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アダストリア、顧客体験やお客様の声に寄り添ったプロダクト開発のポイントとは

 Post by MML編集部

大手ファッション企業アダストリアは「GLOBAL WORK」「niko and …」「LOWRYS FARM」など30を超えるブランドを有しており、約1,400店舗を展開している。公式Webストア「.st」は会員数約1,200万人を誇る。この1年間で顧客満足度をあげ、NPSを上げるための具体的な施策について述べた。

アダストリア 林 知果氏

株式会社アダストリア DX戦略部 部長 林 知果氏

本記事は、TECH PLAYが主催するオンラインイベント「小売企業が取り組むプロダクトづくりの裏側 (OMO、アプリ、EC、新規サービスの開発事例)」より、アダストリア 林知果氏から「NPSアップにつなげるプロダクトマネジメント」というテーマで講演が行われた。

ファッションECアワードを受賞

2021年5月26日、繊研新聞が主催する「ファッションECアワード」より、アダストリアが運営する「.st(ドットエスティ)」がエクセレント賞(優秀なECサイト)を受賞した。受賞理由として豊富なコンテンツとサービス、施策のスピード感が高く評価されたが、お客様からの評価もそれに類似するコメントが多かった。さらに、この1年でNPSも上げることができたという。

NPSとはNet Promoter Scoreの略称で、顧客ロイヤリティ(ブランド・企業・サービスに対する愛着や信頼度合い)を数値化したもの。ECを視点に考えるとNPSは売上、CVR、訪問率以外にお客様のサイト評価を数値として計測できる指標として重要視している。アダストリアはNPSを顧客満足度が分かる指標として重視している。

お客様の声を意識したNPS施策

具体的にどうやって上げているのだろうか。1つはお客様の不満の種を地道に解消することである。課題が多すぎて効果的な打ち手が曖昧だったのだが、お客様の声と反応を集めるためWebの注文履歴にアンケートサイトへの導線を作成し、またレシートにQRコードを貼り付け常時お客様の声を集めることに力をいれた。加えてECサイトで購入されたユーザーへ定期的にアンケートを配信。半年に一度、NPSとアンケートを実施したという。

2つ目は微回収や機能追加がしやすいアーキテクチャに裏側で変えていくこと。そのためには段階的なマイクロサービス化が必要である。古いアーキテクチャや技術で足回りが重いことが課題だったが、段階的なマイクロサービス化を実施。会員登録やカート・決済の本流以外を機能改善として切り出しつつある。このことで開発速度が大幅に上がったという。

この2つの改善点から、お客様のマイナスの声を分析し優先度付けをする。お客様の声を解消しながらモーダナイゼーションする。小さく始めて大きく育てる。大きなロードマップでサービスに緩急をつける。以上4つのお客様の声を意識したプロダクト開発を掲げている。

CHANGE POINT

お客様のマイナスの声を分析し原因をクリアする

はじめに、お客様のマイナスの声を分析・優先度付けの取り組みついて。2019年から「アプリが落ちる」などのお問い合わせがカスタマーセンターに寄せられた。コメントの統計を取ると、実際にそれらのお声に一定の傾向があることがわかった。

2020年6月よりアプリ分析ツールを導入しクラッシュ改善を実施した。毎月のリリースで上位3つのクラッシュ原因を潰していった結果、2020年4月から9月ではネガティブ要素のコメントが多かったが、2020年10月からネガティブ要素は減少し、ポジティブ要素のコメントが増加し、アプリが落ちるなどのネガティブコメントが減少していったという。「これは逆転したから大丈夫ではなく、新たなネガティブ要素のコメントがないか、日々モニタリングを行いながら改善している」と語った。

お客様の声を反映しながら画像管理サーバを移管

次は、お客様の声を解消しながらモーダナイゼーションする取り組みについて。常設アンケートで「画像が少ない」「画像を拡大したい」「古い商品画像が見えない」というコメントがあった。画像サーバは当時Webアプリケーションサーバと同居しており、容量が増えると定期的に古い画像を消去する仕様となっていた。

これを続けていると、先程あったお客様の要望に応えることができないため、新たに画像管理サーバを新設し、保存先をクラウドに対応した。お客様の声を反映しながら、既存アプリには負荷がかからないよう業務を最小限にして対応を行った。
お客様の声にこたえつつ、併せて技術課題を解消しやすいアーキテクチャ変更に取り組んだ好例である。

ポイント付与の仕組みが柔軟に活用できるよう改善

次は、小さく始めて大きく育てる取り組みについて。お客様が1日1回タップすると1ポイント提供するシステムについて、従来はECサーバを経由して行っていたが、会員数の増加やお客様の要望でECサーバに負荷がかかっていた。

そのため、ECの購入以外のポイント付与ができる機能を外部化して、Action基盤として提示した。ECサーバを経由しなくても新規施策のポイント付与が容易になった仕組み。このことで、.stストアの来店ポイントやその他施策のポイント付与の仕組みに活用できるようになった。

顧客体験や顧客要望に応じて改善を繰り返す

次は、大きなロードマップでサービスに緩急をつけることをビジネス側にも、アンケート情報を反映しながら取り組んでいる。プロダクトマネジメントという観点で考えているカテゴリは「Quality改善」「Operation改善」「新機能のプロダクト」の3つを考えている。

Quality改善についてはパフォーマンスが悪かったりクラッシュが出たり、ユーザビリティが悪いとお客様が心地いい体験ができないため、随時改善を行っている。Operation改善については、予約、返品、返金といった様々な機能をリリースしているが、それらのオペレーションで負荷がかかりサービス品質の低下にもつながってしまうため、それらの業務効率化を行っている。

新機能のプロダクトについては、決済、物流、画像、顧客接点など10のカテゴリから、QR決済、置き配サービス、LINEミニアプリなど、時節や、社会インフラ基盤の広がりや、お客様の要望に合わせたサービスを優先順位に照らし合わせながら、どのタイミングで開発しローンチするかプロダクト開発を進めている。

これらのようなプロダクト開発で、お客様の声をベースに活動した結果、メンバーのモチベーションが向上した。今まではネガティブなお客様の声をいただいてはモチベーションも減少していたのだが、その言葉を改善ポイントとして捉え、どのようにすれば改善できるのか考えられるようになった。

「お客様の声を分析して改善につなげるというのは地道な作業ですが、これらを積み重ねた結果、お客様からの評価や外部メディアの受賞につながったので、自分のチームとしては良かったことだと思っている。今後もつなげていきたい」と語った。