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オムニチャネル戦略やO2O事例を読み解く専門メディアモバイルマーケティング研究所

しまむら公式アプリ(後編):独自の経営戦略を反映する実用性重視のシンプルなO2Oアプリ 参考にすべき3つのポイントとは?

 Post by MML編集部

前編では、しまむらの経営戦略やアプリの主な機能について取り上げました。後編では、同社のアプリの機能構成が持つ意味、アプリに対するユーザー評価や課題、参考にすべきアプリのポイントなどについて、チェックしてみたいと思います。

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あえて搭載していない機能は何か?その背景にある理由とは?

前編で見てきたように、同社のアプリの機能は店舗検索やチラシ掲載など一部に限られ、特別な機能は搭載されていません。しかしながら、機能が「少ない」「不足している」というよりは、同社の経営方針に最適化された、「シンプルな」構成になっているように感じられます。

他社のアプリが多く採用しながら、あえて同社のアプリが搭載をしていない機能が何か?その背景にどんな理由があるのか?という観点で、改めてアプリを分析してみたいと思います。

1.ネット通販機能を搭載していない

近年小売業のさまざまな分野で、ネット/リアルの区別を問わずあらゆるチャネルを融合させる「オムニチャネル」という考え方の重要性が叫ばれています。モバイルマーケティング研究所でもヤマダ電機TSUTAYA無印良品など多くの企業の取り組みを伝えて参りました。

オムニチャネルを進める企業にとってネット通販への注力はかかせないものとされており、直近ではセブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長が、通販大手の千趣会を買収する際「オムニチャネル化を本格化させる」と語ったことが報じられ、注目を集めました。この動きはアパレル業界でも同様で、海外のアパレル大手からユニクロまで、オムニチャネル化の動きは半ば常識化しています。

そのような中しまむらではネット通販を一切行わず、他社と一線を画した店舗チャネル中心の展開を行っています。その理由について公式な見解は見当たりませんでしたが、想定できる理由の1つはユニクロの1.5倍となる約1,300もの店舗網を持ち、リアルのチャネルがすでに非常に充実している事、もう1つは、多品種少量の商品を短期間で商品を売り切るスタイルの同社にとって、ネット通販用に写真を撮影したり、ネット通販用の在庫を確保する事の手間が、費用対効果に見合わないと判断している為ではないでしょうか。

他社のアプリでは「オムニチャネル」を過剰に意識するあまり、店頭集客とネット集客のどちらを実現したいのか分からず、アプリの目的が分かりにくくなってしまっているケースもあるように感じます。しまむらアプリはネット通販機能の提供を行わず機能を店頭集客に特化させる事によって、アプリの目的を明確化し、集客効果を最大化させているのではないでしょうか。

2.商品情報はチラシ等を通じ一部のみ提供・在庫の検索機能は提供しない

同社のサイトやアプリでは、個別の商品情報やその在庫状況などを検索するといった機能は提供されておらず、チラシ等を通じ代表的な売れ筋商品のみを訴求する形が取られているようです。

同社の商品在庫は原則として、1店舗あたり1アイテム1サイズ1-2点に留まると言われており、追加仕入れを行わない形が基本となっています。それにより、ネット上に個々の商品を掲載したり、在庫情報を掲載したとしても、実際にお店に向かった時には売り切れになってしまう場合が多く、掲載に適さないという判断があるのではないでしょうか。

ユーザーからのアプリに対する評価コメントを見ると、商品のラインナップをアプリで確認したいというニーズも一部見られますが、回転の速い同社の商品戦略に適しているのは「店頭で店頭在庫の中から選ぶ」スタイルであり、あえて機能を提供しない事でユーザーの購買機会ロスを減らしているとも言えるのかもしれません。

3.会員向けのポイントカードやクーポンの提供を行わない

同社では特定の会員組織を持っておらず、会員向けのポイントカードやクーポンの提供なども特に行われていないようです。唯一、ホームページを通じてメールマガジン登録の受付は行っているようですが、実際に登録をしても配信を確認できず、あまり積極的な運用は行われていないようです。

商品を問わず利用できるタイプのクーポンは会員/非会員を問わず行われおらず、特定の一部商品で割引を行うセール等が散発的に実施されるのみのようです。

アパレル業界では季節の変わり目に売れ残った商品を一斉に割り引くセールを行う事が常識化していますが、もともと商品の回転率が非常に高く、価格帯の商品を取り扱う同社にとっては、集客に有効な一部の目玉商品を除き、利益率を犠牲にしてまで値引きをする必要は低いとの考えがあるのかもしれません。

4.店舗単位での販促は行わない

同社では、店舗のローコストオペレーションを重視しており、発注業務や商品の移動などを本部側で担う事で、店舗の負担を下げる工夫がなされています。同様の理由からか、店舗単位での販促施策やメールマガジンの配信等は行われておらず、全店統一の販促施策が中心となっているようです。

他社のアプリでは店舗単位でのプッシュ通知配信や独自クーポンの配信などを通じて成果を上げているケースも見られますが、店舗側に一定の手間がかかる事は避けられません。

同社では最大の特徴である商品の安さや品揃えを維持する為に、店舗単位での販促という手間のかかる作業をあえて省くことによって、店舗のローコストオペレーションを維持しているものと推測されます。

以上のように、同社のアプリの機能が限られている事は偶然ではなく、自社の運営方針に合わせアプリの設計を最適化させているためであるように感じられます。

ユーザーからの評価:一部機能については搭載の希望も

他社に比べシンプルな機能の同社アプリについて、実際のユーザーはどのような意見を持っているのでしょうか。

App StoreGoogle Playでのアプリに対する評価はそれぞれ★が3.5と悪くない評価を得ているようです。主なレビューコメントを集計した結果は以下の通りです。

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※2014年3月12日現在、弊社調べ。両ストアに寄せられたコメント計49件を基に分類。

「チラシが見られて便利」といった好意的なコメントが最も多くを占めているものの、残りのコメントの中には、特定機能の要望や改善を求める声も複数含まれているようです。主な改善要望について触れてみましょう。

(1) 動作が遅い

同社のアプリはウェブサイトへの接続を伴うコンテンツが大半である事から、レスポンスの遅さについて苦言を呈するものが複数見られます。大半はAndroid版に寄せられた声で、iOS版に比べよりストレスを与えてしまっているようです。

また、現在は修正されているようですが、Andorid版ではページの読み込みの度に「しまむら」のロゴが表示される仕様になっていた事から、よりストレスに感じるユーザーも居たようです。

部分的にネイティブ実装を組み合わせるなど、反応速度の改善を進める事が望ましいと言えそうです。

(2) 商品検索機能がほしい

次に多かったのが、「商品の検索機能が欲しい」というコメントでした。上記でも触れたとおり、多品種少量の同社の商品戦略においては、品切れの発生しやすさから、商品検索機能が有効に機能しない可能性があると言えそうですが、中には「カタログを見たい」といったコメントもあり、たとえすべての商品を掲載できないとしても、主要な商品の情報をもう少し豊富に掲載する工夫が必要になりそうです。

(3) クーポン機能が欲しい/ネット通販機能が欲しい

他に、アプリ専用の割引クーポンなど、アプリならではの特典があると良いという声や、ネット通販機能を付けてほしいといった声も見られましいた。どちらも件数としては少ないものの、これらの機能が他社のアプリで一般化しつつある中では、今後より顕在化してくるニーズと言えるでしょう。

上記のうち特に(1)や(2)については、今後アプリの効果をより最大化させていく上で、改修が必要になってくる箇所と言えそうです。

「バースデイ」「シャンブル」など別業態でのアプリ展開を同時に開始

しまむらのアプリ戦略についてもう一つ触れておくべき点があります。

同社は2013年9月のしまむらアプリ公開後2013年10月と11月に、グループの「シャンブル」「バースデイ」でもそれぞれ公式アプリを公開しています(シャンブルアプリバースデイアプリ)。

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バースデイはベビー/キッズ向けのアパレル/用品を扱う業態、シャンブルは若年層女性向けのインテリア、雑貨、アパレルを扱う業態であり、それぞれの業態に合わせデザインされた両アプリは一見、まったく別個のアプリのようにも感じます。

しかしながら、両アプリを実際に触ってみると、機能構成や画面遷移はしまむらのアプリとほぼ同じものになっており、3アプリが統一の仕様を採用している事が分かります。

アパレル業界では1企業が複数のブランドや業態を抱える事が一般的です。アプリの展開にあたり、開発コスト等を考え複数の業態を1アプリに統合する事も可能ですが、ユーザーにとって自身に関係のない業態の情報を見せられる事は大半の場合プラスに機能せず、1業態ずつ別のアプリを構築するのが集客効果の面からも望ましいでしょう。しかしながら業態別にアプリを開発する事によって、開発コストや運用の手間がかさむというデメリットもあります。

しまむらでは共通仕様のアプリをデザインのみ業態別に変える事によって、開発コストなどを抑えながら効果を最大化させる事を可能にしているようです。仕様を共通化させることにより、今後の機能追加やアップデートの際にも開発コストや期間を抑える事が可能となります。アパレル業界のブランド展開に合わせた、上手なやり方と言えるでしょう。

まとめ:あえてシンプルに構築された必要十分な機能のアプリ 参考にすべき3つのポイントとは?

これまで見てきたように、しまむらのアプリは、同社の経営方針に合わせあえてシンプルに構築されたアプリに感じられます。必要最低限の機能ながら、ユーザーからも比較的好意的な評価を受けており、十分に成果を発揮していると言えそうです。参考にすべきアプリのポイントを3つに整理してみましょう。

1. ペイドメディアとの連携によるユーザーの獲得

しまむらのアプリ施策が他社に比べ優れている点の1つ目は、オウンドメディアの重要性を良く認識し、テレビCMやLINEアカウントからの流入ルートを良く考え、連携をしっかりと図れている点です。

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ペイドメディアとオウンドメディアは、担当する広告代理店なども別の場合が多く、両者の連携は簡単なようで、意外と忘れがちな点と言えます。しかしながら、中長期的に見て両社を連携させる事で企業側が得られるコストメリット/集客効果は非常に大きく、今後アプリを展開する企業にとって、事前によく意識をしなくてはならないポイントと言えるでしょう。

2. 目的に合わせた必要最低限の機能

2つ目は、ネット通販、商品/在庫検索などの機能はあえて搭載せず、店頭集客の目的に必要な機能のみをシンプルに提供している点です。

アプリを構築する際に「他社がやっているから」と様々な機能を盛り込みすぎてしまう場合がありますが、本来は「自社の目的に合った必要な機能は何か」を突き詰める事が正しいプロセスと言えるでしょう。

上記でも触れたとおり、同社では商品戦略上ネット通販や商品/在庫検索などが運営方針に合致しない事情もあるものと推測されます。他社動向に囚われず自社にとって必要のない機能を省いた点は、参考になる点と言えるでしょう。

一方、「プッシュ通知」を使った新着チラシの通知などを通じ、ユーザーにアプリの起動機会を与える仕組みなども考えられており、シンプルながら必要なポイントを押さえた構成になっているようにも感じます。

アプリを新規に企画する際などには、競合他社のアプリなどを必要以上に意識しすぎず、自社の目的に沿ったアプリ機能が何であるのかを、冷静に判断する姿勢が必要と言えるでしょう。

3.他ブランドでのアプリ展開

3つ目は、「しまむら」のアプリ公開に合わせ、「シャンブル」と「バースデイ」のアプリも同一の仕様で提供した点です。

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3つのアプリを共通仕様で開発するためには、アプリの企画段階から汎用性のある機能/仕様を意識し、ブランド間の意思の差などを調整する必要があったものと推測されます。それにより得られたメリットは単なる開発コストの削減に留まらず、運用面の手間を減らせる点、以後のアプリ改修の工数を減らせる点など、多岐にわたると言えるでしょう。

アパレル業界では多業種展開を行う企業が多いことから、同一の仕様・プラットフォームでアプリ構築を行う今回のようなケースは、特に他社にとって参考になるケースと言えるのではないでしょうか。

上記に取り上げた3つのポイントは、今後アプリを企画される企業にとっても、参考にしやすいポイントと言えるでしょう。是非参考になさってください。