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LINE砂金信一郎氏が語る、ユーザーを感動させるためのデータドリブンなマーケティング戦略

 Post by MML編集部
月間8,000万人のユーザーが利用するLINE。膨大なデータ基盤をLINEはどのように活用しているのか。LINEスタンプでのデータ活用など、具体的な事例を交えながらデータドリブンで考えるマーケティングの未来について語った。
LINE株式会社 プラットフォームエバンジェリスト 砂金 信一郎氏
本記事は、宣伝会議が主催する「AdverTimes Days 2019 Spring」より、LINEの砂金氏から「データドリブンで考えるマーケティングの未来」というテーマで行った講演の模様をお届けする。

Always Data-driven

まず、砂金氏はLINEにおける考え方について紹介した。LINEは、人と人、人と情報、サービス、コンテンツがシームレスに繋がり、「LINE」を入り口として生活の全てが完結する世界「CLOSING THE DISTANCE」の実現を目指しており、そのミッションを実現する価値基準を「WOW」という言葉で表現している。 WOWとは、「ユーザーを感動させる初めての体験」であり、「思わず友だちに教えたくなるような驚き」を意味している。市場をリードし、世界のパラダイムを変えるNO.1サービスには必ずWOWがある。つまり、WOWを追求するからこそNO.1になれるのであり、NO.1を目指し続けるからこそ、WOWが生まれるということだ。 WOW=NO.1を目指すため、LINEでは「LINE STYLE」という、LINEらしいやり方・考え方を11項目のガイドラインにまとめている。その中から今回のテーマにも合致する「Always Data-driven」を取り上げた。これは、勘や経験ではなく、データ=事実を信じるという意味である。 続いて砂金氏は、データドリブンという考えが、LINEでは実際どのように使われているのか実例を交えながら紹介した。 「最近では、LINEのトークリストの上部にコンテンツを表示するスマートチャネルを設置しました。そこを活用するアイデアはこれまでも出ていたのですが、ユーザーに嫌われるのではないかという考えもありました。だから、一方的に情報をおくるのではなく、ユーザー一人ひとりの趣味嗜好に合わせた情報を送るようにしてみました。住んでいる地域にあった天気予報を出したり、過去に使ったサービスのクーポン情報を通知したり、ユーザーに便利だと思ってもらえる情報を配信するよう努力しています」。 さらに砂金氏は、「一斉にやるのではなく、一部のユーザーから少しずつ始めて、ABテストを繰り返して使ってもらいやすいのはどれか検証しながら行っています。このようなことをしながら現在のLINEが成り立っています。画面の改善、メニューの改善は全てデータドリブンでやっている」と語った。

行動履歴に基づいたLINEスタンプのレコメンド機能

LINEスタンプが買えるスタンプショップも、ユーザーの行動履歴に基づいておすすめのスタンプを表示している。具体的には、ユーザーの購入履歴、スタンプの利用頻度といった行動履歴に基づいて、あなたへのおすすめとして最適化されたスタンプを表示させている。 LINEスタンプの販売において、ユーザーにどのような気持ちになってもらうか想定するためには、あらかじめモデルを作る必要がある。例えばECサイトの場合、サイト上での商品購入から、配送を含めたユーザー体験が素晴らしければリピートオーダーしてくれるものだが、スタンプの場合はもう少し複雑なモデルとなる。 「自分がスタンプを買って相手に送る。もしくは友だち同士で会話していて、そのスタンプ素敵だね、買ってみようかなとか。自分1人・相手1人だけではなくて、複数の関係者の中でどういう流通経路になり、そしてどういう浸透経路になっているのかというモデルを作った上で、データ解析している」と述べた。 単純にデータがあればいいということではなく、このようなモデルをデータサイエンティストとマーケターが一緒になって、サービスごとに特化した分析を行っていると砂金氏は説いた。

絵柄と意味合いによる類似度推計

さらに、先程のようなデータを活用して予測推計するだけではなく、データベース上で類似度推計も行っているという。最近ではスタンプの数が飛躍的に増加しており、中には自分専用のスタンプやペットの写真を使ったスタンプも作れる。その中から自分に必要なスタンプを探し当てるのはなかなか大変だ。 「本来はスタンプのクリエイターが、説明文やメタタグを登録してくれると助かるけど、中にはメタタグに登録されていないものもあります。いわゆる商品情報がなくスタンプの絵柄だけがある状態になっているものに対して、LINEでは機械学習を使って、それぞれのスタンプの意味合いの類似度推計をしている」。 そして、「マーケティングの基本はデータであると言われますが、具体的にどういったデータが必要なのか掘り下げた時、LINEスタンプの場合は、ユーザーの行動データとスタンプの属性データ、この2つが非常に重要だと考えていて、これを日々膨大なデータを駆使しながら分析を行っている」と述べた。 このデータ分析はスタンプ以外にもさまざまな場所で行っている。例えばLINEの広告サービスでも、配信条件を設定するごとに想定ユーザー数を割り出すような属性推計も行っている。

カメラ撮影した画像から商品推計

類似度推計はLINEから買い物が楽しめるショッピングサービス「LINEショッピング」でも応用されている。LINEショッピングからカメラモードで写真を撮ると、あなたが探している商品はこれですかと、LINEショッピング内の類似した商品が表示される。これができると、予想して検索しなくても、対象の商品にたどり着くことができる。 「これは簡単そうに見えるが、特定のブランドを類推するのはとても難しい。この検索の裏側には巨大な画像解析データと画像解析によってできあがったAIエンジン、ECサイトと連携した多くのメタデータがあります。そして類推して表示された商品がきちんとタップされたのかを検証するビッグデータも搭載されている」。 「AIというとAIスピーカーを想像する人も多いが、我々がこだわっているのは、推計して提示した情報がきちんとタップされているのかを検証し、継続的な改善ができるものをAIと呼んでいる」。こういった機能はバックエンドで活躍しているが、今回マーケティング全般の活動として紹介された。

AI技術のマーケティングへの活用

今まで研究開発の段階だった人工知能が、ユーザー体験を支える裏側として多くのサービスで活用されている。LINEは今後、AI技術をマーケティング分野でどのように活用していくのか、目指す姿について語った。 LINEが開発したAIアシスタント「LINE Clova」。今までは「Clova」と話しかけるとClovaが起動する仕組みになっているのだが、例えばテレビCMのなかでClovaという音声が流れたときにも、自宅のClovaが勝手に起動してしまう場合があったという。それを改善する方法として「Clova」ではなく「ねえ、Clova」と話しかけると起動するように改善した。起動の認識率はリリース当初より10%アップ、学習データ量は2.3倍にもなったという。 「スマートスピーカーを使った広告商材はそれほど登場していないのですが、例えば『きっとこの人は料理をしていてレシピを調べたいのだろう。手がふさがっているのなら何かお手伝いできることはないか』ということを理解して必要なサポートをするサービスなど、ユーザーの生活や行動に密着したビジネス展開を外部の企業とも連携して一緒に考えていきたい」と語った。 今後は、チャットボットエンジンや画像認識、OCRなど、いままでLINEが提供してきたサービスの中で活用されているAI技術を、外部の企業にライセンシングしていく準備を行っている。 最後に、LINE全体としての今後の戦略にも触れた。LINEは今後、AIやコマースに加えてフィンテック領域でもチャレンジを行っていく予定だ。砂金氏は、「モバイル送金・決済サービス『LINE Pay』を中心に様々な金融サービスを展開していく。我々は決済額を増やしたいわけではなく、より多くのユーザーに『LINE Pay』を通じた便利なユーザー体験を提供していきたい。さらに『LINE Pay』を中心に保険、金融、ローンなどのサービスも提供することで、皆さんの生活をもっと豊かにできると考えている」と語った。 そして「今後、コミュニケーション、金融、広告などの各サービスがより密接な関係になってくると思います。我々はデータプラットフォームとして、皆さんがお持ちのデータの活用を積極的に支援していく。いかにユーザーが欲しいと思う情報やサービスを提供できるかがこれからの勝負だ」と語った。

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