menu
menu
menu
menu
ModuleApps

オムニチャネル戦略やO2O事例を読み解く専門メディアモバイルマーケティング研究所

秋元康氏、挫折を経験して分かった大ヒットを生み出す秘訣を語る

 Post by MML編集部

2016年11月、日経BP主催のイベント「TREND EXPO TOKYO 2016」が東京ミッドタウンで開催された。美空ひばりが歌う「川の流れのように」を作詞し、最近では「AKB48グループ」「乃木坂46」の総合プロデュースなど多くの大ヒットを生み出した秋元 康氏。その発想や行動の源はどこにあるのか。「人は何に感動するのか」をテーマに、自身の経験や多くの事例を交えて語った。

10180rpt-m

感動する気持ちは何も変わっていない

人が感動する気持ちについて秋元氏は、「今も昔も、何も変わっていないと思う」と述べた。「どうして、いまだに10代の女の子の歌詞が書けるのですか?なぜそういう気持ちが分かるのですか?」という質問を例にとり、秋元氏は「僕らが中学校・高校の時に好きな女の子ができると、好きな女の子に対してラブレターを書こうということがあって、いざラブレターを書いて下駄箱の中に入れたり、切手を貼って郵送し、ドキドキしながら待っていると。それがある時から手紙という作業が電話になり、FAXになり、ポケベルになり、メールになり、最近ではLINEになると。つまりツールは変わっても、『返事が来るか、来ないか』というドキドキ感というものは永遠に変わらない」と語った。

そして、「僕の時は手紙を何度も何度も書き直していたけど、では手紙を何度も何度も書き直す行為は何なのだろうと、それはLINEを書いたり消したり、送信ボタンを押せるか押せないかというところが違うだけで、その思いというのは何も変わっていないんじゃないか」とその理由を述べた。

結局、感動する気持ちは今も昔も変わっておらず、いつの時代もツールが変わっているだけである。企画を考えるコツとして秋元氏は「そこの差異を見つけることが、僕にとっての詩を書くとか、何かコンセプトを見つけるときのきっかけの1つかもしれない」と語った。

秋元氏は、AKB48グループの楽曲となった「フライングゲット」や「最高かよ」といった言葉を例にとり、「面白い言葉だな」「不思議だな」という気持ちが秋元氏の頭の中に入っていて、いつしか作詞や企画を考える1つのコンセプトとして利用していたという。

お客様から選ばれる時代に入った

秋元氏は「今までのテレビ業界というのは、子供からお年寄りまでが楽しめる最小公倍数を狙えと言われてきたが、現代は帯に短し襷(たすき)に長しで、どちらを満足させることはできなくて、今の時代は『絞り込みの時代』に入ってきている」と述べた。

その理由として、「大きな違いは、昔は学校や会社から帰ると、まず最初にテレビを付けたと思う。テレビを付けるということが家に帰ってきたということだと思うのですが、今の人はテレビを付けない。テレビがなくても全然構わない」時代に入っていると述べた。つまり「テレビを見るきっかけ」がなくなってきたことで、お客様から選ばれる時代に入っているのだと言う。

今の時代、どんなにいい作品を作っても見るきっかけがないと、なかなかアクションが起きないという。お客様は「この作品を見てみよう」、「この作品を手に取ってみよう」とならないわけだ。秋元氏は、そのきっかけを生む方法として最も力を発揮するのは「ヒットしていること」であると述べた。

「昔はヒットしないこと、差別化が1つのアイデンティティだった」と秋元氏は話す。秋元氏が中学・高校生だった時代は、「みんなはビートルズだけど、私はローリング・ストーンズしか聞かない」とか、あるいは「世の中では吉田拓郎の『結婚しようよ』がヒットしているけど、私は違う曲なんだ」とか、アルバムを聴いて、自分しか知らない曲を探すのがすごく楽しかった。でも今の時代、オリジナルアルバムを聴いて良い曲を見つける作業はただの手間であり、回り道に感じているそうだ。その影響から、音楽業界でも売れるのはベスト盤であるという。

秋元氏はそのことについて、「全ての消費構造が近道をしたいから」と説明した。つまり世の中は、ヒットに流れやすい傾向になっているようだ。

10180rpt01

ヒットとは「足し算」ではなく「引き算」

感動そのものについて秋元氏は「僕は子供のころから何でも感動します。つまり人の作品でも感動するし、同じようなジャンルでもライバル心というのが全くなくて、本当にいいと思うものは涙が出てくるくらい感動してしまうんですけど、感動とは『自分と照らし合わせた時の自分に刺さるもの』だと思うのですね。だから感動するものを見ていると、自分のここが弱いのだなということがよくわかる」と、自身の体験を交えながら述べた。

つまり感動とは皆それぞれ琴線に触れる部分が違うため、全員を感動させることはとても難しいことだと秋元氏は語っている。

続いて秋元氏は「皆さんがコンテンツを見たあと、この中にいらっしゃるある方が『これにめちゃくちゃ感動した』『これがすごく良かった』というのを語ると、誰か1人が『あぁそれ分かるわ』という共感が生まれ、それがだんだん広がっていった時に、初めてヒットというのが生まれるんじゃないかなと思う。それは個人的な思い、それこそがヒットを生み出す核ではないかなと思う」と述べた。

最近では、歴史的に大ヒットした「君の名は。」や「ピコ太郎」などについても、一部の刺さったファンからの感想が多くの方に共感を生み出し、やがて、それがドミノ倒し的に拡散して、滞空時間が長いものがヒットしていくのではないかと解説した。

人々は個人的な思いに動かされ、周囲はその盛り上がりに迎合する。そして「マーケティングで『こういうものが新しい』とか『こういうものがキーワードである』とか『こういうものをクラスター分析してここの部分を狙おう』というものは当たらないんじゃないかと思う」と秋元氏は話す。

秋元氏はスタッフと打ち合わせをする時に「とにかく記憶に残る幕の内弁当はないんだ。とにかく一品弁当にしよう。とにかく、このコンテンツの最大の売り、あるいは人が話すときに『あの何とかの』の『あの』を付けろ」と述べた。いろいろなものが入っていてどれも楽しめるコンテンツは話題も感動も呼ばない。1つに絞り込んだ潔さ「あの何とか、こそがヒットになるんだ」と語った。

でも、それは簡単なようで難しいという。秋元氏は「ハンバーグ弁当」を例に取り、「ハンバーグ好きなら絶対美味しいというハンバーグ弁当を作っても、それを進めていくうちに会議の中で『あの、肉を食えない人はどうするんですか』と言われ、それなら焼き魚を入れる。『肉も野菜も食べられない人もいますよね』と言われ、野菜の煮物を入れる。こうやってだんだん角が取れていき、ありきたりのものができてしまう」と述べた。

「だから感動を呼ぶもの、ヒットするものというのは、実は『足し算』ではなくて『引き算』なのではないか」と秋元氏は語る。新しいものを作ることは結局、勇気であり、試行錯誤の連続である。

秋元氏は、「テレビを作るときに、この視聴者層で、この時間帯だから、こういうものがウケるという作り方をしていた時期があって、それはある時『おごり』だということに気付かされた。なぜなら、その時間帯に自分が家にいてもその番組を見なかったり、あるいは映画が上映されても自分は見に行かなかった」という。ターゲットを感動させるために作っているという、変なプロ意識や、おごりがあってそれは違うなと感じたそうだ。

ある時から、感動するコンテンツを作るには、まず自分が感動しなければ感動するものが作れないと秋元氏は述べた。そして、「まず自分が感動する、一番近くの人が感動する、タレントで言えばマネージャーだったり、制作者だったらその人の友達や家族が『いいね』というものを作る。それがだんだん、どんどんと伝わって、最終的にオーディエンスに伝わるじゃないかなと思う」と語った。

秋元氏が語る多くのエピソードに参加者はうなずき、時にはメモを取るなど、大盛況のうちに終了した。