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オムニチャネル戦略やO2O事例を読み解く専門メディアモバイルマーケティング研究所

ヤマダ電機アプリ:自前主義の多機能アプリの課題とは?

 Post by MML編集部

前回の記事では、ヤマダ電機を取り巻く家電業界の現状や、YAMADAモバイルアプリ(iOS版/Android版)のポイント機能・EC機能について取り上げました。後編では、その他のYAMADAアプリの機能や、全体から読み取れる同社のアプリ戦略のポイント・課題について取り上げます。ぜひご覧下さい。

(3)お得クーポン:低価格帯の最寄品クーポンで来店のきっかけ作りを担う

YAMADAモバイルアプリには、店頭での会計時に利用できる「お得クーポン」が常時5-6種ほど掲載されています。

ヤマダ電機公式アプリ クーポン

クーポン内容は、「電池」や「携帯アクセサリー」など低価格帯のいわゆる「最寄品」を、100円~300円程度値引きするものが多いようです。同社のチラシの目玉商品などと同様、多くのユーザーが日常的に購入する商品を中心に扱うことで、来店のきっかけ作りに活かす事が目的と推測されます。?

画面上にはクーポン内容ごとに独自のBarcodeが表示されており、店頭のPOSで読み取る事により、割引処理ができるようになっています。LAWSONアプリの回でも触れた通り、小売店におけるクーポン運用上の課題の一つに「店頭のオペレーション負荷」がありますが、ヤマダ電機では日ごろからスタッフが利用しているPOS用Barcodeを活用する事により、スムーズなオペレーションを可能にしています。

なお、現在はチラシ同様、「各ユーザーとも共通の割引クーポン」が表示されているようですが、同社が抱える膨大な購買履歴を活用して、将来的にはユーザーの好みや属性に合わせたクーポンを掲載し、より効果的な集客を行う事も可能になるでしょう。

(4)遊ぶ:店舗と連動したゲームなどでソーシャルゲーム大手との差別化を図る

ヤマダ電機は2012年6月に独自のソーシャルゲームプラットフォーム「ヤマダゲーム」をスタートさせました。

ヤマダ電機公式アプリ ゲーム

GREE・モバゲー等でも提供されているメジャータイトルも含め、現在数十タイトルほどが提供されているようで、ユーザーは既に貯まったヤマダポイントを「ヤマダゲームコイン」として使う事により、ゲーム内のアイテムを購入する事が可能になっています。

アプリから利用する場合にはSafar等の外部ブラウザの起動が必要になりますが、アプリ側の「ケイタイde安心」ログイン情報の引き継ぎにより、ニックネームの登録のみで利用開始ができるようになっています。

家電量販店が独自のソーシャルゲームプラットフォームを立ち上げる事は業界でも意外性を持って受け入れられましたが、同社でヤマダゲームのプロジェクトを主導された茂木弘氏(IT事業本部EC事業部 事業部長 兼 ソーシャルEC部長 執行役員常務)のインタビュー記事に「会員様による双方向のコミュニティーを形成していきたいというのが、“ヤマダ電機マルチSNS”のコンセプト」「我々は、全国に700店舗を展開しているのですが、これは圧倒的な強みです。リアルとバーチャルとの連動が可能になるわけですから。」といったコメントがあり、ヤマダ電機独自の店舗と連動したゲームコンテンツ等を提供する事により、顧客の囲い込みを図ろうと言う目的が読み取れます。

ソーシャルゲーム大手はスマートフォンへの対応の遅れやネイティブアプリの成長などにより苦戦を強いられていますが、ヤマダ電機が「店舗と連動したソーシャルゲームによる店頭集客」という独自の取り組みで成功できるかは、O2Oの新しいモデルとして大いに注目されます。

(5)読む/動画:ヤマダポイントを使って電子書籍/動画コンテンツの購入が可能

ヤマダ電機ではヤマダポイントを使ってコミックや小説などが購入できる電子書籍サービスの「ヤマダイーブック」や、海外ドラマ等の動画コンテンツが視聴できる「ヤマダDOOGA」の提供を行っています。

ヤマダ電機公式アプリ ebook

ヤマダゲーム同様、既に所有しているヤマダポイントを使いワンタッチでコンテンツを購入できる点が特長となっています。

9月下旬ごろから、アプリのトップ画面上で「読む」リンクが最上部に移動されており、注力されているコンテンツと想定されます。

(6)ピーチクパーク:実際の商品購入者に限定した信頼性の高いレビューを提供

ヤマダ電機では2012年1月29日に、家電製品のレビューサイトである「ピーチクパーク」をオープンしており、2013年9月現在で約60万件超の家電レビュー情報が投稿されています。

ヤマダ電機公式アプリ pi-chiku-pa-ku

他サイトにない特長として、レビューの投稿が実際の購入顧客に限定されている点が挙げられるでしょう。

ピーチクパークでは、ポイント会員が店頭やECで商品を購入すると、2週間後に配信されるレビュー依頼メールからレビュー投稿が出来るようになっており、レビューの信頼性を担保しているようです。

レビュー件数やアクセスを集める事が目的であれば、価格コムなどのように自由な投稿を募った方が良いのかもしれません。ヤマダ電機の目的は別のところにあり、「レビュー依頼等を通じてユーザーとの接点を作ること」「これまで小売店が吸い上げる事の出来なかった顧客の生の声を集め、それをサービス改善に活かす事」などと推測されます。これらは、小売店とユーザーとの新しいコミュニケーションの形と言えるのではないでしょうか。

(7)マルチSNS/(8)もらう(ヤマダポイントランド):ポイントを軸に多数のコンテンツを提供

「ヤマダマルチSNS」は、ヤマダ電機の各種ネットコンテンツを共通のIDで利用できる統合型プラットフォームの総称とされています(プレスリリース)。

ヤマダ電機公式アプリ マルチSNS

当初同名のサイトへのリンクを通じ、facebookアカウントを活用しレビュー投稿によるポイントが受けられるサービスも提供されていたようですが、最近閉鎖された模様で、現在(2013年10月8日時点)はアクセスが出来なくなっています。

最近の各種インタビュー記事を見ても、ネットサービス全体のプラットフォームの総称として使われているケースが多いようです。

アプリ上で「マルチSNS」をタップすると、アプリのダウンロード等によりヤマダポイントが貯まるリワード広告サイト「YAMADAポイントランド」が提供されています(トップの「もらう」リンクと同様)。また、その他にもアクトビラ対応のTVで視聴できる「やまだテレビ」、ブック」、買い取りサービスの「YAMADA買取」など、ポイントの利活用を軸にさまざまなコンテンツが提供されているようです。詳細については各サービスのサイト等をご覧ください。

(9)店舗/チラシ検索:shufooと連携し各店の最新チラシのチェックが可能

「店舗/チラシ検索」からは、地名/現在地を通した店舗の検索が出来るほか、チラシサービス「shufoo」上に掲載された各店舗のチラシが閲覧できます(例:ヤマダ電機/LABI新橋デジタル館のチラシ)。

ヤマダ電機公式アプリ チラシ

以前ユニクロアプリの回でも触れた通り、新聞購読数の減少などから、新聞折込チラシだけではリーチできない消費者層が増えてきています。ヤマダ電機ではshufooを活用する事で、それらの層にもアプリを通じてチラシを提供する事を意図しているものと思われます。

ユーザーインタフェース/デザインにおける課題

YAMADAアプリの課題として、デザイン性やUI/UXの観点が不足している点が上げられるでしょう。

アプリのトップ画面には以下のような課題があります。

  • ボタンがパズル状になっており、入り組んだデザインになっていることで、意図しないボタンをタップしてしまうケースがある。
  • アプリUIの基本となるナビゲーションバーがうまく活用されておらず、バージョン情報などあまり必要のないボタンが設置されてしまっている。

ヤマダ電機公式アプリ トップ画面UI課題

また、アプリ各画面に共通する課題として、以下などの点も挙げられるでしょう。

  • iPhone5のサイズに対応していないため、画面の上下に黒いバーが表示されており、表示面積を狭めている。
  • 画像素材の解像度がスマートフォンに最適化されておらず、パーツによりバラバラになってしまっている。

ヤマダ電機公式アプリ ポイント画面 UI課題

また最大の課題として、「ヤマダゲーム」を始めとする複数のコンテンツが、外部ブラウザ(Safariなど)を起動しないと利用できないようになっている点が上げられます。

ヤマダ電機公式アプリ 外部ブラウザ

アプリ外にユーザーを離してしまう事により、ユーザーの注意が別サイトなどにそがれてしまう場合が想定され、結果的にコンテンツの利用率を下げる結果に繋がっているのではと推測されます。ネット/リアルの融合を進める上で、この事は大きな課題と言えるのではないでしょうか。

多種多様なネットサービスを展開している同社だけに、ユーザーにサービスの全体像や内容を分かりやすく伝える工夫は非常に重要であり、デザインやUI/UXの改善は求められるところです。

まとめ:双方向O2Oの実現を狙う意欲的なアプリ-自社開発の課題との向き合い方が今後のキーに

YAMADAモバイルアプリは、ポイントカードの先駆者として早くからユーザーの囲い込みを図ってきた同社が、その会員資産を活かして「オフラインtoオンライン」「ネットとリアルの融合」を実現しようとする、新しいタイプのO2Oアプリと言えます。

6月に実施されたポイント会員とヤマダモール会員のID統合により、2,350万の会員が店頭/ネットを問わず商品を購入できる環境が整いました。これらの会員資産を上手く活用する事ができれば、小売チェーンならではの新しいECの形を提供することが可能になるかもしれません。

また、横断的なポイントを軸としたネット専用コンテンツの展開は、ユーザーとの接点を拡大させ、店頭/ネットが相乗効果を生む理想的な「双方向のO2O」の試金石となるでしょう。

一方、高い企画力を持ち自社開発・自前主義にこだわる姿勢が、サービスの展開スピード等のメリット等をもたらすのと同時に、総花的で分かりずらいサービス構成や、上述したデザイン・UI/UX面の課題を生んでいるであろう点は、個々のコンテンツが意欲的であるがゆえ、なおさら課題に感じられます。

同社が得意とする新聞の折り込みチラシや、大画面で閲覧性に優れたPCサイトと違い、スマートフォンの画面が手のひらサイズである事実は変えようがありません。以下の記事に詳しく書いてありますが、スマートフォンアプリは「限られた画面スペースでいかに情報を整理して伝えるか」が強く求められる分野です。

スマホUI考(番外編) なぜ機能追加をし続けるとアプリが破綻するのか?

また、ヤマダ電機の顧客層は年齢/性別も幅広く、普段ネット通販やウェブサービスを使わない、ネットリテラシーが低い方も多く含まれるでしょう。それらの会員も含めて利用しやすいサービスを提供する事ができれば、ネット通販大手との比較優位性に繋がる筈ですが、十分な対策が取れているように思えません。

本当の意味でのオンライン/オフラインの融合を図るためには、ユーザーから見てアプリ上で「本当に重要な機能は何か」を分かりやすく伝える工夫や、多種多様なサービスをよりシームレス・シンプルに・分かりやすく整理して伝える工夫などが、より強く求められるでしょう。

自前主義を優先しシステム開発会社とプロジェクトを進めるだけでなく、外部のUI/UXの専門家や各種運営パートナーの知恵をこれまで以上に活用する事も、それらの解決策の一つと言えるのではないでしょうか。

家電業界の盟主として、ネット通販大手に積極果敢に対抗しようとする同社の動向に、今後も注目して行きたいと思います。