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サツドラホールディングス。地域を盛り上げて成長するマーケティング戦略

 Post by MML編集部

北海道を中心に展開するドラッグストア「サツドラ」のほか、地域ポイントカード「EZOCA」などを提供するサツドラホールディングス。企業の独自性を活かしながらさまざまな事業を展開。ドラッグストアがなぜ小売を離れてさまざまな事業を展開するのか、背景とその理由を語った。

サツドラホールディングス株式会社 代表取締役社長 富山 浩樹氏

サツドラホールディングス株式会社 代表取締役社長 富山 浩樹氏

2019年11月、インプレスが主催するeコマース&マーケティング今と未来を語りつくすイベント「ネットショップ担当者フォーラム2019秋」が開催された。サツドラホールディングスの富山氏より「サツドラの挑戦――北海道からアジアへ、ドラッグストアビジネスから地域コネクティッドビジネスへ」というテーマで講演された。

ドラッグストアの再編に危機感

同社が運営する「サツドラ」は、北海道を中心に約200店舗を展開するドラッグチェーン。富山氏は2007年、サツドラの前身である「サッポロドラッグストアー」に入社した。当時は北海道で100店舗以上展開しており、北海道では知られた存在ではあったが、これ以上出店しても成長は厳しいだろうと感じていた。

というのも、当時のアメリカはドラッグストア大手3社が寡占化している状態であり、いつか日本のドラッグストアも再編が始まり、アメリカのような状態に向かっていくだろうと感じていた。そのためには他社の差別化ができる店舗へ生まれ変わらなければ、生き残っていけないと強く感じていたという。

そのためには2つの差異化を志向していく。1つは、「店舗のアップデート」を行い、他社とは違うオリジナル店舗を確立すること。2つめは、「地域戦略の推進」を行うことである。

サツドラ:2つの差異化を志向。店舗のアップデート x 地域戦略の推進

小商圏フォーマットを目指す

1つめの「店舗のアップデート」について。チェーンストアとは、地域の経済格差をなくしていく「マス」というメリットによって、企業の社会的インフラを作る意義がある。それらをもとにあるべき店舗とは何かを議論し、それがサツドラとして最適な店舗とは何かを選択していくプロジェクトが発足した。

その中でいかに人口が少なくても成立する店舗づくりを目指し、従来のドラッグストアよりも品揃え豊富で、さらにお手頃で信頼性のある自社商品を開発して提供できる、いわゆる生活に密着した「生活便利ストア」を目指した。

いわゆるチェーンストアというのは、「頻度」が店舗数に比例すると言われている。一番頻度が多いデイリーストアの代表例はコンビニエンスストアで、人口が2,500人いると成立する。マンスリーストアの代表例はホームセンターや専門店で、人口が5~10万人いないと成立しない。その中間であるウィークリーストアをサツドラが目指しており、コンビニにはない機能を持っている店舗づくりとは何なのか再定義を行った。

サツドラ:小商圏フォーマット。H&Bを核とした「生活便利ストア」→お客さまのより近くへ!地域の生活者が週に1回は買い物に来たくなる「ウィークリーストア」を志向

さらに店舗のリブランディングを行った。似たような名前や看板の店舗が点在しており、お客様が店舗を差別化できない悩みがあった。そのため、全国チェーンが真似できない「北海道」というコンセプトを店舗の名称に入れ、日頃からお客様から愛称として呼ばれている「サツドラ」という名称をそのまま利用した。

サツドラ:サツドラブランディング。北海道の「いつも」を楽しく

地域を盛り上げるサービスを推進

2つめは「地域戦略の推進」。サツドラならでは戦略を実施すべく、2013年、地域のマーケティングを行う株式会社リージョナルマーケティングを設立。「北海道をもっとおもしろく」を合言葉に、EZO CLUB(エゾクラブ)構想を立ち上げた。その具体例として、北海道のオリジナル共通ポイント「EZOCA(エゾカ)」を開発。

「当時、共通ポイント業界が伸びていた時代で、我々も提案を受けた。なぜ彼らが我々に加盟してほしいのか?それはお客様の価値だと気がついた。来店頻度が高く、さまざまな商品を購入してくださる情報は価値が高い。それで我々が実施する意味は何かを議論し、エリアマーケティングで地域のオリジナルブランドを作ろうという結論に至った」という。

2019年9月現在、EZOCAの普及率は65%、北海道民の3人に1人が所有している。提携企業は121社と地域の有力企業が加盟している。会員数は183万人、女性比率が71%、30~60代の女性に支持を得ており、主婦層の利用が多いという。

「伝統的な企業はお客様が高齢化している。スーパーなどは団塊世代以上のお客様がほとんど。その中で主婦層を捕まえているということは、他の企業に貢献できるところが非常に大きい」と富山氏は語った。

サツドラ:共通ポイントカード「EZOCA」世帯普及率65%、北海道民の3人に1人が所有。会員数183万人超。提携企業/店舗数121社704店舗

そのほか、コンサドーレ札幌やレバンガ北海道など、地域のプロスポーツチームと連携し、EZOCAを使うたびに購入金額の0.5%を各チームへ還元する仕組みを行っている。そうなると、チームのサポーターは、提携店舗で買い物をすると応援するチームに貢献できるから、Win-Win-Win の関係で良い循環が行われている。

サツドラ:地域スポーツチームとの連携。”サポーターの皆様とともに団体の夢の実現を応援”するカードを実現

還元事業についてはプロスポーツチームのほか、地域の活性化にも還元。具体的には、利尻島や礼文島の商店街と連携し、ポイント運営費を一分還元。町内イベントを開催し、商店街を活性化している。

サツドラ:利尻・礼文、地域自治体との取り組み。狭小商圏へのサービス開始、手数料の一部を地元に還元するEZOCA”商店街活性化還元モデル”の実現

EZOCAのほかに、「EZO CLUB」「EZO MAMA」というコミュニティ事業を推進。現在280ほどのコミュニティを支援している。メディア事業も推進しており、提携店舗や幼稚園などにフリーペーパーを配布。現在14万部にも及ぶ。

「EZOCA CLUBはコミュニティの発展なのでボランティアに近い。ここでつながったコミュニティをさらに広げ、そこから加盟店がさらに広がって、サツドラにも還元されていく。そのようなかたちでビジネスモデルを整理している」という。

北海道の課題とポテンシャル、そして未来

北海道のマーケットを見ると、2020年から2040年にかけて、北海道は高齢化が急速に進み伸び率は全国ワースト2位である。また自治体の半数が人口5,000人未満になるなど、いわば北海道は世界の課題先進エリアと言える。

しかし北海道は、訪日外国人が多く来ており、都道府県別魅力度ランキングは1位、市区町村別魅力度ランキングを見ても、トップ10のなかに4つの市がランクインしている。

世の中の動きを見ると、2015年からAI/IoTを中心とした第四次産業革命が到来している。そうなると業界ごとの垣根がなくなり、スマートフォンを起点として情報の交流が活発に行われる。つまり業界の専門分野がなくなる時代が到来する。

「例えばAmazonのように、小売の本業を活かしながら異業種でも稼げる事業展開をして、一人あたりのシェアを拡大していく。それで課題先進地域での事例作りをすれば、北海道内のマーケットを拡大できるのではないか。店舗がモノを売る場所だけではないと捉えるのが我々の考え」だという。そしてサツドラはドラッグストアビジネスから、地域コネクティッドビジネスへと転換する。

サツドラ:取り巻く環境のまとめ。ドラッグストアビジネスから地域コネクティッドビジネスへ

地域格差より情報格差をなくす

チェーンストアの役割とは商品で、地域格差や経済格差を無くしていくことにある。つまりどんな場所でも変わらない生活ができるというのがチェーンストアの役割である。これからは「商品 x サービス」で情報格差を埋めていく。

「今は買い物難民よりも、情報難民のほうが増えていると思っている。地方に住んでいると、先に銀行、病院、学校などの情報窓口が次々と無くなっていく。スマホを活用したデジタル化が進めば対応できるのだが、それを使いこなせない世代が多いのが現状」であるという。

サツドラ:「店舗のアップデート」の方向性。地域の「経済格差」の解消から「情報格差」の解消へ生活者に「商品」を売る場から「商品xサービス」を提供する場へ

そのためサツドラの店舗をアップデートし、生鮮コーナーを融合した店舗を出店。ほかに「健康」というテーマで、医療機関と連携。かかりつけ薬局として、お客様の健康をサポートしている。そのほか、店舗内に宅配ロッカーを導入し、コンビニ交付サービスも開始した。店舗を基点としたさまざまなサービスを導入している。

地域戦略としてインバウンドにも対応

地域戦略においては、通常ドラッグストアでは出店しないような観光地に、積極的に出店を行っている。2017年VISIT MARKETINGを設立し、訪日外国人向けに対応したインバウンドのノウハウを提携企業に提供している。

2017年からWeChat Payを使ったモバイル決済事業を開始。現在は1つの店頭端末でマルチモバイル決済ができるプラットフォームを開発。事業をやりながらペイメントの代理店を一元管理で行っている。現在2,500店舗が導入。比較的、中小企業が多いのだという。

サツドラ:道内モバイル決済経済圏の拡大。先行していた中国人向けモバイル決済プラットフォームをベースに国内向けモバイル決済ブランドを効率よく展開

さらに、WeChat Payでバスのモバイル決済ができる仕組みを開発。「中国観光客が複雑なバス料金を現金で払おうとすると、いくら払えばいいか分からなくて、次第に大行列ができる問題が発生したので、解決する仕組を開発した。我々店舗を運営しているので、オペレーションでどういうところが困るか肌身を感じている。それが一般的な決済事業者と違うところ」だと語った。

2019年春、サツドラホールディングスは新しくミッション・ビジョン・バリュー、そしてコンセプトを発表した。そのコンセプトは「地域をつなぎ、日本を未来へ」、つまりドラッグストアから地域コネクティッドビジネスへの転換を表す。これから未来が自ら変容し、自らグローバルに稼ぐ時代となっていくため、地域に社会変革の現場があるのではないかと語りセミナーが終幕した。