Webメディアからの紹介で新しいアプリをダウンロードしたけれど、期待した通りの事ができずに結局、アンインストールした経験を持ったことがある。Smoozは、片手で直感的に利用できるブラウザアプリ。直感的なジェスチャ操作を体感してもらうために行った、UX施策とは何か。
アスツール株式会社 代表取締役 加藤 雄一氏
本記事は、Reproが主催する「Onboarding Hack! ~アプリUX設計の最適解を考えよう~」から、アスツールの加藤氏より「オンボーディングは小学校の理科の先生の気持ちでつくろう」というテーマで講演が行われた。
Smoozとは、片手で簡単かつ効率的に情報を発見できるブラウザアプリである。直感的なジェスチャ操作が行え、AIが次に読むページを予測して、検索せずにすすめてくれる。そして他のブラウザと比較して、高いカスタマイズ性を持っている。
今回は、Smoozの特徴である「直感的なジェスチャ操作」を体感してもらうために、オンボーディング施策からユーザーの継続利用をいかに上げるか、というところにフォーカスした。
ランキング上位のアプリほど継続率が高い
アプリビジネスのなかで最も大事なことは継続率である。Webの場合は流入経路が大事であるが、アプリの場合、アプリを立ち上げてもらわないと何も始まらない。逆に継続率の低いアプリはどんな時でも起動してもらえないから、やがてアンインストールされる運命にあるからだ。
以下のデータは世界のTOP10、NEXT50、NEXT100、NEXT5,000におけるアプリの継続率を表したデータである。5,000位以内に選ばれたアプリであっても、7日目で継続率は20%に下がってしまう。
逆に7日目継続率20%を獲得できれば、5,000位以内のアプリに肩を並べるものとなるため、まず1年間は継続率20%を目標に、オンボーディング施策を取り組んでいったという。
継続率を増加させるポイントは?
継続率はどうしたら増加していくのだろうか。それは、アプリを初めて起動した時、どれだけ感動体験を与えられるか、つまり「初回起動時のアハ体験」によって、ユーザーの継続率は日々上がっていくという。だからこそオンボーディングはとても大事であると加藤氏は力説した。
改善の進め方については、まず仮説を作り、それを実行してみて答え合わせを行う。その結果から、さらに仮説設定するというサイクルで行っていく。
オンボーディング施策の内容
では実際、Smoozでどのような施策を行ってきたのか解説した。まずは、リリース前(2016年5月頃)の画面から。
「当時 作るのが精一杯で、オンボーディングは取り組んでいませんでした。ユーザーさんからSafariと何が違うの?という質問を受けまして、これはいけないなと思い、オンボーディングに取り組もうと決意しました」。
その後、手作りで「使い方ビデオ」を作成した。仲のいい友達は一生懸命見てくれたが、ベータテスターの80%以上が、動画をスキップしていた。「使い方ビデオを見る」と記載されているように、Smooz側から使い方を押し付けていた部分が良くなかったのではないかと加藤氏は語った。
「自分でも押し付けられたものは見たくないなという気持ちがあって、実際にアプリを使いながら使い方を習得してもらうというコンセプトに切り替えました。ユーザーさんは毎回『OK』ボタンを押していくだけで、少しずつ使い方が分かるように構成しています」。
これらの施策が功を奏して、7日目の継続率は10%に増加した。
「私たちはお問い合わせの内容を大事にしています。内容を見ると当時の問い合わせの7割以上が同じ内容のものでした。それはタブを消す時、非常に面倒臭いけれど他に方法はないの?というものでした。実は検索ボタンを上に引っ張ると消せるのですが、どこにもその方法が書かれておらず、その内容を使い方にも挿入しました」。
それを実施したところ、7日目の継続率は15%にまで増加した。どのアプリにも、この1箇所だけ改善すれば飛躍的に継続率が増加する悩みの種があるので、それを見つけ出すことが大事だと加藤氏は語った。
「オンボーディング改善の最終フェーズでは、アプリを起動するといきなりTipsから始まるので、アプリのコンセプトがよく分からないという問題がありました。そこで紙芝居を追加することにしました。紙芝居は賛否両論ありますが、ユーザーはどんなアプリなのか紙芝居から感じ取っているので、場合によっては効果的だと思います」。
また、お仕着せの単語ではなくユーザーが好きな単語で検索できたり、ガイドの途中で中断しても、続きから再開できたりするようフレキシブルに対応した。それらの対応をした結果、7日目の継続率は20%にまで増加した。
継続率を上げていくと、それに併せてDAUも上がっていく。さらに継続率が上がるとストアでも良い評価が増えていくので、ダウンロード数の増加にも拍車がかかる。現在、iOS版 Smoozの平均評価は 4.7。継続率を上げた結果、多くのユーザーからの好評価につながったと加藤氏は解説した。
仮説、実行、答え合わせ、そして仮説というサイクルを愚直に高速で回すことで継続率の増加が現れてくる。Smoozで仮説の答え合わせをする際に利用しているツールは、Analytics、Firebase AB test、Reproのビデオ、usertesting.jp、Helpshift、Twitterである。これらのツールを活用して、質の良い仮説を作ることが重要であるという。
質の良い仮説を立てるためにアスツールで考えていることは、ユーザーは早くアプリを触りたい心理があり、その興味を優先しつつ、適切なタイミングで手を差し伸べられるようにすることだ。
小学校の「理科の実験」のように、始めに先生が実験の概要や狙いを解説されると、小学生は実験をする前に飽きてしまう。そんな子供の好奇心を弱める前に、まずはツールを触らせてあげつつ、次どうするのかアドバイスすることで継続率が向上できると語りセミナーは終幕した。