販促や集客、ブランディング戦略を読み解く専門メディアモバイルマーケティング研究所
【保存版】無料で使えるスーパーマーケット公式アプリ60社を徹底比較

目次
開く
なぜスーパーマーケット公式アプリが増えているのか?
1.折込チラシへの依存と効果の低下 最初に、食品スーパー業界の販促の現状について、簡単に解説をしてみたいと思います。 これまで食品スーパーの販促予算の中で最も多くを占めていたのは新聞折込チラシであったと考えられます。その費用負担はスーパーの運営経費のうち地代・家賃に次ぐ2位とも言われている他、船井総研さんのコラムには地方の平均的な規模のスーパーが折込チラシにかけている年間のコストが3,000万円と紹介されるなど、薄利な食品スーパーにとって非常に大きい費用負担になっている実態が分かります。 しかしながら近年の新聞購読率低下により、折込チラシの費用対効果低下が懸念される状態になってきました。総務省が2019年9月に公開した「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、新聞購読率は20代で1.2%、30代でも3.0%程度と言われており、特に若い世帯に対するリーチが十分に期待できない状況が懸念されています。
情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査
2.電子チラシサービスによる代替模索 そのような中、各社は折込チラシの次の販促手段を模索し始めています。代表的なものとして、凸版印刷のシュフーに代表される電子チラシサービスの展開が挙げられるでしょう。この分野には他にも、ニフティのシュフモやクックパッドの特売情報など、業種を問わず多くの企業が参入しており、店舗側の利用も徐々に一般化しつつあります。
シュフーチラシアプリ
しかし、電子チラシサービスの掲載費用も、シュフーの場合で1アクセスあたり10円(※スタンダード型メニューの場合)と、紙のチラシと変わらないコストがかかります。
『「電子チラシお届けサービス」のご紹介』より抜粋
成果報酬型である点は折込チラシよりメリットがあるものの、決して安くない費用負担であると言えるでしょう。 3.自社ブランドアプリの登場-GUではチラシをほぼ廃止 それらの課題を解決する手段として、「自社ブランドの公式(チラシ)アプリの展開」が、近年注目を集めています。 業種は違いますが、同じく折込チラシに多額のコストをかけていたアパレルのGUでは、2012年に自社ブランドアプリの展開を開始し、積極的なキャンペーン施策により1,100万人ものモバイル会員を獲得。アプリだけでも十分な集客効果を発揮する事が可能になった事から、現在では折込チラシをほぼ廃止していると言われています。この成果は年間200億と言われる折込チラシ費用をかけているグループのユニクロでも注目されており、チラシの廃止検討の噂が以前より複数のメディアで指摘されています。 自社アプリは折込チラシ等の「ペイドメディア(費用のかかるメディア)」に対し、「オウンドメディア(自社で所有するメディア)」に位置付けられるものであり、新たな費用負担なくチラシの配信が可能になる事から、大幅なコストダウン効果が期待できます。 これら自社アプリ公開の動きは食品スーパーでも拡がっており、2012年に業界の2トップであるイオンとイトーヨーカドーがチラシアプリを公開したのを皮切りに、現在では数十社がアプリを展開するに至りました。早速各社のアプリ公開状況をチェックしてみましょう。
スーパーマーケットの公式アプリ一覧
下記はモバイルマーケティング研究所が調査した食品スーパーの公式アプリ事例一覧です。調べただけで実にこれだけのスーパーが、アプリを公開している事が分かりました。スーパーマーケットの公式スマートフォンアプリ事例一覧
企業名 | アプリ名 | 対応OS |
アークス | アークスアプリ | iPhone、Android |
アイスコ | スーパー生鮮館TAIGA | iPhone、Android |
アクシアル リテイリング | 原信ナルス | iPhone、Android |
アクシアル リテイリング | フレッセイ | iPhone、Android |
麻生芳雄商事 | スーパーASO | iPhone、Android |
イオン九州 | イオン九州アプリ | iPhone、Android |
イオン | イオンチラシアプリ | iPhone、Android |
イズミ | ゆめタウンアプリ | iPhone、Android |
いなげや | いなげや公式アプリ | iPhone、Android |
ウジエスーパー | ウジエスーパー | iPhone、Android |
Aコープ関東 | Aコープ関東アプリ | iPhone、Android |
エコス | エコスアプリ | iPhone、Android |
エブリイ | エブリイ | iPhone、Android |
エムアイフードスタイル | クイーンズ伊勢丹 | iPhone、Android |
オーケー | お友達宅配 | iPhone、Android |
オオゼキ | オオゼキ | iPhone、Android |
小田急 | Odakyu OX アプリ | iPhone、Android |
オークワ | オークワアプリ | iPhone、Android |
カスミ | カスミアプリ | iPhone、Android |
かとりストア | かとりストア | Android |
関西スーパーマーケット | 関西スーパー | iPhone、Android |
近商ストア | 近商ハーベス | iPhone |
さえき | さえきアプリ | iPhone、Android |
サミット | サミットアプリ | iPhone、Android |
スーパーサンシ | サンシのお届け | iPhone、Android |
成城石井 | 成城石井 | iPhone、Android |
西友 | 西友 | iPhone、Android |
セブン&アイ | イトーヨーカドーアプリ | iPhone、Android |
セブン&アイ | ヨークマート | iPhone、Android |
セレクション | セレクションアプリ | iPhone、Android |
ダイエー | ダイエーアプリ | iPhone、Android |
東急ストア | 東急ストアアプリ | iPhone、Android |
西鉄ストア | にしてつストア | iPhone、Android |
ニシムタ | NISHIMUTA | iPhone、Android |
バローHD | バローチラシアプリ | Android |
阪急オアシス | 阪急オアシスアプリ | iPhone、Android |
ビッグハウス | ベルジョイスアプリ | iPhone、Android |
フジ | フジのアプリお得チェック | iPhone、Android |
ベイシア | ベイシアお得アプリ | iPhone、Android |
平和堂 | 平和堂スマートフォンアプリ | iPhone、Android |
ベルク | ベルクアプリ | iPhone、Android |
北雄ラッキー | e-Cook Luck | iPhone、Android |
マックスバリュ九州 | マックスバリュ九州公式アプリ | iPhone、Android |
マックスバリュ東海 | マックスバリュ東海公式アプリ | iPhone、Android |
松源 | 松源(マツゲン)アプリ | iPhone、Android |
マルイチ | マルイチ | iPhone、Android |
マルエツ | マルエツチラシアプリ | iPhone、Android |
マルキョウ | マルキョウ | iPhone、Android |
丸高商事 | まるたか | iPhone、Android |
マルミヤストア | マルミヤストア公式アプリ | iPhone、Android |
ヤオコー | ヤオコーアプリ | iPhone、Android |
ヤマイチ | ヤマイチアプリ | iPhone、Android |
ユニー | ユニーチラシアプリ | iPhone、Android |
ライフ | ライフ公式アプリ | iPhone、Android |
リテールパートナーズ | 丸久アプリ | iPhone、Android |
リョービプラッツ | リョービプラッツアプリ | iPhone、Android |
主なアプリの機能・画面構成
これらのアプリのうち主要大手及び特徴的な事例について、アプリの画面・機能についても見てみましょう。1.イオンチラシアプリ

2.イトーヨーカドーアプリ

3.ユニーチラシアプリ

4.ダイエー公式アプリ

5.平和堂スマートフォンアプリ

6.フジのアプリお得チェック

7.ベイシアお得アプリ


食品スーパーの公式スマートフォンアプリの傾向と今後
各社のアプリの分析を通じ、食品スーパーのアプリに共通するいくつかの課題・傾向が分かりました。そのポイントに触れると共に、今後の方向性についても考えてみたいと思います。1.チラシ以外の販促機能がないアプリが多い
当ブログではこれまで店舗展開を行う様々な業種のアプリを取り上げてきましたが、食品スーパーのアプリに共通する傾向と言えるのが、「チラシ以外の販促機能がないアプリが多い」という点です。 たとえばアパレルのユニクロ・GUや小売業の無印良品などでは、チラシ機能に加えて「クーポン」「スクラッチ」「ジオフェンシング」「チェックイン」といった店舗への集客機能や、「ポイントカード/会員証」「オンラインストア連携」「店舗在庫検索」「バーコードスキャン」などのオムニチャネル・EC販促機能などが実装されています。 しかし食品スーパーの公式アプリでは、チラシ機能のみを提供し、それ以外の画面は単なるウェブリンクとなっているようなアプリが多く(例:イオン、ユニー、ダイエー、ゆめタウン、ライフなど)、アプリのポテンシャルを十分に発揮できていないように感じられました。 セブン&アイHD元会長の鈴木敏文氏の発言などからも、「オムニチャネル」強化の流れはスーパー各社にとって避けて通れないテーマとなっています。今後の開発・公開にあたっては、冒頭で触れたベイシアの例のように、チラシ機能以外の多用な販促機能の活用や、オンラインストア・ポイントカード等との連携などを通じ、アプリの持つポテンシャルを最大化させていく視点が必要と言えるでしょう。2.チラシの提供に外部の有償サービスを利用している場合が多い
冒頭で触れた通り、公式スマートフォンアプリはホームページなどと同様、自社で所有する「オウンドメディア」の一種です。しかし食品スーパーの各アプリをチェックしてみると、チラシ機能の提供にペイドメディアの一種である有償の電子チラシサービスを活用している場合が多く、オウンドメディアの持つ「低コスト」という特徴を十分に発揮しきれていないケースが多いように感じました。 電子チラシサービスの流用には、原稿管理のしやすさなどのメリットもある一方、掲載企業はチラシの詳細画面が表示された場合に応じて課金が発生するというデメリットがあります。アプリ上から自社のウェブサーバー上のチラシデータにリンクを貼れば、ほぼ追加コストなしでチラシを提供することができ、長期的に見て大幅なコストダウンを図る事ができます。 今後アプリの改修/開発を行う際には、両方の選択肢を長期的な視野で考慮したうえで判断を下す必要があると言えるでしょう。3.チラシがスマホの画面サイズに最適化されていない
またそもそもの問題として、一般にB4サイズ紙の大きさに合わせて作成される折込チラシは、スマートフォン画面での表示に適していないという課題があります。 例えば電子チラシサービスの「トクバイ」では、紙のチラシをそのまま電子化した「シュフー」のチラシ情報のほか、特売情報をスマートフォン画面に最適化して1品ずつ表示するUIを採用しています。このUIは所謂「モバイルファースト」の概念でチラシの見やすさを再定義した結果と言えるでしょう。![]() |
![]() |

ニトリアプリ チラシ(赤枠部分がECサイトにリンク)
サミットネットスーパーの「お買い得商品」画面なども、同種の概念でスマートフォンに合わせ設計されたものと想定されます。 若年層主体のGUなどと違い、食品スーパーが紙のチラシを廃止することは時期尚早と言えるでしょう。そのような中管理の手間を考慮し、折込チラシと同一の原稿をスマートフォンアプリでも使いたいという事情があるのかもしれません。 しかしながら、見やすさは最終的な購買率に一定の影響を与えているものと想定されます。今後の開発/改修にあたっては、最終的な売上最大化を考慮した場合に、スマートフォンに最適化したチラシ機能の画面UIを改めて検討していく必要があるのではないでしょうか。 以上が主な傾向となります。食品スーパーは他業種に比べ比較的アプリ化の進んでいる業種と言えますが、総じて「折込チラシの延長線上」の発想で開発されたアプリが多い、という課題も見えてきました。今後の改修にあたり、当記事が仕様検討の参考になれれば幸いです。 また以下などのように、まだアプリ公開をしていない大手チェーンも少なくないようです。公式アプリ未公開の主な食品スーパー(※)
マックスバリュ(九州・東海除く) | 大黒天物産 |
イズミヤ | ハローズ |
神戸物産(業務スーパー) | ジャパンミート |
ヤマザワ | サンエー |
Olympicグループ | イオン北海道 |
アオキスーパー |
