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マクドナルド、アンケートアプリKODOインタビュー。開発のきっかけは、お客様の心の声を理解するため

 Post by MML編集部

店舗運営は順調に売上を達成し、順風満帆に進んでいった。しかし、ある日を境に客足が軒並み減少していった。 まわりを見ても競合店舗がないのに、どうしてこんなことになったのか分からない。 企業の気持ちとは裏腹に、お客様はわずかな理由から店舗へ足が遠のいてしまいがちである。

マクドナルドでは、お客様基準でアンケートに回答し、店舗を評価する「KODO(コド)」アプリを提供している。 今回、導入した背景や苦労した点、改善事例、今後の目標について、マクドナルドの一瀬 竜彦氏に話を伺った。(聞き手=編集部 矢野 祐一)

日本マクドナルド株式会社 コミュニケーション本部 PR部 一瀬 竜彦氏

――「KODO」アプリについてお願いします。

一瀬:「KODO」は、実際に店舗をご利用いただいたお客様から、来店時の感想や評価をアンケート形式でご回答いただけるアプリです。 アンケートに答えていただいたお客様には、翌日使えるクーポンを提供しています。 KODOは2015年に導入して以来、約250万件ダウンロードされまして、累計で1,000万件ものアンケートの回答をいただいております(2018年5月現在)。

お客様は決められた項目から、5段階評価を付けるという形式以外に、フリーコメントで感想を入力できるようになっていますので、こういうところが良かったという、お褒めのお言葉をいただくとこともありますね。

また、お客様が入力された内容は、店舗ですぐに確認することができるようになっていますので、対応できるものに対してはすぐに対応して、改善していくことができる点がメリットです。

そのほか、店舗では自店舗のそれぞれの項目に関して、これまでの傾向を見ていくこともできますし、自分たちが所属している店舗エリアの平均値と比較して、傾向の分析などもできます。

管理画面では、自店舗へ向けて回答されたお客様の年齢層や性別、属性、総合満足度、ホスピタリティ(接客)、清潔度、品質といった項目の現在の評価状況や過去の傾向も見られます。 また、自店舗が所属するエリア(約10店舗)の傾向などと比較ができるようになっています。

――KODOアプリを作ろうと思ったきっかけは何ですか?

一瀬:マクドナルドでは、常にお客様からの声を伺って、お客様が店舗にどんな期待をされているのか確認して、その期待を超える店舗体験をご提供していく、ということに取り組んでいます。 それが一番の目標です。

それまで、お客様サービス室へのお電話やメールでのご意見や、マクドナルドのなかで、店舗の評価や店舗QSC(品質、サービス、清潔さ)の確認を行っていたのですが、実際、お客様がどういったところを評価し、どのような感想を持たれているのかを、お客様から直接多くの声を伺えるようにしたいと思って、このアプリを開発しました。

わざわざ電話するまでもないけど、伝えないことはある

――KODOアプリが誕生する以前はどうされていたのですか?

一瀬:今も行っているのですが、それぞれのエリアを担当する「オペレーションコンサルタント」がさまざまな項目について店舗のチェック・確認というものを行っています。 それぞれにマクドナルドの基準がありまして、例えば商品を提供させていただくまでのスピードがどれくらいか、商品の温かさや美味しさなど、細かいところまでチェックしています。

ただ、マクドナルドの社内基準での評価だけではなく、実際に利用するお客様からお声をいただいて、お客様のニーズにすばやく対応していくことが必要だろうと思っていました。 これまでのシステムを残しつつ、新たにお客様から直接お声を伺えるものとしてKODOアプリが誕生したのです。

また、お客様サービス室へわざわざ電話するほどでもないけれど、店舗に伝えたいことがあるということはあるでしょうし、お客様サービス室にいただいたお客様の声は氷山の一角だという認識がありました。 その点でもKODOアプリから気軽にアンケートを回答できるというのは良いと思います。

2年間の開発を経てローンチ

――KODOアプリを開発された時、苦労した点はありましたか?

一瀬:こういったアンケートですので、より多くのお客様に答えていただくことが重要になってきます。 お客様が回答しやすいこと、そして、店舗の改善につながっていく質問をどのように作っていくのか、これが大変でした。

ご意見を多くいただくためには、お客様が見やすいレイアウトにしまして、これも何パターンかテストを繰り返しました。 アプリ開発は約1年かけました。 その後、一部エリアで約1年間テストを行い、全国ローンチとなりました。 トータルで開発に2年かかっています。

テストに参加されたフランチャイズオーナーからのご意見や、実際にご利用されたお客様のご意見も参考にしながら、活用しやすいサービスをどのように作っていくのか、試行錯誤を繰り返しました。

――KODOアプリを公開後、どんな告知をされましたか?

一瀬:より多くのお客様が回答されることで、店舗も具体的な改善項目が見えてきます。 そこで、トレイマットや店内に貼るシールでの告知のほか、カードサイズのPOPを作って配布したり、クルーと呼ぶアルバイトスタッフが客席のお客様に「よろしかったら、ご回答いただけませんか?」とアンケートのご利用を促したりしました。 その結果、お客様とのコミュニケーションも増えてきました。

お客様がアンケートに答えてくださると、店舗ですぐに確認ができます。 その内容をもとに改善につなげていくことができますので、アンケートにご意見をくださったお客様が、次回ご利用いただいた際に改善されていると、「自分がアンケートに書いたことが改善されていて良かった」という声もいただくことがあります。

従業員の視点とお客様の視点は、必ずしもイコールではない

――いただいたご意見から改善した事例はありますか?

一瀬:例えば、席に余裕がない店舗ではお荷物を置く場所が無いことがあります。 カバンを置くためのカゴが欲しいというご意見をいただき、早速ご用意させていただいた店舗もあります。

また、最近では、ご注文口と商品のお渡し口を分ける店舗が増えてきているのですが、カウンター前でどう並んだらいいのか分からないというご意見をいただき、地面にラインを書いて分かりやすくした店舗もあります。

我々が店舗を見ている視点と、実際にご利用いただいたお客様の視点というのは必ずしもイコールではないですね。 どうしても働いていると、全体的にやっているつもりになるのですが、お客様にとってはご利用いただいたその時、目についたものが全てですので、たまたまだとしてもそこにゴミが落ちていたら汚いと感じられるわけです。つまりお客様にとってはその1回が全てになるということです。

ある店舗では、店長が「自分の店舗は、清潔度にすごく自信がある」と思っていたのですが、実際、KODOからのご意見は厳しい事が書かれておりまして、その格差に驚いて、何が悪いんだろうと従業員を交えて考えました。 そして、お昼の忙しい時間帯にフロアーに清掃専門のクルーを配置したのですが、それでも評価の改善がされなかった。

実は、忙しい時間が終わった後で、お客様がゆったりとされている時に、汚れが目に入ることがあったそうです。 そういう時間帯にも客席にクルーを配置することで、お客様の満足度が改善されたという例もありました。

やはり、お食事を召し上がっていただく環境ですから、綺麗でなければいけないですし、お客様目線に立った店舗運営を考える非常にいいきっかけになっていると思いますね。

――アンケートアプリだからこそ、不安もあったのではないですか?

一瀬:KODOアプリが「苦情アプリ」になるのではないかと、不安に思った者もいたようです。 でもフタを開けてみたら、厳しいご意見よりお褒めの言葉を多くもらえました。 また、厳しいご意見についても真摯に対応することによって、お客様との関係の改善や店舗の成長へと繋がり、会社全体の満足度が向上できると思っています。

やはり、やってよかったと思っています。 お客様のコメントはすごくありがたいことで、マクドナルドに対して期待を寄せていただいているからこそのご意見ですので、宝として一つひとつ真摯に対応すべきだと思っています。

店舗の利用頻度が高いお客様がKODOを利用

――店舗を利用する方とKODOアプリを利用する方に違いはありますか?

一瀬:KODOアプリの男女比はほぼ半数ですが、わずかに女性が多いです。 年齢層では30代、40代が比較的多く、20代と50代が同じくらいの割合です。 この年齢層を見る限り、それほど大きな分布の差はないと思います。 ただ、KODOアプリを利用される方は、比較的店舗の利用頻度が高いお客様だろうと考えています。

KODOアプリからアンケートを入力すると、次回以降利用できるクーポンが発行される仕組みになっています。 それが翌日配信されますので、次回も店舗をご利用いただけるきっかけになっているかもしれませんね。

――お客様によっては、その日にクーポンを出して欲しいと思っている人もいますが、翌日に出そうと思った理由は何ですか?

一瀬:お客様の生の声をお伺いすることが、このKODOアプリの目的です。 クーポンがすぐに使える仕組みですと、実際に店舗を利用されないままアンケートに回答されるということも考えられます。 実際に店舗をご利用いただいて、ご回答いただいたお客様に「お礼」という形でご提供しておりますので、その翌日からご利用いただけるクーポンにさせていただいています。

フリーコメントがQSCを向上させる

――今後の目標についてお願いいたします。

一瀬:現在も1店舗につき月間100件くらいご回答いただいていますが、これはもっとお客様にご回答いただくことによって、QSCの向上につながっていくと思っていますので、より回答しやすいアプリにしたいと思っています。

また、フリーコメントが重要だと思っていますので、 よりお客様が入力しやすく、コメントしたいと思うような仕組みやレイアウトに変えていきたいと思っています。 具体的な内容については検討中ですが、店舗の分析・改善に繋げやすいようにしたいと思っています。

また、マクドナルドでは2020年に向けて、全店売上高 年平均5%以上成長、営業利益と経常利益の伸び率 年平均10%以上を目指していきます。

「最高の店舗体験を提供していく」ために、利便性や我々の店舗の基本であるQSC&V(品質、サービス、清潔さ&価値)をいかに良くしていくか、そして、ご利用していただいたお客様にご満足いただいて、再来店につなげていくか、もしくは、周りのお客様と一緒にお越しいただくよう薦めていただけるか、ここが我々のビジネスが成長するための重要なところだと思っています。

そのため、KODOアプリを通じて、より多くの声を伺い、店舗QSCの改善、そして、お客様の利便性、満足度のさらなる向上につなげていくことが今後の目標です。

――どうもありがとうございました。