フジテレビ動画配信サービス「FOD」枝根氏が語る「アプリ運営で大切な7つの習慣」

 Post by MML編集部

「FOD(フジテレビオンデマンド)」は、ドラマやバラエティ番組が約20,000本取り揃えているフジテレビ動画配信サービス。「現在 成長分野である動画サービスでシェアを獲得できたら」と枝根氏は語る。今回、継続率が向上したアプリ分析事例や、アプリを運営する上で大切にしている7つの習慣について解説を行った。

株式会社フジテレビジョン 総合事業局 コンテンツデザイン部 枝根 聡樹氏

本記事は、ReproとFROSK、ロケーションバリュー、モンスター・ラボの4社共催で開催された「アプリの虎Vol.2 ~有名企業アプリ活用最前線~」より、フジテレビの枝根氏から「アプリ運営で大切な7つの習慣」というテーマの講演をお届けする。

フジテレビの動画配信サービス「FOD」は、フジテレビで放送されたドラマやバラエティ番組が約20,000本以上取り揃えており、最新話は最大7日間視聴できるサービス。また、定額見放題サービスとして位置付ける「FODプレミアム」の強みは、ここだけでしか見られない「独占作品」が豊富にあること。そして、地上波より先出しの「オリジナルドラマ」が豊富にあることである。

FODが果たす役割とは

そもそも、なぜフジテレビがFODアプリを提供しているのかというと、テレビ局は多くの課題を抱えている。例えば、テレビ番組は全体的に視聴率が減少し、そもそもテレビを持たない人たちが増加している。そのため、広告市場もかなり厳しい状況に来ているといった具合だ。

そんななかFODが果たす役割は、地上波でリアルタイムにテレビが見られないお客様に対して、無料見逃し配信を提供する「ウィンドウ」を提供すること。また、唯一増加しているインターネット市場のうち、今後最も伸びていくのであろう動画広告のシェアを獲得し、フジテレビ全体の収入を補完することにある、

FODのメインは動画配信サービスであるが、その他、電子書籍や雑誌の読み放題サービスなども補足サービスとして提供している。それぞれの成長市場でポジションを獲得できたらと枝根氏は語った。

継続率が向上したアプリ分析事例

そのなかで、FODが行っている、アプリを使った事例を紹介した。まずは、セグメントプッシュ通知の事例。プッシュを通知してからアプリを起動したときのアプリ内メッセージは、とても重要な要素となっている。

ここでは、ユーザーにポイントをプレゼントして、有料会員しか見ることができないコンテンツのお試しを促進してロイヤルティを向上する事例。このほか、「お知らせ機能を使おう」「お気に入り登録をしよう」といったメッセージを配信することで、約110~130%のリテンションレート(継続率)が向上した事例を語った。

また、Reproを使ってイベントごとの継続率をグラフ化したマジックナンバー分析を披露。以下のグラフは縦軸が、初回起動時から1週間以内のリテンションレート、横軸はユーザー数を示している。この中から継続率の高いコンテンツを発見し、プッシュ通知やアプリ内メッセージを活用して、コミュニケーション戦略を設計していくことが大事だと語った。

「例えば、2000年代に放送したドラマをよく見ているユーザーが、継続率が高い傾向があるのであれば、そういった軸で訴求する。切り口としては、(興味度合の)縦の長さが深い人、それから横に広い人、そういった切り口の使い分けはとても重要だと思います」。

アプリ運用で大切な7つの習慣

枝根氏は、どのような意識で、どういうところに絞ってアプリを運用しているのかそのポイントについて1つずつ紹介された。「7つの習慣」とは、枝根氏が尊敬するスティーブン・R・コヴィー氏の著書よりインスピレーションしたものである。

1)自分の感覚を疑う

長期間サービスを提供していると、知らぬ間に、お客様視点を失って、サービス提供者側の都合で運営しがちになる。だから、「そもそも自分はお客様を代表している人間なのか?」というところから疑う必要がある。自分自身が主体的に動かないと、「サービス」は変えられないという方針は、これから紹介する6つの習慣の大前提となる。

2)早く決める

利用者にどんな体験をしてもらいたいのかゴールを思い描く。そして、成功の定義を決めて、迷ったらやってみる。動かなければ何も変わらないという点は(1)の能動的な部分が前提となっている。

3)振り返る

今までのことを振り返った時、反省はしても、後悔はしないというところが大事である。結局、一番大事なことは、今回の結果を次の施策へ活かることができるPDCAサイクルを、どれだけ早められるかというところだ、と枝根氏は述べた。

とはいえ、サービスを運営していると、さまざまな緊急の作業がつきまとう。本当に大事なこととは、緊急ではないけれど重要なものがあるので、そちらを優先して対応することが必要である。そしていい変化を起こすためには、自分から能動的に動く必要がある。

4)自分が1番のヘビーユーザーになる

お客様の立場に立って自分が使っていないと、お客様の気持が分からなくなってしまう。感覚が麻痺してしまうわけだ。「サービス側として運営しやすくする仕組み作りは大切ではあるものの、長くサービスを続けていると、少しずつ、メンバーの中にもお客様感覚が薄らいでくる時が訪れます。そんな時には、どこまで自分自身が利用者としての意識を持てるかが重要になります。」。

心の底からサービスが好きになって、お客様が満足していることでサービスは対価を得ているということが大事だ。「Win-Win or No Deal、つまり、お客様が満足しない改修や運営はしないこと。No Dealが付くか付かないかでとても重要な判断ができるのではないかと思います」。

「例えば、サービスを解約させないように導線を設計することって、もはやWin-Winではないですよね。サービス提供者とお客様が10対0となるような改修はしない、という感覚ですね」。

5)利用者理解に徹する

ペルソナやカスタマージャーニーを駆使して、想定するユーザーを浮かび上がらせ、定性分析や定量分析を活用して、PDCAを回していく。これらを意識的にやっていくことが大事である。

6)ナレッジを共有する

運営する中で成功したベストプラクティスは積極的に共有すること。そして成功を属人化させないこと。「つまり、この人がいたから成功したというのは、ビジネスにおいて成功ではなくて、誰がやっても成功の再現性があるところまで持っていくことが理想だと思います」。

ノウハウを共有することで、デザイナーやエンジニアといったサービス感の他のチームと連携を図り、より良いサービスを作るために社内外を巻き込んでいく。「こういったイベントで皆さんと知見を共有することで、もしかしたら他サービスから良いところの共有を受けて、さらにサービスが良くなるという、能動的な姿勢を何より大切にしています」。

7)鍛錬を続ける

常にトレンドや競合事例について広くアンテナを張っておくこと。そして組織やチーム内においては、良好な人間関係を築いておくこと。サービス運営において、課題にぶつかった時は、冷静な頭脳と温かい心を持ち、乗り越えられるように努めること。

それらを地道にこなすことが最良の近道だと枝根氏は説いた。

「これら7つの習慣が、私がアプリを運営する上で大切にしている要素です。1つでも気になった習慣がありましたら、ぜひ皆さんもご活用ください」と、語りセミナーが終幕した。