株式会社ジーフット様が運営するASBee(アスビー)の会員向けアプリは2024年3月にDearOneが提供する伴走型アプリ開発サービス「ModuleApps2.0(モジュールアップス2.0)」を導入し、リニューアルを実施しました。さらにユーザー行動分析ツール「Amplitude」とMAツール「MoEngage」という2つのツールを組み合わせる形で導入のご支援を致しました。
今回は、ASBee(アスビー)のアプリ運営を中心にデジタルマーケティング領域を担当する高松様に、ツール導入の背景や、ハイスピードでの成長を実現するための体制やお取り組みについてお話を伺いました。
- 課題
-
- WAON POINT SDKの実装が旧アプリベンダーでは難しかった
- DL数100万に対し月間アクティブユーザー数(MAU)は8万とアプリの利用率に課題があった
- チラシや広告出稿の減少で、お客様との接点が希薄に
- 効果
-
- 店舗でのアプリダウンロードと会員情報の登録を促すことで1年で会員数が約106万人に達し、旧アプリの5倍の月間アクティブユーザー数(MAU)を実現
- ゲーム性を持たせたスクラッチ機能などにより、クーポン利用率が3倍に増加
- 行動分析ツール「Amplitude」により仮説が増え、MAツール「MoEngage」での施策実施回数が向上しユーザー接点を増やすことに成功
- 展望
-
- 店舗のデータとECデータを統合させ、さらなるパーソナライズとリピート促進を実現
- ユーザーセグメントを細かくしより適切なクーポン配布や施策を実施
WAON POINT SDKの実装と、アプリ利用率の向上を目的に大幅リニューアルを実施
DearOne 二ノ倉| ジーフット様には2024年3月にModuleApps2.0で「ASBee(アスビー)アプリ」をリニューアルし、同時にAmplitudeとMoEngageを導入いただきました。御社のサービス概要と、高松様のご担当する領域をお聞かせください。
ジーフット 高松様| 株式会社ジーフットはイオングループの靴専門店事業を担う会社です。ASBee(アスビー)、Greenbox(グリーンボックス)などを運営する靴の小売店で全国で622店舗(2025年2月現在)を運営しています。「健康的で履きやすい魅力的な靴をリーズナブルに提供すること」をテーマに、幅広い商品を取り扱っています。
現在はASBeeのアプリ運営を中心にECも含めたデジタルマーケティング領域全般の運用を、2名体制で担当しています。

DearOne 二ノ倉| リニューアル後のアプリの状況はいかがでしょうか。
ジーフット 高松様| 今回のリニューアルで一番大きな変更は、会員情報を登録してもらう形にしたという点です。リニューアル前は個人情報の登録がないタイプでしたがダウンロード数でいうと3年間で約90万件でした。
リニューアル後は2024年3月から約1年で約106万人の会員登録と、旧アプリと比べて月間のアクティブユーザー数(MAU)も約5倍を達成することができました。
DearOne 二ノ倉| 会員登録数だけでなく、MAUも約5倍とは素晴らしい結果ですね。今回なぜアプリのリニューアルを実施することになったのでしょうか?
ジーフット 高松様| アプリは今これで実質3代目になるのですが、もともとはユーザー情報を収集しようと思って始めていました。最初は個人情報を取る形のアプリをフルスクラッチで作りました。ただこれがユーザーに情報を入力していただくハードルが高く、店頭からの批判もあって失敗に終わりました。
次にアプリプラットフォームを使用し、会員情報を取らずライトに使われるタイプのアプリを作りました。ユーザー数はそれなりに増えましたが、何にも活用できないことが改めて議題に上がり、やはり会員登録できるアプリにリニューアルしようということになりました。ただ、パッケージ型のアプリだったためWAONポイントのSDKを入れるなどの仕様変更のハードルが高く、コストを考慮しての乗り換えという判断になりました。

チラシや広告に頼らず、アプリでの継続的なアプローチで接点を生み出す
ジーフット 高松様| これまで、一度ASBeeに接触していただいた方々に対して、何かしら再訪を促すアプローチがほとんどできていませんでした。どこも小売店は再訪してもらうことが大変かと思いますが、特に靴は購買頻度が年間でも少なく、何度も店舗に足を運んでもらうことが難しい商材です。もちろん情報を集める目的もありましたが、ASBeeが忘れられないように継続的にアプローチできるツールとして、アプリは有力かなと思いました。
今、ASBeeは大きな宣伝は行っていません。折り込みチラシもかつては一生懸命配布していましたが、新聞の購読率が減り、費用対効果も低下していたのでチラシの配布を一気に全部やめました。CMや雑誌広告も減らしているので、一度来店していただいた方がASBeeのことを思い出すきっかけが作れていなかったのです。店頭のスタッフとしても、自分のお店の宣伝を誰に対してもできる状態ではなかったのです。では自分のお店のお客様に対して何ができるだろうと模索していたタイミングだったこともアプリリニューアルの大きな要因です。
ーーシンプルな操作性で使いやすいModuleApps2.0
DearOne 二ノ倉| アプリリニューアルのツール選定では、どういった経緯で弊社を選ばれたのでしょうか。
ジーフット 高松様| 会社の方針としても、デジタルマーケティングに対する意識が高まっていたので、そういった追い風の中でリニューアルに向けて動くことができました。
私はその時点ではアプリの担当ではなく、ECサイト側からオブザーバーとして参加していました。ECサイト運用に関してお取引のあるパートナー企業からDearOneの評判も聞いていました。
DearOneが既にイオングループとの取引実績があったので、担当者にもヒアリングを行い、体制やスタンスの評価を聞いて判断しました。運用現場の意見としてもDearOneが機能的なツールを提供している点が魅力でしたが、最終的にはサポート体制など「人」の部分が大事だと思っていますので。
DearOne二ノ倉| ありがとうございます。実際に導入してみてModuleApps2.0はいかがですか?
ジーフット 高松様| 比較的シンプルな作りなので、今のところ使いやすいです。困ったときにすぐ質問できる体制もあって活用は進んでいます。
再びお客様と接点を持てるアプリに
ーーカギは「伴走型」「ノーコード」「柔軟な機能テンプレ」
DearOne 二ノ倉| 実際に起動してもらえるアプリになっているということですが、具体的にはどのようなユーザーの反応がありますか?
ジーフット 高松様| アプリでは、会員になって1回お知らせを見てくれたユーザーに対して、関連しそうなページを改めてプッシュ通知で配信しています。商品のお知らせや告知もしていますが、やはりクーポンへの反応がダントツです。結果、クーポンが実際に使われる数が以前と比べて段違いに増加しています。クーポンの利用率(利用ユーザー数の全体ユーザー数に対する割合)でいうと約3倍になっており、単純にアプリ上での施策が売り上げに結び付いていると思います。
DearOne 二ノ倉| ユーザーへの働きかけで特に役立っている要素などはありますか?
ジーフット 高松様| スクラッチ機能を今回使ってみたのですが、やっぱりゲーム性があると違うなと改めて思います。過去にもゲーム性があるコンテンツをやりたいよねと言っていたのですがなかなか適した機能がなかったり、実際に店舗を巻き込む形で実施することができませんでした。
今回ModuleApps2.0を使って10~50%オフのクーポンが当たるゲーム性のあるスクラッチを実装してみたところ、お客様の参加意識も向上しましたし、実際にクーポンが使われる量が増えながらも、全体の割引金額は保てているという形が実現できました。ただクーポンが配られるだけではなく、ユーザーが参加する形になっていると、お客様のマインドが変わるのだなと感じています。

店舗が主体的に販促企画に参加でき、創意工夫をして取り組める環境を目指して
DearOne 二ノ倉| 店舗の方々も、リニューアルしたアプリのメリットは実感されていますか?
ジーフット 高松様| 私たちも売り場に立つことがあるのですが、実際にアプリを見て来店してくださる方が本当に増えているのは実感しています。そして、「アプリを持っています」と言ってくださるお客様がいたら、その方は以前ASBeeと接点があった方ということがはっきりとわかるようになり、ASBeeの顧客であるという認識をもつことができるようになった点が大きなメリットなのではないかと思います。
年齢性別も含めてユーザーのデータを見ていると、私たちが思っている店頭に来ているユーザーと、アプリをダウンロードしてくれた会員の方に全く差が出ないので、私くらいの年代の人たちも含めてお客様に広く使ってもらえているのだなと思っています。
DearOne 二ノ倉| それは大きな変化ですね。そのためにはやはり最初にダウンロードしてもらうフェーズが大変だったかと思いますが、1年で会員数106万人という急成長はどのように実現されたのでしょうか
ジーフット 高松様| 店舗の皆に本当によく頑張ってもらいました。各店舗、アプリ内で自店舗を1,000人以上のユーザーにお気に入り店舗登録してもらうという目標を設定し、達成した店舗は個別の店舗専用のオリジナルのクーポン施策を実施する権利を得られるということを最初に伝えました。
DearOne 二ノ倉| 店舗専用のクーポンですか。
ジーフット 高松様| ベースの施策、例えば何%オフクーポンというのをメニューとして用意してあって、その中から選んで、期間を指定して依頼をもらう形ですね。オリジナルの提案を受けるときもたまにありますけれど、ある程度はテンプレート化してアプリ上で運用しています。
DearOne 二ノ倉| お店にチョイスしてもらっているのですね。店舗の方たち自身が運営に携わることのできるアプリだからこそ、店舗でのアプリダウンロード数がとても高くなっているのですね。
ーーリニューアルの店舗に対する一番のメリットは成功体験を提供できた事
ジーフット 高松様| 店舗が販促企画に参加できるようになったことは、今までと大きく異なると感じています。細かく施策が打てるようになった分、店舗の方々も自ら考える必要が出てきました。本部から依頼されたことへ創意工夫をして自主的に取り組む環境作りに、店舗スタッフたちも踏み込めるようになったかなと思います。
ただ、これはまだ限定的な取り組みで、積極的に参加しようとしてくれている店舗はまだ少ないので、進化していくと、もっと参加希望の声が増えるのではないかと思っています。
DearOne 二ノ倉| このお話を聞いて高いダウンロード数の理由について納得しました。これまで、どうしてこんなに会員数が伸びているか尋ねると、「店舗がすごく頑張ってくれている」とだけうかがっていましたが、このような現場の力があったのですね。
DearOne 杉本| アプリを持っている多くの企業様で店舗も持っている場合、どこも会員数を急増させるチャンスを必ず持っているということですね。
なかなかうまく現場までダウンロード勧誘を徹底できる場合は多くはない中で、ジーフット様が店舗をうまく巻き込んで、全社的にアプリをグロースさせる施策を実現されているということが非常に勉強になりました。
ジーフット 高松様| そうですね。自分たちでユーザーを集めると自分たちのお客様になって、そのお客様たちにアプローチができるようになるという成功体験を提供できた事が、今回のリニューアルの店舗に対する一番のメリットでした。
DearOne 二ノ倉| すごいですね。ダウンロードからの一連の流れが出来上がっていますね。1,000人という閾値を設けたのも素晴らしいところですね。
ジーフット 高松様| そうですね。今はもう全ての店舗で達成してくれていますけれど、成果が出る確率を少しでも上げるには最低でも1,000人だろうと設定しました。
DearOne 二ノ倉| これは、アプリリニューアルを計画した段階から店舗を巻き込む意図を持っていらしたのでしょうか。
ジーフット 高松様| はい、ちゃんと店舗にユーザーを獲得してもらうにはどうしたらいいかが、旧アプリの一番の課題でしたので今回はうまく活用が進んでいると思っています。これまでも店舗別の施策を行いたかったのですがなかなか実運用までできていませんでした。しかし今回のリニューアルで実際に動き始めることができています。
リニューアル後、ツールによって得られた様々な「気づき」
ーー想像をデータで裏付けしていきたい
DearOne 杉本| アプリのメリットを店舗の皆さんとも共有し会員数を急増されたわけですが、その結果集まったデータはどのように活用されているのでしょうか。
ジーフット 高松様| Amplitudeは様々な行動データがダッシュボードに綺麗にまとまっているのでかなり分析がしやすいです。ベーシックなアクティブユーザー数などの数字を見ながら、この行動をした人はこういう行動もしているとか、行動ベースでデータの組み合わせをすぐに調べることができるので気づきが多いです。
例えば、ASBeeは40代以上のお客様が店舗、アプリどちらも多いのですが、年齢層が高くなればなるほどプッシュ通知に対して寛容で、意外と情報が届くということは発見でした。Amplitudeのおかげで、想像していたことが正しかったかどうかはっきりわかるようになりました。「うちのお客様は年齢層が高いし、アプリなんかで一生懸命会員を集めても成果を得られないんじゃないか」と考えている店舗に対して、シニア向けクーポンなどを使って「ほら、来てくれてるでしょ」と言えるようになりたいなと思っています。
DearOne 杉本| データをきちんと取れていないと、スマホアプリは若者にしか刺さらないという先入観を持ってしまいがちなのでそれは面白い発見ですね。
ジーフット 高松様| 他にも、MoEngageでエリア別でクーポンを出すと、地域性の違いについての面白い発見も多いです。今、冬の季節だと、冬物の靴に対する反応はやっぱり地域によって全然違いますよね。他にも「県民の日」限定クーポンを茨城県と埼玉県で実施した際は、埼玉県でのクーポン利用率が茨城県の約7倍になりました。隣接する県でここまで大きな差が出るとは思わなかったですし、このような地域差をアプリのリニューアルで可視化できるようになりました。
足形計測器とも連携して、セグメントしたクーポン配布やゲーミフィケーションを試し、「再訪に繋がるアプリ」へ。
DearOne 二ノ倉| 今後の展望とDearOneに期待することをお聞かせください。
ジーフット 高松様| まだ店舗のユーザーがECで買う率が低いので、そこを増やしていけるといいかなと思います。それで店舗の売り上げも下がらないように相乗効果を作りたいですね。
店舗では足を置いていただくだけで正確なサイズ・足底圧・重心が同時に計測できる足形計測器を新しいものに変えようとしています。今後はそのデータをECにも連動させて、接客、商品と紐づいた形で活用できるようになれば、アプリも含めてよりパーソナライズした形でお客様へのアプローチを行えるようになります。ジェンダーや地域性の属性に加え、足のサイズも含めたところまで活用できると、シューズショップとしてより進化できるのではないかと思っています。
DearOne 杉本| 店舗とECとアプリと、全体の連動がキーになってきそうですね。
ジーフット 高松様| ECとアプリも含めて、行動ベースでお客様の動きや感情を捉えていきたいと思っています。クーポンも今のところ店舗別までしかやっていないので、その中でさらにお客様を細かくセグメントした施策もできるようになるといいなと思います。
DearOneの皆様には導入当初からずっと同じ熱量で対応いただいているので、今後もツール利用でわからないことがあったらすぐに頼らせてもらえたら嬉しいです。
DearOne 二ノ倉| ツールの使い方がわからないまま離れられてしまうのが一番悲しいですので、むしろ質問していただけることがありがたいです。全く気にせずどんなことでも聞いてください。
ジーフット 高松様| じゃあこれからも甘えさせてもらいますね。よろしくお願いします。
