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オムニチャネル戦略やO2O事例を読み解く専門メディアモバイルマーケティング研究所

スシロー公式アプリ(後編):呼び出し機能がユニーク 高度なビッグデータ解析技術との連携で予想されるアプリの将来像とは?

 Post by MML編集部

スシローアプリ トップ画面

スシローアプリ後編記事をお届けいたします。

前編では、回転寿司業界の概況や同社の戦略、アプリの基本機能等について触れさせていただきました。

後編ではアプリに対するユーザー評価や課題と改善点について触れたうえ、同社が誇る高度な店舗運営システム・ビッグデータ解析技術とアプリを連携させる事で、将来的に考えられるアプリの将来像についても予想してみたいと思います。

ユーザーレビューから見える改善点

同社のアプリに対するユーザーの評価についても見てみましょう。

2014年3月24日時点で最新バージョンに対して付けられた評価は、App Storeが★4点、GooglePlayが★3.5点で、企業アプリとしては比較的良い評価と言えるでしょう。

同じく同日時点で最新バージョンにつけられた評価のコメントは、App Storeが3件、GooglePlayが9件、合計12件でした。うち好意的な評価が5件で、その他7件ほどが改善を求めるものでした。

スシローアプリAppStoreレビュー

スシローアプリGooglePlayレビュー

内容については少数意見が中心でしたが、複数回答があった要望2点について、個別に紹介しましょう。

(1)アプリ上からの事前システムへの対応

呼び出しメール機能が便利と評価するコメントがある一方、「アプリ上からリザーブできないのが不便」という主旨のコメントが複数ありました。

スシローアプリ 呼び出しメール機能

呼び出しメール機能は、店頭での待ち時間をなくす事には繋がったものの、順番待ちを行う為にはあくまで一度お店に出向く必要があり、来店は二度手間となってしまいます。筆者も実際にお店で体験をしてみて、1時間後に改めてお店に来なくてはならない事に少々不便を感じました。

同種の呼び出しシステムを採用している競合の「くら寿司」では、SGS株式会社の「EPARK」の機能を使い、店頭に出向く事なく席の確保を行う事を可能にしているようです。スシローの呼び出しメール機能も会員登録を前提としており、予めアプリ上で登録した会員情報と店頭の空席情報を使いウェブ上で呼び出し機能を行う事は、仕組み上可能であると思われます。

くら寿司 ホームページ

ネットは来店システムに比べキャンセルが発生しやすいなどの課題も考えられますが、店頭で待っている顧客の順番をその分前倒しすれば良いだけであり、オペレーションへの影響は少ないでしょう。

同社の空席管理システムは、店舗運営を支える「回転すし総合管理システム」と深く連携しているとみられ、毛色の違う消費者向けのリザーブシステムと連携をさせるにあたっては、比較的大きな工数が発生する事が予想されます。

しかしながら、待ち時間の長さが理由で他店に流れてしまう顧客は相当数居ると思われ、売上ロスにも繋がっていると考えられます。それらの防止の意味でも、アプリからのリザーブシステムへの対応は優先事項と言えるのではないでしょうか。

(2)アプリ上から持ち帰り寿司のオーダーへの対応

また、「持ち帰り寿司のオーダーをアプリ上からできるようにしてほしい」という声も複数見られました。

農林水産省のサイトに掲載されている調査結果によると、持ち帰り・宅配などのいわゆる「中食」市場は、消費者の生活スタイルの変化やコンビニなどでの販路強化などから、外食市場の落ち込みと対照的に拡大を続けています。

外食と中食の市場規模推移

これまでに取り上げた企業の中でも、マクドナルドやケンタッキーなど複数の外食チェーンで異業種の中食重要との競合が見られたほか、宅配寿司最大手の「銀のさら」を運営するライドオンエクスプレス上場するなど、業種を問わず競争が激化しています。

スシローではホームページ上などで持ち帰り寿司のオーダーについて対応を謡っていますが、ネット持ち帰りオーダーには対応をしていないようです。また、アプリ上には持ち帰りに関する情報の掲載自体がなく、十分に需要を喚起できているとは言えません。

持ち帰りのオーダーは当然ながら店頭での待ち時間に影響しませんので、(1)で触れた「待ち時間の長さによる売上ロス」を解消しつつ売上を上げる方法としても有効と言えます。

(1)と合わせて、会員向けにアプリ上からのネットの持ち帰りオーダー機能を提供する事で、さらなる売上の上乗せが見込めるのではないでしょうか。

その他の改善点

ユーザー評価以外で、同社のアプリ等をチェックしていて感じた課題・改善点についても、以下に上げてみたいと思います。

(1)オウンドメディアとの連携強化が必要

まず、折角便利なアプリを開発し、アプリの紹介ページも作成していながら、PC/スマートフォン用ホームページのトップにアプリの案内が載っていない点は残念に感じられました。

企業のスマートフォンアプリの効果向上には、アプリダウンロード数の拡大が必須であり、テレビCM等のペイドメディアやホームページ等他のオウンドメディアでの情報発信が非常に重要と言えます。前回取り上げた「しまむら」などでは、テレビCMなどでも告知を行っており、利用者数の向上に寄与しているようです。

消費者はお店に向かう前に、そのお店の場所やその他情報を検索サイトで検索するケースが一般化しています(下図:マイボイスコム自主企画調査より)。

飲食店情報の検索のアンケート調査(5)|ネットリサーチのマイボイスコム

その際ホームページをブックマークさせることは非常に困難ですが、アプリの存在をアピールしダウンロードをしてもらう事ができれば、アプリを解したユーザーとの繋がりを残し、次の集客機会に繋げる事が可能になります。

たとえば弊社開発のアプリの紹介ページなどでは、スマートフォンからのアクセスがあった際、下図の通りページ上部にアプリダウンロード用のバナーを表示しています。

ニトリアプリ バナー表示

方式はこれに限らないとしても、ユーザーに最も見られるであろうトップページには、アプリの案内を載せることが必須と言えるでしょう。

(2)コンテンツ/UIの一部改善が望ましい

また、ネイティブ実装により統一感のあるUIを実現できている点は利点ではあるものの、固定化された画面構成で外部サイトへのリンクがなく、ホームページ上の豊富なコンテンツを見せられていない点も、少々勿体ないように感じました。

スシローのこだわり   寿司(すし)・回転寿司 スシロー

上記で触れた持ち帰り寿司に関するコンテンツなどのほか、同社のブランドイメージの根幹である素材へのこだわり等、既存のホームページのコンテンツ資産を活かす事で、より効果を高めることが出来るかもしれません。

また、折角ネイティブアプリで開発をしながら、画面構成がウェブページ型の階層構造になっている点も、勿体ないように感じました。

具体的には、店舗検索に地図ベースの一覧がなく、エリアなどから絞りこみをしていくしかない点、「メニュー」の表示がジャンル別に分かれたうえ、詳細を1商品ずつしか確認できない点などです。

スシローアプリ 店舗検索

スシローアプリ メニュー

スマートフォンの操作性を活かし、店舗検索は地図上での現在地検索を実装したり、メニューでは横フリック等で複数の商品を連続して見る事などができれば、利便性・操作性の面だけでなく、需要の喚起にも役立つのではないでしょうか。

(3)プッシュ通知の活用やクーポン等集客系機能の実装が望ましい

同社のアプリは、「来店を決めた」ユーザーに対しては、お知らせメール機能等を通じた利便性の向上に成功していると言えます。しかしながら、「来店を検討中の」利用者を新たに獲得し集客に活かす為のきっかけ作りや、アプリを起動したユーザーに対するインセンティブの提供などの「集客」の要素は、十分に提供できていないように感じます。

アプリにはプッシュ通知機能が実装されているようですが、ダウンロードしてからかなりの期間がたっても通知が届いておらず、発信がされていない模様です。新商品の提供やキャンペーン等に合わせてプッシュ通知を配信しアプリの起動回数を上げ、追加情報を提供するなどの工夫が必要ではないでしょうか。

また、アプリ限定のクーポン等のインセンティブを提供する事により、集客率を単に高めるだけでなく、混雑のない時間帯に限定して集客を強化する事なども可能になるはずです。現状はクーポンなどの機能が提供されていないようですが、過去のユーザーレビューではクーポンを求める声も実際に上がっており、売上に繋がる改善点として今後実装を検討する事が望ましいのではないでしょうか。

まとめ:ビッグデータ×アプリで新しいO2Oの形を実現できる可能性を秘める、興味深い事例

同社・アプリの強みと課題

前編で触れたとおり、同社では独自に開発した「回転すし総合管理システム」を通じ年間10億件ものオーダーデータをビッグデータ解析することで、商品の廃棄率を75%も減らす事に成功しました。

「ビッグデータ」というキーワードがまだ「流行語」の域にあり、実際にそれでどんなメリットが得られるのか具体的な事例が少ない中、外食チェーンでそれらの取り組みを行い尚且つ明確な成果に繋げている点は非常に先進的であり、業界全体で見てもトップクラスの活用事例と言えるでしょう。

取り組みの大もととなったシステムを独自に開発した点に加え、投資ファンド傘下で優秀な人材をそろえ取り組みに磨きをかけた事が、外食チェーントップクラスと言えるシステム運用力・データ分析力を持つに至った要因と言えるのではないでしょうか。

一方スマートフォンアプリにおいては、呼び出し機能で「来店後」の顧客の課題解決を図った点はユーザーの利便性向上に効果を発揮する意欲的な取り組みであるものの、その他の機能は店舗検索など最低限のものに留まっているようです。

「事前システム」「持ち帰りのネットオーダー」「プッシュ通知」「クーポン」などの機能は搭載/活用されておらず、「来店前」の集客やマーケティング面へのアプリの活用は、これからの課題に感じられました。

店舗管理システムの高度な運営に比べると、アプリが提供できている価値は、まだ十分とは言えないでしょう。

今後の方向性

今後の方向性として、

1.同社の高いシステム企画・開発力をスマートフォンアプリの分野でも発揮し、リザーブシステムなど会員向け機能の強化を図る事

2.アプリを通じた会員データの収集と、店舗のオーダーデータ等との統合を行い、来店前の集客・来店後の運営に活かす事

が、大きなテーマになってくるのではないでしょうか。

アプリの将来像

同社がすでに持つ高度な店舗運営システム・ビッグデータ解析力と、アプリの機能強化および両システムの連携により、以下のようなアプリの将来像が考えられるのではないでしょうか。

1.アプリ上での会員向け事前システムの提供
アプリ側の会員向け呼び出しメール機能を発展させ店頭の空席管理システムと連携させる事により、アプリ上からの時間指定先約機能を提供することで、待ち時間の長さを理由とした売上ロスの低減、顧客満足度の向上、待ち時間予測精度の精緻化などが期待できるでしょう。

2.アプリ、店頭での正確な待ち時間予想の開示
1.で得られた先約データと店頭の来店予測データとの連携させる事により、数時間後の待ち時間の予測精度を向上させる事ができるだけでなく、それをアプリおよび店頭システム上へ開示する事により、待ち時間の問合せ対応工数の削減、混雑時間を避けた来店の促進などが期待できるでしょう。

3.アプリ上での持ち帰り寿司オーダー機能の提供
1.の会員向けシステムに宅配寿司のオーダーシステムを追加する事により、混雑時に来店ニーズを持ち帰りニーズに転換し売上ロスを減らす事、混雑率低下により顧客満足度の向上を図る事などが期待できるでしょう。また、オーダー時にクレジットカード決済情報などを入力させ事前決済を行う事により、オーダーキャンセルによる廃棄等のトラブルを防ぎ、代金を確実に回収する事が可能になるでしょう。

4.詳細な顧客属性情報とオーダーデータとの連携
1.で得られた顧客の詳細な属性情報を店頭の着席データと引き継ぐ事により、現在「大人何名/子供何名」程度に留まっている属性情報に加え、先約者の年齢・性別・居住地データなどを把握する事が可能になります。それらデータとオーダーデータとをクロス集計・分析する事により、顧客の好みの商品などを加味し需要予測システムの精度をより高めたり、年齢/性別に合わせた人気商品を分析する事などにより、マーケティングに活用していく事などが可能になるでしょう。

5.事前登録の決済手段による会計のスムーズ化
2.でクレジットカード情報を登録したユーザーが店舗に来店した際、同様の決済手段を使い席のオーダーデータに合わせた会計をレジを通らずに行う仕組みなども考えられるでしょう(AppleStoreでの同種の実現例)。これにより、テーブルチェックによる顧客満足度向上、会計の対応工数の削減などが期待できるでしょう。

6.来店状況や顧客の来店頻度に応じた、ピンポイントでの効果的な集客の実施
1.~3.で収集した顧客データと、店舗の空席状況データとを連携させる事によって、以下などの効果的な集客が可能になるでしょう。
(1)空席が多い時間に近隣の顧客に時間限定の割引クーポンを配信し集客に活用する
(2)個人単位の来店頻度を把握することで、顧客の来店サイクルに合わせて/来店頻度が落ちている時などに個別クーポンを配信し集客に活用する

これらの仕掛けは一見遠い将来の話に感じますが、同社が既に持つ優れた店舗管理システムとシステム企画・開発力およびビッグデータ分析力に、スマートフォンアプリ上で実現済みの会員向け機能などを発展的に連携させる事ができれば、実現のイメージが具体化できるようにも感じます。

上記を実現することで、顧客の集客率および利便性・満足度の向上による売上の向上に加え、販促コスト・店舗のオペレーションコスト・廃棄ロスの低下などさまざまなメリットを得る事ができ、スマートフォンアプリを同社のさらなる成長に活かす事が可能になるのではないでしょうか。

同社の優れたシステム企画・開発力がスマートフォンアプリ上でも今以上に発揮されることを予想しつつ、今後の動向を引き続き注視して参りたいと思います。