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「ファンとの交流から新しいものが生まれる」ハーゲンダッツ流ソーシャルメディア活用事例

 Post by MML編集部

7月4日から7月6日まで「販促ワールド2017夏」が行われ、ハーゲンダッツ ジャパンの續 怜子氏より「ハーゲンダッツ X ソーシャルメディア」というテーマより、ソーシャルメディアに比重を大きく置いた背景やアカウントのポリシー、商品ごとの投稿方針といった取り組みについての講演が行われた。

ハーゲンダッツ ジャパン株式会社 マーケティング本部 續 怜子氏

2013年からソーシャルメディアに注力

ハーゲンダッツではテレビCMによる宣伝活動を行っていたが、2013年頃からソーシャルメディアにも力を入れている。 その理由はハーゲンダッツが20~30代女性の「F1層」をターゲットにしており、その方々がスマートフォンを見る機会が増えるに連れ、テレビCMだけでは届かないひともでてくるのではないかということで、デジタルマーケティングを開始した。

デジタルマーケティングといっても、Webの純広告はほとんど実施していないという。テレビCMや新聞広告、雑誌広告などの伝統メディアは広告が嫌がられず、むしろきちんとした企業イメージがあり、楽しめる広告イメージが強い。 しかしWeb広告は見たいコンテンツの中に広告が入って、嫌がられているイメージが強い。 そのためデジタルでは、オウンドメディアとアーンドメディアを活用している。

では、ソーシャルメディアは売上に寄与しているのだろうか? 新商品はテレビCMで取り扱っていないため、ソーシャルメディアマーケティングを本格的に開始した2013年当時、新商品を店頭で知る人がほとんどだったが、2年後の2015年にはハーゲンダッツの公式SNSやWeb記事で認知したという人が店頭を超えている。「ソーシャルメディアの人数は少ないけれど、買う可能性の高い人たちが集まっている。 そのため、購買には結構、影響があるのではないか」と續氏は語る。

特徴に合わせたソーシャルメディアの投稿方針

ハーゲンダッツでは、「LINE」「Twitter」「Facebook」「Instagram」の4つのメディアを運営しており、それぞれ投稿方針を変えている。

LINEは4つのメディアの中で利用者数が圧倒的に多く、増加率を見てもまだ増えていくと予想される。 しかし企業メッセージは嫌がられやすく、例えばLINEから投稿するとスマホにプッシュ通知が届いてブロックされる割合が高いと感じているため、新商品の告知をメインに利用しているそうだ。

Twitterはツイートがリアルタイムに届くことから、世の中の出来事や新着情報を見つけるために閲覧している人が多い。 ハーゲンダッツでは商品やキャンペーンを行っているが、フォロワーは速報性のある情報を好まれるので、新商品の予告をするとよく拡散されるという。 そのほか拡散を目的にリツイートキャンペーンで利用している。

Facebookは実名で登録するメディアであるため、ほかと比べてオフィシャルな投稿が多いというのが特徴である。 しかし、Facebookページからのリーチが減少しているという理由から、LINEと同様、商品情報を告知している。「ハーゲンダッツのFacebookはコアなファンが多いので、たとえエンゲージメントが低くてもきちんとした情報を投稿するようにしている」という。

Instagramは若い女性の利用が多く、クリエイティブ性が高くセンスがいい写真が好まれている。 ハーゲンダッツではより女性を意識したコンテンツを作るようにしている。

ハーゲンダッツはLINEの友だちが最も多く、Instagramが最も少ない状況となっている。 しかしInstagramは投稿に対する反応が良くて、比較的エンゲージメント率が高い。 さらにTwitterは他よりもリーチ総量が多いため、ハーゲンダッツではInstagramとTwitterの2軸に力を入れているという。

お客様とハーゲンダッツとの関係性とは?

テレビは有名俳優が出演しているドラマやアーティストの作品など、みんなが求めている高品質なコンテンツを提供しているメディアである。 しかしソーシャルメディアは日常の出来事が流れているのに、テレビよりもソーシャルメディアのほうを見るのだろうか? それは「コンテンツの質」のほかに、提供者との「関係性」が絡んでいるのではないかと續氏は語る。

「自分の友達や好きな人が投稿しているからそちらを見たくなると考えたとき、ハーゲンダッツとお客様との関係性って何だろうと思いました。 ハーゲンダッツはどんな存在になりたいのか。 商品はちょっと高いけど、ものすごく高いものではないので、日常生活にある少し良いものかなと思っています」

「毎日ちょっとだけいいことがある。日常生活のベースアップにつながるもの、例えばカフェに行ったり、またはヨガに行ったり、エステに行ったりした時のような、そういう中にハーゲンダッツがある。 間違いない美味しさやちょっと憧れの存在になる、ちょっと話題性があるというのはハーゲンダッツが提供しているものかなと思います」

アカウントを運営するうえでも、すべての人が濃厚な幸せに心行くまで浸りきる時間を楽しんでほしいということから「幸せだけで、できている。」というパーソナルを掲げ、幸せな時間、幸せな関係、幸せな価値を提供するアカウントであることを目指している。

商品ごとに告知方法を変える

ハーゲンダッツではいくつもの商品があり、種類に応じて投稿方法を変えているという。「華もち」や「トリプルショコラ」などの「ミニカップ新商品」は、商品自体に話題性があり、消費者やメディアも興味があるものなので、商品のことをきちんと告知するよう心掛けている。

「バニラ」や「ストロベリー」などの「ミニカップ定番商品」は、多くの人が既にが知っている商品だから、ニュース性も乏しくメディアも取り上げにくい弱点がある。 そのため新しい気付きを与えてニュースとして消費者に届けていくことを心掛けている。

クリスピーサンドやクランチークランチなどの「ワンハンド商品」は、まだまだファンも少ないため、オウンドメディア施策でファンの方々に、その商品の良さを知ってもらうよう活動を行っている。

そのなかで、ミニカップ定番品を訴求する方法として「ハーゲンダッツベーカリー」の事例を取り上げた。 これは、パンにアイスクリームを挟むと美味しいよというアイデアをきっかけに「バニラ」の味を思い出していただく施策として行った。 ポップアップショップを展開し、メゾンカイザーと協力してアイスクリームに合う商品を開発して提供した。

その結果、多くのメディアに取り上げていただき、合計で約2万4,000人が来店した。「バニラって改めて食べると美味しいなと思っていただけたのではないか」と語る。

続いてワンハンド商品の事例。 ハーゲンダッツはミニカップのイメージが強く、ワンハンド商品を食べたことがない人たちが多いという。 そこで美味しい抹茶アイスクリームがバーになっているということを、ファンの人たちに分かってもらうためのキャンペーンを立ち上げて告知を行った。

キャンペーンに当たると商品がプレゼントされ、外れると美味しさの秘密を教えてくれるコンテンツに飛ぶような施策を行ったが、反応率が高く、購買にもつながったという。

ファンとの交流から新しいものが生まれる

ハーゲンダッツではアーンドメディアを考える際、メディアやインフルエンサーも大事だが、やはり現在のファンと密接に交流することで、よりリアルなコミュニケーション活動が行えると考えている。「ファンが投稿した画像を見るとどれも素敵だし、社内ではあまり考えつかないデザインが多いと思います。そういった投稿を取り上げて公式でご紹介しています」

例えばアイスクリームの表面に現れる「ハーゲンハート」は、もともとユーザーから「ハートが出ました」と報告されたことがあって、そういった経緯から始まった施策だった。 それがやがてテレビに取り上げられ、テレビを見た視聴者がこれは面白いと、情報が一気に拡散していった。

ユーザーからの報告ではこのほか、夜食べますとか、お風呂上りに食べますといった“シーンの報告”やこういうふうに食べると美味しいよといった“食べ方の報告”がある。「ファンが実際にやっていることを報告していただけるので、訴求力が強いと感じています」と語る。

そのほか、ハーゲンダッツはファンの中でも影響力の強い「インフルエンサー」を活用している。 以前、ハーゲンダッツの定番商品について調査した時、「マカデミアナッツ」は商品認知度が一番低かったものの、リピート率は一番高いことが判明し、つまりハーゲンダッツが好きな人ほど「マカデミアナッツ」が好きだということが分かり、それは面白いねということで「マカデミマニア」というキャンペーンが開始した。

マカデミマニアでは、本当に「マカデミアナッツ」が好きな有名人に、その思いを熱く語ってもらっている。 ユーザーも、ソーシャルメディアからマカデミマニアであることを投稿すると「冷凍庫に入るだけのマカデミアナッツ」が当たるキャンペーンを実施し、大いに盛り上がった。

ハーゲンダッツに関するユーザーの投稿数も年々増加している。「ハーゲンダッツを投稿するのがいい感じというのが少しずつ広まっていくと、みんな投稿してくれるようになります。 その力って広告ではもたらせないほどの影響力があると思うので、そういったところも大事にしながら、ソーシャルメディアのさまざまな施策を行っている」と語りセミナーが終幕した。