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Pontaのファクトデータを活用して、お客様が満足するメッセージを届けるデータドリブンマーケティング
ロイヤリティ マーケティングといえば共通ポイントカード「Ponta」のイメージが強い人も多いことだろう。しかし現在は、Ponta DMPを使ってライフステージに合わせた企業のコミュニケーションを促進する活動も行っているそうだ。Pontaが目指すデータドリブンマーケティングとは何か。
株式会社 ロイヤリティ マーケティング 営業統括グループ 営業推進本部 本部長 蛭川 和伸氏
2019年11月、Comexposium Japanが主催するアジア最大級のマーケティング・カンファレンス「アドテック東京2019」が開催された。ロイヤリティ マーケティングの蛭川氏より「共通IDが実現する、cookieだけに依存しないオン/オフ横断のファクトデータマーケティング」というテーマで講演された。
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Pontaサービスについて
ロイヤリティ マーケティングが運営する共通ポイントサービス「Ponta」は、現在128社、185ブランド、約22万店舗が加盟しており、有名なところではコンビニエンスストア、食品スーパー、ドラッグストアなどが加盟している(記事中の全ての数字は当時のもの)。 Pontaはリアル店舗が加盟しているイメージが強いのだが、オンラインサービスにも対応しており、人々のライフステージや消費行動などあらゆるタッチポイントで対応している。Pontaの会員数は現在 約9,200万人。全国くまなく網羅しているが、年代別で見ると、やや若年やシニア層が多い。 ファクトデータを用いてクライアントに実現できるものは大きく3つあるという。1つは、見込み客を見つける力。2つめは、その見込み客にメッセージを届ける力。最後は、届けたあと きちんとコンバージョンしたのか追跡する力である。Pontaのリアル行動データ(ファクトデータ)
まずは見つける力について解説された。Ponta会員の基本情報や22万店舗で発生するPontaの実利用データや利用履歴、その他アンケートデータ、キャンペーンデータ、さらには外部の統計データ、地価データ、分譲住宅情報などのデータを、DMPで一括管理している。企業のメッセージを届ける
これらのファクトデータを活用してあらゆる企業の潜在顧客を抽出し、さまざまな手段でリーチしていく。具体的には、ロイヤリティ マーケティングが展開する、郵送ダイレクトメール(DM)、eメール広告、アプリ広告、Webディスプレイ広告などを活用する。 特に郵送DMは、パーミッション数では国内最大級のリストホルダーとなる。情報も定期的にメンテナンスしており、詳細なセグメントを行ってもきちんと顧客に届くところが特徴である。 それぞれの会員数を見ると、郵送DMが約5,000万IDと一番多い。全て合計すると延べ8,000万ID以上にリーチすることができる。「DMの強みとは、モノが届くインパクトやクオリティがあること。そこからストーリーによってお客様を振り向かせ、自分事にさせる説得力や行動喚起力を秘めている」と語った。 日本DM協会が発表した「DMメディア実態調査2018」によると、DMの開封率は79.4%と効果の高いメディアであることが分かっている。さらに、受け取ったあとの行動について「購入・利用した」人は2.8%で、そのほか「資料請求した」人も2.1%と、効果が高い。 「PontaのDMは、リストは販売形式ではなく代行形式。Pontaのキャラクターを郵送物に加えるなどの自由なクリエイティブを提案できるので、相乗効果を発揮できる」と語った。お客様の行動が分かる
コンバージョンしたデータは、クライアントの保有するデータやPontaのデータなど、さまざまなデータを組み合わせることによって、実利用の傾向を分析し、施策の効果を多角的に視覚化、ネクストアクションを示唆している。 最近は「デジタライズドDM」という、リアルとデジタルを連携したモデルに取り組んでいるという。従来のDMは、ターゲットを抽出してDMを配信するシンプルなモデルだった。デジタライズドDMは、AIやリサーチでターゲットを高精度予測、Pontaのクロスメディアを活用して配信タイミングを検討しながら購買行動へと促していくモデルだ。 つまり従来のような属性だけを抽出して配信するモデルではなく、属性を抽出し、最適なメディアを活用し、配信タイミングを考慮したモデルを採用している。そのため、相乗効果が何倍にも高くなっているというわけである。4社のファクトデータ活用事例
ここでファクトデータを活用した企業の事例を紹介する。まずは、ガソリンスタンドの事例。Pontaと提携している宿泊サイトで予約したお客様のうち、ガソリンスタンドがターゲットとしているお客様を抽出。旅行に出かける日程の直前、ガソリン料金がお得になるDMを郵送した。その結果、車の所有者だけを対象にしたキャンペーンと比べ、参加率は6倍に増加したという。 続いて健康食品の事例。健康食品企業が保有する顧客データを預かり、pontaのデータと掛けあわせて分析。出てきた数万件のデータを教師データとし、さらに類似性の高いお客様を拡張したところ、潜在顧客は保有データの5.7倍に増加したという。そこからPontaのリーチ手段を用いて、プロモーション展開したという。 次は飲料メーカーの事例。新たに缶コーヒーを発売予定のタイミングで、ターゲットとして日頃から缶コーヒーを購入されている方で、他社の缶コーヒーを購入されるお客様を対象に試供品をプレゼントした。6缶パックの缶コーヒーをPontaのキャラクターが描かれた箱に詰めて配送。無作為に抽出したサンプルと比較して、1人あたりの購入本数は21.5%増加、さらに継続購買率も5.9%増加したという。 最後に百貨店の事例。百貨店でコスメを購入したPonta会員に対して、SNS広告を配信した事例。そのままでは配信対象者が少ないため、PontaのDMPや百貨店のDMPから類似顧客を拡張し、SNS広告を配信、Ponta IDを使って来店計測を行った。広告回収費であるROASで見ると、最大1,000%の効果をもたらしたという。チューリッヒ保険会社の導入事例
チューリッヒ保険会社 ホールセール事業本部 営業部 提携ビジネス課 課長補佐 土屋 圭一朗氏
続いて、チューリッヒ保険会社の土屋氏を招き、ロイヤリティ マーケティング 弓田氏との対談形式で、Pontaとの取り組みについて対談された。両社の取り組みは、Pontaの郵送DMをベースに、チューリッヒから保険のご案内キャンペーンを実施するもの。約7年間取り組んでおり、現在まで約1,800万通発送しているという。
具体的には、Ponta会員にDMで保険を案内する「Pontaフリーケアプログラム」を実施。郵送DMの発送対象セグメントはお客様の基本情報に加え、Pontaならではの情報である、Pontaカードの利用日、利用頻度など、現在は17セグメントで発送している。
また、「Pontaフリーケアプログラム」を通して加入されたお客様を教師データとして活用し、それに類似した属性を拡張。スコアリングが高いお客様を対象に、どこまでのスコアリングで発送するのか調整を行っている。
「当社は全会員に一律でご案内しているわけではなく、加入率が高く、より多くの会員様がいる層はどこなのか試行錯誤を続けている。シニア層にアプローチしやすい商材になっているが、今後は若年層にもアプローチできるよう努めていきたい」と土屋氏は語った。