世界累計利用者数4900万人を誇るスマホアプリ「モンスターストライク」のデジタル領域におけるファンマーケティングの事例。モンストでは、オフラインイベント、ソーシャルメディア、Web広告といったメディアを活用して、ファンとの交流を行っている。今回、アクティブユーザーや休眠ユーザーに対して、どのようなコミュニケーションを取っているのか、具体例を挙げながら解説された。
株式会社ミクシィ マーケティング本部 マーケティング戦略室 デジタルマーケティンググループ マーケティング開発チーム 明畠 利樹氏
本記事は、D2C Rが主催する「
#MarketingLIVE Vol.3」より、ミクシィの明畠 利樹氏から「データ×ファンマーケティング -モンスターストライクの大規模データを用いたデジタル広告領域におけるファンマーケティング事例-」と題した講演の模様をお届けする。
「モンスターストライク(モンスト)」は、2018年12月末現在、世界累計利用者数4900万人のスマホアプリ。既存ユーザーであるファンと交流は、「XFRAG PARK」と呼ばれるオフラインイベント、アニメーション、各ソーシャルメディア、Web広告などを使っている。
ミクシィが考えるWeb広告を通じたファンとの交流、つまりファンマーケティングとは何だろうか。それはゲーム内に存在するさまざまな層のユーザーに対してWeb広告を媒介し、ユーザーとのコミュニケーションを図ることである。それによってゲーム内のユーザー行動を活性化させることを目的としている。
データを活用したファンマーケティング
とはいえ、4900万人の利用者全員に向けて広告を配信しても、費用は莫大なものになるし、費用対効果は見合わない結果となってしまう。そのため、効果的なファンマーケティングを行うために、既存ユーザーへどのように広告配信を行うべきか綿密に計画することが必要だ。
モンストでは、過去5年間のゲーム内ログデータを管理している。また、各ユーザーのクリックデータといった広告ログデータも管理している。この2つのデータを社内DMPに取り込んで、何かの施策を実施する時に活用している。
「例えば以前このキャンペーンに参加してくれたユーザーに、もう一度キャンペーンに参加してもらいたい時、DMPを活用する。または、以前このキャラクターを出した時クリックしてくれたユーザーは、ほかにも似たようなキャラクターを持っていないのか、クリエイティブの参考としてDMPを活用している」と解説した。
このようにデータを上手く活用することで、マーケターに属人化せず、より良い広告施策を実施することができるようになる。これらがデジタルを活用したファンマーケティングを行う上での肝となっている。
ファンマーケティングとは、広告を通じてユーザーのゲーム内行動を活性化させることが目的だが、そのユーザーとは「ヘビーユーザー」「ライトユーザー」「休眠ユーザー」の3つに大別できる。そして休眠ユーザーは、もう一度ゲームプレイを促す休眠施策を、ヘビーユーザーとライトユーザーはゲーム内行動を活性化させる施策を行うことができる。
休眠ユーザー獲得施策
まずは休眠ユーザー獲得施策。これはゲームに飽きたのか、周りにやる人がいなくなったなどの理由でゲームを放棄しているユーザーに広告を配信、ゲームの熱量を取り戻していただくのがこの施策の狙いである。
ゲームをログインしていない日が長ければ長いほど、ゲームへの熱量も下がっていると考えられる。休眠している期間を定義して、DMPからユーザーを抽出。広告配信して休眠ユーザーの獲得を狙った。この配信によって、約4割の休眠ユーザーを取り戻すことができたという。
熱量が下がったユーザーが休眠するという法則が成立するのであれば、これから熱量が下がりそうなユーザーを見つけ、広告配信すれば予防できるのではないかと考えられる。ではどうやって熱量が下がりそうなユーザーを見つけるのだろうか。我々は、機械学習を利用していると明畠氏は述べた。
開発チームが開発した機械学習システムとDMPを連携し、ログイン日数、プレイ日数などからそろそろ熱量が下がりそうなユーザーを抽出。そのリストをCSVにまとめて広告を配信している。この配信によって、約7割のユーザーがゲームの継続に成功したという。
アクティブユーザー活性化施策
今度は、アクティブにゲームを楽しんでいるヘビーユーザー、ライトユーザーへのアクション施策。この層に対しては各種イベント広告を配信することで、ゲーム内でさらなるプレイへとつなげることができる。また、新しい獣神化のキャラクターを訴求することで、ガチャが増えるといった行動が促進される。
モンスト最大の特色といえば、最大4人のマルチプレイができるところにある。マルチプレイしてくれるユーザーをさらに増やし、活性化していきたいというのが施策の狙いとなる。
それらを実施するため、DMPを活用し、機械学習からユーザーを抽出。今回は、広告を見たらマルチプレイが増えそうなユーザーを定義し、リストを作成。そのリストに対し、マルチプレイを促進するような広告を配信する。この結果、約7割のユーザーがマルチプレイを行ってくれたという。
このように、きちんとターゲットをすればゲーム内の行動も活性化でいるということが分かってきたので、全体の売上アップにも貢献できるのではないかと明畠氏は力説した。
「我々は自社で膨大なデータを持っている。今後、企画やクリエイティブとの連携を強めていって、そもそもファンとはどういう人達かをデータから導き出して、今後の施策に活かしていく。それをデジタルマーケティングだけではなく、様々なマーケティング活動にまで広めていけたら」と展望を語った。