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オムニチャネル戦略やO2O事例を読み解く専門メディアモバイルマーケティング研究所

ケンタッキーフライドチキン公式アプリ(後編):「ウェブアプリ」の典型事例 異業種間競争に勝ち抜くために必要な改善点とは?

 Post by MML編集部

ケンタッキーフライドチキン公式アプリ トップ画面1

ケンタッキーフライドチキン(以下ケンタッキー)の公式アプリについて、前後編2回で触れる今回のコラム。前編では、同社を取り巻く市場環境の変化やアプリの基本機能について触れました。

「フライドチキン」という独自分野をほぼ独占し成長を続けてきた同社ですが、近年コンビニ各社が独自のフライドチキン商品の投入を強化した事などから、業績に大きな影響が出ています。新業態の展開経営体制の刷新、「カーネルPontaクラブ」の展開などで立て直しを図る同社ですが、スマートフォンアプリはスマホ向けサイトへのリンクが中心の典型的「ウェブアプリ」であり、操作性には課題も多いように感じられました。

後編では、公式アプリの残りの機能や、同社アプリが抱える課題、その解決の方策などについて触れてみたいと思います。

I’m@ケンタッキー:店頭でのチェックインで独自ポイントが貯まる ソーシャルログイン機能を効果的に利用

ケンタッキーフライドチキン公式アプリ I'm@ケンタッキー

I’m@ケンタッキー」は、2013年3月に公式アプリに追加された新しい機能です。

ケンタッキーの店頭で「チェックイン」操作をする事により、アプリ独自のポイントである「so goodポイント」を貯める事ができ、ポイント数に応じ独自のクーポンが獲得できます。

仕組みは以前取り上げた「Pontaタイム」や「ローソン」のアプリと近く、Fousquareなどを参考に開発されたものと言えるでしょう。

ソーシャルメディアとの連携

サービスの利用にあたっては、FacebookまたはTwitterのアカウントを使ったソーシャルログインが必要となります。ログインにあたっては「ユーザー情報の利用許可」「投稿の許可」が表示され、後者を許可すると自身のタイムライン上にサービス利用開始の旨が投稿されるようになっています。

ケンタッキーは以前よりソーシャルメディアへ注力しており、前編でも取り上げたように、Facebookでは25万ものファンを抱えています。「I’m@ケンタッキー」で使われている「ソーシャルログイン」機能等の利用は、それらSNS強化の流れの一部としても位置付けられるものでしょう。そのメリットについて簡単に触れてみたいと思います。

1. ソーシャルログインによる会員登録率の向上:特にモバイル向けで効果を発揮

スマートフォン等のモバイル機器からの利用が増えるに従い、氏名・メールアドレスなど多くの情報の入力を必要とする会員登録のプロセスは、敬遠されがちになっていました。ソーシャルログイン機能を使う事により、Facebookなどに登録しているユーザー情報をボタン一つで流用する事が可能になり、会員登録の負担を下げ、登録率を上げる事が可能になります。

2. SNS上での情報拡散:ユーザーのアクションを本人に代わって投稿 友人のタイムラインに表示

ケンタッキーフライドチキン公式アプリ I'm@ケンタッキー1

ソーシャルログイン機能を使い会員登録をさせる際、ユーザーの許諾を得た上で、サービスの利用開始や各種アクションをユーザーに代わって投稿する事が可能になります。投稿された内容はそのユーザーの友人・知人のタイムライン上に表示され、新たなユーザー登録を発生させるきっかけとなり、サービスを効果的に広めていく効果が期待できます。

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3. ユーザー情報の活用:より深いマーケティング分析に活用が可能

通常の会員登録で取得できる情報は、氏名・メールアドレス等のプロフィール情報が中心となり、それ以上の情報を取得することはユーザーにより負担を強いる事となってしまいます。 ソーシャルログインを使う事により、ユーザーがFacebook等に登録している各種ソーシャルデータ(インタレストグラフ・ソーシャルグラフ)等を活用する事が可能となり、ユーザーの趣味嗜好をより詳細に把握する事が可能になります。

ケンタッキーが「I’m@ケンタッキー」登録時に取得している情報からは、同社が上記などを目的として、ソーシャルログイン機能を活用している事が読み取れます。

ケンタッキーフライドチキン公式アプリ I'm@ケンタッキー2 ソーシャルログイン

ゲーミフィケーション

また、「I’m@ケンタッキー」を構成する要素として、Pontaアプリの回でも触れた「ゲーミフィケーション」が挙げられます。ゲーミフィケーションには大きく分けて「課題、報酬、共有」の3つの要素があるといわれています。今回の事例では、チェックインという「課題」をクリアしたユーザーに、クーポンという「報酬」を与える事により、ユーザーとのエンゲージメントを高め、ブランドへのロイヤリティを高める効果を狙っているものと推測されます。

ケンタッキーフライドチキン公式アプリ I'm@ケンタッキー3

「I’m@ケンタッキー」は「ソーシャルログイン×ゲーミフィケーション」でユーザーとの距離を縮める、意欲的な取り組みと言えるでしょう。

カーネルPontaクラブ:Pontaポイントを軸とした販促を実施

ケンタッキーフライドチキン公式アプリ カーネルPontaクラブ

カーネルPontaクラブは、2013年12月に共通ポイントサービスPontaと共同で開始した、ケンタッキーの新たな会員制サイトです。これまで提供してきた「カーネル通信」と別の会員組織となっており、登録時にPontaIDの入力が必須となっています。

ケンタッキーの公式アプリ上だけでなく、以前取り上げたPontaタイムアプリ上でも積極的な会員獲得施策が実施されるなど、重要な施策と位置付けていることが伺えます。Pontaは今やTポイントに並ぶ会員数を獲得した国内最大級の共通ポイントサービスであり、その豊富な会員ユーザー層を取り込める点は魅力と言えるでしょう。

ケンタッキーフライドチキン公式アプリ カーネルPontaクラブ2

カーネルPontaクラブの特徴として、「Pontaポイントを軸にした集客・囲い込みが可能になる」という点が上げられます。これまでの会員向け施策で提供できるクーポンの内容は「商品自体の値引きやプレゼント」などに限定されていましたが、カーネルPontaクラブ会員はPonta会員であることが前提であり、「ポイント2倍」などといった「商品自体の値引きを伴わない販促施策」が可能になりました。

ケンタッキーフライドチキン公式アプリ カーネルPontaクラブ3

一時的な値引きなどに比べ、顧客のリピート率向上に寄与しやすい施策が可能になったと言えるでしょう。

共通ポイントを利用することの意味:販促効果と引き換えに一定のリスクも

一方、今回の提携が持つ意味やリスクについても考えてみたいと思います。

まずPontaはあくまで「共通」ポイントであり、ケンタッキーがコストをかけて付与したポイントが、ワタミや大戸屋など同業提携企業の集客のきっかけになるケースや、業種を超えてフライドチキン分野で競合しつつあるローソンで、「黄金チキン」の購入に使われてしまう事も有りえるでしょう。その逆もまた然りではありますが、「最終的に、“純粋な収益増”につながっているのか?」は、慎重な検証が必要とされるでしょう。

また、ポイント利用の増加に比例し利用手数料がかさんでしまう点も、主要なリスクと言えます。日経新聞の記事によると、一般に提携企業が共通ポイント事業者に払う手数料は1ポイント(1円)あたり0.7~0.8円程度と言われており、100円あたり1ポイントを付与している同社の場合、その費用負担は100円あたり1.7~1.8円、つまり2%弱となります。直近の売上高営業利益率が2.5%となった同社にとって、大きな負担であることが推測されます。

ケンタッキーは、Pontaを運営するロイヤリティマーケティング社と同じ三菱商事系列の企業であり、実際の手数料は優遇されている可能性が高いと推測されますが、一部サービスでのポイント付与を段階的に廃止したゲオのようなケースもあり、費用対効果が十分に発揮されるか否かは、同じく慎重な検証が必要と言えるでしょう。

また、上記のような共通ポイント固有のリスクに加えて、カーネルPontaクラブが他社のプラットフォームであるPontaに依存した組織である点も、一定のリスクを持つと言えるでしょう。カーネルPontaクラブの運営や会員管理にはPonta側の意向を考慮する必要があると言え、自社の方針に沿って運営できる純粋な意味でのオウンドメディアと違い、運営の自由度に一定の制約をもたらすものと言えるでしょう。

ケンタッキーのアプリ施策の課題・改善点

前後編を通じて、ケンタッキーアプリの各機能と課題について触れてきましたが、ここからは同アプリやプロモーションの課題と改善策について考えてみたいと思います。既にアプリを出されている企業様だけでなく、これからアプリを開発される企業様にも、ご参考いただければと存じます。

1:ウェブアプリ特有のUI・操作性の課題が散見→スマホのポテンシャルを活かしたネイティブアプリに改修を

同社アプリの最大の課題は、大半のコンテンツがスマホサイトの流用を元にした「ウェブアプリ」で、UIや操作性への配慮に欠けている点でしょう。

まず、各機能をタップするたびに発生するウェブ特有の読み込み時間は、利用者がアプリに求める操作性を満たしておらず、ストレスを与えていると言えるでしょう。「Amazonでは表示が0.1秒遅れると売上が1%減少する」といった話もあり、ウェブサービスやアプリにとって表示速度は非常に重要と言えます。表示の早いネイティブアプリと比較される背景からも、消費者のウェブアプリに対する視線はより厳しいものと言え、事実同アプリのレビュー欄には以下のような声が多く散見され不満に感じている事が分かります。

ケンタッキーフライドチキン公式アプリ 評価コメント

また、通常は主要機能のボタンが固定されているはずのトップ画面が、ケンタッキーの場合下までスクロールしないと全てを見られない構成となっており、トップバナーのサイズが過大である事も含めて、アプリ用のUIになっているとは言えません。各機能の利用率を下げてしまっているのではないでしょうか。

ケンタッキーフライドチキン公式アプリ トップ画面 ガワアプリ

「マップ」についても前編で指摘した通り、フィーチャーフォン向けのUIをそのままスマホからアプリへ移植したように見え、他のネイティブマップベースの地図に比べ、かなり使いにくいように感じられ、アプリ本来の機能を活かしきれていないと言えそうです。

ケンタッキーフライドチキン公式アプリ マップ

全般的に「スマートフォン向けのUI」が十分に考えられていないように見え、折角追加したAR機能やI’m@クーポンなどアプリならではの機能も、基本機能の弱さやユーザー評価を見る限り、思うように利用されていないのではないかと推測されます。

これらの課題を解決するためには、ネイティブ(または一部ウェブを活用したハイブリッド)方式のアプリを新たに開発または改修し、トップページに主要機能のボタンとバナーを整理する、ネイティブマップを使った経路検索機能を実装する事などが求められるでしょう。

2:バラマキ型クーポンで利益率への影響が懸念→枚数限定クーポンにより集客と利益率の両立を

ケンタッキーフライドチキン公式アプリ クーポン

同社のクーポンはアプリ利用者全員が会員登録なしで利用できるようになっており、ユーザーの利便性の観点からは、他社と比較し優れていると言えそうです。しかしながら同社関係者のインタビューにも載っている通り、誰でもいつでも多くのクーポンを利用できてしまう現状は「バラマキ」状態とも言え、利益率の面では課題も多いように感じます。

上記インタビュー中でも「ハードディスカウントなクーポンを出すと、不適切な形でたくさん使われてしまうのではないかという不安から思い切った施策をやりにくいという課題があります。クーポンの使用回数を管理することができればいいなと思いますね。」とのコメントがあり、枚数を限定したクーポンの仕組みなどを実装することで、魅力的かつ使われすぎを防いだバランスの良い集客を行うことが必要でしょう。

3:ペイドメディアやポイント連携の重視によるコスト増→アプリを中核としたオウンドメディアの強化によりコストダウンを

同社ではテレビでの大量のCM投下に加え、4週で最低800万、スタンプで2,500万がかかると言われているLINE公式アカウントや、2%弱の手数料がかかるPontaなど、コストのかさむプロモーションが複数実施されています。企業規模からしてそれらの施策を行う事自体は不思議ではないものの、業績不振の原因の一つに広告費・販促費が挙げられていることを見ると、費用を抑える工夫が求められるフェーズと言えそうです。

ケンタッキーフライドチキン公式アプリ LINE公式アカウント

解決策は「(費用が比較的かからない)オウンドメディアの強化」と「ペイドメディアにかけるコストの削減」にあると言えるでしょう。他社のプラットフォームに依存する事のリスクを下げる意味でも、オウンドメディアの強化は重要と言えます。

たとえば、同社のLINEスタンプは確かに話題を集め多くのユーザーを獲得したものと思いますが、十分な成果には繋がっていないとの指摘もあります。友達追加の先にユーザーを進めなくては、月間1,000万以上と推定されるコストを払い続けられなくなった段階で、現在600万を超える「友達」は消えてしまいます。

記事中で同社のマーケティング方針の頂点に位置されている「カーネルPontaクラブ」も、前段で触れた通りPontaのプラットフォームに一部を依存したものであり、純粋な意味でのオウンドメディアとは言えない施策になります。将来的にPonta側の都合で運営やコスト上の制約が生まれる可能性は否定できないでしょう。

ケンタッキーフライドチキン公式アプリ マーケティング戦略

何れにしても同記事全般を通じて「アプリ」の存在が出てこない事には疑問を感じざるを得ず、位置付けを軽視している事の表れに感じられます。リスクヘッジとコストダウンの両面から、アプリを始めとするオウンドメディアを重視・強化していく事が、強く求められているのではないでしょうか。

4. アプリのPRの不足、紹介ページがない→利用者獲得に不可欠であり、一刻も早い作成が求められる

では具体的にどのような方策で、オウンドメディアを強化すれば良いのでしょうか。方法論の一つとして、アプリ自体の改修に加え、「ペイドメディアからオウンドメディアへの流入強化」が挙げられるでしょう。

具体的事例として、業種は違いますが、アパレル大手の「しまむら」さんのCMが参考になります。

上記の動画をご覧いただくと分かりますが、CMの最後にアプリの存在が明確にアピールされており、一過性の効果に留まりがちなペイドメディアを、継続的にユーザーを囲い込める公式アプリへと流入させるきっかけとして活用している事が分かります。

この施策はTVCMに限りません。LINEやカーネルPontaクラブの会員に対してもアプリを訴求していくことで、新たなコストをかける事なく、ユーザー獲得を強化する事が可能になると言えるでしょう。

但し、それらの施策を行う上で大きな課題と言えるのが、『ウェブサイト上に正式なアプリ紹介ページがない』点です。アプリストアへのリンクはリリース前後に行った過去のキャンペーンページに見られる程度であり、Googleで「ケンタッキー アプリ」と検索しても、AppstoreGoogelplayのリンクを除くと、他のアプリレビューサイトの記事などしか出てきません。

しまむらのように、仮にTVCM等で仮に紹介を行ったとしても、実際にアプリをインストールさせる為には、Google検索の上位に紹介ページが表示させる事が望ましいと言えます。現在の状態ではどこからアプリをダウンロードして良いかが少々分かりにくく、十分なダウンロード数は確保できないでしょう。他の企業アプリではまず見られない状況であり、疑問に感じざるをえません。

アプリ施策を行う上での基本的要素として、一刻も早いアプリ紹介ページの作成が必要ではないでしょうか。

まとめ:アプリの全面改修によるオウンドメディア強化こそが、異業種対抗の切り札に

上記で触れた通り、現在のケンタッキーアプリは、スマートフォンアプリのポテンシャルを十分に発揮できていない状態にある上、プロモーション上もあまり重要視がされていない状態にあると言えます。その状態で生みだされる効果には限りがあると思われ、さらなる投資や全面改修を、より難しくしているのではないでしょうか。

しかしながら、「スマホ・ファースト」の時代において、今後特にスマートフォンアプリの重要性が高まっていく事は間違いがないことであり(参考記事:モバイルコンテンツの主流はアプリへ――今後4年間でアプリダウンロード数は2倍に)、表面的なスマートフォン最適化サイトやウェブアプリを続けるままでは、十分なメリットを享受する事は難しいのではないでしょうか。

また、フライドチキン分野を巡るコンビニとの異業種間競争に対抗する上でも、各社横並びで採用している共通ポイントを活用した販促などだけでなく、アプリを中核としたオウンドメディアの強化を通じ同社のブランドイメージを訴求し、ユーザーとより深い関係を築いていく事が、差別化策として必要なのではないでしょうか。

アプリの改修や施策全体の改善プロセス

アプリの改修や施策全体の改善を進めるには、以下のようなプロセスが望ましいと言えるでしょう。

1.オウンドメディア・アプリ強化の方針の意思決定

2.アプリの全面改修(操作性や機能の改善)

3.ペイド/アーンドメディア等でアプリの積極的なプロモーション

(アプリ利用者のさらなる拡大)

4.プッシュ通知や枚数限定のクーポン提供などの実施

(アプリ利用機会の拡大と、既存コンテンツの活用)

5.マス、LINE、ポイント施策等との効果比較

(費用対効果の高い販促施策の整理とコスト削減)

6.アプリのレビュー等のチェックを通じた、継続的なアプリの改善

(さらなるロイヤリティ・利用頻度の向上)

上記のプロセスを沿ってアプリ戦略のテコ入れを図る事で、アプリを異業種に対抗する重要な武器として、さらなる発展に繋げることが可能になるのではないでしょうか。

尚、これらのプロセスは、アプリを改修するか新規に開発するかの違いのみで、これからアプリを開発される企業にとっても必要なプロセスであると言えます。ぜひ参考にしていただければ幸いです。