国内外320店舗を展開する、整体・骨盤調整「カラダファクトリー」のインナーブランディング事例。カラダファクトリーの顧客割合はリピーターが約80%と、業態平均約60%と比べて非常に満足度が高い店舗だ。その理由は、顧客体験価値と従業体験価値を向上させることにあると語る。今回始めた背景から、実際どのように取り組んでいるのか事例をもとに解説した。
株式会社ファクトリージャパングループ マーケティング本部 本部長 海野 由美子氏
本記事は、宣伝会議が主催する「
AdverTimes Days 2019(秋)」より、ファクトリージャパングループ 海野氏の講演「世界一のおせっかい集団 リピーター率80%の顧客体験を生み出す『カラダファクトリー』の現場力」の模様をお届けする。
カラダファクトリーは、国内外320店舗を展開する整体・骨盤調整のチェーン店舗。骨盤を中心に全身のバランスを整える独自のA.P.バランス®理論を行う。施術数は累計約1,300万件にものぼる。
カラダファクトリーの体験は、お客様の未来の健康に寄り添う整体師との施術とコミュニケーションからくる体験である。顧客体験価値の95%が現場で起こっており、リアル店舗での体験が全てである。
そのため「店頭での体験価値を上げるためにCX(顧客体験価値)の向上とEX(従業員体験価値)の向上をミックスして考えることがカラダファクトリーの特徴」であると海野氏は語った。それらを具体的に実行するため、クレドに基づいた社員教育やインナーコミュニケーションを重視して行っている。
カルチャーを復活、インナーブランディングを開始
カラダファクトリーのリピーター顧客は全体の約80%にものぼる。そして売上の約50%は継続ユーザー、そのうち約60%が、累計50回以上通っているお客様になる。お客様はカラダファクトリーの高い技術力とカルチャーに共感し、継続して通っているお客様に支えられている。
しかしカラダファクトリーも多店舗展開の時期、カルチャー損失の危機が起こったという。それは急激な店舗数増加にともない、マニュアル的な接客でしか対応ができなくなってしまう。そこをたびたび施術に訪れていた創業当時を知る現社長が目にして、これはいけないと感じたそうだ。
そこでお客様の満足度合いを見直すため、「エンゲージメントジャーニー分析」を行った。これはお客様が体験する、店頭での体験をプロセスごとに分けたものである。受付、着替え、カウンセリングなどの各プロセスにおいて、お客様がアンケートに答えた満足度を加えたものや、NPS®(ネットプロモータースコア)を活用する。
期待値の高いプロセスを発見し、そこに対する満足度も理解することによって「真実の瞬間」を発見した。つまり、「カウンセリング」「施術」「事後説明」の3つが、最もお客様の期待を持っていることが分かったのだ。
「施術者の心得」をまとめたバイブルを作成
「こういったところは施術師が一人ひとりお客様に答えているところだからマニュアル化できないところ。だから“マニュアル+α”の対応が必要だ。だから弊社もトップダウンでインナーブランディングを強化し、カラダファクトリーのアイデンティティを集めたカルチャーブックを全社施策で推進している」と海野氏は語った。
整体師としての心得、社員やチームとしての心得、向かう先、こういった物を集めて「カラダバイブル」を発行した。このカラダバイブルは施術者の心得15というかたちで、普段から整体師としてどのようなことを心がけていくのかをまとめている。
この書籍だけ作っても、自然と全体には浸透しないと感じているという。整体師の平均年齢は27歳で非常に若く、動画を見ている世代なので、実話をもとにしたストーリー動画を制作した。
そして整体師が年1~2回集まる社内イベントの中で動画を再生している。「こういった技術コンテストは、整体師になるという初心に帰るタイミングでもある。こういったタイミングを逃さず動画を流している」と述べた。
整体師のモチベーションの源泉とは?
さらに、従業員の体験価値を知るため社内アンケートを実施。整体師のモチベーションの源泉について質問したところ、上位3位は「お客様からの反応」というものだった。それが仕事を行うモチベーションの源泉となっていた。
お客様の声がモチベーションの源泉であれば、整体師に「お客様の声のギフト」をフィードバックしようということになった。来店されたお客様に、QRコードから簡単にメッセージを入力できるカードをお渡しする方法をとった。最終的に書かれた感謝の言葉は、シール状に印刷し、店舗に貼り出す「ありがとうの森プロジェクト」を開始した。
現場には大きな樹木が描かれたポスターが貼ってあり、そこに感謝の言葉が書かれた葉っぱがたくさん貼ってある。葉っぱを蓄えた樹木は、現場のスタッフだけではなく、来店されたお客様も一緒に見ることができる。現場のスタッフはモチベーションの向上に、お客様は共感につながっている。
プロジェクトの進め方について海野氏は「このプロジェクトも、制作物を納品するだけでは取り組みは浸透しない。最初に店舗で実践した時、やり方と効果の模様を動画で撮影をして、社内イベントで成功事例として皆さんに見てもらう工夫をした」と述べた。
「今後私達が目指すビジョンは、顧客が最高の従業員を作り、従業員は最高の企業文化を作る。そして、顧客と従業員が一緒になって最高のブランドを作る。このようなところを目指していきたいと思っている。そのためにはお客様を巻き込みながら一緒に良いブランドを作っていきたい」と語った。