NTTドコモの吉澤社長は自社イベントの基調講演に登壇。NTTドコモがこれまでどのような取り組みを行ってきたのか振り返りながら、2020年春にスタートする「5G」の取り組みについて解説。なぜ、スタートする以前から5Gに取り組んでいたのか、5Gを活用した未来はどのような世界になるのか語った。
株式会社NTTドコモ 代表取締役社長 吉澤 和弘氏
2020年1月、NTTドコモの取り組みを多彩なプログラムで提供する「DOCOMO Open House 2020」が開催された。NTTドコモ 代表取締役社長の吉澤氏より「5G、より豊かな未来の到来」と題して基調講演を行った。
これまでドコモがどのような取り組みを行ったのか概要について振り返った。movaやFOMAなど通信サービスの姿、次にiモードやd払いなどプラットフォームの姿、dマガジンやdTVなどdマーケットで提供するサービスの姿。現在の段階はパートナーとの「共創」が重要であると語る。
「5Gというニューテクノロジーを提供しても、それを活用したサービスやソリューションが提供できるパートナー企業と連携していかなければいけない。新しい価値、新しいサービス、新しいソリューションを提供するためには『共創』が必要だ。これを『+d』として、パートナー企業の価値とドコモの価値をプラスして、さらに新しい価値を創造していく」と吉澤氏は語った。
このようなことを意識ながら2017年、ドコモは「beyond宣言」という中期戦略を発表。これは、5Gなどのニューテクノロジーを活用して、お客様にどういう価値を提供していくのか。そして社会にはどういう価値を提供していくのかということを、ドコモとして宣言したものである。
5Gを活用した新たな未来を創出
5Gはどのような世界を作り出すのだろうか。吉澤氏は前置きしながら「5Gが世界を変えることではなく、5Gで世界を変えることである。5Gは手段であって、やはり世界を変えるのは5Gを活用するソリューションやビジネス、それそのものが世界を変える」のだと語る。
つまり、デジタル・トランスフォーメーションの狙いというのは、生産性の向上、UI/UXの抜本的な改善、革新的なサービスの創出にある。それを実現できるのは「デジタル化」であり、今までに無いもの、今までをさらに凌駕するもの、革新的なビジネスやソリューションを創出するのがデジタル化である。
それを実現するためには、ニューテクノロジーとなる AI、IoT、xR、クラウド、5Gが必要である。その中で一番太い柱が「5G」であり、さまざまなものを組み合わせながら何かを作り出し、新たな価値を創出する。
5Gがスタートする以前からトライアルを実施
5Gが目指す世界は「高速・大容量」「低遅延」「多数接続」の3つにあるという。これらを現実にするため、多くの取り組みを行っている。3,200を超えるさまざまな業界のパートナー企業が「オープンパートナープログラム」に参加、日本各地で「5G BUSINESS CAMP」を開催。または5G技術を検証するドコモ5Gオープンラボを開放し、そのなかで具体的に5Gを活用した263件のトライアルを実施した。
トライアルの実施は2017年5月から開催しているという。なぜそんなに早く取り組みを行うのかというと、「今まで3G、4Gとやってきた。特に4Gの場合、我々がネットワークを提供した時、そんなに早いネットワークを提供して誰が使うのかとよく言われた。しかしスマートフォンが発展し、SNSや動画配信の盛り上がりを見ると、全部そこにつながっている」のだという。
つまり5Gも公開された時点からトライアルを行い、サービスが開始した時点でサービスやソリューションが進化した姿を作っておかなければ、5Gの発展につながらない。中国、韓国、アメリカでは既に5Gがスタートしている。どの国もキラーとなるコンテンツは明らかとなっておらず、ドコモを含め、どの企業もそれを探し求めている状態だ。
「5Gのローンチは、世界的に日本は1年遅れているが、それに対して何ができるのか、どんな価値を提供できるのかというのは重要であって、スピードを重要視するものではない。だから5Gのローンチとともにこのようなサービスやソリューションを立ち上げていきたい」と熱く語った。
5Gプレサービスも40拠点でスタート
2019年9月から、5Gのプレサービスがスタートしている。ラグビーワールドカップのマルチアングル視聴、高臨場ライブビューイングを提供。法人のお客様は工事現場や生産現場、医療現場、での遠隔制御、遠隔ゴルフレッスンなどを提供している。これを2020年春の5Gローンチにつなげていく。
個人のお客様に対しては、マルチアングル、ARフィギュア、インタラクティブコミュニケーションツールと8KVRライブをミックスした「新体験ライブCONNECT」を提供。またセンサーとカメラで実世界を認識するウェアラブルデバイス「Magic Leap x MRコンテンツ」を提供する。ゲームやコミュニケーションの現場で活用されていくことを期待されている(8KVRライブ、Magic Leap oneは今後提供予定)。
法人のお客様は、医療、観光、金融、農業、建設、製造、社会インフラなどの業界で、5G、AI、ビッグデータを活用した社会課題の解決に取り組んでいる。例えば金融分野ではFintechや遠隔窓口での活用、農業分野ではセンサーでの遠隔監視システム、観光分野では訪日客キャッシュレス化やVR観光などを期待されている。
春のスタートを目前にして、5Gはすでに現実のものになった。あるいはこれから現実になろうとしているサービスやソリューションも登場している。「我々も通信だけではなく、非通信の事業も広げることによって、我々自体の持続的な成長につなげていきたいと思っている。5Gのリアルワールドとともに、その先の未来も見ていただけたら」と語りセミナーは終幕した。