販促や集客、ブランディング戦略を読み解く専門メディアモバイルマーケティング研究所
【調査レポート】利用者は「50代以上」が6割。市区町村・自治体が提供する「地域DXアプリ」の実態調査
株式会社DearOneはこのほど、市区町村・自治体が提供する各種「地域DXアプリ」を日常的に利用している利用者を対象に、同アプリの普及と活用に関する調査を実施しました。
地域DXアプリとは、地方自治体が地域住民や観光客への情報発信を目的に運営しているアプリの総称です。防災・観光・諸手続きなどの情報発信だけでなく、クーポンやスタンプラリーなどのアプリならではの機能を盛り込むなど、各自治体が工夫を凝らしたアプリを提供しています。
調査背景
「自治体のアプリ」は誰にどのくらい使われているのか?
市区町村・自治体が提供する各種「地域DXアプリ」を日常的に利用している利用者を対象に、同アプリの普及と活用に関する調査が行われました。
地域DXアプリとは、地方自治体が地域住民や観光客への情報発信を目的に運営しているアプリの総称です。防災・観光・諸手続きなどの情報発信だけでなく、クーポンやスタンプラリーなどのアプリならではの機能を盛り込むなど、各自治体が工夫を凝らしたアプリを提供しています。
この調査は、地方自治体での日常生活において地域DXアプリが果たす役割や、住民の利用状況・利用メリット等を把握することを目的としており、地域の活性化に資するアプリの改善に向けた示唆を得ることが狙いです。
調査結果 – サマリ
利用期間「1年未満」は23%以下で、長期的に利用される傾向も
地域DXアプリの利用期間に関しては、利用者の約23%が「1年未満」、約27%が「1年〜2年未満」、約24%が「2年〜3年未満」という結果が得られました。直近3年以内に利用し始めたユーザーが多いことから、直近でのデジタルシフトがかなり加速していることがわかります。
50代以上の利用者が約63%と高齢の利用者が多い
地域DXアプリの利用者の属性については、50代の利用者が約21%、60代以上の利用者が約42%を占めることがわかりました。一般にITに弱い人も多いと考えられる高齢の利用者が多いことからも、地域DXアプリが幅広い年齢層に受け入れられていることがわかります。
アプリをインストールした目的は「防災情報」が約45%と顕著
地域DXアプリをインストールした目的として最も多いのは「防災情報」であり、全体の約45%がこの目的でアプリをインストールしていました。次に多い目的は「イベント情報」の約35%で、次いで「ごみカレンダー」「クーポン」(いずれも約21%)、「地域通貨・商品券」(約20%)が利用目的として挙げられました。
前述の利用者の年齢層と照らし合わせて考えると、比較的年齢が高い方が万が一のための防災情報などを求めてアプリを利用していることがわかります。一方で、アプリクーポンの利用や、地域商品券の利用など、地域の活性化に寄与する機能にも一定のニーズが存在していることがわかりました。
実際に利用されているアプリ、便利と感じる機能とも「防災情報お知らせ」「イベント情報・地域ニュース」がそれぞれ3割以上
実際に利用されているアプリは、防災情報・イベント情報・地域ニュースのお知らせを含めた「総合アプリ」が約43%、「防災・防犯アプリ」が30%でした。また、便利だと感じる機能は、「イベント情報・地域ニュース等お知らせ」が約38%、「防災等、安心・安全関連情報のお知らせ」は約37%であるなど、ほぼ上述のアプリをインストールした目的通りの利用状況であることがわかりました。
調査結果 – 詳細
回答者属性
今回のアンケート回答者240人(地域DXアプリを「使ったことがある」という条件でスクリーニング済み)の属性は以下の通りです。
地域DXアプリ利用者の年齢
利用者の年齢については、「60代以上」の利用者が41.7%、「50代」が20.8%、「40代」が18.8%、「30代」が11.7%、「20代」が6.7%、「10代」が0.4%でした。
地域DXアプリ利用者の居住地域
利用者の居住地については、「関東地方」が43.3%、「中部地方」が14.2%、「近畿地方」が22.1%と、三大都市圏を中心にさまざまな自治体の居住者から回答が集まりました。
地域DXアプリをインストールした目的
地域DXアプリをインストールした人の大多数は、防災情報をはじめ、イベントやニュースなどの情報収集を目的としていたことがわかりました。「防災等、安心・安全関連情報のお知らせを受け取るため」と回答した人は45.0%、「イベント情報・地域ニュースなど情報収集のため」とした人は35.4%も存在します。
地域DXアプリの利用期間
利用期間を見ていくと、「1年〜2年未満」(26.3%)、「2年〜3年未満」(24.2%)、「3年〜4年未満」(9.2%)、「4年〜5年未満」(3.8%)、「5年以上」(13.8%)と、大多数が長期間にわたりアプリを利用していると回答しました。
2年以上継続利用している人が半数以上いる計算になります。また「1年未満」しか利用していない人は22.9%に留まりました。
利用されている地域DXアプリの種類
インストール時の目的としては「防災関連情報」が圧倒的だったのに対し、実際に利用されているのは防災・イベント・ニュースなどの情報提供を含めた「総合アプリ」が最も多いです(42.5%)。
次いで、「防災・防犯アプリ」(30.0%)、「ごみ出し管理用アプリ」(22.9%)、「地域住民向けクーポン・割引サービス等配信用アプリ」(19.6%)、「ウォーキング等健康管理用アプリ」(15.0%)、「地域通貨決済等金融アプリ」(7.1%)、「その他」(6.3%)となっており、災害大国日本にあって防災関連アプリへの需要はやはり高いと言えるでしょう。
一方、コロナ禍後、全国の観光地にインバウンド観光客の姿が戻り、数々の行事・イベントが復活する中でも「観光アプリ」(5.4%)の需要が伸びている傾向は見受けられませんでした。
便利だと感じる機能
利用者が便利だと感じる機能については、「イベント情報・地域ニュース等お知らせ」(37.9%)、「防災等、安心・安全関連情報のお知らせ」(36.7%)、「ごみ収集日カレンダー」(22.1%)、「アプリクーポン・スタンプカードその他特典」(16.7%)と、ほぼインストール時の目的と合致する結果となっています。
利用者がおおむね自身の目的通りにアプリを使えていると考えると、前述のように大部分の利用者の長期利用につながっているのも頷ける結果です。
不満だと感じる点
他方、利用者が不満を感じている点は、「その他」(28.3%)、「使いたい機能・クーポンがない」(23.3%)、「情報が古い/少ない」(18.3%)などとなっており、地域DXアプリにはまだまだ改善の余地が多いことがうかがえます。
「どこに何があるかわかりにくい」(22.1%)、「通知が多過ぎて煩わしい」(15.0%)、「画面が見づらい」(14.2%)は、利用者をアプリから遠ざけてしまいかねない典型的なパターンでしょう。
ちなみに、「地域通貨や商品券をうまく使用・決済できない」(5.4%)などの、アプリの主要機能にまつわる致命的な欠陥に関する意見も見受けられました。
本調査からの提言
高齢の利用者が地域DXアプリを長期利用している。高齢者の見守りや地域活性化への活用を
地域DXアプリ利用者の約6割は「50代以上」。また、その約8割が1年以上継続利用しており、2年以上でも51%、5年以上の利用者も少なくなく13.8%にも上ります。
一般にITに弱いと言われる高齢者が長期にわたって利用している地域DXアプリには、活用に向けた潜在的可能性が多く眠っていると考えられます。
例えば、防災機能と組み合わせた高齢者の見守り機能などによる災害時の避難誘導対応や、健康管理機能と組み合わせた地域健康診断の促進、そしてウォーキング/体操・スポーツイベント/コンサート/句会・吟行など大勢が集まる催しと連携しての、地域活性化や独居老人問題の解消など、さまざまな活用方法の可能性があるでしょう。
利用者の目的と、実際に使われているアプリ・機能にミスマッチはない。機能の磨き込みが今後の差別化のカギ
一方、利用者のインストール時の目的と便利だと感じる機能には相関があり、地域DXアプリは今のところ、想定外の使い方を期待されているわけではないとも言えそうです。
一部の地域を除き、まだまだ普及が進んでいるとは言えない地域DXアプリは今後徐々にその数を増やしていくことが予想され、利用者の想定・期待する機能をいかに磨き込んでいくかが、今後の差別化のカギになると考えられます。
ただし、最も多く利用されているアプリは、主要機能が必ずしも特化されていない「総合アプリ」(42.5%)であるため、そこに汎用化やさまざまな活用方法につながる機能搭載の余地があるとも言えるでしょう。
地域DXアプリに特有の不満は少ない。一般的なアプリの欠点を改修し、さらなる利用者増につなげよ
利用者が不満を感じている点は、「その他」(28.3%)が最も多く、次いで「使いたい機能・クーポンがない」(23.3%)、「どこに何があるかわかりにくい」(22.1%)、「情報が古い/少ない」(18.3%)、「通知が多過ぎて煩わしい」(15.0%)、「画面が見づらい」(14.2%)と、あらゆるアプリに共通するような欠点・不便が挙げられました。
地域DXアプリに特有の不満は、「地域通貨や商品券をうまく使用・決済できない」(5.4%)だけでした。そもそも地域DXアプリの利用者は高齢者が多く長期利用する傾向があり、特に「防災情報・イベント情報・地域ニュース」の目的が多いとわかった今、一般的なアプリの改修やブラッシュアップをすればより多くの利用者増が見込めるというのは、新規参入を考える都道府県・自治体や、各種サービスを提供する企業にとって朗報といえるでしょう。
まずは愚直に良いアプリを開発し、利用者が求める機能を徹底的に磨きこむ。そうして初めて、地域活性化や町おこし・地域おこしにつながるさらなる地域DXアプリのポテンシャルが開花することが期待されます。
地域住民の約1割が利用、平均アクティブ率は60%
今回とは別の調査の結果、地域DXアプリの利用率は人口対比9%、つまり地域の住民のうち約9%が利用していることが明らかになっており、まだまだ普及の伸びしろが大きいことが地域DXアプリの特徴です。
また、利用者の平均アクティブ率は60%と、利用者の多くがアプリを積極的に活用していることもわかっており(いずれも当社調べ)、前述の利用期間の長さなどに加え、住民へのサービス拡充として新規アプリ開発・提供を考える市区町村や自治体にとって、ポジティブな条件の揃った地域DXアプリは、業界の「ブルーオーシャン」であるといっても過言ではないでしょう。