menu
menu
menu
menu
ModuleApps

オムニチャネル戦略やO2O事例を読み解く専門メディアモバイルマーケティング研究所

スシローアプリ(前編):呼び出し機能がユニーク 高度なビッグデータ解析技術との連携で予想されるアプリの将来像とは?

 Post by MML編集部

sushirouapp1

今回は、回転寿司チェーン「スシロー」の公式アプリについて、前後編2回で分析をしたいと思います。

前編では回転寿司業界および同社の動向や、同社のマーケティング方針とともに、アプリの機能について解説します。

後編ではアプリに対するユーザー評価や課題と改善点について触れたうえ、同社が誇る高度な店舗運営システム・ビッグデータ解析技術とアプリを連携させる事で、将来的に考えられるアプリの将来像についても予想してみたいと思います。ぜひご覧ください。

スシロー概要:国内回転寿司チェーン最大手 創業以来29期連続増益

sushirouapp3

スシローを運営する「株式会社あきんどスシロー」は、1984年創業の回転寿司チェーンです。2012年度の売上高は1113億円で、2010年度に2位の「カッパ・クリエイトホールディングス」(2013年度売上941億円)を抜いて以降、国内首位をキープしています。

外食業界の原価率平均が30%、回転寿司で40%と言われる中、同社の原価率は大手では珍しくおよそ50%となっており、一皿105円と低価格ながら、素材や味にこだわりの強いチェーンとして知られています。

競争の激しい回転寿司業界にあり、2位のカッパ・クリエイトが2期連続の赤字を予想する中、スシローは2013年9月期まで29期連続で増益を続けています。

回転寿司業界の概況:原材料高等を背景に業界再編も 都心部への出店競争が激化

富士経済研究所の調査によると、回転寿司業界の市場規模は4,810億円と言われており、牛丼やラーメンを上回る市場規模を誇ります。

しかしながら、ここのところ円安や世界的な需要の高まりにより、魚やコメなど原材料費の高騰が各社の経営を圧迫しており、それらを引き金とした業界再編なども発生しています。

国内コメ卸最大手の神明2012年5月に業界5位の元気寿司2013年4月に業界2位のカッパ・クリエイトの株式を相次いで取得し、両社の筆頭株主となりました。2013年11月には両社が早ければ2014年度を目途に経営統合を行う事で合意しており、統合後の売上高は1187億円と、あきんどスシローを上回る事が予想されます。

郊外の店舗数は飽和しつつある事から、各社ともに都市部への出店に力を入れ始めており、2014年2月には、都市部への出店で先行するゼンショーが傘下のはま寿司の出店強化を主目的とした公募増資に踏みきる事を発表するなど、出店競争が一段と激化する状況にあります。

スシローの動き:投資ファンド傘下でノウハウを蓄え成功

スシローは2007年に創業家の一部がゼンショーに株式を売却し、一時同社が筆頭株主になりました。経営陣に事前相談なく話が進んだ事や、売却先が競合のカッパ・クリエイトを傘下に持つ(当時)ゼンショーであった事などから、経営陣はゼンショーへの売却に抵抗しいわゆる「ホワイトナイト」探しに奔走。最終的に日系投資ファンドのユニゾン・キャピタルと水産大手の極洋を対象とする増資およびMBOを実施することで上場を廃止し、ゼンショーは持ち株を手放す事となりました。

この事がきっかけとなり、ユニゾンキャピタルから元COOの加藤智治氏など優秀な人材が送り込まれ、ファンドが強みを持つ運営体制やマーケティング面の強化が図られた事によって、業界首位の奪還に繋がったと言われています。

2012年にはユニゾンキャピタルが欧州系投資ファンドのペルミラに全株式を売却し、引き続き投資ファンド下で運営を続けています。あきんどスシローの豊崎賢一社長は、一連の買収騒動とその後の同社発展についてインタビューで「あのタイミングでゼンショーに巡り合えてよかった」と語っており、業界内でも外食企業の投資ファンド案件の成功事例として知られています。

そのような経緯から、同社には投資ファンドやコンサルティング会社出身の優秀な人材が多く揃っており、マーケティングやシステム開発の分野で辣腕をふるっているようです。

スシローの経営戦略:味へのこだわり×優れた経営ノウハウにより業績を拡大

スシローの経営戦略の特徴として、105円の商品を中心とし低価格帯を維持しながら原価率が50%と高く、素材や美味しさへのこだわりが強い点が挙げられます。

2009年に競合に追随する形で「90円セール」などを行った結果、店舗のオペレーション等に影響が生じ、結果的に利益が減少。それらをきっかけにブランドの再構築に着手し、「うまい寿司を、腹一杯。」を企業理念・キャッチコピーに定め、価格よりも味・品質を前面に訴求するブランド戦略に切り替えることにより、顧客満足度の向上につなげました。JCSIの顧客満足度調査では2011年度に飲食業界全体で1位を獲得しています。

またシステム投資に積極的な企業としても知られており、2002年には、寿司皿に付けたICチップを使った世界初・業界初の単品管理システム「回転すし総合管理システム」を開発し、2004年に特許を取得しています。

sushirouapp2

このシステムにより、たとえば「まぐろは350メートル移動したら自動的に廃棄する」といった鮮度管理や、年間10億件にも及ぶという販売データを元にした需要予測等を行っています。

需要予測システムでは、これまで店長の勘に頼っていたレーンに流す商品の選定や提供タイミングの判断をサポートする目的で開発されており、受付システム上で予め登録された顧客の属性・人数と着席位置・着席時間・滞在時間をデータ化し、1分後・15分後のレーン単位での「喫食パワー」を予想するという非常に高度なもの。

「着席後が最もオーダーが多い」「最後にデザートを頼む」といった顧客のオーダーパターンに合わせてレーン単位で流す商品を調整する事により、廃棄ロスを75%も削減する事に成功しているそうです。いわゆる「ビッグデータ」の高度な活用事例の一つと言えるでしょう。

同社が元から持っていた味へのこだわり・システム投資への積極姿勢が、投資ファンド出身者を中心とした優れた経営・マーケティングノウハウと結びついた事により、業界1位の実現に繋がったと言えるでしょう。

スシローアプリ:「呼び出しメール機能」を中心としたユニークかつシンプルなアプリ

sushirouapp1

スシローでは2012年10月に公式スマートフォンアプリを公開しました。

開発方式はネイティブで、ウェブページをそのまま表示する画面は存在せず、すべてアプリ用にデザインされた画面となっているようです。各コンテンツは閲覧ごとに都度読み込みが発生しますが、応答速度も遅くはなく、ストレスは感じられません。

UIとしては、各画面に共通してホームボタンとプルダウン式メニューが設置されており、操作性の統一が図られています。ウェブサイトを表示するタイプのいわゆる「ガワアプリ」では、表示される既存のウェブサイトとアプリのUIが統一されておらず、使いにくいケースが見られます。ネイティブアプリとして画面を1から設計した事により、アプリに適した一貫性のあるUIが実現できていると言えるでしょう。

sushirouapp4

プルダウンメニュー上には「アプリの使い方」をタップすると、各機能の詳細な使い方が確認できます。

susirouapp4-2

主要機能は「ニュース」「店舗検索」「メニュー」「お知らせメール」の4つのみですが、店頭の混雑時に順番が回ってきた事を知らせてくれる「お知らせメール」機能は飲食チェーンのアプリとしてはあまり例がなく、ユニークな機能と言えるでしょう。

個々の機能・画面についてもチェックしてみましょう。

トップ:バナー、ニュース、メニューバー等で構成

sushirouapp1

アプリのトップは、最新のキャンペーン情報などが表示されるローテーションバナーやニュースコーナー、及びメニューバー等で構成されています。

ニュースコーナーは項目をタップすることで詳細を確認できるようになっています。一般のウェブページではなくアプリ専用の画面でありながら、画像・テキスト・リンク等がしっかりと掲載されており、丁寧に運営を行っている様子が見受けられます。

sushirouapp4-1

各機能をタップすると、下から画面がせり上がって表示される形となっています。

 

呼び出し機能:待ち時間を解決する目玉機能 実際の店舗の様子をレポート

sushirouapp5

回転寿司チェーンでは来客数の多いピークタイムなどに長い待ち時間が発生する場合が多くあります。スシローの店頭も同様で、店舗によっては毎週末2-3時間の待ち時間が発生する場合もあるようです。

その対策として、アプリには「呼び出しメール機能」が搭載されており、順番が回ってきた時にメールで呼び出しを受けることができます。この機能はアプリ限定で提供されています。

筆者は先日たまたま郊外のスシロー店舗(スシロー南行徳店)に出向く機会があり、店頭で呼び出しメールの受付を行いました。残念ながらメンテナンス中で利用する事が出来なかったのですが、参考までに店舗の様子を紹介してみたいと思います。

訪問は土曜日の18時過ぎです。

sushirouapp6

比較的早い時間であったものの、入り口では、店外まで続くお客さんの行列が見られました。

sushirouapp7

店内に入ると広い待ちスペースに30名ほど、順番待ちの方が座っていました。その端に番号券を発行する機械が設置されています。

sushirouapp8

すでに待ち時間は45分となっていました。

sushirouapp9

人数を入力し発券ボタンを押すと、番号券が発券されます。

sushirouapp10

通常はこの番号券に専用のQRコードが印刷されており、アプリからそのQRコードを読み取りメールアドレスなどの会員情報を登録する事で、呼び出しメール機能を使う事ができるようです。

sushirouapp11

順番が近づくと指定のメールアドレスに呼び出しメールが届き、店頭で番号券を提示する事で、席に案内してもらう事ができます。2時間は有効となっており、呼び出しの後来店のタイミングが遅くなった場合も、優先的に着席ができるようです。

店舗により数時間にも及ぶ待ち時間の間、ずっと待合スペースで過ごすのは、子供連れの家族などにとっては特に負担と言えるでしょう。呼び出しメール機能を使う事により、事前に店舗で受付を済ませたうえで待ち時間を外で過ごす事が可能になるだけでなく、待合スペースの混雑解消や、スタッフの対応工数の削減が可能となり、お店と利用者の双方にメリットが生まれる機能と言えるでしょう。

メニュー

sushirouapp12

「メニュー」をタップすると、寿司ネタを中心としたスシローのメニューが確認できます。

階層はジャンル>商品一覧>商品の3階層になっており、それぞれの商品には写真に加え、値段・カロリー・説明文・アレルギー情報・原産地なども掲載されており、情報は充実していると言えるでしょう。

店舗紹介

sushirouapp13

「店舗紹介」をタップすると、スシローの全国の店舗を地図・都道府県・キーワードから検索できる画面が起動します。画面構成はウェブサイトと同様の階層的なもので、近くのお店を検索する場合にはエリア>都道府県>店舗選択などと絞りこみをする必要があり、GPSを使った現在地検索には対応していないようです。

店舗情報には地図・電話番号・営業時間とともに、対応するサービス情報なども掲載されています。「地図アプリで見る」をタップすると標準の地図アプリが起動し、現在地から店舗までの経路が確認できるようになっています。

sushirouapp14

以上がアプリの主な機能となります。

前編は以上となります。来週公開予定の後編では、スシローアプリの課題やユーザー評価とともに、今後考えられる同社アプリの発展可能性について予想してみたいと思います。ぜひ、ご覧くださいませ。