「絞り込むことはマーケティングの要」P&G を世界一に導いた和田浩子氏が語る、常にファンを生み出すブランド戦略

 Post by MML編集部

日本人で初めて 米国 P&G のヴァイス・プレジデントに就任した和田 浩子氏による、P&G のブランド戦略や人材育成についての講演を行った。 そして、なぜ絞り込む必要があるのか、なぜ企業に戦略が必要なのか、なぜ成功は長続きしないのか といった疑問に対し、和田氏が具体例を出しながら解説を行った。

和田浩子氏

Office WaDa 代表 和田 浩子氏

10月18日、世界の主要都市で開催されるマーケティング・カンファレンス「ad:tech tokyo 2017」が開催された。 日本人で初めて米国 P&G のヴァイス・プレジデントに就任し、その後、ダイソン日本支社の代表取締役社長、日本トイザらスCOOを歴任、現在は Office WaDa の代表を務める和田 浩子氏より「サステイナブルなブランドを育み、ブランドを育む人を育てるために」というテーマで講演した。

P&G が成功した2つの要因

P&G が持続した成功をもたらす要因は、「ブランドマネジメント」と「人材育成」にあると和田氏は語る。 ブランドマネジメントとは、P&G が1920~1930年代に開発した経営手法であるが、現在では多くの日本企業が、独自の方針で柔軟に活用されている。 そして、ブランドマネジメントを使いこなす人材を育てることは、とても重要であると和田氏は語る。

「全く同じことを30年間行っているわけではなくて、会社が直面している課題に対して、それを解決しながら人材を育て、その人材はその時にブランドマネジメントできるよう育てられる。 それが途切れなく続いているので、P&G は危機に陥っても、すぐに課題を解決しているから、粛々と進化しているということなのです」。

まずは知らなかったことを知ってもらう。そして使いたいと思わせる

まずは、ブランドマネジメントを話す前に、マーケティングの定義についておさらいした。

「私の好きな定義の1つに、マーケティングというのは、エンドユーザーに知らなかった商品を知ってもらうことによって、ビヘイビア(態度)の変化を起こしていく。 ブランドは、覚えてもらいたいメッセージをエンドユーザーが理解して、好きになってもらわなければいけない、そういうビヘイビアの変化があります」。

「まずは、そういうことが起きて、商品やサービスを使いたいと思い、そして買いたいと思う。 ここがキモですね。 買ってから さらに継続して買ってもらわないと、商売にならないわけです」。

「以前、講演した時に質問があって、『知る → 買う → 使う』ではないのですか? とおっしゃっていました。 そうかもしれないけれど、例えば、車が欲しい時は試乗会に行きます。 家を欲しい時は住宅展示場へ行き、日用雑貨であれば、試供品を使ってみて、小さな体験をしてもらう。 そういう体験を提供すると、消費者は使いたいと思う」。

「やはり、『知る → 使いたいと思う → 買う → 継続して買う』という、ビヘイビアの変化を自分たちがすることによって起きている、という自覚を持ってほしいですね。 自分たちは知っているから当然だ、と思うのではなくて、そういう自覚を消費者がしているという『お客様目線』で、実際にそれが起きているかを見る、ということは大事なことです」。

全ての分野はブランドマネージャが戦略を立て、全責任を負う

「ブランドマネジメントとは、ブランドをブランドごとに管理して、ブランド育成する仕組みです。 経理が計算したブランドの売上やコストのデータを頂きながら、その結果の責任を負います。 だから、営業は売上の責任を負うわけではない。 利益の先にはブランドマネージャがある という仕組みですね」。

「そうであるから、全ての分野はブランドマネージャが戦略を立てます、新規開発の場合はちょっと違うのですが。 そうすることによって、ブランドは粛々と育っていくのですね。 難しいことかもしれないのですが、実際にブランドマネージャを完璧なところでやっている会社は、こんなふうになっていると思います」。

「赤いところが育成していくブランド、それをサポートしている専門性を持った部署はどこも等しく配置されていて、自分たちの叡智をブランドに注力するような感じです。 この赤いところはマーケターやブランドマネジメントしている人でもあるのですね。 広告代理店も入っていますが、私たちが学んだのは、広告代理店は信頼できるパートナーだということで、共同関係を構築する仲間としてこの中に入っています」。

営業は 意識改革が必要だ

「私の経験では、営業が売っているという意識が高いようです。 一般流通を通じて商社につなぐ場合であれば営業の売りが立つけれど、出荷してリテーラーの倉庫に入った時、消費者が使ったというわけではないので、もどかしいところがある。 『売りが立つ』ということと、『消費者が使って、なくなってしまう』という2つの側面があって、どちらかと言えば、ブランド育成というのは、消費者が使うところまで追いかけていくことが重要だと思いますね」。

「だから、営業とは流通に出荷して 相手と交渉する専門職なので、ではいったい誰が消費者に対して直接訴えかけ、満足状態を与え続けられるのだろうかというのは、ブランドマネジメントの仕組みの中であれば、それはブランドマーケティングの人がする ということですね」。

「それで、そういう仕組にするためには『改革』が必要なのですよ。 先日、東京で観劇したとき、登場人物が『改革というのは、物の形を変えることではない、人の心を変えることだ』と言っていました。 その時私は、現在のイメージではなかった P&G に入社して、自分たちが現在のイメージへ改革していった経験があるので、まさにそうだなと思いました」。

「形だけだと、みんな喧嘩するのですよ。 営業が請け負っているのに、何でこの若い小僧や女の子がやっているブランドの言うことを聞かなければいけないのかと。 複雑なことですけど、観劇した時にそう思いました」。

マーケティングの最初の一歩はエンドユーザーや製品・サービスを理解

「マーケティングの最初の一歩は、どんな状況であれ、エンドユーザーを理解し、自社の製品・サービスを完璧に理解するということは、すごく重要です。 ではどういう方法でやるのかといったら、さまざまな方法があります。 特に、今は消費者の暮らしが変わっているし、消費者の深い思いを汲み取るインサイトを取る手法も変わってきています。 しかし根幹は、消費者を常に理解しないといけない」。

「それでマーケティングがうまくいくと、自らがした施策が 人々の生活を変えていくわけです。 そうすると、また理解しないといけない という循環に入っていくのですね。 非常に重要なことです」。

小さいブランドの需要創出戦略

「ディマンドクリエイションという概念も頭に入れてほしいですね。 自分が小さいブランド、存在していないブランド全部の売上は、他のブランドに帰属している、そういうふうにイメージしてください。 自分たちが売りを上げたいとき、その帰属している競合ブランドから、こちらへ来てもらわないといけない。 それはお金を出して来てもらうのではなく、消費者が気持ち良く 自分の意志で こちらへ来てもらわないといけない」。

「こちらへ来てもらうためには、消費者が心変わりに値する価値を自分のブランドが提供できるかによって、消費者の需要はこちらへやってきます。 私は常に『消費者のビヘイビアはどうなのだろう』とか、ディマンドクリエイションというのは目に見えないものなのだと想像して、砂取りゲームのように、山を崩しながら 消費者の心をこちらへ集めるという想像をしながら、マネージャの業務をしています」。

「絞り込むこと」はマーケティングの要

「ポジショニングというのは『ここにいる』ということで、『そこにいない』ということ。 ポジショニングには数多あるスペースがあるけれど、私は『ここにしかいない』という決意の表れをするのです。 みんな決定するのが怖いので、そんなに絞り込んでは駄目だ!とか言うけれど、絞り込まないとマーケティングにはならないです」。

「それで、どういうふうに絞り込むかというと、『自分が推進している製品・サービスは、誰が一番適しているのか』ということを考える。 最初の段階で『みなさんに』と決めたらダメです。 売れてきたら『みなさんに』でもいいですけど」。

「それで、どういう基準で選ぶかというと、私が作った言葉で『買わざるを得ない人』で選びます。 人々の生活の中で何か不満があるけれど、いま現存している商品が課題を解決してくれない、ソリューションが無いからこんなものかな と諦めている。 そういうものだと半ば諦めている状況で、彼らが想像もしないソリューションを自分たちの商品で提供できたとき、驚くように問題が解消できる というのが『買わざるを得ない人』です」。

「昔、ダイソンという掃除機メーカーの社長をしていたのですが、就任当時はひどく売れていませんでした。 どうやって売ることを考えたのかというと、みにくく、でかく、価格の高い掃除機を購入する日本の愛好者がいました。 それで、その人たちを追いかけていって、どうして購入しているのか分析したところ、家族に花粉症や喘息、アレルギー患者などがいて、いろいろな商品を購入して試しても、全く満足できなかった。 それで、驚くほどの吸塵力と書いてあるダイソンを購入したら、すごく症状が改善したと」。

「買わざるを得ない人というのは、どんなカテゴリでも一生懸命分析したら出てくるので、それを見つけてください。 製品・サービスを絞り込んで、製品のベネフィットを決めて、できればそこに技術的根拠を入れて分かりやすくしてあげて、ブランドのキャラクターを決めていくということですね」。

戦略とは大きな目標へ行くためのマップ

「売上や市場占有率といった『目的』はありますが、『戦略』が無いところはたくさんあります。 戦略が無いということはアタマが無いのと一緒です。それがないと呼吸ができないので、必ずアタマを作ってください」。

「戦略とはどういうものかというと、ブランドが目指している大きな目標へ行くためのマップです。 どういうふうに進むのか、どこへ寄るのか計画を立てるものです。 どういうふうに進むのかというのが無ければ、組織や社員、協力会社も同じ方向へ向かわせることは難しいことなので、必ず作ってください」。

「それは他社が狙っているような類似した施策ではなくて、その中には、戦略的に正しく、全く新しい・革新的なものだけど、誰もやったことがないから実行は難しい、チャレンジを要するような施策を1個や2個入れて 戦略をまとめ上げてもらえれば、やがてブランドは育っていきます」。

事業は成功した。そのあとどうするか?

「成功の鍵は、エンドユーザーを理解し、製品やサービスを理解してポジショニングを決め、目的とイノベーションのある戦略を設定すると、その結果、顧客満足度が向上します。 私達の施策がうまくいくと、顧客は前進するわけです。 前進したところで また顧客を理解しないといけない。 それは未来でも定期的にやらないといけない」。

「例えば老舗の場合、どこよりも商売は初めからやっているから 顧客は充分に分かっているとおっしゃいますが、その答えは必ず間違っています。 ですから そのことを何度も説得してリサーチしてもらうと、本当に違ったデータが出てきます。 その結果を見るなり 担当者は驚いて、我々が間違っていたという結果が起きるのです」。

ブランドの持ち主は誰なのか?

「ブランドになるということは、消費者が好意を持って、満足度も高く、私達が覚えて欲しいメッセージが頭の中に入っている、これがブランドになるということです。 ではブランドは誰の持ち主かと言ったら、決して皆さまの持ち物ではありません。 ブランドは、消費者一人ひとりの頭のなかに刻まれるものなので、ブランドエクイティの持ち主は、消費者なのですね」。

「だから消費者の思いに寄り添って、思いを超えるような施策を打っていかないといけない。 良いブランドへ育て上げるためには、何か月も何年もかかります。しかし、ブランドを失うのは一瞬なのです。 良いブランドになるというのは道のりが険しいけれど、素敵なことなのです」。

成功が長続きしない理由

「成功が持続しないのはなぜかというと、成功が持続するように仕込まれていないからです。 世の中には、このプロジェクトは俺が入って成功した、俺のおかげだ、俺が居なくなったら事業はうまく行ってほしくないと思う人もいますが、それは属人的な成功なのです」。

「その人が居なければ成功しないということを、世の中ではカリスマと言いますが、本当のカリスマは、行くところ 行くところでホームランが打てるのですよ。 持続する成功をもたらせる人は、マーケティングの成功だけではなくて、マーケティング・ノウハウを部下や、周りの人にも授けています。 だから、周りを育成できていないマーケターは 100点満点中、50点ですね」。

「成功を持続するための必要条件というのは、勝つための戦略と、優れたリーダーシップ、そして優れた人材や、人を動かすための優れたシステムも必要です。 それと、優れた行動規範も必要になります」。

「この中で、『人』が入る項目は1つだけです。 それは『優れた人材が必要』ということ。 この人が全て、戦略を考え、リーダーシップを取り、人を動かす優れたシステムを考え、行動規範を考えるということだから 人に依存するのですね。 その人が “なんちゃって” で行うと、全ての事柄が “なんちゃって” になってしまうわけですね」。

「だから、マーケターだけが必要なスキルではなくて、会社全体が率先していろいろなことができるリーダーシップスキルや、部署に関係なくどんな人でも戦略的思考ができるコミュニケーション能力もある、分析力や問題解決力もある、あとはイノベーションを見つけてみんなで考え、ある程度データを取りながらも、最後はみんなで崖から飛び降りるほどのリスクを追うことができる力が必要です」。

「それは実行力でもあると思いますが、初めてのことをするというのは、容易いことではありません。 苦しいことの先に正しい大きなことが生まれてくるので、それを楽しみにする精進の情熱を持つというのも重要だと思います」。

「これらは、一挙に研修では教えられません。 それぞれの場面からOJTで教えることができるのですが、教えるのは全てマネージャが責任の一端を担わないとダメです」。

業務と人材教育は同等に重要視すること

「そして、業務と人材育成は同等レベルで扱わないといけない。 今日は全然売れていないから、そんな人を育てている場合ではない と言う人もいるようですが、それでも、業務と人材教育を同等に重要視する必要があります。 OJTで仕事をしながら、ちょっと失敗して学習してもらうと 若い方はスキルが付いていく、そしてマネージャは評価される。 こういう仕組みにしていくことが大事ですね」。

「そのキャリアプランも、うまく行ったら次のステップはこうなります、そちらへ行きたいのであればこうした方がいいと、マネージャが育てる研修制度が必要です。 研修制度は外部の会社に丸投げしないでくださいね、何の役にも立たないことが多いので、カスタムで作らないといけません」。

「それは誰がするのかというと、その会社にいる上長やマネージャが講師になって、スキルや考え方のセミナーを行います。 P&G では、講師は全て社内の人です、マネージャになったらセミナーをやらないといけない仕組みです。 自分の部下を教えることによって、マネージャのスキルも上がりますから、社内研修制度というのは、かなり重要ですね」。

「あとは、幹部候補生プログラムがあります。 限りなくベストな人材を育てるべく マネージャの責任監督下でOJTをして、能力開発と売上の結果について上司や部下も等しく評価してあげると、うまい循環が起きて素晴らしい人材が生まれてくるかもしれません。 そうするとその人材は、タンポポの種のように、ひゅーっと違う会社へ飛んでいったら、違った場所で また同じようなことができる人材になっています」。

成功は成功を生み出すものではない

「これは私の経験から学んだものですが、『成功は成功を生み出すものではない』。 失敗はもちろん失敗ですから、成功を生み出すわけではありません。 成功から学ばないと、別の場所で何かをしても成功にたどり着かない。 成功は邪魔だというけれど、確かに邪魔です、しかし、学べば邪魔にならない」。

「今回はなぜ失敗したのか、次はどういう風にするか、という学習をしていくと、同じような状況でも 同じような失敗は繰り返さなくなります。 すごく重要なので、今回の講演はこの言葉で締めさせていただきます。 ご清聴ありがとうございました」。

参加者との一問一答

講演終了後、質問をする機会が設けられた。 参加者からの疑問に 和田氏は真摯に耳を傾けた。

Q1)マルチファンクショナルチームのスライドのところで、広告代理店は外のステークホルダーとしてつながっていくという動きはありますか? 最近ではソーシャルメディアなど、企業がメディアを持つ時代になっていますが、その変化についてどうお考えですか?

A1)「組織はブランドを中心に、さまざまな専門性を持った関連部門が周りでサポートしているというイメージになっています。 広告代理店は知識の専門性を帯びているので、そういう知識をいただきながら、会社でプランニングしている方は、戦略性というフィルターを通して判断し、取捨選択していくことだと思います」。

「デジタルをやれば成功するというわけではないです、人間は人間なので。 デジタルは重要かそうではないかと言えば重要ですけど、それがオンリーワンではないと思います。 ステークホルダーは増えますけど、私は、ブランドは子供だと思っています。 子供は多くの家庭につきたい。 デジタルを使わなければいけない世の中、仕事が複雑になると言っている場合ではないと思います」。

Q2)多くの応募者からマーケターを採用するとき、最終的にこの人は!と選ぶ基準とは何でしょうか?

A2)「例えば1対20でもいいから、できるだけ採用担当者は人を見て、人を見つけるほうがいいと思います。 理想を大きくしたら良い人が見つかるかというとそうでもないので、できるだけ人が直接見られる大きなフォーラムを作って、そこから何人かの候補者を上げる」。

「では、どうやって選ぶのかというと、社是に『会社はこうありたいとき、社員はこうあってほしい』と書かれていますね、それが私たちのDNA。 学生の中にDNAの芽がある人を探す。 それでまたスクリーニングして、あとは面談する」。

「それは人が人を本当に理解するためには、人の目を見て理解したり、その人に自分を埋没させたりするマインドセットがないと、選ぶことができないと思うのですよね」。

「それで、マーケターというのは、『感じることができる人』ではないとできない職業だと思っていて、人の琴線に触れるような活動をしている、そういった趣味がある人は非常にいいです。 面接でOKが出ている人は、人間味があるというか、風や色を感じ取れる才能はマーケターに必要だと思います。 そういう人がビジネスライクに戦略を考えて実行するとき、その才能が発揮されます」。

Q3)日本企業は比較的年功序列だから、上司のほうが現場の意見より勝ってしまうケースがどうしても起きやすい構造だと思います。 先ほどのように、フラットな組織でブランドを軸にして、年上の営業の人が、年下のブランドマネージャの意見を聞く組織にするために、ここを突破しないと意識が変わらないポイントを教えてください。

A3)「先ほど言ったような、自転車のスポークのような形のブランドマネージメントシステムの仕組みをよく理解して、会社のトップがこうすると一大決心をして、その人がいい模範になる以外に方法はないと思います。 年功序列というのは意味があるけど、私はほとんど意味がないと思っているので、年を重ねて知見もあったら尊敬に値しますけど、年の割にはサボっていたら、P&G では足元をすくわれます」。

「それでも、和田さんは間違っていると、私の部下から上司へ言うことがあります。 それは恥をかかされたことではないので、私はそうなの?なら教えてくださいと言いますよ。 私はできあがった分析結果を頂いてから話しているのであって、その奥の背景や分析の根拠となれば、現場レベルのほうが強いですよ」。

「ただ、マーケティングの人がそういう仕事をしていて、エンドユーザーに対する施策が正しいか間違っているかという根拠がないので、流通のことに関しては営業の知見を採用します。 先ほど言ったみたいに形は重要なのですよ。 社員の気持ちが完全に改革されないと、その仕組みへ移行できないですけど、ブランドマネジメントは価値のある仕組みなのですよ」。

「研究所の人は生産の人が嫌いだとか、営業はマーケが嫌いだとか、そういうことではなくて、全部門の目が外部に向いており、お客様をどうするか、どうすれば満足させるか、どうすればジャスト・イン・タイムで作れるか、いろいろなことがお客様に対して考えられる、そういう仕組みがブランドマネジメントなのですよ」。

Q4)P&G の成功は、どこがカギとなっているのでしょうか?

A4)「P&G という会社は、社員の塊と考えており、ブランドの集合体と考えています、だからIR以外は P&G の広告をしない。 1948年、米P&G の会長だったリチャード・R・デュプリー氏が『お金とビル、ブランドを取り上げられても、社員さえいれば、10年で全てを元通りに再建できる』という名言を残しています」。

「私たちはヘッドハントしません、ヘッドハントされる側です。 そのくらい、自分の会社を自分たちの手で、自分たちのカルチャーで、自分たちのDNAで育てながら、自分たちのブランドに永続的な命を与える、そういう仕組みの中に生きています。 そこが一番強いと思います」。

――和田様、素晴らしいご講演ありがとうございました。