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テレビショッピング通販「QVCジャパン」、公式アプリを活用して売上に貢献するマーケティング戦略

 Post by MML編集部
24時間365日放送するテレビショッピング通販サービス「QVCジャパン」が提供する公式アプリの導入事例。ECシフトが加速した2016年、公式アプリのプッシュ通知をリリース。しかし、すぐに大きな開発はできないことから、社内リソースを活用してセッション数を増加し、売上に貢献するために動き出した。担当者が行った3つの施策とは? QVCジャパン 平瀬 真子氏、奥原 真理子氏
(画像左から)株式会社QVCジャパン eコマース&カスタマーマーケティング マーケティングプランナー 平瀬 真子氏 / アシスタントマーケティングプランナー 奥原 真理子氏
本記事は、Repro、ロケーションバリュー、FROSK、モンスター・ラボの4社共催で開催された「アプリの虎 Vol.4 ~有名企業のアプリ活用最前線~」より、QVCジャパンの奥原氏、平瀬氏から「~バージョンアップだけに頼らない~『マーケの力でアプリは育つ』」というテーマで講演を行った。

アプリ担当者を悩ます大きな課題

世界最大のテレビショッピング通販サービスQVCが提供する「QVCジャパン」アプリは2011年にリリース。テレビ番組を見て電話で注文するスタイルが主流であるが、そういう方がアプリ上から簡単に、もっと早く購入できたらというニーズがあって、社内チームで公式アプリを開発した。 2016年、世の中ではECシフトが加速しており、総務省の調査でも7割の人がスマートフォンを持っている状況で、QVCジャパンの中でも公式アプリの存在が注目された。社内でもアプリを活用してもっとカスタマーを増加し、売上を伸ばすことができないかという話が出てきた。すぐに大きな開発はできないため、まずは全てのカスタマーにプッシュ通知の配信を開始した。 そんななか具体的な課題は大きく3つあった。1つは、プッシュ通知を活用してカスタマーを活発化していくこと。2つ目は、アプリストア上にさまざまなレビューが書かれているが、新規ダウンロードを積極的に促せるよう改善すること。3つ目は、電話注文が主流のQVCジャパンでは、なかなかアプリ改修に手が回らないというジレンマがあること。 「私たちの課題は、機能追加せず、できるだけ社内のマーケティングチームの力でセッション数を上げていくかというところにあります。具体的には3つあって、まずは安定的なアプリを提供し、ユーザー体験を向上すること。2つ目は、カスタマーが欲しい情報を提供してセッション数を上げていくこと。3つ目は、アプリの新規カスタマーを獲得するために、自社が保有するコミュニケーションチャネルを使ってアプリに誘導すること」であると奥原氏は述べた。

安定的なアプリを提供する施策

お客様から「QVCアプリが起動しないので対応して欲しい」という電話がサポートにかかってきた。マーケティングチームは現象を再現するため、さまざまな端末でテストを行う。原因が追求できたあと、その状況をITチームへ伝えるが、タイムラグが発生して改善するまでに時間がかかってしまう。このような状況は、どのアプリ運用者でも起こる状況だ。 QVCジャパンは、安定的なアプリを提供しユーザー体験を向上するため、「SmartBeat」を導入した。あるアプリがクラッシュすると管理画面に記録される。そのクラッシュはどのOSでバージョンはいくつか、どんな端末で発生したのか管理画面上から判断できる。ITチームも同じ管理画面で確認できるので、素早く作業ができるようになった。

カスタマーに有益な情報を配信

一般的にアプリを運用しても、ユーザーの好みや開封しやすい時間帯などはプッシュ通知を送っているだけでは分からない。今回、カスタマーに有益な情報を提供するため、「Repro」を導入した。2017年6月に導入し、ABテストを行った結果、セッション数が劇的に改善できた。 その中で実際に行った、ABテストの事例を紹介された。1つは、配信時間のテスト。通常、QVCジャパンでは、24時に一番オトクな商品をオンエアーする。そのためコアなお客様は、24時に合わせてアプリを起動している。それならば、24時に起動しないお客様は何時にプッシュ通知を打ったら最も開封してくれるのだろうか? 24時に開封しないお客様を絞り込み、いつの時間帯が開封しやすいのかABテストを行った。その結果、朝(7時~9時)よりも夜(20時~22時)の時間帯に配信したほうが、約4.4%開封率が高いという結果となった。 2つ目は、文言のテスト。QVCアプリでは、商品をお気に入り登録されたカスタマーを対象にプッシュ通知を打っている。今までは、対象の商品に合わせたプッシュ通知の文言をスタッフが1つひとつ作成して配信していたのだが、積極的にお気に入り登録されたカスタマーなのだから、定型文でも効果があるのではないかと思い、ABテストを行った。 その結果、商品に合わせたオリジナルの訴求文言よりも、定型文のほうが、約1.7%開封率が高いということが分かった。1か月間テストを行って、結果のいい方に合わせて配信を行っているという。

他チャネルカスタマーをアプリへ誘導

QVCジャパンでは既存顧客のライフタイムバリュー(LTV)を向上させるため、アプリへ誘導を行っている。具体的には、電話注文されているお客様を対象に、アプリのメリットを訴求したチラシを注文したダンボールに同梱して、公式アプリに誘導している。 なぜ電話注文のお客様をアプリに誘導したのかというと、電話カスタマーとアプリカスタマーの1年間における購入金額が違うからである。電話カスタマーよりもアプリカスタマーの方が、約2.1倍購入金額が高くなっている。そのため電話からアプリに誘導しているという。 なぜこんなに購入金額が違うのかというと、「そもそも電話で注文するお客様は、QVCジャパンのオンエアーを見てから商品を購入しています。そのためオンエアーされていない商品は購入するタイミングがありません。さらに、こちらからコミュニケーションを取りたい場合は、ダンボールにチラシを同梱してお知らせするしかないので、コミュニケーションに即時性がありません」。 「一方アプリは、オンエアーの有無にかかわらずアプリ上に商品が掲載されているので、主体的に購入してもらえます。さらに、こちらからプッシュ通知やアプリ内メッセージなど、即時性のあるコミュニケーションが可能です。つまりカスタマーが欲しい時に商品を購入することができ、新着情報が届けられるので、購入金額も高くなる」と平瀬氏は解説した。 今までのまとめとして、マーケの力でアプリを育てるためには、クラッシュ管理ツールを使ってエンジニアとタイムリーにネガティブ要素を排除していくこと。次に、プッシュ通知ツールでお客様に有益な情報を最適なタイミングで提供し、顧客ロイヤリティを高めること。最後に他チャネルにいるお客様を既存のリソースを駆使して、アプリへ誘導すること。 そうすることで、アプリの改修をしなくても売上を伸ばすことができると平瀬氏は語った。

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