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「カラオケビジネスは30年間何も変わっていない」第一興商が語るアプリを活用した顧客体験価値とは?

 Post by MML編集部

6月6日、宣伝会議が主催する「インターネット・マーケティングフォーラム2017」が開催された。第一興商の花井 譲氏より「コモディティービジネスをテクノロジーで進化させる」をテーマに、カラオケビジネスの現状や、新しい体験価値を生み出すリアルメディアのプラットフォーム戦略について語った。

株式会社第一興商 宣伝部 次長 花井 譲氏

30年間ビジネスの根本は変わっていない

第一興商は、通信カラオケDAMの販売や、「ビッグエコー」をはじめとする自社ブランドのカラオケボックスを全国で550店舗以上、「楽蔵」など飲食店舗を全国で約200店舗展開する。そのほか、レコード会社の運営やスカパー!でBGM放送も行っている。

国鉄が民営化を目指していた1985年当時、国際規格に合わないコンテナは世の中に多く流通していた。カラオケボックスは、中古コンテナを活用して営業したのが始まりとされる。それから1990年半ばでカラオケブームの最盛期を迎えた。

その後、地方やロードサイドにあったカラオケチェーンが都心部展開を加速。現在では映画鑑賞や英会話、会議室などカラオケ以外のサービスが多様化し、時代にあった展開を行っている。

つまり、カラオケボックスビジネスはその時代に合わせて変化しているが、過去30年間ビジネスの根本は変わっていない。「皆さんカラオケボックスへ行ったことがあるかと思いますが、現代でも昭和の時代と変わらずに、ビニールのソファーにローテーブルが定番であり、カラオケボックスビジネスの根本は何も変わらず超コモディティ化している」と花井氏は説明した。

カラオケには十分ポテンシャルがある

ここから花井氏は、カラオケビジネスに関連している音楽ビジネスについて説明した。CDやDVDなどの音楽ソフト市場(青ライン)の売上は年々減少している。一方、ライブやフェスなどのコンサート市場(赤ライン)は年々増加を続け、2015年を境に音楽ソフト市場から逆転した。グラフ上では少なく見えるが、それでも音楽ソフトの売上は約3,000億円規模と、世界でも稀な市場である。

ではカラオケ市場(緑ライン)はどうなのだろうか? ユーザー市場規模を見ると、カラオケボックスを中心に約6,000億円以上と非常に大きな市場である。「カラオケの利用者のうち、1か月の平均利用頻度は約4回と言われており、つまり1週間に1回行っていることとなる」と説明。

さらに、「カラオケボックスの滞在時間は平均2時間半で、1回の来店につき平均10曲歌っています。1曲5分で計算すると50分ですから、つまり1時間半は、相手の曲を聞き、または食事しているような、何もしていない時間なのです。これは大きなポイントです。冷静に考えると、実ははまだポテンシャルがあるのではないか」と語る。

新しい体験価値を提供するリアルメディアを提供

カラオケメーカーや事業者のビジネスモデルは、カラオケ機器を設置した店舗から毎月配信する新曲を含むカラオケ等のコンテンツ使用料として、情報利用料をいただくという非常に安定した構造になっていると花井氏は語る。

それが未来永劫続くのかと考えた時、例えばカラオケ人口が減少した場合、それに合わせて業界の売上も減少していくという危機感は、花井氏の中にあったという。そのため第一興商は、B to B や B to C 両方のお客様にとって新しい体験価値を提供するリアルメディアとしてのプラットフォームを実現する準備を行っている。

駅前の一等地にお客様を滞在させて、さまざまなコンテンツを提供できる場所というのは他にも類がない。そういう意味で、カラオケボックスは「リアルメディア」であると語る。

現在、第一興商ではB to B のパートナーであるレコード会社やアーティストが所属している事務所に、カラオケの背景映像やアーティストとのコラボルームといった「プロモーション」、カラオケ印税や映像コンテンツ許諾費用などの「マネタイズ」について提供している。

一方B to C の一般消費者には、アーティストコラボルームや、オフ会など、カラオケで歌うだけではない音楽中心のさまざまな最新エンターテインメントを発信し新しい体験価値を提供している。

店舗と連動したスマホアプリを提供

今回、カラオケボックスを B to B や B to C のお客様にとっての「リアルメディア」に進化を図っていくため、店舗に連動したスマートフォンアプリを開発し、2016年7月に提供を開始した。2017年度下期からアプリとビーコンが連動し、店内に入るとコラボルームやキャンペーンと連動した限定グッズが購入でき、または限定動画を閲覧できるなどのサービスをスタートする予定である。

「ビーコンを設置することによって、店舗により価値をもたせる。それは、リアルメディアの価値をもたせるということが大きなポイントである。我々は店舗限定というリアルプレミアムを創出し、店舗送客もでき、レコード会社・アーティスト所属事務所のマネタイズもできる一石三鳥の展開になる」と花井氏は語る。

次なるフェーズは「ビッグデータ」

そして第2フェーズとして、カラオケボックスで歌われる数億回にものぼる歌唱データと個人を紐付けたビッグデータの活用を検討中である。

「アーティストの曲を歌うお客様は、そのアーティストが嫌いということはないですよね。歌唱データと紐付ければ、Aさんがどの店舗でどの曲を何回歌ったのかが分かります。そのデータをレコード会社や所属の事務所に展開したら究極のOne to Oneマーケティングが実行できる」と語る。

B to C のお客様についても、過去の歌唱データを分析し、おすすめの曲を提供する機能や、過去の歌唱アーティストによる最新情報が配信されるなどの機能を提供する。

全体像としては、第一興商、レコード会社や事務所、エンドユーザーが店舗やアプリを中心につながることで、3者間のWin-Win-Win の関係を構築することができ、リアルディアの価値が完成すると花井氏は語った。

既成概念に疑問を持つことが進化を生む

最後に「私は外部から来た人間だからゆえに、これは何でこの会社では常識なのだろう?ということがたくさん出てきます。一歩引いたところで見ると、これは常識ではないよねというのが必ずあります」

「既成概念に疑問を持つことは、コモディティービジネスを進化させるために、必ず必要なことである」と花井氏は力説する。そして企業のポテンシャルを見つけ、仮説を作成し、マーケティングやテクノロジーを組み合わせて常に実行していく。

そして、いろいろな会社さんを巻き込んでもっともっとカラオケボックスとしてのリアルな価値を上げていきたいと語りセミナーが終幕した。