無印良品が考える「役に立つ」とは。楽天・Amazonの出店から決済サービスの導入まで

 Post by MML編集部
無印良品ネットストアは、店舗との垣根なく、生活者である「お客様」の役に立つことを常に考えて活動している。コロナ禍において、無印良品も今までの販売チャネルを拡大し、より多くの人に商品を届けることへ舵を切った。現在取り組んでいる新しい日常への情報、商品、デジタル活用へのチャレンジについて語った。 角田 徹 氏
株式会社良品計画 オープンコミュニケーション部 EC事業部 部長 角田 徹 氏
本記事は、インプレスが主催するオンラインイベント「ネットショップ担当者フォーラム 2020 秋」より、株式会社良品計画 角田氏から「『お客様』『地域』『働くスタッフ』のために無印良品ネットストアが考える『役に立つ』こと。実現のためのEC事業部の変化とコミュニケーションの進化」というテーマで講演が行われた。

コロナ禍におけるネットストアの動向

無印良品は1980年に誕生し、今年で40周年。ネットストアは2000年に誕生し、今年で20周年になる。サービス開始当初はコミュニケーション中心のコンテンツが中心だったが、現在は特集やイベントと連動しながら、ネットストアで販売できるかたちへと進化している。 ネットストアにおいて、2019年度の「食品」数は約800アイテムを展開、売上構成比は4.4%だった。2020年3月から、新型コロナウィルスの影響で食品の貢献度が7~8%まで上がってきている。特に冷凍食品やレトルト食品の支持が高い。「生活・雑貨」については、家具よりも日用品の購買件数が増加しているのが最近の傾向であるという。

重要なコミュニケーションチャネル「MUJI passport」

良品計画として「実店舗」と「MUJI passport」を、重要なコミュニケーションチャネルの大きな軸として捉えている。MUJI passportは2013年にサービス開始。2020年8月現在、累計2,117万ダウンロードを達成。1年間で529万件も増加した。アプリでは各商品の在庫検索ができるほか、無印良品週間のご優待価格クーポンや、お誕生日クーポンがゲットできる。 2019年4月から本部が配信するニュースに加えて、対象店舗をフォローすると、店舗からスタッフのおすすめ情報やその地域の情報が配信される機能を搭載。2020年8月現在、店舗フォロワー数は1,085万件となっている。このような機能を実装しながら、コミュニケーションツールの進化を進めている。 MUJI passportについて

Amazonと楽天市場に出店

無印良品は2020年、Amazonと楽天市場にネットストアをオープンした。今まで独自性を続けてきた無印良品が外部チャネルに出店したのかというと、暮らしの基本となる無印良品の商品を、より多くのお客様に届けたいという思いから決意したのだという。その背景には、自社モールだけでは多くのお客様にお答えできないという課題があった。 ポイント付与や翌日配送など、自社モールでは実現できないAmazonや楽天市場の強みを活かしながら、無印良品の商品に興味や共感いただける人を、さらに増やしていきたいと語った。

MUJI passport の UI/UXを改善

より多くのお客様に情報が伝わるようMUJI passportのUI/UXを改善した。アプリを起動すると表示される「from MUJI」の記事内上部にタブメニューを配置、必要な記事が探しやすくなる改善。店舗をフォローすると届く「店舗からのおたより」も閲覧しやすくなった。 さらにネットストアの導線も改善。フッタの「お買い物」という名称を「ネットストア」に変更。また、購入履歴から「カートに入れる」導線を追加して利便性を向上させた。現在も見直しをかけながら使いやすさを追求しているという。

SNSのコミュニケーションを最適化

無印良品のソーシャルメディアはInstagram、Twitter、facebookを運用しており、それぞれ意味合いを持たせてコミュニケーションを取っている。Instagramでは、よりリッチに商品と理由を伝える場として利用。若年層に向けてのコンテンツだけではなく、一部広告を入れながら新規顧客の開拓に取り組んでいる。 Twitterは、情報や売場へのヘッドラインとして利用。より鮮度の高い情報を投稿することで、店舗との距離を近づけている。facebookは、よりフラットな情報をきちんと発信。LINEはお客様以上アプリ未満をテーマに、ライトな情報を的確に流している。LINEはネットストアのプッシュ通知をしながら、お客様により近い情報を発信している。 これら記事配信は五月雨に配信するのではなく、ルーティーンを組みながら配信している。具体的には平日月曜日から金曜日までの期間で、1日6本までという制限をもうけ配信。現在は同じ内容を配信しているが、来期以降メディアの特徴を踏まえながら配信していく予定だという。 各SNSメディアの一般的な特徴とMUJIアカウントでの活用イメージ

コロナ禍で役立つ「くらしのコツ」を提供

今までfrom MUJIでは購買を促進するコンテンツを提供してきた。コロナ禍の状況で無印良品としてどうお客様にお役に立てるかを考え、外出を控えている方や在宅勤務の方にも暮らしに役立つコンテンツを増やしてきたという。 具体的には、収納のコツや、食欲増進に繋がる食材の話、レシピ集などを定期的に配信。無印良品では、スタイリングアドバイザーや整理収納アドバイザーのスタッフがいるため、これらのメンバーが考えたコンテンツを共有した。

給水サービスを開始。公式アプリを提供

良品計画では地球資源の循環化および廃棄物削減のため、さまざまな取り組みを進めている。プラスチックごみを削減する取組の一環として2020年7月から、「自分で詰める水のボトル」を販売するとともに、無印良品の店舗内に給水器を設置。オリジナルの公式アプリも開発した。 このアプリでは、給水所がある無印良品の店舗や公共の給水所が検索できるほか、給水することで削減できるPETボトルの排気量およびCO2削減量を可視化できる。ナイキジャパンはこの取り組みに賛同し、新豊洲にあるスポーツパーク「TOKYO SPORT PLAYGROUND SPORT × ART」にも給水器を設置した。 これからも自治体や企業と協力して給水所の拡大を図るとともに、アプリの進化をさらに加速させていきたいと角田氏は語った。 水 - MUJI Life(水をきっかけに、環境について考えるアプリ)リリース

地域再生にも店舗が貢献

人と人が共働化していく場が求められている今の時代、実店舗は地域に土着化し地域の人と一緒になって共有し合うなかで街が変わっていくことを目標にしていく。そういう存在になることこそが小売業の使命であると良品計画は考えている。今回そのプロジェクトが紹介された。 2018年、東京・光が丘ゆりの木商店街に、無印良品の小型店舗「MUJIcom」がオープンした。再生ペットボトルを使ったクリスマスイルミネーションを作成したり、地域支援として野菜を店舗内で販売したりしている。地域との交流の場として、無印良品は地域コミュニティの再生に取り組んでいる。 2018年、三重県・近鉄四日市の近鉄百貨店に、無印良品がオープンした。商品の販売に加え、三重県の地域活動を支援するイベント会場の提供も行っている。また、産官学が連携した学生との取り組みを提供している。 2019年、石川県野々市市明倫通りのスーパーの敷地内に無印良品をオープン。郊外ロードサイドとしては初めての出店。店舗の中心に大きな木を配置しそこでコンサートを開くなどイベントを行ったり人々が集う場として開放。また、地域の間伐材を利用して店舗のレイアウトに仕上げている。 2020年、新潟県・直江津のショッピングセンター再生として無印良品をオープン。店内にフードコートを設置し、地域の“くらしの真ん中”になるという当社の思いに共感してくださったスターバックスやカルディなどの店舗が無印良品の店内に出店、お客様に一体感を提供している。2020年10月末、「いつものもしもキャラバン」という防災イベントを近隣の公園で開催。人口10万人の地域に約2,000人がイベントに参加し、大成功を収めた。

関東最大の新店舗を有明にオープン

新たな取り組みとして、2020年12月、東京・有明に関東最大の新店舗をオープン。暮らしのサポート、家づくり、街づくりの3つをテーマにおいた8つの新商品・サービスを加える。百貨店を超える「百八貨店」として、末永く地域の方々の暮らしに役立つ存在になりたいと語った。 その中では、MUJI passportと連動し、アプリ上でお客様が注文した商品を非接触で受け取れる「商品受取ロッカー」を設置。フードロスを減らすため、必要な商品を必要な量だけ購入することができる「食品の量り売り」を提供。街と人をつなげることを目的に、地域の方々と一緒につくり、運営している期間限定のマーケット「つながる市」を開催。また、良品計画の整理収納アドバイザーが自宅にお邪魔し、暮らしに本当に必要な持ち物を整理し部屋に合わせた収納プランを提案する「お片付けのサポート」も行える。

決済サービス「MUJI passport Pay」を開始

さらにセルフレジの導入台数を増やし、利便性高く商品購入できる場を提供。また2020年12月、公式アプリでキャッシュレス決済ができる「MUJI passport Pay」が開始した。無印良品のネットストアアカウントを連携し、クレジットカードを登録すると決済サービスが利用できる。 支払い時には購入金額に応じた「MUJIマイル」も同時に付与される。決済サービスの導入により、レジでの物理的な接触を減らせるほか、お釣りの受け渡しが不要となるため、レジでのお客様の待ち時間削減にもつながる。 最後に「無印良品では、店舗は土着化から個店経営での取り組みで、より地域に根ざした活動を行っていく。デジタルはeコマースを通じてお客様に体験や購入の場を提供する。そのためにMUJI passportを通じて『感じ良いくらし』の実現を皆さまに提供していきたい」と語った。