販促や集客、ブランディング戦略を読み解く専門メディアモバイルマーケティング研究所

「DXは手段に過ぎない。お客様にいい体験を届けることが重要」ヤマトホールディングスが推進するDX戦略と顧客体験

 Post by MML編集部

ここ数年多くの企業はDX:デジタルトランスフォーメーションにシフトしているという話を耳にする。もちろん物流業界においてもデジタル化の波は避けられない状況にある。今回、ヤマトホールディングスにおけるDXの取り組み、顧客理解とCXの設計方法について講演した。さらに人間はAIから仕事を奪われるのかといった話題にも言及した。

ヤマトホールディングス株式会社 執行役員 データ戦略担当 中林 紀彦氏 / LINE株式会社 AI企画室 室長 中村 浩樹氏

(写真右から)ヤマトホールディングス株式会社 執行役員 データ戦略担当 中林 紀彦氏 / LINE株式会社 AI企画室 室長 中村 浩樹氏

2020年7月、LINEが主催する、LINE社の法人向けAI製品・ソリューションに関するカンファレンス「LINE AI DAY」が開催された。ヤマトホールディングスの中林氏とLINEの中村氏より「DX推進とAIによるデジタルプラットフォームの実現」というテーマで講演およびディスカッションを行った。

ヤマトホールディングスのDXの取り組み

まずは、ヤマトホールディングスのDXの取り組みについて解説をした。ヤマトホールディングスは2019年で100周年を迎え「YAMATO NEXT 100」を策定。これは前中期経営計画の成果と課題、外的環境を踏まえ、今後のヤマトグループにおける中長期のグランドデザインとして策定したものである。

YAMATO NEXT 100には3つの基本戦略がある。1つはお客様、社会ニーズに正面から向き合う組織へと“再編”していく「CX」。2つ目は経験や労働力に依存した経営からデータに基づいたデジタル起点の経営に“転換”していく「DX」。3つ目は共創と協業により物流のエコシステムを創出する企業へと“進化”していく「Innovation」である。

YAMATO NEXT 100

それを実行するために3つの事業構造改革と、3つの基盤構造改革がある。そのうち基盤構造改革の2番目である「データドリブン経営の転換」がDXの中心となる。このなかでは、今後4年間で約1,000億円の投資と、さらに300人規模の新・デジタル組織を立ち上げが決定している。まずは新組織立ち上げに向けて、5つのデータ戦略を実行するフェーズに入っている。

データドリブン経営への転換

これらを実行することで2024年3月期までに、営業収益2兆円、営業利益1200億円、ROE10%以上を目指している。これらが、ヤマトホールディングスが計画しているDXの全貌となる。中林氏は「デジタルトランスフォーメーションは手段に過ぎない。それを使っていかにお客様に、いい体験を届けるかが重要」であると語った。

ヤマトグループの顧客体験

顧客体験のデジタル化を考えると、ヤマトグループでは2016年1月から、LINEのプラットフォーム上に公式アカウントを開設している。2020年7月現在、友だちは約4,000万人登録している(2020年7月時点)。主な機能としては、配送状況の確認、お届け予定通知、受取日時や場所変更、再配達依頼をLINE上からできるようになっている。また、会話AIやねこ語にも対応した。

ねこ語とは、チャット形式で再配達の依頼をする際、言葉の語尾に「にゃ」「にゃー」「にゃーん」とつけると、相手も語尾に言葉をつけて返答してくれる機能。このような温かみのあるユーザー体験は後回しになりがちだが、ヤマトグループではどのように設計されているのだろうか。

ヤマト運輸LINE公式アカウント

中林氏は「顕在的なものはもちろんそうだが、潜在的なものも含めて細やかに課題抽出を行い、そこからペルソナを定義して、それに応じたカスタマージャーニーを描いて、そこに対応したCXを提供する」と述べた。

さらに「もちろん戦略に基づいて上流工程から落とし込んで設計していくのも大事だが、ボトムアップで個々のお客様がどういうふうに思い、どういうふうに考えているのか理解しながらつなぎ合わせていくのが重要」であると語った。

ヤマト運輸のCX設計と顧客理解

人間はAIから仕事を奪われるのか?

AIが発達していくと、人間の業務がAIに奪われるのではないかと世間で言われている。AIが電話の受け答えや音声の書き起こしを行った時、将来的に人間とAIは置き換わるものか、それとも共存するものなのだろうか。

中林氏は「AIが人間の仕事を奪うことはないと私は思っている。非連続で人間の仕事が置き換わるのではなくて、人の業務を学習しながら連続的・段階的に進化すると捉えている。そのため、人間の仕事をリプレイスしていくのではなく、AIが人間の仕事を底上げしていくようになっていく」と語った。

具体的には、新人オペレーターがゼロから学習しなければいけない環境下で、AIが応答しているやり取りを聞きながらオペレーターは学習していく。習熟度が上がっていくと、人間のやり取りを聞いたAIがよりよい方法を提案してくれるといった相互作用も生まれてくるだろう。AIの力を借りながら、精度のばらつきをなくし、底上げができると中林氏は語った。

最後に、DXに取り組まれている企業に対し、どうやってAIを使った顧客体験をアップデートしていくのかについてコメントを述べた。

「ポイントは3つあって、1つはDXやAIは手段に過ぎないため、目的を持つことが重要である。2つ目は、データがないと何も始まらないため、顧客接点からデータを貯めていくことが重要。3つ目は、AIと人間をどのようにコラボレーションしていくか、設計していくか、AIを使っていく上でのUXのデザインの1つである」と述べ、セミナーは終幕した。