オムニチャネル戦略やO2O事例を読み解く専門メディアモバイルマーケティング研究所

アプリをやる目的や何が成功なのか分からない。企業から聞く悩みについて事例を交えた対策法を語る。App Annie向井氏

 Post by MML編集部

12月13日、ReproとApp Annieの共催で、「小売アプリ最前線 ~顧客エンゲージメントを引き出すアプリの特徴とは?~」が開催された。このセミナーは、小売業、EC企業がデジタル戦略を考えるうえで外せないアプリについて、成功しているアプリに共通している特徴や、オムニチャネル時代におけるアプリの活用法について紹介するもの。

第1部はApp Annieの向井俊介氏から「世界の小売アプリ利用動向と顧客エンゲージメント向上のポイント」と題したセミナーを行った。

App Annie Japan Head of New Business 向井 俊介氏

App Annieの調査によると、日本における全体の新規アプリダウンロード数は年々減少しており、それが最近では、月々で新規ダウンロード数が減少している。一方で、企業はアプリを次々と公開している現状があり、今後はダウンロードされにくい事態となっている。このような状況について向井氏は「ユーザーの目も肥えてきている」と説明した。

日本の課金マーケットについては、2014年から2015年にかけて20%程増加している。特にiOSの課金状況は非常に増加している傾向がある。その理由について、向井氏は「これは課金だけではなく、ユーザーがアプリを通じて『お金を支払う行為』の精神的ハードルが年々下がっており、そこにお金が流通している実態を表している」と説明した。これから先、例えばアプリ上から商品やサービスを購入する行為についても、年々ハードルが下がっていくことが読み取れる。

外食系アプリのトレンドとは

App Annieが調査した、アメリカのフードサービス系アプリのランキングを見ると、ダウンロード数やMAUから見ても、そのほとんどが、ファストフードアプリに集約されているという。むろん広告を投下すればある程度のダウンロード数を獲得できるが、アクティブユーザーというところに着目しても、ファーストフード業界が急激にユーザー数を伸ばしている現状があり、現在、ファーストフードが外食の中で、アプリとの親和性が高まっているといえそうだ。

「アメリカで流行しているアプリ機能は、だいたい半年から1年後以内にトレンドとして日本に入ってくる傾向がある」と向井氏は説明する。今回、アメリカトップのアプリで利用されている中核機能について紹介された。

まずは、「オンボーディング」や「チュートリアル」。アプリの操作をこれから継続していこうと思わせる構成や、「ぬるっと感」に代表されるストレスを与えない操作性もここに含まれる。2つめは、「メニュー」や「ディスプレイ」。キャッチーなメッセージで、シズル感たっぷりで、写真は大きめにしてユーザーへアピールしているものが多い。これらはメニューのほかに、新商品やクーポンでもビジュアル写真を画面いっぱいまでに表示しているという。

あとは、「ロイヤリティプログラム」や「決済」。ロイヤリティプログラムは購買した方全員にフェアなお返しをするというところで非常にシンプルなシステムとなっており、次のリテンションにつながっている。それから、「モバイル注文」では既に注文履歴が入っていて「今回もこれを注文したいんじゃないですか?」というふうに商品を薦めてくれる。注文も最短で1~2タップで注文ができたり、商品選択の切り替わりがスムーズだったりと、ストレスを感じさせない作りとなっている。

ユーザー体験の一例として向井氏は、チックフィレイ(Chick-fil-A)が提供しているアプリを紹介した。このアプリは2016年5月に大きくバージョンアップした。「チキンサンドイッチを無料でプレゼントするからアプリダウンロードして」というキャンペーンを行ったところ、爆発的にダウンロードが増加した。ポイントは、いろいろなユーザーの利便性を考えてアプリ機能をきちんと投入し、ダウンロードさせた後の「アプリ利用の快感」を提供している。その結果、アクティブユーザー数もバージョンアップ前後で、大きく跳ね上がったという。

小売・ショッピングアプリのトレンドとは

モバイル・コンテンツ・フォーラムが調査した「モバイルコマースの市場規模」によると、この3年間で2倍に成長している。モバイルファーストで商取引を行う企業やサービスは、今後も増えていく見込みだ。また、App Annieが調査した、日本のショッピングカテゴリーでMAUの多かったアプリのランキングを見ると、実店舗のアプリがどんどん上位にランキングしているという。

海外の小売業と比較すると、日本の特徴はファッション系アプリに代表されるように、雑誌を読まなくなった若い女性ユーザーが、いわゆる購入までの「検討フェーズ」において、アプリに代替機能を求めている傾向もあるという。「どういうファッションが今トレンドなんだろうとか、このアイテムとこのアイテムを組み合わせたら超可愛いじゃん、シェアしようとか、そういう購入するまでの時間の過ごし方がアプリ上にシフトしてきて、それがソーシャル機能と相まってさらに広がってきている」と向井氏は解説した。

その他の特徴として、共通ポイントやマイレージに代表されるような「ロイヤリティプログラム」がある。MUJI Passportアプリのように、商品の購入やレビューの記載、チェックインなどの行動を行うとポイントが貯まるマイレージ機能は、他の企業でも採用しており、日本特有の機能となっている。

事業会社からよく聞く悩み

さまざまな企業を回っていると、担当者から「アプリの目的が見えなくなってきている」という話をいただくそうだ。上層部からアプリを作る話がやってきて、いつの間にか作ることが目的となって、アプリが完成したらプロジェクトを解散するのは、想像通り破たんするパターンなのだと向井氏はいう。アプリは運用することがとても大事であり、いかにグロースさせていくかというところを、時間を割いてやらなければアプリは成功しない、と向井氏は述べた。

また、「成功の定義が分からない」という話も聞くという。KPIについて質問すると担当者は「100万ダウンロード数を目標にしています」と回答されるという。その理由として「競合他社が半年で100万ダウンロード突破したから弊社もできるでしょう」や「リアル店舗に年間何万人来ているからそのうち10%ダウンロードするでしょう」、「WebページのPVがこれだけあるから、これくらいダウンロードされるでしょう」と回答されるという。

この件について向井氏は「目標設定のところはきちんと真面目にやりましょう」と担当者に申し上げるという。ダウンロード数は広告の投下や、リアル店舗であれば「ダウンロードしてね」と店頭で言うオペレーションを回せば自然とダウンロード数が伸びるが、問題は「アプリ利用」であるという。

自社アプリをやるべきか、他社サービスでやるべきか

他にもよく聞かれる質問として多いのは、「弊社は本当に自社アプリを運用すべきなのか、それともLINEのように、数千万人のユーザーを抱えたサービスに乗って、やったほうがいいのか」。このような議論は会社内で検討するときに出てくるが、向井氏は「自社でアプリをやる意味はこれですね、『ユーザーのローデーターを収集できる』」

「これがあるからこそ One to Oneマーケティングができるし、顧客にきちんとしたレコメンドを送って、エンゲージメントをつなげていける。これが無いと始まらない。アプリでやってきたことと今までやってきたことを変えずに、マスコミュニケーションをやらざるを得なくなってしまうのは、自社でユーザーデータを持っていないから」と説明した。

ではどうやったらユーザーデータが集まるのだろうか?「それは非常にシンプルで、『アプリを利用してもらうこと』です。利用してもらうための1番大事なポイントは『コンテンツ』です」と向井氏は語る。

エンゲージメント向上に向けてベンチマーク

アプリとはダウンロード数よりもどのように使われているか、どれくらい使われているかということが重要だと前段で説明されたが、ではどうやってベンチマークを行えばよいのだろうか?向井氏は「App Annieを活用して競合他社のアプリと比較しながら、どちらが勝っているのかデータを見るのが非常にシンプルなやり方である」と説明した。

何百万ダウンロードされているアプリでも、1店舗当たりのアクティブユーザー数や1か月で何回立ち上げているか、1回立ち上げたときに何分何秒滞在しているかといった数字を見ると、アプリによってばらつきが見られる。これらの数値が少ないアプリは、ダウンロードが多くてもユーザーとのコミュニケーションが密に取れておらず、エンゲージメントの向上につながっていない可能性がある。

他社のアプリと比較して、どうしてこのアプリはアクティブユーザー数が高いのか、滞在時間が長いのかという観点から、どのようなコンテンツを使ってどのようなUXを提供しているのか調査して、自社でそれを行うと何がどれくらい向上するのか検討していくのが大事である。

最後に、向井氏は「自分たちの成功ってどれくらい行けたら成功と言えるのか。敵はどれくらいなのか。お客様はどう使っているのか、そういった数値を見ながらアプリを設計していただいて、自分たちのアプリの運用に活かしてもらいたいと思います」と話し、セミナーが終了した。