ゴルフダイジェスト・オンライン(以下GDO)が運営するアプリ「
GDOスコア」は、GDOとゴルファーとの接点を幅広く構築し、GDOサービスの利用促進につなげたいと考えている。その中でユーザーを獲得し、リテンション率(継続率)を向上し、GDOのファンにするためにはどうしたら良いか、その具体例について説明した。
左より、株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン お客様体験デザイン本部 エンゲージメント推進部 新規顧客開発チーム マネージャー 小池 大樹氏 / シニアデジタルマーケティングプランナー 岡部 泰子氏
本記事はオプトとReproの共催で開催された「アプリマーケティングセミナー#3 オムニチャネルにおけるアプリ活用」より、ゴルフダイジェスト・オンラインの小池氏と岡部氏より「リード獲得から育成まで。データを活用したGDOアプリのコミュニケーション戦略」というテーマで講演された。
ゴルフダイジェスト・オンラインとは、インターネットで、ゴルフのワンストップ・サービス(見る・買う・行く・楽しむ)を実現。ゴルフメディア、ゴルフ用品販売、ゴルフレッスン、ゴルフ場予約を主な軸として事業を展開しており、GDOクラブ会員320万人を誇る。スマートフォンアプリは各サービスに特化した単体機能のアプリを6つ提供している。
「GDOスコア」はゴルフスコアが記録できるアプリ
その中で今回、話をする「GDOスコア」アプリは、プレー中に片手で簡単にゴルフスコアが記録でき、自己分析からスコアアップを支援するアプリである。 2014年にアプリを公開し、現在では月間約33万人が利用している。
アプリの位置づけとして、ユーザー側としては、プレーシーンにおいてよりゴルフが楽しく便利に使えることで、ゴルフ場で最も使いやすいアプリを目指している。 ビジネス的には、GDOとゴルフとの接点を幅広く構築し、ゴルファーとのエンゲージメントを高め、最終的には、ECサイトや予約につなげ、顧客化していきたいと考えているという。
これらのゴールを達成するために、今までやってきたWebサイトとアプリも含めて、さまざまなデータを統合し、ユーザー行動に即したマーケティング施策を行っている。
会員データやスコアデータなどをデータウェアハウスに集約し、各種マーケティングツールを活用して、ユーザーにあったコミュニケーションのシナリオを設計している。 全社横断マーケティングプラットフォームとしてはSalesforce Marketing Cloudを活用し、アプリではReproやApps Flyer、Firebaseなどを活用している。
ゴルフがうまくなりたい人へ向けてアプリ紹介
ここからGDOの活用事例について話し始めた。 まずは、GDO会員を対象に、アプリダウンロード訴求を行った事例。 直近でゴルフに行く予定がある人で、ゴルフがうまくなりたい人を対象に、アプリを紹介する。
抽出方法は、「直近のプレー予約日」や「スコアデータの利用者」、「スコアアップのためのレッスンコンテンツを閲覧した人」をさまざまなデータベースから抽出し、その人がプレーの前日であれば、ゴルフ場案内と合わせてアプリを紹介。 また、レッスンコンテンツを閲覧した日の翌日に、スコアアップにつながるアプリという文脈のクリエイティブでメール配信した。
「単純にメールを一斉配信することよりも、高いコンバージョン率でアプリダウンロードにつなげた」と話す。
非会員を対象としたインストール広告の事例
次は、インストール広告についての事例。 アプリをインストールしたユーザーから新規会員を獲得するため、可能な限り非会員を対象に、広告でリーチしていくプランニングを行った。
インストール広告のKPIとしては、インストールが刈り取り手段として見ているわけではないため、アプリインストールからWeb、新規顧客獲得へと相乗効果が行われる手段として、各ステージに応じたKPIの設定を行っている。
「このアプリを知らない人に知ってもらう」段階においては、「インストールしたユーザーの非会員含有率」を媒体評価とし、「刈り取り対象の人」においては、「CPIとROAS(アプリ外、自社ECサイトでの課金)」で判断している。 また、全体のアプリインストール数における会員転換率や会員獲得のCPAについても見ているという。
インストール広告の最適化について、GDOでは、データを活用したマーケティングを推進しており、今までプライベートDMPの広告連携を行っていたことから、今回、アプリマーケティングにも活用した。
DMPに蓄積されている、ゴルフのスコア情報やプレー頻度の属性データを活用し、拡張配信を行った結果、属性データを活用しない拡張配信と比較すると、コンバージョン率は60%以上、CPIも25%削減ができた。
また、FirebaseやApps Flyerを使ったイベント最適化配信の事例では、アプリ内のイベントで最適なユーザーにリーチしていくイベント最適化の広告配信を行ったところ、CPIは30%削減、ROASは平均の230%以上の効果が見られたという。
スコア登録を目的としたリテンション施策
次はアプリを使ってもらう、リテンション施策で、アプリのゴールはスコア登録をしてもらうことを目的に、定期的にスコア登録の促進キャンペーンを行った。 従来はキャンペーンを一斉告知し、応募していただいたユーザーを追跡する施策を行っていたが、ユーザー行動に即したアクションが取れていなかった。
現在では、キャンペーンを一斉告知し、ユーザーをキャンペーンの参加・不参加に分け、参加度合いやスコア登録状況からいくつかのセグメントを設け、次のステップへと進めるようなシナリオをもとに、コンテンツを配信している。
メリットを訴求した会員化施策
次は、会員登録促進施策。 アプリを起動して会員登録すると、こういうメリットがあるという訴求ポイントを改善した。 具体的には、Reproのファネル分析を活用し、ウォークスルーの離脱率、その後の会員化率を計測し、仮説を設定。
動画で利用シーンのメリットを伝えつつ、ログインのメリットを伝えるビジュアルへと変更した。 「そのまま始める」ボタンをX(バツマーク)に変更し、さらに、ソーシャルログインを見やすい場所に設定し、より簡単に登録できることをアピールした。
施策を重複させないようID連携
この施策のもう1つの目的として、「LINEのID連携」を積極的に進めている。 GDOのLINEアカウントと、GDOの会員IDを連携すると名寄せができて、1ユーザーが判別できるようになる。
「今までLINEを使っている人と、GDO会員の人、GDOアプリを使っている人は別人扱いになっていたのですが、スコアアプリを通してログイン連携すると、その人は同じAさんということが分かるので、LINEないしはアプリのプッシュ通知から適切なコミュニケーションメッセージを送ることができるようになります」と説明した。
行動促進を促すリマインド施策
もう1つ会員登録促進の事例として、このアプリではスコアを登録後、クラウドにバックアップする作業があるのだが、ユーザーはバックアップする作業を忘れて思うように進まないという課題があった。
そのため、行動データやユーザーの声を参考にアプリを改修し、スコア保存と同時にバックアップするようなフローへと改善した。 そして、その日バックアップしなかったユーザーへ向けて、「同期忘れのスコアありませんか?」といったリマインドプッシュを送ることで、バックアップ率を改善した。
ECサイトの促進化施策
最後は、会員登録したユーザーにECサイトを利用させるキャンペーンの事例。 DMPからECサイト未稼働ユーザーを抽出して、GDOゴルフショップクーポンのお知らせをプッシュで配信する。 このクーポンを利用すると、DMPに蓄積される。 その後、ボーナスクーポンのお知らせをプッシュ通知で配信して利用促進を行った。
クーポンを使わなかったユーザーには、しつこいと思われない範囲で、リマインドのプッシュ通知を配信してクーポンの利用率を上げている。
まとめとして、自社のデータをきちんと統合してデータを使える状態にし、ユーザーの行動文脈に合わせたシナリオ設計を行うことが大事であると語る。 もう一方で、データ活用と並行して、フィールドテストやグループインタビューなど、ユーザーの声を収集してサービスを成長させることが視点も必要であると語り、セミナーは終了した。