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花王、富士フイルム、資生堂が語る、マーケティング戦略と理想のアプリとは?
本記事は、11月29日に開催されたApp Annieが主催するイベント「App Annie DECODE Tokyo」より、第3部「消費財メーカーにおけるアプリ活用最前線」をテーマにパネルディスカッションが行われた。花王の石井龍夫氏、富士フイルムの一色昭典氏、資生堂ジャパンの笹間靖彦氏をお招きし、モデレーターはApp Annie Japanの向井俊介氏が務めた。
向井)昨今、マーケティング活動において「デジタルマーケティング」という言葉がバズワードのように使われていますが、皆さまの「デジタルマーケティング」の定義とはどうお考えですか?
石井)デジタルマーケティングとは、デジタル広告を使ってマーケティングをすることではありません。例えば、バナー広告、eコマース、ソーシャルメディアの情報発信を行っていくことで私たちのところにデータが貯まってくる。そのデータを活用してマーケティング・コミュニケーション全般を最適化し、結果的にコミュニケーションのROIを改善していくことだと思います。
一色)マーケティングは昔も今もこれからも変わらないと思うのですが、そこにデジタルがくっついているだけ。デジタルの到来で、マーケティングは売り方を考えるのではなく売るものを作ることだとか、顧客課題の解決策や顧客のインサイトなど、様々なことが分かるようになってきた。デジタルマーケティングとは、デジタルの力を使って顧客を意訳しているという認識です。
笹間)僕はデジタルマーケティングという言葉には少し違和感を覚えるところがあって、デジタルというのはマーケティング活動の中の重要な一つの要素だと考えています。そうした中で我々の部署のミッションはデジタルのデータを使って、どれだけユーザーとの接触時間を増やすことができるのかを追求すること、またそのデータを使ってブランドチームをサポートすることだと思っています。
石井)やはり、デジタルマーケティングと言っていること自体が古いですよね。デジタルがくっついているということはデジタルとマーケティングを分けていることだから。IMC(統合型マーケティング・コミュニケーション)の中にもデジタルが組み込まれているわけなので、マーケティング自身がデジタルを使いこなして進歩して行かなきゃいけないと思います。
笹間)マーケティングにデジタルの要素が加わったことで、すごく仕事の量が増えましたよね。1メッセージだけでは済まなくなってきているので、1ブランドの1プロモーションで20~30ものメッセージを作らなきゃいけないなんてことも現実的に起きてきていますし、それぞれのメッセージの効果がどうだったのかトラッキングもしなきゃいけないし。マーケティングの中にデジタルが加わったことによって、仕事のやり方やモノの考え方がすごく変わったなという実感があります。
目次
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花王、富士フイルム、資生堂ジャパンが取り組んできたこと
初めに、登壇者の自己紹介とともに事業の役割などについて話された。
花王株式会社 デジタルマーケティングセンター長 石井 龍夫氏
花王 石井氏は、14年ほど各ブランドのマーケティングをされたのち、2003年から現在までデジタルマーケティングの仕事に携わる。一昨年までPCサイトを中心にしていたが、顧客にスマホが浸透してきていることを含めて、全ブランドサイトのうち7割にあたる49サイトをスマホに最適化した。結果、今年発行された、週刊ダイヤモンド「ウェブサイト価値ランキング」で総合31位から15位に上昇、「スマホの好感度ランキング」では見事1位を獲得したという。
現在は、顔写真を撮ってアプリにアップするとあなたの若顔度を診断してくれる「若顔診断」アプリや、メイクの好印象度のチェックや診断ができる「就活メイク診断」アプリ、またはトライアルとして、スマホを会員証代わりにしてデータと連携し、お客様の最適なタイミングにクーポンやお知らせをプッシュ通知し、来店促進を狙うO2Oアプリなどを行っている。

富士フイルム株式会社 e戦略推進室 マネージャー 一色 昭典氏
続いて、富士フイルム 一色氏は、1991年よりカメラ・フィルムなどの営業・マーケティングをされたのち、2011年よりライフサイエンス事業部のWebグループを立ち上げ、アスタリフトのEC事業の再構築を行う。2013年よりe戦略推進室のマーケティング部を統括し、全社Web活用における戦略構築と企画運営、デジタルマーケティングの推進を行っている。
e戦略推進室ではデジタルマーケティングのレベルアップをミッションとしている。いい商品を作って販売するプロダクトアウトの発想から、さらにマーケットインの発想を啓蒙すべく、プロジェクトごとにデジタルマーケティングをどう推進していくのか活動しているという。
アプリについては、プリント系またはデジカメ系のユーティリティーを展開している。アップロードした写真を選ぶだけでフォトブックが作成できる「フォトブック」アプリは使い勝手が大きく作用するため、多くの改善を行っているという。

資生堂ジャパン株式会社 ダイレクトマーケティング部長 笹間 靖彦氏
(現経営サポート部長)
資生堂ジャパン 笹間氏は、営業担当、ブランドマーケティング、事業企画などを経験後、5年前よりダイレクトマーケティング部にて「ワタシプラス」や「草花木果」などのダイレクトビジネスを行っている。
特に「ワタシプラス」は、お客様の化粧品選びから商品の使い方、購買、アフターフフォローまでをワンストップで提供するダイレクトマーケティングプラットフォームとして位置付けており、パーセプションフローに基づくコミュニケーション活動を行うため、プライベートDMPを使って活動している。
ユーザーがインターネットの中で、アプリを使っている時間が極めて長いという課題認識があり、資生堂ジャパンでもアプリを提供している。「おしえて!ビュー子」は、メイクの疑問が解決するAIを使ったチャットアプリ。「misette(ミセッテ)」は、メイクの裏技をシェアするアプリで、他社の商品を使っていても投稿できるのが1つの特徴。
これらを使い、お客様の疑問や化粧品の使い方を知ることで、普段どんなことを考え、どんな行動を行い購買に至ったのかという購買心理を考えているという。
デジタルマーケティングの到来で様々な仕組みが変わった
続いて、モデレーターからいくつか質問をしながらディスカッションを行った。