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大人気クーポンアプリ「丸亀製麺」担当者が語る、アプリを運用して分かった店舗の成長戦略とは

 Post by MML編集部

アプリストアで常に上位キープしている「丸亀製麺公式アプリ」。2012年にアプリを公開後、アプリを販促的な観点で活用しなければならない という流れからリニューアルを行った。販促アプリとして顧客満足度に貢献する方法とは、アプリを運営するために大事なこととは何か。

株式会社トリドールホールディングス インフォメーションテクノロジー部 グロースアナリシス マネージャー 西村 友博氏

2月27日、ReproとFROSK、ロケーションバリュー、モンスター・ラボの4社共催で「アプリの虎Vol.2 ~有名企業アプリ活用最前線~」が開催された。トリドールホールディングスの西村氏より「丸亀製麺におけるアプリの役割と運用のポイント」というテーマで講演が行われた。

トリドールは「丸亀製麺」を始めとしたマルチブランドを展開する飲食チェーン企業で、国内に990店舗、海外では402店舗を展開する。丸亀製麺は全国で約800店舗を展開する、セルフ形式のうどん専門店。店舗内でうどんを製麺し、できたての美味しさを提供している。店舗には、年間延べ約1億6,000万人が来店されるという。

丸亀製麺アプリは、累計ダウンロード数500万件を突破するクーポンアプリ。ユーザー登録をしなくてもダウンロード直後からクーポンが利用できることから、「お得」と「簡単」という点がうけ、爆発的な人気となった。

当初ファンコンテンツを提供するアプリとしてスタート

2012年12月、丸亀製麺アプリは誕生した。この時は、丸亀製麺のお客様にもっと丸亀製麺を好きになってもらおうという位置づけで「ファンコンテンツ」を提供するアプリとしてスタートした。

当時のコンテンツを見ると、今日の運勢が占える「うどん占い」や写真を使って天ぷらを装飾できる「デコ写真」、注文シミュレーションができる「お店の仮想体験」等を提供していた。

「2012年当時はアプリでビジネス貢献するという風潮が今ほど高くなかった時代で、どちらかというとアプリならではの表現力を活かして楽しんでいただけるものを提供するのが目的でした。このアプリは一部のユーザーから支持を得たものの、あくまでファンコンテンツの提供が主な目的でしたので販促的な観点での効果は微妙でした」と語った。

2016年6月、販促ツールとしてリニューアル

時代が進むにつれ、アプリをより販促的な観点で活用していかなければならないという流れから、2016年、アプリをリニューアル。具体的には、お客様のリピート率を向上するアプリにリニューアルした。

「何度も来店するお客様は、全体の売上構成比でみると高い割合を示しています。例えば、月1回未満のお客様が、月1回以上のお客様になると、全体の売上構成比が底上げされることから、来店頻度を上げるツールとしてアプリを活用しようというのがリニューアルの目的でした」と語る。

まずはメインコンテンツをクーポンに変更、アプリ上の「クーポンを使う」ボタンを押すとクーポン番号が表示され、会計時、番号を店員に見せて、店員がレジで番号を入力すると、割引が適用される仕組みとした。

また、会計後、受け取ったレシートに記載されたQRコードをアプリで読み込むと、更にクーポンが取得できる仕組みを導入。次の来店へと繋げられる流れを作った。なお、丸亀製麺は店舗オペレーションが速く、会計速度を落としてしまうとそのまま売上に悪影響が出てしまうため、会計後に再来店の工夫を入れたのもアプリ成功要因のひとつと考えられる。

「アプリでレシートを読み込ませることによって、スマホの情報と購買情報が紐付きます。これによってこのお客様がどういうクーポンを使って、一緒に何を購入したのか計測できるようになりました。リピートの誘致と購買情報の活用が同時に実現できるようになりました」と述べた。

その効果について、ダウンロード前とダウンロード後を比較すると、3か月間の1人あたりの来店回数は平均1.1回増加、売上は平均8.9%増加した。割引率は高いが粗利への影響は軽微だったという。「丸亀製麺は来店者数が多いためユーザー一人当たりの購入額が少し上がっただけでも全体へのビジネスインパクトはとても大きかった」と語る。

2017年12月、丸亀製麺は新たなフェーズへ

アプリによってお客様のリピート回数や購入額が改善することは確認できたが、購買情報が紐付くのはレシートのQRコードを読み取ったアプリユーザーだけであったため、お客様の購買実績をベースに施策を打つことはなかなか難しかった。

2017年12月、丸亀製麺アプリは接客ツールとしてアプリをリニューアルした。そのポイントは、ユーザー情報と購買情報のヒモ付を今まで一部だったお客様を全部に変更するものであった。これによって購買情報が取得できているというのが前提になるため、それをもとにユーザーシナリオを作成、ユーザーの特性にあった提案を行うことが可能となった。

「今成長しているアプリは、フロントエンドの工夫というよりはむしろユーザーのデータをいかに使うかというところに注力していると思っています」とデータ活用の重要性について述べた。

アプリのために、丸亀製麺全店でQRコードを導入

先ほどの、ユーザー情報と購買情報の紐付けを一部から全部に変更できた理由として、丸亀製麺全店でQRコードリーダーを新たに設置し、アプリに表示されたQRコードを読み込ませることでクーポンを使用する形式を導入したところにある。今までクーポンは開封したら12時間後に消えてしまったのだが、QRコードリーダーの導入で誤開封もなくなり、ユーザー情報と購買情報がきちんと紐づくようになった。

そしてもう1つのメリットは、会計がスムーズになったことだ。今までクーポンコードを店員に見せていたプロセスが、お客様が自らQRコードを読み込ませることによって、会計処理がスムーズになった。そして企業的なメリットとしては、顧客と購買データを資産化し、CRMを実現できた。

営業が使い倒さないとアプリは成長しない

丸亀製麺アプリはお客様に提供しているアプリのため、毎日さまざまな問い合わせやトラブルが発生している。トリドールではそれらを素早く解決できる体制を組んでアプリを運営している。

「アプリの運用をシステム部門に一任させることはお薦めしません。営業の現場の声がきちんと分かっていて、アプリにとって何がOKで、何がNGなのか、そういうところを見ながら運営できるよう、フラットにかつリアルタイムに意思決定ができる体制が重要です」。

社内でコミュニケーションを取るためには、情報ツールを導入することも重要だと西村氏は語る。メールベースでコミュニケーションを取ると、情報共有に時間がかかってしまうことから、トリドールでは社内SNS「Talknote」を導入し、プロジェクトごとにタイムラインを作って情報共有を行っている。

「事業会社のアプリは、結局、事業に貢献することが最終的な目的になるので、営業が使い倒さない限りアプリは成長しません。だから、営業が営業活動に専念しながらアプリを活用できる体制を作ることが、非常に重要です」と語った。要するに運用体制を含めてアプリ開発なのだと西村氏は語り、セミナーは終幕した。