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情報があふれた現代、商品が売れ続けるマーケティング戦略とは?インテグレート藤田氏が講演

 Post by MML編集部

本記事は、11月29日に開催されたApp Annieが主催するイベント「App Annie DECODE Tokyo」より、第2部 株式会社インテグレート 藤田 康人氏の講演「消費者インサイトを起点に考えるデータを活用した統合型マーケティングとは」の模様をお届けする。

株式会社インテグレート 代表取締役 CEO 藤田 康人氏

現代は多くの情報が溢れている。例えばスマートフォンの普及によって、インターネットに接触する時間が増加したことで、以前のように、家へ帰って直接テレビ番組を見る機会が減少した。総務省によると、流通する情報の量は年々増加しており、10年間で500倍以上になっているという。

企業がダイレクトメールやメールマガジンで、何度もお客様へアプローチをしても、消費者は「あっ広告だ、いらない」と思ってほとんど目を通していない。一方で仕事のメールや友達のメールは見ている、つまり消費者は、選り分けて情報を取得するという事態が起きている。どうやったら消費者に「情報バリア」を解いて、企業からの情報を見てもらうことができるのかがポイントである。

マーケティングはストーリー発想の時代へ

そのポイントについて藤田氏は「企業からの広告だと思ったらお客様はスルーしてしまうのですが、ソーシャルメディアのシェアをはじめとする第三者からの情報(アーンドメディア)であれば、興味があるものに関して何となく記憶に残っている確立が高いです。そこに広告がプラスオンされたとき、お客様は反応し、広告にも興味を持ってくれます。そういった動機のことを我々は『Pre-Interest』と呼んでいます」と述べた。

消費者の情報バリアを解くためには、アーンドメディアがキーとなってくる。心のスイッチを押すためには広告プラスアルファ、ソーシャルやPRのコミュニケーションが必要だが、そこに何らかの面白い物語やコンテンツがないと消費者は興味を持たないという。そのことに藤田氏は「今まさにマーケティングではストーリー(文脈)発想の時代に入ったのです」と述べた。

パーセプションプランニングが必要

では、これからのマーケティング戦略はどう設計していけばいいのだろうか?藤田氏は、「これまでのように企業が伝えたいことだけを言い続けた『コミュニケーションプランニング』をやめて、企業の言いたいことだけではなく、消費者の聞きたいことを翻訳していかなければいけません。これを我々は『パーセプションプランニング』と呼んでいます。この翻訳する最大のフィルターは、顧客インサイトです」と語った。

インサイトと言っても、消費者はなかなか自分の心の奥にある本音を分かっていない。正確に言うと、消費者は本音を言語化できないので、その言葉を見つけるのは容易ではない。そして消費者の「欲しい」という意識と「買う」という行動には大きなギャップがある。例えば、欲しいと思うかっこいいお皿と毎日使える買いたいお皿は違うわけだ。しかし調査をすること自体意味がないわけではなく、そこからインサイトのかけらは拾えるはずである。

それから、オンラインとオフラインを含めた「カスタマージャーニー」の探索が重要になってくると藤田氏は語る。消費者はどんなモーメント(時・場合・状況)にいて、どんな購買心理なのかきちんと判断しながら、消費者とのタッチポイント(接点)ごとに必要なメッセージを考えていくことが重要であるという。

消費者のボトルネックや黄金文脈を探していく

インサイトやカスタマージャーニーの重要性については分かってきたが、具体的にはどのように活用するのだろうか? 藤田氏は「買っている人の買った理由とそのカスタマージャーニー、買っていない人の買わない理由とそのカスタマージャーニーを調べていきます。買っている人はリーチから購入までのアクションフローがつながっていますが、買っていない人はどこかのフローで途切れているわけです。そもそも認知していないのか、認知しているけど理解していないのか、理解しているけど興味がわかないのか。それらを丁寧に見ていけばどこにボトルネックがあるか分かるわけです」と説明した。

「買っている人の買った理由」「買い続けている理由」「買っていたけどやめてしまった理由」「買わなかった人の買わない理由」それらを、ビッグデータやオフラインデータを駆使して探索することで、ボトルネックを探していくという。

「既存商品であれば、答えは顧客の中にあります。『買ってくれない人がどうやったら買ってくれますかね』と相談を受けるが、『その前に、買ってくれた人の買った理由を見てみましょう』と答えます。そのブランドにとって消費者の中に残っている価値は何で、すり減って消えてしまった価値は何かをきちんと見ていく。すると、そのブランドが消費者にまた買ってもらう “きっかけ” や “決め手” となった体験である『黄金文脈』が見えてくるのです」と藤田氏は説明した。

そして藤田氏は黄金文脈を、消費者を動かすストーリーに昇華させるポイントとして「生活欲求」と「購買欲求」という、2つの切り口について説明した。生活欲求とは、消費者の生活上に存在する「ある課題を解決したい」という欲求のこと。例えば、痩せたい、モテたいという欲求のことである。

購買欲求とは、その生活欲求実現に最適なのでこの商品で解決したい欲求のこと、つまりモノを買ってもらう発想である。例えば、サプリAで解決したい、シャンプーBで解決したいということとなる。

藤田氏は、ハーバード・ビジネス・スクールのセオドア・レビット教授のエピソードを引用し、「人はあなたの会社のドリルが欲しいのではない。ドリルで開ける穴(子供部屋の棚を作るための穴)が欲しいのだ」と述べた。

「どうしてもメーカーは生活欲求より、購買欲求に目が行きがちです。消費者は棚に必要な穴が欲しいという欲求がなければ、どんなに素晴らしいドリルでも欲しいと思わない。皆さんの製品・サービスを広告・宣伝する前に、それによってどんな未充足なニーズが満たされることを消費者が期待してこの製品を選んだのか、ということをちゃんと調べていただきたい」と藤田氏は説明した。