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Amazonセス・デレイヤ氏が広告効果を解説。スタートアップが数年で「スーパーボウルのCM」を出せるまで成長したeコマース・マーケティング戦略

 Post by MML編集部

今回は、米国 Amazon の広告メディア事業責任者であるセス・デレイヤ氏(アマゾン・アドバタイジング副社長、グローバルセールス&マーケティング担当)が、eコマースを舞台に繰り広げられている、さまざまな最新マーケティング施策とその背景について講演。 そして、スタートアップから大企業まで多くの事例を披露した。

Amazon, Vice President of Global Advertising Sales and Marketing at the Amazon Media Group, セス・デレイヤ氏

本記事は、10月5日に開催された、コムエクスポジアム・ジャパンが主催する「アドテック東京」より、Amazon のセス・デレイヤ氏の講演「The Power of eCommerce Marketing(eコマース・マーケティングの効果)」の模様をお届けする。

消費者が新しい商品に出会った、あるいは新しいブランドを検討していて試してみようと思った瞬間、デジタル技術を媒介してブランドが新たなお客様とやり取りをし、さまざまなマーケティングチャンスが生まれてきている。

わずか数年で大成功した「Bai」のeコマース・マーケティング戦略

2009年に創業された「Bai」という飲料メーカー。 創業当時、アメリカでは全く知られていないメーカーで、取扱商品も「機能性強化水」というアメリカにとって非常に新しいカテゴリであったことから、彼らにとっても大きな課題であると感じていた。

そこから短期間で eコマース・マーケティング戦略を打ち立てて、Bai はスタートアップ企業から「スーパーボウル」に CM を放映する企業にまで成長した。こちらは Amazon と協力しながらブランド構築にあたっていったという。

多くの企業が Amazon で商品を販売する時、商品詳細ページを“商品の顔”として位置づけている。Bai は特にブランドマーケティングの為にランディングページを使う戦略をたてた。 消費者はもっと商品のことについて知りたいだろうと考え、原材料についての詳細やどのような方法で自然な甘みをつけているのだろうか、などということに関心を持っていると考え、かなりの労力をかけて Amazon ストアというセルフサービスでブランド専用ページが作成できる無料サービスを利用して商品ページを作り込んだ。

Amazon にアクセスをして、商品について学びたいと思った消費者は、商品の詳細を説明している文章や動画を見ながら学習し、そして納得して商品を購入検討される。さらにペイドメディアを使ってページのアクセス増加を促した。アクセスが増えていくと購入検討も増えると彼らは考えたわけだ。オンラインでの認知があがり購買も増加し、その結果実店舗での棚も取れるようになった。

そして購入が増えていくと、消費者たちは Amazon にレビューを書いて、Amazon にやって来る他の消費者に共有する。 この商品は新しいカテゴリということもあって、消費者は口コミを重要な要素の1つとして活用している。

商品の購入数が増えると、ブランドとしては購入頻度を高めたいと考える。特に飲料となれば 購入頻度は重要な鍵になってくる。そこで Amazon は Bai とともにロイヤリティプログラムを構築した。これまで購入された顧客に対して、インセンティブを出して「定期購入」というかたちで購入していただくようオファーを送った。

この戦略のインパクトは目を見張るものがあったとセス氏は語る。 そして2015年、BaiはAmazonが主催する「ベバレッジ・オブ・ザ・イヤー」に表彰された。 2016年には、フォーチュン誌が全消費財の中でオンラインで最も成長しているブランドの一つであると評価。 ニールセンも「ブレイクスルーイノベーションアワード」で Bai を表彰した。

Bai は、従来の確立された飲料メーカーから一目置かれる存在となった。2017年、Bai は 17億ドルでドクターペッパー・スナップルに買収されることになる。非常に大きな成功ストーリーであり、私どもも共同でブランド構築できたことを大変嬉しく思っているとセス氏は語った。

最初のファネルで広告を出して成功した「ネイチャーラボ」

ここでセス氏は、日本企業との事例を紹介。非常に興味深い 斬新的な事例だと付記した。

Amazon は「ネイチャーラボ」と協力してキャンペーンを開始。Amazon の広告キャンペーンは、消費者が Amazon へ来た時 何をしているのか、そしてどこへ行くのかを知ることができる。

その結果として、ネイチャーラボの多くの消費者はモバイルを利用していることが分かったため、ゲームを活用した新商品のキャンペーンを実施した。それは指を使って音楽を奏でるゲームで、その音楽に合わせてリズムよくタップしていく。そして上手くプレイができると、トライアル商品のクーポンが貰えるという仕掛けである。

このキャンペーンは商品の認知度を上げることができ、同時にトライアル商品も購入していただけるというもので、結果は非常にいいものだった。ネイチャーラボはこのキャンペーンによって、売上を 300%以上伸ばすことに成功した。これだけの効果を出せたのは稀な事例だという。

「これは Amazon と協力することによって、単純にスポンサー広告を一番後のファネルに出すだけではなく、一番初めのファネルに出して多くの消費者に働きかけることによってトラフィックを上げ、最終的に売上を伸ばすことができたわけです。こういったイノベーションは、eコマース・マーケティングで新商品を投入するときに使える、非常に良い事例と言えるでしょう」。

ライフスタイルを伝えることに徹底した「Diageo」

続いては「Diageo」という酒造メーカーの事例。Diageo はスピリッツなどの飲料を出していて、高級なウィスキーなどの商品も出している。Diageo のマーケティング戦略は、価格を安くして消費者にトライアルしてもらう方法よりも、むしろブランドが醸し出すライフスタイルを消費者に伝えたい と彼らは考えている。そこで Diageo は、Amazon に一緒にできないかと相談にやってきた。

そこで Diageo とともに動画を作成した。1つひとつのブランドは、各々ウィスキー市場を持っており、この動画は対象のブランドに合わせたコンテンツとなっている。

今回のキャンペーンで重要なコンセプトは3つあるとセス氏は述べた。1つは「Experience」、正しい体験を消費者にしてもらうこと。 消費者が商品詳細ページに来た時、正しいエクスペリエンスを提供する。2つ目は「Moments」、どのようにお客様をエンゲージメントするのかを考える。 正しいタイミング、正しいデバイス、正しいスクリーンで、エンゲージメントできるか。

3つ目は「Insights」、広告への投資によってどんなインサイトが得られるのか。 それは、売上データやショッピングジャーニーに関する考察かもしれないし、どのような消費者がこの商品を買っているのかといった情報かもしれない。

セス氏は Experience の具体例として、「TALISKER」というブランドの商品詳細ページを紹介した。これは従来の詳細ページの構成とは異なっているもので、TALISKER では動画をメインの場所に配置してブランドのコンセプトを訴求している。

消費者がこのページに訪れると動画を見ることができるし、動画では TALISKER がどんなにユニークなブランドで、そのブランドの世界観やライフスタイルを訴求することができる。リッチな動画コンテンツを媒介に TALISKER ブランドの情報を入手することができる。

ブランドに適したランディングページ(商品詳細ページ)があると、どこからトラフィックを誘導するのか課題になってくる。 以前からウィスキー全般の情報に関心を示した消費者にも積極的に、革新的なデバイスでブランド体験が提供できるので、Fire TV、OTT デバイスを使ってプロモーションを行った。ビデオコンテンツも各デバイスに適しており、エンゲージメントはさらに高まった。

その結果として、Diageo のキャンペーンに対してROASは30%増加。そしてセールスの売上は、前年対比で 50~250%増加した。 これはヨーロッパで展開してきたので、ヨーロッパの国によって差があったが、最低でも前年対比で 50%増加することができた。

商品の価格が非常に高いということもあって、eコマース・マーケティング戦略というものが過去にはあまり検討されなかった。しかし、工夫をこらすことによってここまで成功をおさめることができたという興味深い例だ。

セス氏はこのほかに Amazon が取り組んでいるリマーケティングについても言及した。Amazon のリマーケティングは購買ファネルの一番下にある。興味・関心を示した商品あるいはブランドごとでお客様にマーケティングメッセージを提示することが可能なので、特定の商品の検討や購入をまだしていない消費者には非常に有効である。

サードパーティの調査によると、Amazon で購入する消費者の 67%は、実際にサイトへアクセスした時に何を購入するのか分かっていない状態でアクセスしているという。 つまり、ファネルの下にあってもいろいろな発見があることを示唆しており、そしてストアの中では、クロスショッピングが多々起こっているということになる。

eMarketer マーケッターによると、ショッピングサイトに来て起こした行動で購入につながっている人は 2.5%である。「つまり、eコマースサイトへやってきて、そのまま購入をしないで離れていく人は9割以上というわけだ。そうなると離れていった人たちに、いかに再びサイトや実店舗へ来てもらうためにはどうしたらいいかということになります」。

「Amazon において、リマーケティングの能力を構築してきました。 なぜならこれは、非常に効率的で効果的な手段であると信じているからです。これは単純にファネルの一番下をすくい上げる機能ではないと考えているからです」とセス氏は力説した。

自社調査によると、Amazon のリマーケティングを使った場合と 使っていない場合では、ROAS は前者のほうが 1.4倍も購入が高いということが分かっているそうだ。

さらに、対象のブランドをリサーチした人を対象にリマーケティングを行った場合、投資効果は 17倍という結果が出たという。「うっかり商品の詳細ページへ行くという人はなかなかいないでしょうから、もちろんその行動には意図があったということが重要なわけです。リマーケティングはそういった消費者を掴むことができるのです」。


「日本のニールセンの調査によると、実店舗で買い物をする 20%の人が、オンラインで調べてから実店舗で購入するという結果が出ています。つまり、eコマースで行われている活動の全てがeコマースで完結されているというわけではありません。マーケターの人たちは、eコマース・マーケティングはオンライン以外である”オフライン”にも影響があるということを理解して欲しい」。

オンライン広告で実店舗の購入を促した「アサヒビール」

Amazon は、アサヒビールの「クリアアサヒ」という商品における、リローンチのキャンペーンを行った。多くの人はビールの情報についてオンライン上で調べているのだが、購入についてはほとんどが実店舗で行われているため、Amazon に投資することによって Amazon で買わずに実店舗で購入している人はどれくらいいるのか調べてみることになった。

サードパーティの調査によると、オフラインの購入額は広告投資に対して 10倍のリターンが推計され、そして、オフラインで購入率は、広告接触者の方が非接触者と比較して 6.7%高かったことが分かった。

「マーケティングプランの重要な部分に Amazon は存在していますが、その効果はオフラインの方にも波及しています。つまりオンラインのマーケティング投資は、オフラインにも影響を与えていることが分かりました。 私達はこの分野でも投資していきたいと思っています」。

こうして成功例を紹介したわけだが、eコマース・マーケティングにおいては、いろいろな角度からお客様との接点を持つことができるが故に、「認知度を上げる」あるいは「売上を伸ばす」という意味で、どういう戦略を組めばよいのか、時として不安を感じるブランドもいるのかもしれない。セス氏はセミナーを以下の言葉で終幕した。

「最後になりますが、皆さまに Amazon とどのように協力してeコマース・マーケティング戦略が作れるのか理解してもらいたいと思います。 Bai のようなスタートアップにも効果的です。 また、Diageo やアサヒビールのような大手企業の広告に効果的です。 皆さまともっと親密なパートナーシップを確立したいと思います」。