アートデコ株式会社が運営する『GRL(グレイル)』は、Instagramフォロワー138万と若い女性を中心にSNSマーケティングで圧倒的な支持をうけるファッション通販サイトです。新たにTikTokにも注力し成長を続ける中で、株式会社DearOneはSES(システムエンジニアリングサービス)契約を締結いただき、専任のPM・エンジニアチームが規定の工数でアプリ開発・改修サポートを行っています。
本記事では、GRLのWebサイト、アプリの開発と分析、マーケティングなど広くマネジメントされる社外CIOの小林様に、SES契約を選んだ理由や導入後の具体的な効果をうかがいます。株式会社DearOneとしても初のSES事例紹介となりますので、アプリ開発に限らずSES自体のメリットや活用法、社内やプロダクトにもたらされる価値についてもお話しいただきました。
- 課題
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- アプリの改修において、外部ベンダーへの個別発注では対応スピードが遅く、機動的な施策実施が困難だった。
- 小さな改修や運用上の細かな対応に、都度コストや手間が発生し、予算や経理処理の管理が煩雑になっていた。
- 効果
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- SES契約により、細かな改善や仕様変更に迅速に対応できるようになり、機動的なアプリ改善が実現した。
- 毎月の稼働時間が固定化されることで、コスト管理が容易になり、予算計画や経理処理の負担が軽減した。
- 専任エンジニアやPMとの密接なコミュニケーションによって、要望や仕様変更を的確かつスピーディに共有できるようになり、施策実施の質とスピードが向上した。
- 担当者の工数感覚やコスト意識が向上するという長期的なメリットも存在。
- 展望
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- SES契約をベースにアプリ改善のPDCAをさらに高速化させ、ユーザー体験の継続的な向上を目指す。
- GRLユーザーの声を迅速かつ柔軟にプロダクト改善に反映させ、長期的な顧客ロイヤリティとサービスのブランド価値を一層向上させる。
頻繁な改修が必要なスマホアプリに効果的なSES

DearOne 二ノ倉|本日はお時間いただきありがとうございます。前回インタビューからInstagramのフォロワー数がさらに伸びて138万人強と、SNSマーケティングも好調でいらっしゃいますね。
GRL 小林様|ありがとうございます。今年(2025年)の6月からTikTokの運用も本格的に開始し、フォロワー10万人を目標にフォローキャンペーンを行っています。
DearOne 澤田|拝見しました。1万名に2,000円分のポイント配布ということで、そもそもGRLはリーズナブルな価格設定ですし、かなりのインパクトですよね。
GRL 小林様|SNSを戦場としている以上はInstagramだけでなくTikTokにも力を入れたいと、過去一番の規模で注力しています。9月に同じ原資で第2弾もやる予定なので楽しみにしていてください。僕らにはこれから1万名様ぶんの抽選という大仕事が待っていますが(笑)
DearOne 二ノ倉|想像するだけでも大変な作業ですね。そんな変化の時期に、2025年3月よりGRLアプリ開発・改修についてDearOneとSES(システムエンジニアリングサービス)契約を締結いただきました。背景をお聞かせいただけますでしょうか。
GRL 小林様|実は弊社では、GRLの基幹システムとECサイトでもSES契約で外部パートナーさんに業務をお願いしています。GRLがキャッチアップすべきお客様は10代から40代までと層が広く、さらにはトレンドファッションの流行り廃りに対しても可能な限り早くアクションしなければいけません。改修や変更は尽きないと考えたとき、アプリにも毎月固定でSESの枠があれば安心材料になると感じていました。
DearOne 二ノ倉|ネイティブアプリの大きな改修が終わったタイミングで、保守のような形の契約がないかとGRL様側からご要望いただきました。弊社でも新たにSESを始めていこうというタイミングでしたので大変ありがたいお声掛けでした。

GRL 小林様|我々はあくまでも服を売る会社なので、システム開発は本業ではありません。SES契約によりシステム部門を外に委託することで本来の事業に集中できるメリットは社内で共有できていました。
特にファッション業界は通販市場の中でもプラットフォームや周辺サービスの成長が早く、システム改修にもスピード感が求められます。基幹システム、ECサイト、アプリのどこかで工数が取れていないとボトルネックになってしまうんです。全てが上手く回ったとしてもタイムラグは必ず生じますが、各プラットフォームでSES契約ができると遅延を最小限にできるなと考えていました。
DearOne 澤田|基幹システムとECサイトに足並みを揃える意味もあったかと思いますが、特にアプリに関してSES契約の必要性を感じられた課題感はどこにありましたでしょうか。
GRL 小林様|アプリを活用している企業さんには共感していただけると思いますが、スマホアプリは「絶対にやらないといけないこと」の訪れるスパンが基幹システムやECサイトと比べて非常に短いです。iOSやAndroidのアップデートが年に何回もあり、毎年確実にiOSのメジャーバージョンが上がっていく。特殊な新機種が出ると仕様の定義漏れや画像崩れも起きます。普通のECサイトは作った後に大きなバージョンアップがあるのは3年後5年後、基幹システムなんて10年後といったタームですが、アプリはもっと短い。なので、そこの工数を確保しておかないと対応していけないんですよね。
DearOne 澤田|スマートフォンの頻繁なバージョンアップや新機種への対応は避けて通れない課題ですね。ただ、必ずしも全ての企業様のアプリがOSバージョンアップに合わせて改修されるわけではないので、そのようなケースならSESは不要でしょうか。
GRL 小林様|国内を見ると、ずっと変わらないアプリって多いですよね。変わらない良さ、慣れたUIを使い続ける良さも分かりますが、新しい機能をつければ無くせる日々の手間は結構あるはずなんです。それを長く放置していれば無駄な工数が累積していくので、運用改善に投資することは重要です。
でもそれは運用が始まってみないと気付けない部分だったりしますので、そうなった後から小さい改修のために見積もりを取って申請して稟議をあげていると無駄な時間がかかってもったいない。あらかじめSESなどで多少なりバッファを確保しておくことは、お客さまにより良いサービスを早く提供するために必要なことだと思います。
DearOne 二ノ倉|SESは月ごとの工数を最初に決めてご契約いただきますので、必要が生じた改修を優先順位に従ってどんどん実行していけるのがメリットですね。
GRL 小林様|契約する工数や期間に関しては、アプリの改修をやり尽くせばどんどん減ってくるものだと思っていますので、随時最適なボリュームに変えていくことも考えられます。我々も最初は3ヶ月の契約で相談させていただきましたね。
DearOne 二ノ倉|はい。まず半年の契約をご提案して、もう少し短くできないかというお言葉を受けて3ヶ月ということになりました。
GRL 小林様|工数や契約期間が適正かどうかは事前に確信が持てない部分ですので、そのあたりご調整いただけて我々としても助かりました。
DearOne 二ノ倉|3ヶ月の契約期間を経て今回更新していただき、ボリュームを増やすお話もいただけていますので、弊社としても納得してご判断いただくことがやはり一番大事なのだなと実感しております。
工数単位の契約によってユーザーの声に即応可能に

DearOne 二ノ倉|実際にご契約頂いて感じたSESのメリットや、契約更新の決め手などをお聞かせください。
GRL 小林様|具体的な案件ごとではなく、工数単位で契約している点が大きなメリットだと思っています。
DearOne 二ノ倉|どういうことでしょうか。
GRL 小林様|あくまで工数として契約しているため、柔軟にスケジュールを組み替えられるのが強みなんです。複数案件を進めている中で突発的に大変なことが起きた時、進めている案件のひとつを外して緊急対応を優先できるというのは安心感に繋がります。
DearOne 澤田|案件ごとの契約ですと突発的な案件に即応するのは難しいですよね。
GRL 小林様|弊社はファッション通販の中でも優先順位がめまぐるしく変わるほうの会社なので、尚更バッファがない状態からでも調整してバッファを作ることのできるSESが必要です。何も契約がない状態だと、まず見積もりをとって発注するという選択しかないので、対応策が複数あるのはとてもやりやすいです。
DearOne 澤田|新たな改修をしようとするたびに毎回社内調整をするのは、必要とは言え負担が大きいですよね。
GRL 小林様|普通なら会社に「今ユーザーからこういった不具合の報告がありまして」と上申して怒られたりしながら進めなければいけない場面でも、SESならスーッと改修できちゃうんですよね。もちろん大きな問題は別ですが、細かい不具合に関しては必要以上に内部調整に時間を使うよりもユーザーの声にすぐ対応できたほうが圧倒的に良い場面が多いですよね。上層部とやり取りをしている間に「まだ修正されないんですけど」と追加でレビューされてしまう負のスパイラルに陥ってしまいますから。
DearOne ニノ倉|アプリを運用されてる方は皆さん、なるほどねと共感してくださると思います。
GRL 小林様|なので現場レベルでは、上に報告しづらいちょっとした不具合をさっと直せますよというのはSESの大きな営業ポイントかもしれませんね(笑)
定例会で密なコミュニケーションを取り、工数への感覚も醸成
DearOne 澤田|他に感じられたメリットはありましたでしょうか。
GRL 小林様|SES契約をすると定例会があるので、コミュニケーション頻度を高くできるメリットも大きいと思います。
DearOne 二ノ倉|私たちとしても週1ぐらいで話さないとSESの方向性や進捗確認がしきれませんので、定例会は大切だと感じます。スキップするということもありますが月3〜4回は開催させていただいて、何をいつまでにやるかを都度すり合わせさせていただいていますね。
GRL 小林様|DearOneさんとはSESとは別軸で走っている案件があるんですが、定例会があることで、そちらについてもちょっとした確認ができるので、円滑にプロジェクトを推進する上でもメリットになっています。

DearOne 澤田|SES契約をしていただいてこれまでに、他に何か気付かれたことなどはありますでしょうか。感想なども含めてお聞かせください。
GRL 小林様|やはりアプリはiOSとAndroidの両方を見ないといけないのが大変ですね。ひとつのやろうとしていることに対して、iOSでこれだけAndroidでこれだけと、単純に開発工数が2倍かかります。iOSだけ工数が少なくてAndroidが多いこともあったり、アプリ開発が想像よりも多くの工数を消費するというのは新たな気づきでした。発注者としても認識をしておかないとなと思いましたね。
DearOne 二ノ倉|iOSとAndroidそれぞれで工数が発生するということは、直接アプリ開発をしていない企業様からは見落とされがちな部分ですね。
GRL 小林様|ここをいじるとiOSでこれだけ、Androidでこれだけかかるとか、この改修なら意外と簡単に済むみたいな感覚って、発注者側はとても乏しいんです。僕はエンジニアリングを多少経験しているのでまだ想像がつく方ですが、そうでなければ案件に対する予算感覚を養う場はなかなかありません。
エンジニアリング経験のない方こそ、改修にこれだけの作業と予算が必要なんだという感覚を醸成していけるSES契約は、将来的なメリットになると思います。
DearOne 二ノ倉|そういうメリットが生じ得るというのは、私達では気付けなかった視点です。SESでは工数を詳細にお伝えするので、そこを見ることができるのは確かに契約されている方だけですね。
GRL 小林様|結局、その結果として社内調整もしやすくなるんですよね。社内で何かしらを検討するときに、その知見があるとないとでは明確にスピードが違ってきます。例えば社内から「アプリでこういうことをやりたい」という話が出たとき、知見が無いととりあえずDearOneさんに丸投げして、戻ってきた見積もりとスケジュールを見て驚く、みたいなことは往々にしてあります。
そこの勘所が養われていれば、社内ミーティングの時点でスケジュールの目処も見えますし、DearOneさんと一歩踏み込んだ調整もできるようになります。諸々の社内調整やDearOneさんとやりとりする時間も絶対的に短くなって、プロジェクトも円滑に進む。あった方が絶対に良いスキルだと思っています。
DearOne 二ノ倉|エンジニアリングをされていた方がフロントに立たれるケースは少ないので、そういったコミュニケーションに苦労されている企業様が多いことは実感しています。工数感覚があると調整も早く、ご要望を受けてから着手、リリースまでが圧倒的に短いです。エンジニアリング経験のないご担当者様がそのスキルを身につける機会になるのは、SESの大きなメリットだと私達もアピールできそうです。
新規アプリも既存アプリも、SES活用でよりユーザーフレンドリーに
DearOne 二ノ倉|たくさんのメリットをお伝え頂き本当にありがとうございました。弊社ではこのSES契約に今後より注力していこうと考えておりますが、ずばり、どんな企業様のどんなシチュエーションにSESが有用だと思われますか。
GRL 小林様|やはり運用改善ですね。どんなアプリにも大なり小なり改善できる点は必ずあるはずですが、多くの企業が小さな改善点を放置しています。機能を開発すれば日々の無駄な時間を減らせる部分が隠れているはずです。その小さな改善点に気付けば、ほとんどの企業にとってSES契約はメリットばかりだと思います。
DearOne 二ノ倉|例えばどういった部分が小さな改善点になるでしょうか。
GRL 小林様|例えば、分析チームが上層部に数字を定期報告する業務がありますよね。Webビューの領域ならばどうとでもできますが、アプリは必ずネイティブ領域があり、そこから新しくデータを取ろうとすると集計データを作るのに手間がかかります。例えばプラットフォームから出した別のデータと合わせて新しく分析データを作らないといけない時、アプリ側でイベントパラメータを少し付与すれば削減できたりするんです。分析チーム視点だけでもそういった改善点があるので、全体で見ればいくらでも運用改善ができると思います。
DearOne 澤田|大きな機能開発だけでなく、運用の中に隠れている『小さな改善点』に目を向ければ、ほとんどの企業様でSESが価値を発揮する可能性があるということですね。大変勉強になります、ありがとうございます。
GRL 小林様|ただ、ネックなのはSESの導入について社内決裁をどう取っていくかという最初のハードルですよね。

DearOne 澤田|メリットを沢山語っていただきましたが、大きな交渉材料を見つけるのは大変かと思います。
GRL 小林様|そういった点では、これからアプリを作ろうというタイミングの企業さんにはオススメしやすいかもしれません。結局リリース後に一番たくさん要望が来るので、バッファを確保するならばSES契約が最適なはずです。後々、決めきれていなかった仕様の定義不全などが出てくれば改修は避けて通れません。例えばリリース後3ヶ月だけでもSESを厚めに取っておくという形をとれるのが、良いプロジェクトだと思います。
DearOne 二ノ倉|ことアプリに関しては、リリース後にやっぱりこうしたかったかもという声が出てくることが本当に多いです。そこから発注しても、着手までどうしても2ヶ月ほど間があいてしまう、というようなことも往々にして起きるので、初期リリース時点からSESを用意するのはぜひご検討頂きたいです。その際、適切な工数はどのように見定めれば良いでしょうか。
GRL 小林様|世の中の人が思っているよりも単体の改修コストって高いですよね。なのでこれくらいかな?と考えてSESで確保した工数が無駄になることは原則ないですし、定例会の中で適切な工数も見えてくると思います。
DearOne 二ノ倉|SES契約をしていない企業様ですと、例えばOSごとの違いで改修が必要になって改めて予算を取るのに苦労される場面もあります。SESであれば定例会の会話の中で出た改修案を随時直していくこともできて、予算確保や経理処理の負担が軽減され、よりユーザー目線でアプリを作っていくことができるのかなと思います。
GRL 小林様|あと、運用維持費や保守のような感じで社内報告が終わっていくので、監査対応は楽になりますね。現場に優しいサービスだと思います。定例会の中で検討した内容も、実際にやったことも全てチームとして記録が残るというのもメリットです。社内で「なんで毎月これだけお金がかかってるのか」と聞かれても、いやこういうことをやっているんですという内容をすぐに出せます。絶対にブラックボックスにはならない形なので、1回乗っけてしまえばあとは何とでもできる。予算を減らされそうになったら、いや、こういう対応できなくなるけどいいんですか、とこっちが切り込んでいけますし、実際に役立っていることも証明しやすいかと思います。
DearOne 澤田|今回私達も初めての試みでしたので、メリットを分かりやすくお伝えいただき本当にありがとうございます。
GRL 小林様|我々はパートナーさんで成り立っている会社なので、こちらこそありがとうございます。アプリ開発後にずっと続いていく保守と改修を、自社の人件費で賄うのか、SES費用で賄うかの違いですが、人材確保も大変な時代ですからね。その判断に悩んでいる企業さんは、小さくてもSESで一旦走り出してみて、定例会でコミュニケーションする中でこの体制が本当に適切なのかに目を向けるのは、組織にとっても良いのではと思います。
DearOne 澤田|ありがとうございます。今お話を聞いていて、私達もGRLのプロジェクトのメンバーとして数えられている感覚がして、大変嬉しく思いました。
最後に今後の展望をお聞かせください。
GRL 小林様|通販サイトというものは、ECサイトが先行してアプリはどうしても後追いになりますが、できれば完全に同時リリースできるのが理想です。可能な限りそこに近づけるため、プロジェクトの回し方を組み上げ、精度を上げていきたいと思っています。直近ではまず、検索エンジンのリニューアルを予定していますので、どんどんユーザーさんにとって使いやすいサービスにしていきたいと思います。
DearOne 二ノ倉・澤田|本日はお忙しい中、お時間ありがとうございました。





