withコロナの時代、急な営業時間の変更や混雑状況の発信など、店舗と顧客間におけるコミュニケーションの重要性は日々高まっている。東急ストアはチラシや公式アプリでの販促施策を行ってきたが、昨年 LINE公式アカウントとLINE Payを導入、1年弱で17万人超の友だちを獲得したという。今回、導入に至った背景や成功事例などを交えて語った。
東急株式会社 経営企画室 マーケティング担当 乗松 康行 氏
本記事は、中堅・中小企業に向けたLINE活用カンファレンス「LINE SMB DAY」より、東急株式会社 乗松氏から「一年弱で友だち17万人超!東急ストアのLINE Payを使ったリピート来店施策」というテーマで講演が行われた。
LINEを導入する以前の販促施策
東急ストアは、首都圏1都3県の東急沿線を中心に85店舗(2020年2月末現在)展開するスーパーマーケットチェーン。40~60代の女性がメインで店舗を利用している。
LINEを導入する以前は、概ね「紙のチラシ」「レシートクーポン」「ネイティブアプリ」で販促活動を行っていた。(レシートクーポンとは、東急ポイントの会員に向けてレジで出力されるクーポンのことである)。
ネイティブアプリは、スーパーマーケットの利便性向上を目的に導入していた。デジタルチラシが閲覧できる機能をメインコンテンツとして提供していたが、ダウンロード数が伸び悩んでいた。
さらにネイティブアプリに新機能を入れたいといった要望が出ても、要件定義や開発テストを行っていくリソースをうまく割くことができず、現状のデジタルチラシをメインとしたアプリから脱却できなかったという。
LINEを導入するに至った背景
QRコード決済サービスがローンチされた当初、各社大型キャンペーンを実施していて、競合のスーパーマーケットがいち早く対応をした。スーパーマーケットのお客様は、お得にお買い物をしたいというニーズが強いので、他社にお客様をとられてしまうというおそれから、東急ストアでもLINE Payを導入した。
またLINE Payを導入した背景の2つ目として、他のQRコード決済サービスと違い、LINE Payは決済時にLINE公式アカウントに友だち追加できる機能があるため、友だちを増やすチャネルとして期待し、導入したという。
具体的には、お客様とのコミュニケーションを既存のチラシやレシートクーポンといった紙媒体ではなく、デジタルで行うことにあった。お客様はLINE Payで決済をして、満足したら友だちに登録してもらう。その友だちにメッセージを送って来店促進するような、これまでできなかったCRM施策をLINEで強化していきたいと乗松氏は語った。
他のメディアとの比較
他のメディアと比較してLINEにはどういった強みがあるのだろうか。LINEの月間利用者は8,600万人、毎日利用するユーザーが85%(2020年9月末現在)と他のメディアと比較しても利用価値が高いことがあげられる。そして不特定多数とつながるSNSと比較してLINEはOne to Oneでつながるメディアであることも魅力の1つである。
その実例として、東急では以前からメール配信を行っていたのだが、LINEとメール配信を比較すると開封率やクリック率に差がでてきているという。開封率はLINEが平均76.4%、メール配信が平均16.0%とLINEが約4.8倍と多く、クリック率はLINEが平均24.7%、メール配信が平均3.9%と約6.3倍もあることがわかった。
また以前から、販促を積極的に行っている店長は独自のLINEの個店アカウントを開設していたのだが、東急ストア全体で見ると数は少なく、使い方も情報発信に限られていた。その後、東急ストア全体でブランドを伝えていくことがお客様にとっても大切だろうという話となり、運営している店長からも意見をもらいながら、統一アカウントを開設した。
その結果、各店のお知らせしか配信できなかったものから、東急ストア全体の共通メッセージやキャンペーンが配信できるようになったほか、各店では実施できなかった配信結果の分析も本社で行えるようになり、そのフィードバックが統一アカウントに活かされるようになったという。
LINE Pay導入時の苦労
LINE Payの導入時、いくつかの課題があったという。東急ストアは駅前に店舗を構えている関係で、通勤客がそのまま来店されるケースがある。東急ストア全体で約32万人の方がレジを通過する状況で、1秒でも早くレジの接客時間を短くすることを店舗で追求している。
LINE Pay導入時は、レジスタッフがスマホ画面のQRコードを読み込む作業がとても負担をかけているのが大きな課題で、できるだけ時間を短縮するために、レジのレーンを絞ってQRコード決済の導入をすすめたり、QRコードのかざしやすさについてレジスタッフ同士で意見交換したりしながら、日々お客様目線で改善していったという。
友だちの募集施策について
2020年9月末現在、東急ストアLINE公式アカウントの友だち数は約17万5千人、ブロック率は11.1%、TOKYUポイントの連携率は52.8%。ポイント連携率について、既存のお客様とのつながりを深く持てたなという気持ちと、一方で新規の友だちを増やしたいという気持ちで指標を見ていると乗松氏は語った。
TOKYUポイントの会員で、LINEアカウントにカード連携していないお客様と、連携しているお客様との月間の来店回数を比較したところ、連携しているお客様のほうが130%多く来店していることがわかったという。コロナ禍の状況で密な空間に行きたくないというお客様がいらっしゃる中で、1回の来店を獲得できたことは非常に重要。今後も伸ばしていきたいと語った。
その方法として、TOKYUポイントをLINEアカウントに登録すると、200ポイントプレゼントするキャンペーンを出したところ、1か月で5万人、5か月後には8万人が登録。その情報をもとに配信内容やリッチメニューの出し分けに活用しているという。
オフライン上の告知として、「LINEの友だち募集5%オフクーポンプレゼント」の店頭POPを掲載、それに加えてレシートクーポンにも同様の告知を掲載したところ、実施から3か月で友だちが4倍に増加したという。
LINEの活用事例
出し分けというところで、前月の購買状況に応じてポイントの倍率を変えたクーポンを配信している。配信に関してもトライアンドエラーを繰り返しながら実施しており、それらができるようになったのはLINEならではと語った。
アンケートの事例としては、恵方巻きを作りすぎて余ってしまうことが社会問題となっていたこともあり、恵方巻きについてなにか指標を持ちたいと社内で議論があがった。せっかくLINEに多くの友だちがいるので軽い感覚でアンケートを取ってみようということとなり始めたところ、参考となる情報が獲得できたという。こういった機能もLINEならではと述べた。
お知らせを配信した成功例として、お客様にとってインセンティブの高い情報は他のお知らせと比較して開封率やクリック率が高いことがわかった。だがコロナ禍における、店舗の営業時間変更のお知らせは、さらに開封率やクリック率が高かったそうだ。
お客様にインセンティブを与えて来店促進を狙う方法もあるけど、店舗の情報を多面的に伝えることでお客様に信頼いただき、さらなる来店促進につながることを改めて感じたと乗松氏は語った。
逆に失敗した事例では、運用に慣れていない時期にテキストメッセージを入れずに画像だけを配信した結果、その日だけブロック数が急上昇したことがあった。それ以降反省をして、丁寧に配信するように心がけているという。
今後の予定として、TOKYUポイントカードの連携を軸に、お知らせの配信やクーポン配信など、全店販促を行ってきたが、それに加えて個店にも強化していく。さらに、新しい取り組みとしてモバイルオーダーやポイントカードのデジタル化についてもチャレンジしていきたいと熱く語った。