一日の楽しい出来事を写真で投稿し、一般人だけではなく芸能人も利用者が多いインスタグラム。企業もコミュニケーションの一環としてインスタグラム広告を活用している。どうすれば広告効果が最大化できるのか、現在のユーザー像を振り返りながら、効果の高い配信手法やクリエイティブについて披露した。
フェイスブック ジャパン株式会社 執行役員 本部長 田野崎 亮太氏
本記事は、11月28日に開催された「日経クロストレンド EXPO 2018」より、フェイスブック ジャパン 田野崎氏の講演「国内利用者のインサイトから紐解く、Instagram ビジネス活用の最前線」の模様をお届けする。
現在インスタグラムは、国内のアクティブアカウント数は月間 2,900万人ほどがアクセスしており、2017年からの1年間で、900万人ほどにまで増加している。成長の速度が拡大しているため、今後もコミュニティは拡大し続けている。
4割以上の男性が利用するインスタグラム
インスタグラムは、一般的に「若者のメディア」「女性のメディア」と呼ばれていた。調査によると、インスタグラムを利用する43%が男性であるという。その男性にインスタグラムの利用頻度はどう変わっているのか質問したところ、91%の男性は、去年と比べてインスタグラムの利用頻度が増加したと回答している。
では、ユーザーはどんなタイミングで、インスタグラムにアクセスしているのだろうか?ユーザーの5人に1人は「目覚めの時間」にインスタグラムへアクセスしている。フェイスブックやインスタグラムは、その人がどんな情報が好きなのかアルゴリズムを通して好みの情報が流れる仕組みになっている。そのため、好きなものに囲まれているから朝の目覚めがいい。今日もがんばろうという気持ちにさせてくれると田野崎氏は語った。
そのほか、20%のユーザーは毎日、インスタグラム上の検索機能を利用している。そしてグローバルと比較して3倍のユーザーが、ハッシュタグ検索をされているという。
なぜ、わざわざインスタグラムでハッシュタグ検索をするのか、という理由について田野崎氏は「利用者に聞いてみると、Webサイトにも写真は載っているがリアルではない。ユーザーが載せているリアルの写真を見ることで、自分自身が本当に行きたいところが検索できる、という声があった」のだという。
では、どんな内容を求めてユーザーは、インスタグラムを活用しているのだろうか。インスタグラムを新聞やテレビと比較した調査では、「最新トレンドを見つけることができる」「友人と話す話題を見つけられる」といった項目が非常に高かった。なおかつ、「自分のニーズに合ったコンテンツに出会える」という評価も高い。
具体的にインスタグラムでは、どんなコンテンツが見られているのだろうか。2017年に調査したデータを見ると、「有名人の投稿」や「友人の投稿」を見るという方は最も多い。しかし、2015年と2017年を比較したデータの「増減」を見ると、「料理」「旅行」「動物・ペット」「スポーツ」といった項目が増加している。
コンテンツの変化について田野崎氏は「以前は、インスタ映えするような、きらびやかな非日常の写真に注目が集まっていたが、最近では自分の趣味・嗜好に合ったコンテンツに注目が集まっている。そういったプラットフォームになってきている」と述べた。
我々はストーリーに注目している
いろいろなコンテンツが見られている理由に、ストーリーがあるのではないかとフェイスブックでは注目しているという。実際、インスタグラムのストーリーを毎日使っているユーザーは、グローバルで4億人ほどにまで拡大している。
「なぜ我々がストーリーに注目しているのかというと、2018年第三四半期の説明会で、マーク・ザッカーバーグ氏が、今後フィードにおけるコミュニティを、ストーリーのコミュニティが超えていくのではないかという話をしている。それくらいストーリーに対する利用頻度が拡大している」状況だという。
なぜ、これほどまで伸びているのか。ストーリーは24時間でコンテンツが消えてしまうから、ユーザーは気軽に投稿することができる。そのため、日常的な風景など、いろいろなコンテンツを見ることができる。
日本では、デイリーで使っているユーザーの70%は、ストーリーに投稿したことがある。また、ストーリーは2016年に開始されたサービスだが、この2年間で投稿数は20倍まで拡大している。
企業におけるストーリーの取り組み
企業もストーリーを使った広告展開に乗り出している。ストーリーでは、プロのカメラマンが撮ったような綺麗な写真というより、むしろ自撮りで撮影したような、より日常の1シーンを表したような投稿をされるようになっている。
フェイスブックが調査した結果では、80%のユーザーがビジネスアカウントをフォローしているそうだ。そしてストーリーの 1/3 が、ビジネスアカウントによる投稿だったという。こういった意味では、非常にビジネスとも相性がいいプラットフォームである。
そのほか、インスタグラム上で商品・サービスの投稿がきっかけで、次の行動を起こしたことがある人は82%いるという。つまり、投稿を見たユーザーは、キーワード検索したり、Webサイトへアクセスしたり、実店舗に行ってその商品を手にした人が8割いることになる。
なおかつ43%は、後日ブランドサイトやECサイトで商品確認や購入をしたそうだ。単純にビジネスとの相性がいいというわけではなく、その後のアクションまで取られていることが分かっている。フェイスブックでは広告フォーマットを通じて、企業がユーザーとインタラクションできるよう展開を行っている。
フルファネルで活用できるインスタグラム
ここまでユーザーが増えてくると、インスタグラムを活用して広告を投下したい企業もいるはずである。そもそもインスタグラムは、「認知」「興味・関心」「購入」と、どのファネルに有効なプラットフォームなのか疑問を持つ方も多い。インスタグラムは、どのファネルにおいても広告を提供できると田野崎氏は語る。
「認知」を例に取ると、例えば、テレビに1億円、フェイスブックとインスタグラムの2つで1,000万円広告を投下した時、各リーチの割合はどれくらいあるのか、インテージと共同で接触度調査を行った。
テレビに広告を投下すると、40%ほどリーチを獲得することができた。続いてフェイスブックとインスタグラムに広告を投下すると、合計で30%リーチを獲得することができ、インクリメンタルのリーチは14%ほどのリーチが獲得できたという。フェイスとブックとインスタグラムは、リーチの効率として、十分に獲得できるメディアになっていると田野崎氏は語った。
ストーリーとサーチを併用したらコンバージョン数が増加
続いて「購入」を例に取る。IT/Web業界の求人メディア「Green」の事例。今までリスティング広告(サーチ)に力を入れていたのだが、今回インスタグラムにも投資することになった。インスタグラムのフィードだけではなく、ストーリーも併用すると効果が上がるということで、併用した広告を投下した。
その結果、ストーリーとサーチと比較するとCVRは115%増加した。ストーリーとフィードを併用した広告とサーチを比較すると、コンバージョン数では107%増加となり、今後もインスタグラムを活用しようということとなったそうだ。
「自動配信」にしたらリーチ数が140%増えた
先程の事例のように、インスタグラムのフィードとストーリーを併用するとコンバージョンが上がったのだろうか。それは、広告を自動配信するとリーチ数が増加し、その結果コンバージョン数も増加したからだ。
例えば、フェイスブック単体で広告を投下するより、フェイスブック、インスタグラムのフィードとストーリーを併用して自動配信したほうが、140%リーチが伸びた結果も出ている。
なぜそれが可能のかというと「フェイスブックおよびインスタグラムの価格は、時間帯によって異なっている。つまり需要と供給の関係で需要の少ない時間は価格が高くなってしまう。自動配信はその時間帯から価格帯のメディアを選んで自動的に配信するため、いつも以上に広告を配信できる」と、その仕組について解説した。
メディアが増える分、それに合わせたクリエイティブを作る手間が発生してしまうと考える人も多いだろう。そのため、自動配信機能では、投稿された画像をもとに各メディアにあった大きさへアルゴリズムで整形して配信を行ってくれるそうだ。
普通に動画広告を出しても効果は現れない
モバイルでの利用スピードは、通常のものと比較して1.5倍早いと言われている。そのため広告を出してもすぐにスクロールされてしまう、そんな環境に置かれている。今までのやり方で広告を出しても、なかなか態度変容まで行かないのが実情だ。
今までメインとなるメディアは「テレビ」だった。テレビのコミュニケーションは起承転結で構成されており、最後に提供する商品・サービスの「メッセージ」や「ロゴ」を表示させるのが一般的だ。
一方でモバイルの場合、通常より1.5倍のスピードでスクロールされてしまう状況のため、いかに最初の3秒間でキーとなるメッセージを伝えることが、非常に重要なポイントとなってくる。
クリエイティブを作る上で重要な 3つのポイント
モバイルで見てもらう広告を作るに当たり、どういったポイントで進めていったらいいのだろうか。それは大きく3つあると田野崎氏は披露した。
1つ目は「美しく一言で伝えること」。通常のテレビCMをそのままのかたちで提供すると、その広告は結論が最後に出ることとなるから、ユーザーは気づかずに次の投稿を見てしまう。そのため、始めから商品ロゴを表示したり、あるいは商品の特徴を別枠に設けてアピールしたりすることで、商品の良さを美しく伝えることができる。
2つ目は「一瞬でアテンションを捉えること」。モバイル広告は最初の3秒が重要になるため、ロゴを前後させたり、最初からコンセプトをアピールしたりと、次はどういう事が起こるのかといったものを、短い間でいかに注目させることがポイントとなる。
3つ目は「縦動画を最大限活用すること」。調査によると、横長の動画、正方形の動画、縦長の動画のうち、態度変容に効果が高かった動画は何か尋ねたところ、70%は縦型動画を選んだという結果が出ている。
なぜなら、ユーザーがスマートフォンを使っている時間のうち、90%が縦型で使用しているという結果が出ている。また米国のミレニアム世代のうち72%は、横長の動画が表示されても、スマートフォンを横にせず、縦のままで動画を視聴するという。
人間の動作として、縦型で見るのは自然の姿であり、縦のまま見る環境に合わせてクリエイティブを作っていくのかというのは非常に重要である。
「ソーシャルメディアの広告はテレビのクリエイティブとは全く違うため、最初にいかにアテンションを取っていくか、縦で見る形でクリエイティブを作っていくことが競争優位につながるので、ぜひこのポイントを抑えてやっていただけたら」と語りセミナーは終幕した。