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会員証をアプリ化するメリット・デメリットと成功事例
「会員証がアプリ化していっている」と感じる機会が増えてきました。
従来の紙やプラスチックの会員証から、アプリなどのデジタル会員証へ移行する企業が増えているのには、以下のような背景があります。
・DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速
・印刷コストや在庫管理の削減
・顧客データのリアルタイム分析・活用
・リテールメディアとしてのマネタイズの可能性
デジタル化による業務効率化だけでなく、小売企業であればリテールメディア(自社のメディアとして広告枠を提供し、収益化するビジネスモデル)にまで活用できる可能性があるなど、多くのメリットがあります。
本記事では、会員証アプリ化のメリットや導入プロセス、セキュリティ対策はもちろん、ROI(費用対効果)の視点や最新トレンドに至るまで、一通りの情報をわかりやすく整理して解説します。
デメリットや注意事項も解説し、すでに導入を検討している企業の方だけでなく、「まだ具体的なイメージが湧かない」という方にもきっと参考になるはずですので、ぜひ最後までお読みください。

会員証のアプリ化とは?
会員証のアプリ化とは、紙やプラスチックカードで運用していた会員証をスマートフォンアプリ上に置き換えることを指します。アプリ内で会員番号やポイント残高、クーポン、購入履歴などを包括的に管理できるのが特徴です。
紙・プラスチックカードとの違い
物理カードとアプリ会員証を比較すると、以下のような大きな違いが見られます。
項目 | 紙/プラスチックカード | アプリ会員証 |
---|---|---|
コスト | カード発行費・印刷費がかかる | 初期開発費や月額費用が中心。発行コストはほぼゼロ |
データ管理 | 手動更新が中心 | リアルタイムでデータ収集・更新が可能 |
マーケティング | DM・メール・チラシが主体 | プッシュ通知・アプリ内広告枠などで即時に訴求可能。広告枠としての利用も |
利便性 | カードを常に持ち歩く必要がある | スマホひとつで完結 |
ブランドイメージ | 従来からの安定感がある反面、デザインや機能の拡張性に制限がある場合も | デジタルならではの表現が可能だが、UI/UX設計によって利用者の印象が大きく左右される |
一長一短と言えますが、「アプリの拡張性の高さ」に注目して移行しているケースを多く見かけます。
最近はドラッグストア、スーパーなどを中心に、「自社アプリ内で広告枠を提供し、リテールメディアとして活用したい」というニーズも高まっています。
ポイント管理やクーポン配布機能だけでなく、自社商品や提携ブランドの広告枠を設けることで、アプリ自体が新たな収益源となるケースも出てきています。
💡関連記事:リテールメディアとは?メリットや成功事例をわかりやすく解説
会員証をアプリ化するメリット・デメリット
会員証をアプリ化するメリット6選
- 顧客管理の効率化
アプリであれば、顧客一人ひとりの利用状況や購入データをリアルタイムで追跡できます。データ収集や分析が容易になり、顧客の嗜好に合わせたマーケティング施策を打ちやすくなります。 - 紙やプラスチックカードの発行コスト削減
従来のように大量のカードを発行・管理する手間がなくなるため、印刷コストだけでなく在庫管理や配送コストの削減にもつながります。ただしアプリも開発費やメンテナンスコストは発生するため、一長一短と言えます。 - プッシュ通知による効果的なマーケティング
新商品の情報やキャンペーンをタイムリーにプッシュ通知で届けられるため、メールやチラシよりも高い反応率があるため、マーケティング施策を効果的におこなえます。 - 顧客の利便性向上
スマホひとつでポイント管理やクーポン受取が完結します。財布を圧迫する会員カードが減り、カードを忘れたことで「損した!」と思わせることも少なくなり、利用者からの満足度が上がる傾向があります。 - ブランド価値・イメージの向上
アプリ導入によって、企業がデジタル技術を積極的に取り入れている姿勢をアピールしやすくなり、結果としてブランドイメージの向上につながる可能性があります。また、従来の会員証に比べて利便性を高める取り組みとしても評価されやすい点も。 - リテールメディアとしてのマネタイズ
小売企業の場合、自社アプリを活用し、提携ブランドや他社から広告掲載料を得るリテールメディアのビジネスモデルが注目を集めています。自社の顧客基盤を活かし、広告収益を生み出せる可能性がある点は大きなメリットです。
会員証をアプリ化するデメリット3選
会員証のアプリ化にはメリットが多くありますが、反面デメリットもあります。
1. 導入・運用コストがかかる(開発費・システム連携費)
自社アプリをゼロから開発する場合、システム構築にまとまった費用がかかります。既存のアプリサービスをカスタマイズ利用する場合でも、API連携やデザインの調整などでコストが発生することがあります。
また、リリース後もサーバー代やメンテナンス、運用などコストがかかります。
アプリ開発を検討する際は、開発費だけでなくトータルのコストで検討しましょう。
2. セキュリティ対策のコストや手間がかかる
個人情報や購買履歴を管理するため、セキュリティ対策は必須です。アプリ側のセキュリティはもちろんですが、スタッフの教育などを怠ると、顧客の信用を失うリスクがあります。
3.アプリダウンロード促進のためのマーケティング施策が必要
素敵なアプリを作っても、ユーザーにインストールしてもらわなければ意味がありません。ダウンロード数を増やすキャンペーンや魅力的な特典の設計が求められます。
アプリ化の導入ステップ【具体的手順】
実際に会員証アプリ化を進める際の一般的な流れを紹介します。
1. 要件定義
このフェーズでやることは主に3つです。
①目的の明確化
トータルコスト削減、顧客満足度向上、DX化、リテールメディアによる収益化など、アプリ化する目的を整理し、それを実現するための選択をする準備をします、
②必要機能の洗い出し
会員証であればポイント管理、クーポン配布、プッシュ通知、広告枠設定などが考えられます。また、既存のシステムなど連携したいツールがある場合、アプリベンダーによっては対応していないこともあるので必ず確認しましょう。
③運用フローの準備
新規登録〜利用〜更新までのプロセスを設計します。社内に担当者がいない場合、プロに運用を委託するのか自社内で育成するのか、またはどちらもやるのか、なども検討します。
2. システム開発orサービス選定
開発会社やサービスの選定をします
ノーコード型開発の会社やサービスはコストが安いですが、拡張性に制約があるケースが多くあり、将来的にリプレイスすることも。
フルスクラッチ型はカスタマイズ性は高いが、コストがかさみます。小売企業のアプリであれば平均で731万円〜2,193万円と、アプリに実装する機能や開発会社により大きく異なります。
弊社DearOneが提供する「ModuleApps2.0」はノーコードとフルスクラッチの中間のようなアプリ開発サービスになっており、コストと納期を抑えつつ高い拡張性を持ち、ドトール、ウエルシア、GRL、ツルハドラッグなど大手企業で多数導入されており、手がけたアプリの累計DL数は1億を突破しています。些細なことでもぜひお気軽にご相談ください!
3. デザイン・UI/UX設計
ユーザーが直感的に操作できることが重要です。Webサイトとは似て非なるものになりますので、アプリのデザインに長けた企業選定も重要になってきます。オシャレなだけで使いにくいアプリは多くの人に使われません。
またリテールメディアを意識する場合は、広告やバナー表示がユーザー体験を損なわないよう配慮しましょう。
4. 試験運用(PoC)
スタッフや一部の既存顧客を対象にテストを行い、機能性やUIに不備がないかチェックします。
利用者からのフィードバックを収集し、正式リリース前に課題を洗い出すことで失敗リスクを軽減できます。
5. 正式リリース&告知
店舗やSNS、メールマガジンなど多方面からアプリを案内していき、紙の会員証からアプリ会員証への移行などを促します。
リリース記念特典(ポイント上乗せ、クーポン配布など)でダウンロードを促進するなど、アプリを既存会員に普及させていく動きはずっと必要になります。
6. 運用・改善
運用・改善していけるのがアプリの強みです。利用データの分析やアンケートをもとに継続的にアップデートしていきましょう。
弊社もアプリのグロースに向けて、専任のプロが二人三脚で伴奏支援していきます。新たな広告枠の確保や提携ブランドとの連携や、リテールメディアの拡充など、アプリならではの施策も検討してみましょう。
コストとROIの分析
アプリ開発費や運用コストに見合ったリターンが得られるかどうかは、経営者やマーケターにとって重要なポイントです。
- 開発コスト/導入コスト
- 開発人件費、サーバー維持費、保守費用など、トータルで検討しましょう。
- 紙・プラスチック発行コストとの比較
- 物理的なカード発行にかかる印刷費や在庫管理費が減るため、長期的には削減が見込める試算になることが多いです。
- 自社の会員数や導入目的、運用体制などの条件を踏まえたコストシミュレーションを行い、導入を検討することをおすすめしています。
- 売上増加試算
- プッシュ通知や個別クーポンによる購買頻度の底上げ。継続利用やアップセルを促進し、長期的な顧客生涯価値(LTV)の向上に寄与広告出稿(リテールメディア)による追加収益など。
- ブランド価値・リピーター増などの定性的効果
- 先進的なイメージ作り
- アプリを通じたコミュニケーション強化
導入後は、定量的な売上データと定性的な顧客満足度の両面を追いかけながらROIを計算し、施策をブラッシュアップしていくことが成功のカギとなります。
関連記事:アプリ開発費用・運用費を実際の見積書7社分から解説
セキュリティ対策
先程も少し触れましたが、セキュリティ対策は非常に重要となるため少し詳しく記載します。
会員証アプリでは、顧客の個人情報はもちろん、購買履歴やクレジット情報などセンシティブなデータを扱う可能性があります。以下に安全性を確保するためのポイントを挙げます。
- 暗号化と通信のSSL/TLS
アプリとサーバー間の通信をすべて暗号化することで、不正アクセスを防ぎます。 - 二段階認証やログイン管理
ID・パスワードだけでなく、生体認証や追加コード入力を取り入れるとより安全性が高まります。 - スタッフの教育やガイドライン策定
内部からの情報流出を防ぐためにも、セキュリティ意識を高める研修は現代において必須となっています。 - 法的な準拠(個人情報保護法・GDPRなど)
アプリが海外でも使われる場合、国内外の法規制に対応するため法務部門との連携や外部専門家のアドバイスを受けることも望ましいでしょう。
情報漏洩は企業にとって大事故に繋がりかねませんが、自社だけでは気付きにくいのもまた事実です。セキュリティ面に知見のあるベンダーを選定することも重要です。
関連記事:アプリ開発会社のおすすめ12社をプロがジャンル別に紹介
成功事例・ケーススタディ【具体的な数字や成果】
ウエルシア株式会社
わずか8カ月間で100万ダウンロードを達成!

会員証の部分はTポイントに加え、WAON POINT、PayPayとも連携し、ユーザーベネフィットを向上させました。
店舗では主にシニア層に訴求し、8カ月で100万ダウンロードを突破(その後650万ダウンロードを記録)。MAUは約192%伸長し、皆様へ利用されるアプリへとなりました。
「コストを抑えつつ好きなことができる」という点が決め手になり、弊社DearOneにて開発を担当させていただきました。
アプリの新規開発やリニューアルなど、アプリ開発のお悩みがありましたら何でもお気軽にご相談ください!
株式会社ツルハホールディングス
570万ダウンロードを達成!70%以上のアクティブ率

ツルハホールディングス執行役員の小橋氏は「お客様が最も望んでいたのは、デジタルで簡単にポイントを管理できること。それを最短で実現することが何よりも重要だった」と語りました。
アプリの導入によって1200万人以上のユーザーの購買データを分析し、よりパーソナライズされたマーケティングを実現できるようになりました。
アプリには徐々に機能を追加し、現在ではクーポン配信や動画コンテンツなど、顧客が飽きずに利用できる要素も充実しています。
その結果アプリは570万ダウンロードを達成し、70%以上という高いアクティブ率を誇っています。
ツルハ様のアプリも弊社DearOneにて開発させていただきました。
会員証のアプリ化における最新技術やトレンド
テクノロジーの進化により、会員証アプリの可能性はますます広がっています。
- NFCやQRコードの高度活用
非接触で素早く認証できるため、レジなどでのオペレーション効率がアップします。 - スマホウォレット(Apple Wallet / Google Wallet)との連携
専用アプリを立ち上げなくても、標準ウォレット機能で会員証を管理できる仕組みが広がっています。 - デジタルIDとブロックチェーンの可能性
将来的には、ブロックチェーン技術を使ってさらに安全かつ分散型の会員証運用が進むことも予想されています。 - リテールメディアの一体化
アプリの会員証機能と広告配信の仕組みを融合させ、顧客行動データを活かした高度なターゲティング広告を実現する動きが活発化しています。
よくある質問
Q1. どのくらいの期間で導入できる?
A. 開発の有無やカスタマイズ度合いによりますが、ノーコードであれば長くとも1ヶ月程度、フルスクラッチであればカスタマイズ具合にも寄りますが半年〜1年以上が一般的です。ハイブリッド型開発のModuleAppsでも最短1ヶ月〜6ヶ月程度になります。
Q2. 小規模店舗でも導入できる?
A. もちろん可能です。ノーコードで初期費用が低めのサービスも多数あり、メリットも享受しやすいケースも多くあります。
Q3. セキュリティ面のリスクは?
A. 個人情報を扱うため、アプリの暗号化や不正アクセス対策はもちろん、スタッフの教育が欠かせません。適切なベンダーを選定し対策を行えば、大きなリスクを回避できます。
Q4. 導入後の運用コストは?
A. サーバー運用費や月額サービス利用料、アプリ更新費が主なコストになります。会員数によるのですが、紙カードの発行・管理費と比較すれば、トータルでコスト削減できるケースが多いです。
Q5. リテールメディアとしての収益化はすぐに可能?
A. アプリ内で広告枠を設ける仕組みや広告運用体制を整えれば実現できます。ただし、アプリダウンロード数や顧客データの質が高いほど広告価値も高まるため、運用開始後にユーザー基盤の拡大がポイントとなります。
弊社が提供するリテールメディアプラットフォームARUTANAでは、既存のアプリにSDKを導入する形で工数やコストを削減し広告配信が可能になります。
リテールメディアプラットフォームARUTANAについてはこちらから
まとめ
会員証アプリ化は、印刷コストの削減や顧客データの活用といったコアなメリットに加え、小売企業であれば「リテールメディア化による追加収益の可能性」という新たな価値を創出する手段としても注目されています。
- 主なメリット
- 顧客管理やマーケティング効率の向上
- 紙カードやプラスチックカード発行コストの削減
- プッシュ通知による販促効果アップ
- 自社アプリをリテールメディアとして収益化
- 導入ステップ
- 要件定義
- システム開発orサービス選定
- デザイン・UI/UX設計
- 試験運用
- 正式リリース&告知
- 運用・改善
- セキュリティ対策
- 暗号化・SSL/TLS通信
- 二段階認証
- スタッフの教育・ガイドライン策定
- ROI・収益化
- 印刷コスト削減+広告収益のダブル効果
- データドリブンなマーケティングでLTV向上
もし具体的な導入方法やカスタマイズのご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。会員証アプリ化によって、顧客体験を高めるだけでなく、自社アプリを活用した新たなビジネスを開拓できる可能性があります。
ModuleApps2.0ではコスト・納期を抑えつつ拡張性の高い、カスタマイズしたアプリ開発が可能です。
リテールメディアプラットフォームARUTANAではSDKの導入だけで広告配信が可能となり、広告主は3,300万MAUのユーザーに横断して広告配信が可能となっています。
この機会に一歩踏み出して、ビジネスの成長につなげてみてはいかがでしょうか。些細なご相談も大歓迎です、お気軽にお問い合わせくださいませ!