が日常的に利用しているスマートフォンアプリやECサイト上で展開されるため、自然な形で目に入りやすくなります。たとえば、よく利用するドラッグストアのアプリに商品情報が表示されたり、買い物中にレコメンド広告が表示されたりすることで、無理なく情報に触れてもらうことが可能です。SNS広告のような「流れてくる広告」とは違い、購買と結びついたタイミングで接触できるため、広告に対する抵抗感も少なく、認知から購買までの距離が縮まります。

商品の魅力が十分に伝わらない

限られた尺やスペースの中で商品を紹介するのが従来の広告です。しかし、複雑な機能やストーリー性を持つ商品ほど、15秒のCMや1ページの雑誌広告では伝えきれないことが多々あります。視聴者や読者に印象は残っても、具体的に「どんな商品か」はわからないまま終わってしまい、結局購入にはつながらないというケースも少なくありません。

リテールメディアでは、商品の詳細情報や使い方の動画、他ユーザーのレビューなどを組み合わせて掲載できるため、ユーザーが“理解したうえで選ぶ”という行動を取りやすくなります。たとえば、アプリ内で使い方の解説動画を視聴した後、そのままクーポンが表示され、購入に進むといった流れも自然に設計できます。ユーザーが納得して買える状態をつくることで、満足度の高い購買体験につながり、リピート購入の促進にもつながります。伝えたい情報をしっかり届けるという点でも、リテールメディアは非常に有効な手段となっています。

【リテール(小売)側の事例】課題と成果

アプリのダウンロード数がどれだけ多くても、それだけで施策が成功したとは言えません。本当に重要なのは、そのアプリが日々使われ、売上や顧客満足度の向上につながっているかどうかです。多くの小売企業では、アプリの“ダウンロード後”に課題を抱えており、「継続利用」「収益化」「効果の可視化」といったポイントが大きなテーマになっています。リテールメディアの導入は、こうした課題をクリアする新たなアプローチとして注目されています。

ここでは、小売企業が直面する課題と、それに対するリテールメディアの活用例を紹介します。

アプリDL後のアクティブ率が低下している

アプリをリリースすれば、一定数のダウンロードは見込めます。キャンペーンを組んだり、店舗で登録を促したりすれば、一時的にインストール数は伸びるでしょう。ただし、問題はその後です。ユーザーがアプリを開かなくなり、通知も見なくなり、いつの間にか使われなくなってしまう。そんな“アプリの死蔵化”に悩む企業は少なくありません。

リテールメディアは、こうした状況に変化をもたらします。たとえば、アプリ内で期間限定の広告や特典を配信することで、ユーザーが「今日アプリを開く理由」を作ることができます。さらに、購入履歴や興味関心に応じたパーソナライズ広告が表示されるようになれば、情報を受け取る側にもメリットが生まれます。

アプリが“売り場の延長線上にある存在”として機能するようになれば、ユーザーとの接点も自然と増えていきます。こうした日常的な利用の積み重ねが、アプリの価値を引き上げ、長期的な関係づくりへとつながります。

販促通知だけでは収益化できない

多くの小売企業は、アプリを通じてプッシュ通知を送ることで来店や購買を促しています。確かに、タイムセールやクーポン配信など、即効性のある施策としては有効です。しかし、通知を送った回数や開封率だけでは、アプリそのものの収益性は判断できません。「販促ツール」としては機能しても、「利益を生む仕組み」としては限界があるのです。

そこで、注目されているのがアプリ内に広告枠を設けるという取り組みです。アプリの一部スペースに外部メーカーの広告を表示し、クリックや閲覧に応じて広告収入を得る仕組みを導入することで、アプリ自体をメディアとして活用できます。これは単なる販促を超えた“収益モデル”の構築につながります。

たとえば、ドラッグストアのアプリにスキンケア商品の広告が表示され、ユーザーがその情報をきっかけに商品を購入した場合、小売側は広告収入だけでなく、売上も得ることができます。通知を送って終わりではなく、「情報提供」から「行動喚起」、そして「収益化」までを一貫して設計できるのが、リテールメディアの大きな利点です。

アプリのKPIが不明確で予算が確保できない

アプリ運用においては、成果をどう測るかが非常に重要です。しかし実際には、「アプリがどれだけ売上に貢献しているか分からない」「具体的な数値が見えず、改善の方向性も定まらない」といった声が多く聞かれます。このようにKPIが曖昧だと、経営層に施策の価値を伝えづらく、予算確保も難しくなってしまいます

リテールメディアを導入することで、アプリにおける広告閲覧数、クリック数、広告経由での購買行動など、具体的な数値をもとに成果を可視化することが可能になります。たとえば、「この広告を見たユーザーのうち何%が店舗に来店したか」「広告経由の売上はいくらか」といったデータが取れるようになれば、アプリ施策の説得力が一気に増します。

これにより、アプリが単なる販促ツールではなく、数値で成果を証明できるマーケティング資産として認識されるようになります。KPIが明確になることで、アプリに対する社内の理解も深まり、将来的な投資や拡張施策の議論もしやすくなっていくのです。

成果として得られた具体的数値

リテールメディアという言葉を耳にする機会は増えていますが、最も気になるのは「本当に成果が出ているのかどうか」という点です。

そこでここでは、実際にリテールメディアの活用に取り組んだ企業の具体的な事例を紹介します。導入の背景や施策の内容だけでなく、その結果としてどのような数値が得られたのか、変化がどこに現れたのかを見ていくことで、より実感を持ってその価値を理解できるはずです。

事例1:Amazon

Amazonは、ECの巨人であると同時に、近年では広告事業でも急成長を遂げている企業です。特に注目されたのが、2021年に初めて広告収入を決算資料で開示したことです。公開された数値によれば、同年第4四半期の広告収入は前年比32%増の97億2,000万ドル、通年では311億6,000万ドルに達しました。この金額は、同社の実店舗売上(170億8,000万ドル)を超え、Amazon Primeなどのサブスクリプション収益(317億7,000万ドル)と並ぶ規模にまで成長しています。

データ自体は少し前のものではありますが、それもそのはずで、この時期がAmazonが広告収入を初めて公式に公表したタイミングでした。これまで秘匿されていた収益構造の一端が明らかになったことで、業界内に大きなインパクトを与えました。

Amazonの広告が強い理由は、商品検索や購入直前の場面に広告を表示できる「高い文脈性」にあります。さらに、同社はAppleのIDFA制限などの影響をほとんど受けず、ファーストパーティデータを活用したマーケティングで優位性を発揮しています。今後もこの分野の成長は継続すると見られており、リテールメディアの最先端を走る事例として注目されています。

事例2:マツモトキヨシ

マツモトキヨシは、店舗とデジタルの融合に積極的に取り組んでいる企業です。なかでも注目を集めているのが、Googleの広告ソリューションを活用した「Matsukiyo Ads」という共同販促モデルです。これは、メーカーの動画広告などをYouTubeやディスプレイネットワークに配信しつつ、マツキヨの会員アプリやポイントカードと連携させることで、広告から来店・購買までの行動を可視化する仕組みです。

たとえば、マンダム「ギャツビー ボディペーパー」の動画広告キャンペーンでは、広告を見たアプリ会員のうち、約4%が実際に商品を購入するという高い成果を記録しました。施策前と比べると176.7%の伸長という結果となり、特に冷夏で全体の販売が伸び悩むなかでも、アプリ経由での購買が好調だったのは印象的です。

また、アンファー「スカルプD メディカルミノキ5」のケースでは、広告を配信した地域とそうでない地域で売上に35%の差が生まれ、広告の影響力を裏付ける結果となりました。単に広告を出すだけでなく、来店データと紐づけてPDCAを回す仕組みができていることが、成果の理由といえます。

事例3:トライアルHD

トライアルHDは、リアル店舗とデジタルを融合させた「スマートショッピング体験」を構築していることで知られています。特に注目されているのが、実店舗のカートに取り付けられたタブレット端末を使った広告配信の仕組みです。このスマートショッピングカートでは、商品をスキャンすると、その場で関連商品のクーポンや広告が配信される仕組みが組み込まれています。

たとえば、牛乳を購入した顧客に対して「カゴメ ラブレ(乳酸菌飲料)」のクーポンを配信したところ、他のタイミングで配信した場合と比較して、売上に明確な差が出たと報告されています。この事例は、購買履歴と商品の相関性を活かした“行動ベース広告”の有効性を示す好例といえます。

このような施策を支えているのが、トライアルが保有する270億件以上のID-POSデータです。これにより、どの商品の組み合わせが購買につながりやすいか、どのタイミングでどの広告を出すべきかが緻密に分析され、リアルタイムで反映されています。店舗という物理空間の中で、デジタル広告をユーザーごとに最適化するその手法は、“次世代の店内マーケティング”として注目を集めています。

まとめ

Cookie規制や広告効果測定の難しさが増す中で、リテールメディアは、広告主と小売の両方にとって信頼できる新しい選択肢になりつつあります。

購買直前のタイミングで、ユーザーの行動データを活かして広告を届けられるこの手法は、「売上につながる広告」を実現できる点が大きな魅力です。今後、より多くの企業が導入を進めていくと考えられます。

私たちが提供するARUTANAは、そうしたリテールメディアの価値を最大限に引き出すための広告配信プラットフォームです。複数の小売企業の公式アプリを横断して広告を配信できる、国内で唯一の仕組みとしてご好評いただいています。

現在、月間アクティブユーザー(MAU)は約3,600万人、対象店舗は約47,000店舗に拡大しています(※2025年4月時点)。

リテールメディアを本格的に取り入れたい、成果の出る施策を始めたいという方は、ぜひ下記からお気軽にご相談ください。

ARUTANA

ModoleApps2.0 累計1億ダウンロード突破! 自社アプリに課題を感じている方、独自の機能・デザインを開発したい方はお気軽にご相談ください。

まずはお気軽にご相談ください。

アプリ開発の相談
資料ダウンロード サービス詳細資料を
ダウンロード