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オムニチャネル戦略やO2O事例を読み解く専門メディアモバイルマーケティング研究所

モスバーガー公式アプリ(前編): ロイヤルカスタマー化を意識したファン増強アプリ

 Post by MML編集部

さて、2014年の第一回のO2Oアプリ分析は、「モスバーガー」さんの公式アプリについて取り上げます。今後週に2回、前後篇に分けて記事を公開させていただきます。後編もお楽しみに!

モスバーガーー独自のブランドイメージを築くハンバーガー業界2位企業

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1972年の創業当初より、「おいしさの追求」「作り置きしない」を掲げているモスバーガーモスフードサービスは東京都品川区大崎に本社を置き、主に『モスバーガー』のフランチャイズ展開を手掛け、ハンバーガー業界において日本マクドナルドに次ぎ業界2位のファーストフードチェーンです。

1位の日本マクドナルドとの差は大きく、店舗数(直営、フランチャイズの合計)では、日本マクドナルドが2012年12月期末時点で3,280店なのに対し、モスバーガーは13年3月期末で1,431店。全体の売上高もマクドナルドがこの10年間で売り上げを1000億円以上も伸ばし5000億円を超えましたが、モスフードサービスはこの10年間、ほぼ1000億円前後で推移しており、両者の差はおよそ5倍程度に拡がっています。

マクドナルドとの差別化

国内で圧倒的なシェアを誇るマクドナルドとの差別化は創業当初より意識されており、様々な所に表れています。主な例を上げてみましょう。

1.高価格帯のメニュー(値下げ競争への追随をしない)

2.商品の作り置きをせず、注文を受けてから作るアフターオーダー方式の徹底(※)

3.有機野菜や国産素材を利用するなど、品質や味へのこだわり

4.駅前などを避けた出店(「二等地戦略」などとの表現も)

5.自社のロイヤルカスタマーや女性を中心としたターゲット層

※2005年よりマクドナルドでも対応(「メイド・フォー・ユー」)

特に、1990年代後半にマクドナルドの「平日半額キャンペーン」などを契機に始まったファーストフードチェーンの低価格競争に追随せず、一時的なキャンペーンを除き、現在まで殆ど値下げを行っていないなど点など、その戦略は徹底されているようです。

これらの差別化によりモスバーガーは独自のブランドイメージを構築しており、2012年の調査によると、味への評価がハンバーガーチェーン全体の中でもトップを獲得するなど、一定の消費者から手堅い支持を集めています。

強者マクドナルドに対し、自社のオリジナリティを追求することで消費者の支持を集めているモスバーガーは、差別化戦略の好例と言えるでしょう。

スマートフォンアプリにも表れる独自性

同社が2010年9月に公開した公式スマホアプリにもそれらの姿勢・戦略が表れており、独自のブランドイメージを始めとする自社の強み・価値を最大限に引き出すことで、顧客との関係強化を図り、売上貢献度の高いロイヤルカスタマーを生み出す仕掛けの1つとして位置付けられているようです。

まず特筆すべきなのは、割引クーポン配布等に頼ったwebコミュニケーションに終始するのではなく、あくまでも商品や店舗、ブランディングが主体コンテンツと位置づけられた、コミュニケーションツールになっている点です。

(1)モスバーガー店頭の手描き看板をイメージしたトップ画面

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トップ画面はモスバーガーの店頭に置かれている名物の手描き看板をイメージしており、ユーザーの名前が入った画面上には、毎日代わるメッセージが表示されています。ブランドに親しみを持たせ、コミュニケーションを図ろうとする意図が見受けられます。

(2)キャンペーンバナー・新着ニュース

キャンペーン商品や新着ニュースなど、商品の詳細等を案内するコンテンツも充実しています。

たとえば、「とびきりハンバーグサンドシリーズ」のページでは、5年前からレギュラー化している同商品について、商品のコンセプトや過去5年間の間にリリースしたシリーズの歴史を見せるなど、販売終了した商品までをも詳細に紹介しています。

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モスバーガーはテレビ朝日系列の「お願い!ランキング GOLD 第2回ハンバーガー総選挙」で、上位10位中4商品が入賞するなど、顧客に愛される商品を多く抱えています。このようなコンテンツを通してそれらのファン層を醸成しているのではないでしょうか。

(3)クーポン機能―常時掲載はせず扱いは控えめ

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また、トップ画面には会員ログインをすることで利用できるクーポンのコーナーがあります。

飲食業界のスマホアプリでは、「割引クーポン」を常時掲載・提示することを主眼としているものが多く見られますが、モスバーガーのアプリではクーポンの常時掲載はせず、キャンペーン期間などに絞り提供しているようです。

この姿勢は、常時多数のクーポンを提供するマクドナルド公式アプリと対照的です。

売上の構成要素は「単価×客数×購買頻度」と言われます。両者のアプリを見ると、マクドナルドは「割引クーポンによる客数拡大」を目的としているのに対して、高単価なモスバーガーでは「自社のロイヤルカスタマー(及びその予備軍)を対象に、顧客が自らブランドを選択し、購買頻度を上げてもらうこと」を目的として位置づけているのではないでしょうか。

(4)メニュー機能―メニューの「分解図」などまで掲載

メニューについては、上述の季節限定メニュー・限定メニュー等のスペシャルコンテンツはもちろんのこと、レギュラーメニューに対しても細かな説明をしているのも、継続的に来店するロイヤルカスタマーへの配慮が十二分に伺える内容となっており、興味深いところです。

栄養成分、アレルギー情報などは他チェーンでも掲載するケースが多いものの、「主要原産地」は素材にこだわる「モスならでは」の掲載内容と言えます。

また、モスバーガーらしい非常に珍しいコンテンツとして、「分解図」と称する、具材を重ね合わせて製造するハンバーガーを真横から見たイラスト説明が公開されています

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商品の高品質をうたうモスバーガーにとって、ロイヤルカスタマーは同社の商品・メニューを愛してくださる顧客のことを指しているのでしょう。

飲食チェーンにとってメニューの構成を図解することは、他チェーンの模倣を招く側面もありますが、モスバーガーはあえて「商品を愛する顧客のために」情報公開をしているように感じられます。この姿勢は差別化戦略の域を超え、まさに「カスタマーファースト」の姿勢の表れと言えるでしょう。

(5)Wi-Fiスポット等の絞り込みに対応した使いやすい店舗検索機能

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また、モスバーガーアプリの顧客視点は「店舗検索機能」にも表れています。

通常飲食チェーンのアプリでは、位置情報などをベースに店舗を検索し表示するだけの機能が一般的ですが、モスバーガーアプリでは店舗の施設やサービスを指定して絞り込み検索を行う事が可能です。

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例えば、ビジネスマンやノマドワーカーは、携帯キャリアのWi-Fi無料スポット情報を確認する。小さな子供がいるファミリーには、「お届けサービス」対応店舗を確認し、商品のデリバリーを依頼する、といった使い方が可能です。

他チェーンでもPCサイトではこれらの絞り込み機能を用意している場合が多いようですが、出先での操作に適したスマホアプリにこれらの機能を搭載する姿勢は、同社の「カスタマーファースト」を体現しているように感じられます。

まとめ:ロイヤルカスタマー化を意識した丁寧な作りのアプリー利用頻度の向上も課題

モスバーガーのスマホアプリには、「高品質」「味へのこだわり」など同社のブランドイメージを大切にし、自社のファン(ロイヤルカスタマー)を育てようとする意図が見受けられます。

その姿勢は、店頭の看板を模したフレンドリーなトップページや、豊富な商品情報、操作性の高い店舗検索機能などに表れており、実際に使っていてブランドに対し好感を持つことができるアプリに感じられました。

飲食チェーンにとって最も強力なブランドロイヤリティ強化策は、一時的な「割引」などのインセンティブではなく、商品力の向上とその情報提供である。そのような考えが、同社の戦略やアプリの構成にも表れているのではないでしょうか。

一方アプリストアの評価欄を見ると、「クーポンをもっと掲載してほしい」という意見が散見され、ユーザーの割引への期待値もまた伺い知れるところです。クーポンコーナーを常設しながら「お休み中」との表記が、ユーザーの期待を削いでしまい、ネガティブなイメージを持ってしまうケースもあるのではないでしょうか。

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同社では2007年に初の値引き施策を行い、100円引きのクーポン券などを配布したことがありましたが、予想以上の来店率から経費が増え、中間赤字に陥るという経験をしています。確立されたブランドイメージを維持しながら適度な割引による売上増を狙うことには、さまざまな難しさがあるのでしょう。

しかしながらスマートフォンアプリを使えば、紙のクーポンなどと違い、利用時間や枚数を制限したクーポンの配信や、プッシュ通知を活用してそれらの施策をユーザーに一斉に知らせることなど、より多くの手段を使うこともできます。

ユーザーも複数チェーンのアプリを手元に所有する昨今、今後それらの仕組みを活用して「アプリの利用頻度を上げる」ことによって、支持層の拡大やさらなるアプリ販促効果の向上が見込めるのではないでしょうか。

金曜日は、このアプリを活用したキャンペーンやユーザ行動を生み出す仕掛けについて、分析していきます。ぜひ、後編もご一読ください。