琉球銀行は「りゅうぎんロボ」を活用したプロモーションやスポーツの協賛、ファンページの運営、銀行内のBGM配信など、私達の想像を超えたプロモーションで多くの人を魅了している。 琉球銀行が考える顧客とのエンゲージメントとは何か?
株式会社琉球銀行 営業統括部 上級調査役 伊禮 真氏
9月7日から9月8日まで、「宣伝会議 プロモーションフォーラム2017」が行われ、琉球銀行の伊禮 真氏より「顧客エンゲージメントを最大化するデジタル文脈のコミュニケーション ~琉球銀行が爆発的な話題を生み、ファンを獲得した方法~」と題した講演が行われた。
琉球銀行では、沖縄県内のテレビやラジオ、雑誌、新聞に広告を提供している。 広告宣伝費におけるマスディアの費用は全体の4分の1ほどで、そのうちテレビが43%、WEBが37%となっている。
行内でデジタル関連による予算取りの説得は、すごく大変だったと伊禮氏は語る。 「博報堂DYメディアパートナーズ メディア定点調査2017」が発表した「消費者のメディア接触率の推移」によると、「テレビ」は2010年が50%に対して2016年では39%と、6年間で11ポイント減少している。
一方、パソコンやスマホ、タブレットを合算した「Web」については、2010年が29%に対し、2016年は47%と、6年間で18ポイント増加した。 2016年に入ると、テレビよりもWebへの接触率の逆転現象が起こっている。 そのため、Webに投資することは必然の選択であると説得したという。
博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 「メディア定点調査2017」より一部抜粋
現在は琉球銀行にデザイナーが3名在籍し、Webやデザイン業務は内製化している。 また行内には大型印刷機が完備され、動画撮影や銀行のBGM配信も内製化しているという。
「りゅうぎんロボ」がマラソン参加者と一緒に走る
琉球銀行では、沖縄最大のマラソン大会である「NAHAマラソン」に協賛し、2年前から「りゅうぎんロボ」がマラソン参加者と一緒に走るプロモーションを行っている。 りゅうぎんロボとは、当時の新商品「おまとめローン」のCMに登場するキャラクター。 ターゲットとなる30代はロボットアニメ世代、そして「おまとめ=合体」というコンセプトからりゅうぎんロボが誕生した。
マラソン開催中、指定したハッシュタグで応援メッセージをすると、りゅうぎんロボの背中に付いたモニター画面に応援メッセージが流れる。 また、限定50名の人にビーコンを配布して、その人が10m以内に近づくと本人の名前でメッセージが表示される。
2016年の「NAHAマラソン」では、りゅうぎんロボが どの場所を走っているのかWeb上から確認できるほか、指定したハッシュタグを送ると目標タイムが分かるといったプロモーションを行った。
NAHAマラソンのほかに、「沖縄全島エイサーまつり」にも協賛している。 その他スポーツにも力を入れており、いくつかのプロスポーツチームにも協賛している。 協賛の時は、「BANK OF THE RYUKYU’S」という文字を配列した以下のロゴを作成して、活動している。
「ですので、りゅうぎんロボは、野球で投げたり打ったり、バスケットしたり、サッカーしたり、ハンドボールしたり、走ったりしています」と話す。
Webやファンサイトを運営、NPSは平均を上回る
琉球銀行はWebにも力を入れている。 公式ホームページのほか、Facebookページ、公式Vine、ファンページ、公式アプリ、ファンサイトを運営している。 琉球銀行のファンページは2017年9月現在 3万6,000人おり、ファンを通して商品開発を行っている。
琉球銀行では、ファンサイトの顧客ロイヤリティを図るNSP(ネット・プロモーター・スコア)の調査を行っている。 銀行業界のNPSは -31.9%、ネット銀行のNPSは -7.9%に対し、琉球銀行の全国平均は -46.5%だったという。 しかし実店舗がある沖縄県限定で見ると、NPSは +10.1%と高い数値を示す。 伊禮氏は「全国でも、これらに近づけるような活動をやっていこうと思っている」と語る。
公式アプリは、りゅうぎんロボがLINEで会話しているようなインターフェースになるよう、伊禮氏がYappliで作成した。 今年4月には新しい頭取が就任したことに伴い、全行員の名刺をスマートフォンにかざすと、新頭取の挨拶が見られるAR機能を組み込んだ。
「頭取は全てのお客様に挨拶することはできません。そのため全員の名刺にARを組み込みまして、営業担当がお客様のところへ行くと、頭取の挨拶が見られる施策を行っています」。
琉球銀行のエンゲージメントとは?
私達の想像を突き抜ける琉球銀行のエンゲージメントとは一体どういうものだろうか。 「私達が考えるエンゲージメントとは、ファン作りなのですね。 知らない人からファンになってもらう、そしてファンから友だちになってもらう、友達から親友、そういう方々をどんどん作っていこうと思います」。
「そのためには驚き・感動していただくことだと思います。なぜなら驚いたあとは、皆さん笑顔になるじゃないですか。そういうことを考えて仕事をしています」。
伊禮氏は、タッチポイントをどんどん増やして、お客様にいい体験をしていただくようなかたちを考えているという。 そしてタッチポイントに感心を持っていただくため、行内向けにブランドビデオを作成した。 とても評判がよく、株主総会でも流しているそうだ。
伊禮氏は「点が点線になり、そして線になるということを目指しています」と語り、セミナーが終幕した。