2月22日、アプリ情報プラットフォームを提供するApp Annieが主催するセミナーDECODE「
スマホファースト時代の最新アプリマーケティングセミナー」が開催された。このイベントは、アプリコミュニティー発展のために世界各地で行うもので、国内では2017年初回の開催となった。
第1部は、日本ロレアルの長瀬氏より「コスメビジネスにおけるアプリの意義とは?」と題して、顧客との距離を縮めるデジタル戦略と目指すべき方向性について語った。
日本ロレアル株式会社 デジタル&メディア事業本部 CDO 長瀬 次英氏
日本ロレアルのデジタル戦略
日本ロレアルは、イブサンローランやランコム、メイベリン・ニューヨークなど、22ものブランドを展開する大手外資系化粧品会社である。L2 Inc.が発表した「デジタルで最も活発な上位10ビューティブランド」のうち、5つのブランドは日本ロレアルが選ばれており、グローバルの中でも、デジタルパフォーマンスが高いブランドとして認められている。
もともと日本ロレアルには、作り手がいいと思うモノを作る「プロダクトアウト」でイノベーションを起こす企業だったが、「世の中は2人に1人がスマートフォンを所有する時代。これからはお客様を中心に置いたコンシューマーセントリックのビジネスへと変えていかなきゃならない」と長瀬氏はデジタルへ移行したきっかけについて語った。
そして「我々は、お客様との距離を縮めるということがデジタル化の意味だと考えている」と話す。デジタルというツールを用いて、徐々にお客様へ近づいていく。新しい技術を取り入れ、成長し、お客様との距離を縮める。これが今のビジネスにおけるデジタルの意味であると語った。
顧客との距離を近づけるデータ活用戦略
日本ロレアルでは具体的に、どのようなデジタル戦略を行っているのだろうか。「社内ではインフルエンサーから企画やアドバイスをいただいたり、ソーシャルリスニングツールを活用して、顧客インサイトを分析したり、CRMやWeb解析、アプリを活用してお客様の情報を収集・分析している」という。
さらに「我々1社では何もできないので、FacebookやLINE、@cosme、AmazonなどのEコマースやソーシャルプラットフォーム、スタートアップなどと提携していきます。幾つかのブランドはPOSデータなどから情報を収集して、CRMを活用して分析していますが、それ以外のものはジョイントパートナーから集めていきます」と語る。
このように収集したデータを活用して、リアルタイムの「カスタマージャーニー」を把握し、顧客との距離をさらに近づけるよう目指しているという。
コスメデジタルビジネスの大きな課題。解決するカギは「アプリ」
「我々がデジタルビジネスを進めて行く際に1つだけ大きな課題があります。メイクということを考えたときに、メイクは実際に使ってみないと、みんな買わないんですよね。オンラインで気軽に買えるモノじゃない。実際に口紅を付けてみて気に入ったら買う。このアナログ的な部分はどうしても拭えない。これが大きなデジタル課題」と長瀬氏は、コスメにおけるデジタルビジネスの課題について説明した。
コスメのデジタルビジネスの課題を乗り越えるポイント、それは「ブランド体験である」と長瀬氏は語る。「コスメは自分が試して初めて売れるモノです。我々が提供している幾つかのアプリはブランドを体験するアプリになっています。例えば買い物中のちょっとしたすきにブランド体験ができて購入につながれば、そこは結構大きなチャンスになるのではないかと思う」とアプリの可能性について語った。
そのなかで長瀬氏は「MAKEUP GENIUS(メーキャップ・ジーニアス)」というアプリを紹介した。このアプリはスマホ上で自分の顔をスキャンすると、顔のパーツをアプリが認識し、アイラインやリップなどのメイクを取り込んだ画面のなかで試せる、メイクアップ・シミュレーター機能を搭載している。
この手のアプリはメイクアップ・シミュレーターのほかに、実際のイベントと連携して情報共有や話題喚起を行うほか、ユーザー同士の意見交換やコミュニティーを形成する機能も搭載していたりする。そして、提供されるコスメは、他社ブランドも用意されており、多くのバリエーションを気軽に楽しめるという。「なぜ他社商品を入れるのかというと、どんな商品と比較しているのか、アプリ内の動きが把握できると更にカスタマージャーニーが充実していくから」と長瀬氏は説明する。
「データがもたらしてくれるものとは何なのかと言うと、目指すべきところは、完全なカスタマージャーニーの完結です。デジタル上のアプリだけで全ての情報を分析し、マーケティングデータに利用するというところを目指しています」と話しセミナーが終了した。