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ビーコンは大規模に使わないと効果がない。日本中のビーコンを活用したアプリの相互送客事例をunerryが語る

 Post by MML編集部

4月26日、宣伝会議が主催するイベント「AdverTimes Days 2017」が開催された。unerryの内山 英俊氏より「200万個のビーコンで実現! オフラインの顧客行動情報を活用した新ロイヤルプログラム」と題して、なぜビーコンなのか、オンライン行動データをどう分析するのか、どのようにコミュニケーション施策に反映するのかなど具体的な事例について講演を行った。

株式会社unerry 代表取締役 CEO 内山 英俊氏

消費者の購買意識が変わってきた

国際貿易投資研究所の発表によると、商業(小売業)の成長率は2016年から2024年にかけて長期的なスパンで衰退し、外食業においても成長率はなかなか厳しい状況が続くと予想されている。

なぜこのようなことが起こるのか調べてみると、特に20代から30代の「折込チラシ」や「テレビ番組」のリーチ率は減少し、雑誌の販売部数やメールマガジンのクリック率も同様に減少している。

つまり、消費行動の盛んなミレニアル世代は、車や家などモノの所有に関心がなく、スマートフォンを中心にネットで口コミ調査を行ってから商品を購入し、ソーシャル・メディアを駆使して商品や旅行のレビューを上げるなど、我々の世代とは少し違う価値観を持っている。

一方で、企業におけるデジタルの対応を見ると、Webや公式アプリの対応が行われていないことで顧客データが取得できていなかったり、または顧客データを取得していても分析能力が不足していたり、仮に分析できてもコンテンツが書けず運用を回せない状況が起きている。

内山氏は「今後、社会の中核を担うミレニアル世代について、企業はどのように対応すべきなのか考えていかなければならない」と語った。

また、コカ・コーラボトラーズジャパンにおいても同様の課題を抱いているという。現在、全国の自動販売機ビジネスは成熟した市場に入っており、年率2%程度で売上が減少している。そういうことから自動販売機は、販売チャネルのシフトに迫られている。

今後、自動販売機を利用している顧客に喜んでもらうため、「Coke ON」と呼ばれるロイヤリティプログラムを実施し、売上の向上を実施している。Coke ONやビーコンによる顧客の購買データや購買心理、行動ログを分析し、自動販売機における社会的価値の創造、そして更なる売上向上に取り組んでいる。

一夜にして数十万個のビーコンが使えるBeacon Bank

unerry(ウネリー)は、各社のビーコンを相互利用できるオープンプラットフォーム「Beacon Bank(ビーコンバンク)」を提供している。これまでの技術では、アプリごとに識別できるビーコンIDは最大20個しか利用できなかった。unerryは技術開発を行い、20個という制約を解決する特許を取得した。

「少ない数のビーコンと反応するサービスを提供したところで、ビジネスインパクトがほとんどでない。小さな取り組みをするから失敗してしまうのだと思います。ですからBeacon Bankにご登録ください。一夜にして数十万個のビーコンと連携するビーコンネットワークが使えるようになりますし、そのことが最大の価値になる」と内山氏は語った。

今までのビーコンというと、店舗のさまざまなところに設置されており、店舗の付近に入るとキャンペーン情報のプッシュ通知が配信され、お客様が店舗に入るというのが一般的だが、それではあまり効果がないと語る。

では何が一番、効果があるのだろうか?内山氏は「店舗間同士で“相互送客”するというのが一番、効果がある」と話す。ShopAdvisorによると、計700店舗にビーコンを設置し、付近を歩くお客様へプッシュ通知を配信して送客する率は一般平均で0.8%だった。しかしShopAdvisorが行った「相互送客」を行ったところ、8.5%と10倍以上の効果が現れたという。

「もちろんこの裏側には、どういうお客様がここへ行きたらどの店へ行くのかという行動分析があった上で設計されています。これをしっかり設計すれば10倍の効果が出るというのは実際のデータから現れていますので、こういうモデルを日本でも実現できるようBeacon Bankで提供しています」と語った。

ビーコンから行動パターンが読み取れる

ここで疑問に思うことは、ビーコンとGPSの違いである。確かにGPSは無料で利用できるが、ほとんどの会社は分析できず、地図上にマッピングして終わってしまうという。その点ビーコンは、「映画館」「レストラン」「デパート3階」などのラベル付けがされている。

つまりラベルを追っていくと、このユーザーは来店する前にどの場所にいて、来店したあとはどの場所へ向かったのか、ユーザーの行動パターンが見えてくる。unerryでは、行動特徴を抽出し、198項目の行動パターンを分析した「行動DNA」を提供している。

「行動DNAを見れば、このアプリの利用者はどういうところへ行ってどういうところに行かないのか特徴を分析することができます。どの場所・どのタイミングで情報配信をすれば効果があるのか分かってくる」と述べた。

スーパーマーケットのアプリ施策。50代が売上に寄与?

ではBeacon Bankを活用して、企業はどのような成果を上げたのだろうか。内山氏はその一例として、スーパーマーケットの公式アプリによる施策を披露した。このアプリは、プッシュ通知でクーポンや情報を配信し、来店するとスタンプが貯まる。そして15スタンプが貯まると、特典と交換ができるといった機能がある。

Beacon Bankの施策を行って、どれくらい売上が上がったのか調査すると、月間購入額は施策前と比較して15.8%アップしたという。「もともとアプリを利用する人の客単価は、利用しない人よりも30%高いのですが、施策を行ってさらに15%アップしたため、全体の母数では約1.5倍の効果が出たことになる」と内山氏は語った。

ではどのような人が売上に寄与したのだろうか?「結構若い人かなと思って調べてみると、50~60代が全体の4分の1を占めており、さらに50代の人が、月間購入額が最も高いことが分かった」。

どうしてここまで効果が出たのかということについて内山氏は、「来店回数」に秘密があると語った。アパレル等の場合は来店しても購入する頻度は少ないが、スーパーや飲食店というのは来店すると何か購入する。そのため、今回は来店スタンプを活用し、来店頻度を上げる施策を行った。実際、3分の1の人が15スタンプを貯めて、特典を取得している結果も出ている。

ユーザーの動きを立体的に把握する

では、そもそもお客様はどこにいるのだろうか?そしてクーポンや情報を配信した時、どの場所にいるお客様に最も効果を発揮したのだろうか?お客様がいる場所を地図上で表現すると、電車に乗る前や乗り換えの場所に最も人が集まっている。つまり、店舗付近でクーポンを配信することが必ずしもいいとは限らないと内山氏は語る。

「結局どのスーパーへ行くのかというのは、いま都心にいて、電車に乗って、大岡山駅で降りて、スーパーに寄るという行動のどこかで決めるわけです。分析してみると、最も配信効率が高いのは“電車に乗る前”とわかりました。具体的には渋谷駅や自由が丘、目黒駅とかで配信するのが、一番効果が高いということが分かります」と語った。

高い効果のロイヤルティプログラムを実現するためには、ビーコンを使っていかに顧客のオフライン行動をきちんと把握し、One to One に情報配信することで、高い送客効果を実現することが重要になる。そして、大規模に実施することでより高い投資対効果を狙うことができる。

お客様の生活そのものを、時間をさかのぼりながら立体的に見て、どこで配信するのが一番効率的なのか、そもそもどんなコンテンツを出すべきなのかということをきちんと考えながら、どれだけ細かい分析と運用を回せるかということが効果を上げるポイントであると語り、セミナーの幕を閉じた。