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グーグル・アクセンチュアが提唱する、効果を最大化するモバイルUX戦略とは?

 Post by MML編集部

新しいデジタルサービスの登場で、スマートフォンは社会の身近な存在になった。モバイルはこれからの時代、欠かせない存在と言えるだろう。しかし、表示スピードが遅く、購入プロセスが多いMobile Webやアプリが今でも存在しており、多くのビジネスチャンスを逃している。今回、どのようにすればモバイルUXが向上できるのか実例とともに説明された。

(画像右から)アクセンチュアインタラクティブ プリンシパル・ディレクター 浦辺 佳典氏 / グーグル モバイル UX リード・スペシャリスト 神谷 俊昭氏

本記事は、5月28日に開催された「Advertising Week Asia 2019(AWAsia)」より、アクセンチュア インタラクティブの浦辺氏、グーグルの神谷氏から「Accenture Interactive & Google共同調査に見る、最高のモバイル体験の作り方」というテーマで講演が行われた。

モバイルはこれからの時代に欠かせないもの

いま我々を取り巻く環境は、劇的に変化している。例えば商品を購入するためには店頭へと足を運び、そこから商品を選択。レジへと並んでお金で支払い、その後商品を家まで持ち帰る。これが当たり前の行動だった。

そういったことが、新しいデジタルサービスの登場で大きく変わった。スマートフォン、スマートウォッチ、AIスピーカーなどの登場で、これからの時代は生活者の周りにサービスが取り囲み、サービスのほうが生活者に寄り添っている形となっている。つまり生活者を中心に、サービスが再構築されている。

そういった環境において、「モバイルはこれからの時代に欠かせないもの」となっている。しかしこの言葉は、昔と今とでは、だいぶ意味合いが変化しているという。以前は、店舗、ウェブ、モバイルのチャンネルが各々存在しており、モバイルも見過ごすことができない、だからそれぞれ有効に使っていく必要があるということだった。

これからの時代は、モバイルは1つのチャネルではなく、サービスそのものとなっている。そして、サービスは我々を取り巻いている。言葉だけを聞いてしまうと、時代背景によって意味合いは異なってしまうので、これまでとこれからはだいぶ変わってくる。

既にモバイルは、生活者の購買行動に重要な役目を果たしている。約8割のユーザーは購入前、モバイルから検索している。約7割のユーザーは検索結果に応じて来店し、商品を購入している。また、約4割のユーザーは店舗の売り場でも、情報検索している。

そのほか、モバイル上でネガティブな体験をすると、約6割のユーザーが将来、そのブランドで購入する可能性が低くなるという調査結果も出ている。これからのビジネスにおいて、モバイルはとても重要な位置を占めることは前述のとおりであるが、ではビジネスパフォーマンスを向上していくために、企業はどういったことに着目して、取り組んでいくべきなのだろうか。

例えばモバイルのパフォーマンス向上とは、一般的には、ターゲットユーザーの精度向上を行ない、それに最適化された広告文やグラフィックを作り直すことだろう。最近ではそれ以外でビジネスパフォーマンス向上に繋がる方法が調査結果で明らかとなっており、いくつか実例も出ているという。

これから紹介する「モバイルUX」がその領域の考え方だ。今回、アクセンチュア インタラクティブとグーグルは、最高の生活者体験を、クライアントとともに構築していくという想いが合致し、共同で調査を行ったという。ここからは、グーグルの神谷氏が具体的な説明を行った。

モバイルUXの重要性

モバイルUXというところで、ユーザーエクスペリエンスを構成するものは何かグーグルが提供するサービスを使って説明された。「Google レンズ」は、カメラで商品をかざした瞬間に、目の前にあるものの情報が検索できるサービス。UX上重要視していることは、かざした瞬間、ユーザーがリアルタイムに感じるくらい瞬間的に検索できるところ。つまりスピード感を重要視している。

「Google 検索」で商品名を入力すると、1番近くの店舗でどんな種類が販売されていて、価格はいくらか。それはオンライン購入できるのか、実店舗に訪問すれば購入できるのか、ユーザーの気持ちを汲み取って選択肢を与えてくれる。ユーザーが何かしたいと思った瞬間、すぐに叶えてくれるというユーザビリティを重要視している。

こういったかたちでユーザーエクスペリエンスを構成するスピードやユーザビリティに関しては、企業が提供するWebやアプリに対しても同様のことが言える。例えばスピードでは、表示が早いページから遅いページへ遷移すると、遅いページはすごくネガティブな印象を与える。ユーザビリティでも、ステップの多いサイトからステップの少ないサイトへ行くと、ステップの多いサイトはネガティブな印象を与えてしまう。

グーグルの調査では、読み込みが3秒を超えるモバイルサイトは約5割のユーザーが離脱する。同様に、ステップの多いサイトからステップの少ないサイトへ移動した場合、約5割のユーザーはステップの多いサイトへ行かないと回答している。

ただ一方で、どこまで早くしたらいいのか、どこまでステップを減らしたらいいのかという声を企業からいただいているのも事実。また、施策に対する事業成果が分かりづらいため、モバイルUXに投資できずアクションが起こせないという声があるという。

モバイルUXのベンチマーク調査

アクセンチュアインタラクティブと協力し、グーグルは過去に例がないほどの調査を行った。実際にはアジア・パシフィック全体の旅行系、EC系、金融系、人材系の700 以上のサイトを約半年間かけて調査を行なった。

実際の項目はマーケティングファネルに沿って、製品・サービスの見つけやすさを表す「ファインダビリティ」、製品・サービスの訴求、製品・サービスの購入のしやすさ、モバイルならではのデザイン、サイトの表示スピードをまとめた80項目を評価指標として、1つひとつのサイトを見て判断した。

ユーザビリティが良かったグループ(調査でモバイルUXスコアが80%以上と判定されたグループ)とあまり良くなかったグループのコンバージョンレートを比較したところ、約2倍の差が見られた。つまり、UXを改善することで、約2倍のビジネスインパクトをもたらすということになる。

日本全体の平均スコアを見ると、良いところは2点。製品・サービスの訴求のしかた、そしてモバイルデザインが推奨標準80%よりも上回っていた。課題感は、製品・サービスの見つけやすさを表す「ファインダビリティ」、製品・サービスの購入のしやすさ、サイトの表示スピードの3つがあった。

その理由について神谷氏は「普段の業務で見てもらうと分かるのですが、ある製品・サービスがあって、そこに紐づく担当部署、担当社員がいます。さらに紐づくエージェンシー、プロダクションがいて、キャンペーンごとに自分たちの担当範囲を見ている。それによってこういった偏りが生じている」のだという。

課題感の大きい「表示スピード」

そして最も課題感があるのは、表示スピードのところ。推奨基準80%で見ると、アジア太平洋地域は58%、さらに日本は47%と、最も低い割合となっている。現在4Gが普及しており、今後5Gに移行していく日本において、表示スピードに対応する必要って本当にあるのだろうか疑問に思われている人も多いだろう。

一方で、サイトやアプリにアクセスしているユーザーの視点で見ると、移動しているスキマ時間、人混みの多い場所、ビルの地下など電波が届きにくい場所や、3Gの環境で携帯からアクセスしている人も多いのが現状だ。こういったところでほとんどの企業は手を打っていない。

今回調査した日本の200サイトのうち、約9割のサイトがコンテンツを圧縮できておらず、約7割のサイトがサーバの応答時間に問題があり、約6割のサイトがブラウザのコンテンツをキャッシュ設定できていないために、ビジネスチャンスを逃しているそうだ。

ユーザビリティにも課題が

一方、ユーザビリティの観点で見ると、できている会社とできていない会社に大きく2つに分かれている。Amazon やホテルズドットコムのサイトはユーザビリティに力を入れており、例えば箱根に行きたいなと思って「は」と入力すると、多くの検索候補が表示される。またカレンダーから検索すると、場所、予算、ビジュアルが一気に表示され、指の動きもそれほどないかたちで検索できる。

ユーザビリティに対応できていない企業を調査すると、約6割が検索フィルターを毎回読み込んで対応できておらず、約8割がお気に入りするためにはログインが必要な状態となっている。

ベンチマーク調査の方法を紹介

ではビジネスで活用するためにはどのようにすればよいか、神谷氏は実例を交えながら語った。以下のグラフのように、グレーの部分はベンチマークしたい会社をプロットする。例えばECの場合はAmazon、トラベルならホテルズドットコムをプロットする。次に自社が関わっている業界の平均値を吹き出しで掲載し、その後、自社の値をオレンジ色で掲載する。

広告やオーガニックで獲得するチャンスとして、グレーの部分を伸びしろとして実際アクションを起こしていくと、関係者も巻き込んでいけると神谷氏は語った。

ベンチマーク調査については「Masterful Mobile Web」のサイトで公開している。先ほどのデータのほか、調査項目、事例なども公開されている。スピードに関しては「Test My Site」から調べることができる。訪問数、コンバージョン数、購入単価などを入力すると、売上へのインパクトはどれくらいか教えてくれる。

求人情報の「バイトル」は実際にスピード改善を実施。表示スピードを70%改善したところ、応募率は14%増加が見られたという。

「バイトルの担当者、仕事を探すシーンは凄くストレスを感じてしまう作業なので、それを少しでも軽減させたい。そのためには表示スピードを改善する必要があると思い作業に取り組んだ、とおっしゃっていた。表示改善はそういったユーザー目線で取り組めるカルチャーも大切」だという。

そもそもユーザーエクスペリエンスを改善して、ビジネスを向上するためにはどういったアクションを取ったらいいのだろうか。まずは、ベンチマーク調査を活用し、大幅にユーザーエクスペリエンスを向上する。次に、AMPやPWAといった「モダンWeb」を効率的、効果的に活用する。最後に、機械学習でABテストを自動化したり、マーケティングオートメーション、広告の最適化を行ったりしてさらに効率を上げていく。

「こういった話をすると多くの企業は、機械学習から初めにやってしまい、なかなか効果が出ないという話をいただく。まずは土台であるベンチマーク調査をやっていただき、教師データを使ってマシンラーニングを活用してください」と語った。

モダンWebとは

続いてはモダンWebの話。Googleではモバイルのエクスペリエンスを考えた時、「Web」と「アプリ」の両方、欠かせないものだと考えている。調査によると、モバイルコマースにおけるWebとアプリの収益比率はどちらも約5割となっておりため、両方のメディアに対してきちんと投資を行い、UX改善していく必要がある。

Webとアプリの違い

Mobile Web(スマホサイト)の長所・短所、アプリの長所・短所というのは、相互補完の関係になっている。整理すると、Mobile Webの長所はリーチとなる。作成したコンテンツは、ブラウザで表示しようが、SNSで表示しようが、同じコンテンツとして表示されるので、いろいろなプラットフォームからアクセスできるメリットがある。またアプリの長所は、画面の表示速度、エンゲージメントの高さ、操作の使い勝手がある。

一方でMobile Webの短所は、表示速度が遅く、エンゲージメントが低く、使い勝手が悪い面がある。アプリの方は、いろいろなプラットフォームからアクセスできず、アプリストアからインストールさせるハードルがあるため、そういったかたちでそれぞれ長所・短所がある。

アプリのリーチに関しては、ディープリンクや機械学習を使って短所を改善することができる。Mobile Webは、AMPやPWAを活用することで、短所を改善することができる。具体的には、Mobile WebがAMPを使うと、1秒以下で表示される。メディア中心に採用されていたが、最近ではECまるごとAMP対応するサイトも増加している。

PWAはオフラインで表示する技術、下層ページを読み込む技術、アイコンを置く技術などを組み合わせたものである。こういったモダンWebを細かく使っていただくことで、モバイルWebの体験を良くしていってほしいと語った。