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「申請したら偽アプリに疑われた」JALカードが語る、数々の苦労を乗り越えても公式アプリを導入したい3つの理由

 Post by MML編集部

327万人の会員数を誇るJALカードは、2015年1月に公式アプリを公開。初めての体験だっただけに準備や運営の面でさまざまな苦労をしてきたという。今回は、アプリを始めたきっかけからアプリ公開後の効果など、事例を交えながら取り組みを語った。

株式会社JALカード 営業・マーケティング本部 営業部 業務・企画グループ マネージャー 鳥海 淳一氏

7月18日、Repro、ロケーションバリュー、FROSKの3社共催によるセミナー「アプリの虎」が開催された。JALカードの鳥海 淳一氏による「アプリで広げる会員コミュニケーション ~JALカードアプリの取り組み~」と題した講演が行われた。

JALカードは、「人生に旅という喜びを」をキャッチフレーズに、JALマイレージバンクカードにクレジットカード機能が搭載された、「マイルを使う楽しさ」や「貯める楽しさ」を感じられるサービス。 2017年3月末の会員数は327万人、ビジネスマンを中心に利用している。

JALカードアプリを公開。上位カード利用者が多く利用

JALカードアプリは2015年1月にサービスを開始。 会員専用ページである「MyJALCARD」へ簡単にアクセスできるほか、位置情報を活用したJALカード特約店の検索、アプリ限定クーポンの取得、マイルが当たる「お楽しみコンテンツ」を提供している。 アプリダウンロード数は現在37万件を突破している。

アプリの方針について鳥海氏は、「これも作るまで分からなかったのですが、私達はもともと327万人の会員とコミュニケーションを取れればいいなと思っていました。しかし、会員だけが利用できるアプリでは駄目というルールがあるそうで、現在はどなたでも利用できるアプリになっています」と語る。

アプリの利用者は、男女比で男性が7割、40代を中心に20~40代の利用率が高い。 JALカードの中でも上位カードの利用者が多く、クレジットカードの利用金額も高い。 JALカードの利用頻度が高いお客様がアプリも利用されている状況だという。

アプリ未利用会員より1.7倍クレジットを利用

アプリ利用者のクレジット利用状況について。 1人あたりの年間利用金額を「アプリ利用者」と「未利用者」で比較すると、アプリ利用者は未利用者の約1.7倍利用している。 これを特約店で絞った場合、アプリ利用者は未利用者の2.0倍近く利用しているという。

2016年からお楽しみコンテンツを公開

JALカードアプリでは、「お楽しみコンテンツ」を提供している。 2016年3月より、3箇所を削って絵柄を揃える「JALカードスクラッチ」、さらに2017年4月より、飛行機を離陸させると、着陸した場所に記載されたマイル数が取得できる「JALカードフライト」を提供した。

今年の1月から5月まで、お楽しみコンテンツ利用者の推移を見ると、1つ目の山は当選確率緩和の影響。「当たらない、当たらないと書き込みされていまして、少し当選確率を緩和しました。そうしたら利用者が増えてきました」。 2つ目の山は、「JALカードフライト」を公開後、相乗効果で利用者が増加した。

「お楽しみコンテンツ利用者」と「アプリ利用者」を比較したところ、お楽しみコンテンツを追加した時点から徐々にアプリ利用者も増加し始めた。 鳥海氏は、お楽しみコンテンツ目的でアプリを起動している人もいるのかなと感じていると話す。

アプリを導入した3つのきっかけ

JALカードアプリを始めたきっかけについて鳥海氏は、2012年6月当時、クレジットカード業界ではNFC(近距離無線通信)を活用したクレジット決済が普及すると言われており、当社もそれに乗り遅れてはいけないと準備を進めていた。

しかしNFC決済は、思いのほか普及する気配がなく、市場の流れも進んでいなかった。 世の中がそういう流れだったため、もともとやりたかった中で今できるものは何だろうと考えた時、それは3つあると思ったという。

1つは、JALカード特約店検索の利便性。クーポンを配信して特約店に送客できると考えた。 2つ目は、プッシュ通知を活用した情報配信。現在利用しているメールマガジンの代用として活用できると考えた。 最後は、ゲーム性を持ったお楽しみコンテンツの提供である。

以上からアプリを開発しようと思った時、自社で開発するか、アプリ開発会社に開発を依頼するかを考え、何社かお会いしたという。比較検討した結果、「ロケーションバリュー」にアプリの開発をお願いすることになった。

アプリ利用規約の作成に四苦八苦

2014年8月にアプリ開発を開始した。はじめに出た課題は「アプリでは利用規約が必要」だったことだという。

「当社では、クレジットカードの利用規約は持っていますが、アプリの利用規約は作ったことがありません。そのため、顧問弁護士のところへ行って『どんなものを作ったらいいですか』『この文言は大丈夫ですか』ということを相談して作成しました」。これからアプリを作られる方は、利用規約があるぞということを覚えていただけたらと語った。

Google Playに申請したら「偽アプリ」と疑われた

アプリの開発が完了し、申請の準備に入った時、ロケーションバリューから「Appleは審査があるから大変ですが、Googleは申請すればすぐに公開できます」と話を聞いていたため、申請の通過を一生懸命行い、そして無事、Apple申請が通った。

続いてGoogleに申請をしたら、すぐには申請が通らなかったという。「Googleから英語のメールで『このアプリはJALの名を語る偽物だろう。だからリリースさせないぞ』と疑われてしまいました。以前からGoogleさんとはお付き合いがありました。日本のGoogleさんを通して、『私たちは本物です』と言ってもらって、なんとかアプリをリリースすることができました」。

プッシュ通知を出したらサーバーダウン

無事アプリが公開され、もともとやりたかったプッシュ通知を配信した。「想定していなかったのですけど、プッシュ通知って、お手元のスマートフォンに届くとすぐに開けちゃうのですね。みなさんが一斉にお知らせを開いたため、当社のサーバがそれに耐えきれなくなって、サーバーダウンしました。これで当社のシステム担当に怒られました。これを機に、当社のサーバも増強することになりました」。

そこから機能改善を行っている。2016年1月にはセグメントしてプッシュ通知を配信できるようになった。

継続手続きを忘れたら、App Storeからアプリが消えた

Apple Developer Programアカウントはリリース前の2014年10月に開設している。アプリを継続する場合は1年に1度更新する決まりがある。「こんなことも初めてやっていたので、自社で更新するのを忘れてしまいました。そうしたらApp Storeからアプリが消えちゃったのですね」。

「何で突然消えてしまったのだろうとロケーションバリューに調べてもらうと『どうも手続きをしていないようです』との回答で、ああそういえば当社でやると言ったと思い出し、急遽そこから更新しました。次回から忘れないよう、ロケーションバリューに更新手続きを委託しました」。

「吹き流しの向きが違う」とお客様から問い合わせ

2017年4月にお楽しみコンテンツ「JALカードフライト」を公開した。 公開初日にお客様から問い合わせをいただいたという。

「飛行機って向かい風に向けて飛ぶと知っていましたか?知識としては聞いたことがあったのですが、それを意識せずに公開したら、公開初日に2人のお客様からご指摘を受けました。それで直して1か月後に公開したら、そのお客様から『直りましたね』とお問い合わせいただきました」。

最近の取り組み:「ジオフェンス機能」

現在やっている取り組みの1つに、5大空港(羽田、伊丹、千歳、福岡、那覇)にジオフェンスを仕掛けて、特約店が提供するご当地のおすすめ情報を配信する。「飛行機で到着の前にクーポンの入った冊子を配布するのですが、それを、アプリを使ってできないかと考えました」。

「例えば羽田空港のエリアに入るとプッシュ通知が届きます。すると『羽田空港ご利用のお客様へ』というかたちで、羽田近郊にある特約店のおすすめ情報やクーポンをご紹介します。羽田では、1日約1,000人のユーザーにプッシュ通知が届いています」。

「特約店にマツモトキヨシがあります。銀座に新店舗ができまして、プッシュ通知の送客を行いました。ここは銀座という土地柄、会員の方も多く、1日約2,000人にプッシュ通知からクーポンが届いています」。

今後はDL数増加と継続率に注力

長期的な目標としては全ての会員にアプリをダウンロードしてほしいという思いがあるという。また、「当面の目標としては早期に50万ダウンロードを達成し、100万ダウンロードを目指したいと思います。そしてダウンロードされた方にはどれだけ継続して使っていただけるかが目標です。そのほか、機能改善や新機能サービスを追加していきたいと思っています」。

さらに「アプリはいろいろなデータが取得できます。今後は、ログデータやGPSデータを取得して活用したいと思っています。プッシュ通知も、もっといいことができるのではないか」と展望を語り、講演が閉幕した。