App Annie 滝澤氏が語る、国内外のファイナンスアプリの動向や成功するポイントについて

 Post by MML編集部
アプリストアのランキングを見ていると、銀行系アプリやクレジットカード系アプリ、家計簿アプリといった、いわゆるファイナンスアプリが人気のようだ。今回、全世界もしくは国内のアプリ市場におけるファイナンスアプリの概要や、具体的にどんなアプリが利用されているのか、日本と国内のファイナンスアプリの違いなどについて解説された。
App Annie 日本代表ディレクター 滝澤 琢人氏
本記事は、アプリ情報プラットフォームを提供するApp Annieが主催する、アプリビジネスの最前線が学べるイベント「App Annie DECODE Tokyo」より、App Annieの滝澤氏から「世界と国内における金融アプリのトレンド」と題した講演の模様をお届けする。

昨年は1,750億ダウンロード、2兆3,600億円のアプリ経済圏

2017年の新規アプリダウンロード数は、全世界で1,750億ダウンロードを達成し、2年前と比べて約60%増加している。現在スマートフォンは全世界で39億台が利用されており、その数で割ると1台あたり45件、毎月2つのアプリがダウンロードされている計算となる。 アプリを通じて全世界で860億ドル決済がされており、2年前と比べて105%増加している。この数値はゲームや音楽、映像など「アプリ内課金」は入っているが、広告収益やECサイト、旅行決済など「外部決済」を含めると、2兆3,600億円と予想される。おおよそアプリ内課金の27倍もの金額が、全体のアプリ経済圏になる。 これをアメリカ、ヨーロッパ、アジア太平洋地域という地域で分類すると、アジア太平洋地域は全体の66%を占めており、成長が著しい。日本は人口が減少して経済が停滞していると言われるが、日本は最も世界で成長している地域に囲まれている市場であるということが分かる。

最も成長しているファイナンスアプリ市場

グローバルのダウンロード成長率を国別に表したグラフ。これを見ると、モバイル化が進んでいるカテゴリは、ファイナンス系のアプリサービスであることが明らかだ。消費者の生活にとって切っても切れない「お金」というものが、モバイルの普及によって、他カテゴリよりも遥かに速いスピードで世の中に普及していることが言える。 アプリの利用回数を見ても、新興国に限らず、どの国でも3年連続で増加している。

人気が高いファイナンスアプリ

どういったファイナンスアプリが成長しているのか、6つのジャンルに分類した。1つ目は「決済」。Alipayを筆頭に、デバイスメーカーやプラットフォームメーカーが、Apple PayやLINE Pay、WeChat Payなど、さまざまな決済サービスを提供している。最近では「Revolt」アプリが、為替手数料無料で提供しており、ヨーロッパでは非常に利用されている。 2つ目は「決済とPOS」。SquareやPayPal Hereなどが、スマートフォン向けPOSサービスを提供している。3つ目は「アグリゲーションと家計簿」。日本では、マネーフォワードやZaimが人気を得ている。アメリカでは2009年頃から「Mint」というアプリがQuickenのIntuitに買収されて話題となった。 4つ目は「投資管理や取引」。Acornアプリを代表に、お金を無駄遣いしないよう気軽に投資できるサービスが増えている。5つ目は「保険」。中国平安保険は、保険の契約内容を確認するだけではなく、アプリ上から医師に相談できるなど、いろいろな付加サービスを提供し、ユーザーとのエンゲージメントを高めている。 6つ目は「信用調査」。日本ではJ.Scoreがスタートしたが、以前からKredit Karmaというサービスがあった。自分のクレジットスコアをアップして、ローンなど金融系のサービスをよりパーソナライズした形で有利な金利でローンが組めるようにするサービス。アメリカでは1,000万人以上が利用されており、非常に人気のサービスとなっている。

日本のファイナンスアプリ市場は?

一方で、日本のファイナンスアプリ市場を見てみると、ダウンロード数は世界の流れとほぼ一致して、大きな成長を見せている。3年間のセッション数を見ても常に増加し続けており、特に2017年から2018年にかけて大きく成長している。 ファイナンスアプリの内訳を見ると、少し日本の特徴が見えてくる。左側が2017年のMAUトップファイナンスアプリ、右側が2018年のもの。上位にいるのはクレジットカードや銀行系、家計簿、ICカードが並んでいる。この中で大きく変化しているのは「モバイルSuica」である。 「世界で起きている変化と日本で起きている変化は、少し変化の質が違うなと感じています。投資管理アプリやクレジットスコアアプリというのはまだ日本に入ってきていません。やはり日本は現金・貯蓄文化のため、なかなか導入されないのではないかなと思います」 「一方で日本人はポイントやクーポンを好む傾向があります。そういうものを貯めて、それを使って集客施策につなげていくのは日本が先進的なところかなと思います」 そしてSuica は、チャージするだけではなく、履歴を確認したり、特急券やグリーン券を購入したりできる。つまり、日常生活の利便性を今まで以上に向上できる、といったところに焦点が当てられていると解説した。 App Annieのクライアントである、トルコのデジタルバンキングの責任者の言葉を読むと、データを読み解くことによって、お客様のインパクトはとても強いというところを物語っている。お客様にとって手のひらが銀行となり、既存ビジネスにおいて大きなインパクトをもたらしているということがこのコメントから分かると滝澤氏は語った。 モバイルが普及することにともない、お客様の求めているものが変わってきている。お客様の選択肢は広がってきているなかで、そのお客様の求めているものは何なのか、データを通じて今動いている世界を理解することへの重要度が増している。 成功しているアプリを見ると、時間をいかに節約して、お客様にとって便利な体験を提供しているところが鍵となっている。状況を把握しながら今動いている世界を理解していただけたらと語り講演が終幕した。